【SUPER FORMULA 第4戦 / オートポリス】

リアム・ローソン選手が今季2勝目一番乗り、シリーズランキング争いでトップに浮上した!!

SUPER FORMULA Round 4

開催日 2023年5月20日-21日
開催場所 オートポリス
(大分県)
天候 公式予選 : 晴れ
決勝 : 晴れ
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝周回数 41周
(1周=4,674m)
参加台数 19台
※タイヤはヨコハマタイヤのワンメイク

2023年の「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」、第4戦が大分県のオートポリスで開催された。これがオートポリス初走行となるリアム・ローソン選手(TEAM MUGEN)が予選2位から逆転勝利を飾った。

全9戦で争われる2023年のSUPER FORMULA。その4戦目の舞台となるのが九州のオートポリス。阿蘇の中腹に位置するこのサーキットは濃霧や雨に見舞われることもあるが、この週末、予選と決勝は晴天に恵まれ、汗ばむほどの陽気となった。

19日(金)には各チームがサーキット入りし、ピットの設営を行うが、その最中に野尻智紀選手(TEAM MUGEN)の急遽欠場という知らせが届く。すでに九州には移動していた野尻選手だったが、体調不良を訴え病院に行ったところ、肺気胸との診断を受けたのだ。TEAM MUGENは急遽、野尻選手の代役として大津弘樹選手を招聘。土曜日の朝にサーキットに到着した大津選手はあわただしく準備を進め、午前中のフリー走行から野尻選手のマシンに収まることとなった。

王者不在で始まった第4戦。公式予選は通常通りのノックアウト方式が採用され、Q1のA組は前戦鈴鹿大会で嬉しい初優勝を記録した宮田莉朋選手(VANTELIN TEAM TOM’S)がトップ通過。これにローソン選手、牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、阪口晴南選手(P.MU/CERUMO・INGING)、平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、小高一斗選手(KONDO RACING)が続きQ1を突破。B組は各車がアタックに入るタイミングで、急遽参戦となった大津選手がクラッシュしてしまい、赤旗中断をはさむ難しいセッションとなったが、坪井翔選手(P.MU/CERUMO・INGING)、山下健太選手(KONDO RACING)、関口雄飛選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、松下信治選手(B-Max Racing Team)、福住仁嶺選手(ThreeBond Racing)、佐藤蓮選手(TCS NAKAJIMA RACING)の6名が上位タイムでQ1を突破した。

ポールポジションが決定するQ2では坪井選手がトップタイムをマークして嬉しい初ポールポジションを獲得。チームメイトの阪口選手も3位に入り、P. MU/CERUMO・INGINGが好調ぶりを見せた。この2人に割って入ったのがローソン選手。SUPER FORMULAルーキーのローソン選手は、もちろんこれがオートポリス大会初参戦。経験の少ないサーキットで驚異の対応能力を発揮した。Q1A組トップの宮田選手は4位。5位にはこれがThreeBond Racingチームとしてベストグリッドとなる福住選手が入った。このQ2では、最後にアタックした小高選手がQ1の大津選手と同じポイントでマシンを滑らせクラッシュしてしまい、タイムを記録できず最下位に。チームは徹夜作業でマシンを修復し、決勝日朝のフリー走行には無事出走を果たしている。

決勝日は朝から青空が広がり、決勝レース直前には気温が23度、路面温度は38度を記録。ただその数字以上に、強い日差しがじりじりと肌を焼くような暑さを感じる陽気となった。午後3時ちょうどにフォーメーションラップが始まり、41周の決勝レースがスタート。抜群のスタートダッシュを切ったのはポールシッターの坪井選手と、その後方3番グリッドの阪口選手。P. MU/CERUMO・INGINGは1-2体制で1コーナーに飛び込んで行く。そこにローソン選手、宮田選手、福住選手、6番グリッドからスタートの山下選手と続いていった。

レース序盤、上位争いは膠着状態が続き、トップ坪井選手と阪口選手、阪口選手とローソン選手の差は拮抗していたが、6周を過ぎたころから2位、3位のペースがわずかに下がり、坪井選手がじわじわと差を広げていく。タイヤ交換が可能となる10周を過ぎたところでは、坪井選手と阪口選手のギャップは2.8秒。さらに11周目、12周目と少しずつ差は広がっていった。

その後方、ローソン選手は阪口選手をとらえるチャンスがなかなか訪れない中、先にピットインするアンダーカット作戦に出る。13周を終えるところでピットに向かうと、タイヤ交換組のトップでコースに復帰。これに反応するかのように阪口選手は翌周にピットに入りタイヤ交換を行うが、アウトラップが速かったローソン選手が先に1コーナーに入り、これで逆転に成功。次のターゲットとなる坪井選手との差を縮めるため、さらにプッシュしていった。

見た目上トップの坪井選手と、タイヤ交換組のトップとなるローソン選手との差は、15周終了時点で31秒。タイヤがフレッシュなローソン選手はそのアドバンテージを使ってタイム差を削っていこうとするが、同一周回を走行するペースの遅いマシンに引っかかり、17周目、18周目、19周目と逆に差を広げられてしまう。このまま坪井選手にとって優位にレースが進んでいくかに思われたが、ローソン選手は1台、また1台と丁寧に、確実にオーバーテイクし、順位を上げて坪井選手に迫っていった。

もちろんバトルになればラップタイムは落ち、いったんは坪井選手との差が広がってしまうものの、21周目にピットアウトしたばかりの小高選手を抜き去ると、クリアスペースで一気にペースアップ。広がる一方だった坪井選手との差を縮め始めた。24周目には30秒を切り、坪井選手はここでピットインを選択。

チームも素早い作業で坪井選手をコースへと送り出したが、ピットロード出口にさしかかった坪井選手を、ローソン選手はストレート上で抜き去っていく。これでローソン選手はタイヤ交換組のトップをキープし、坪井選手の逆転に成功した。

この時点でまだタイヤ交換を済ませていなかったのは、見た目上トップを走る宮田選手と、それに続く山下選手、平川選手、関口選手の4名だったが、29周目に大湯都史樹選手(TGM Grand Prix)と阪口選手がジェットコースターストレート先で接触し、大湯選手のマシンがコースアウトしてグラベルにつかまってしまうアクシデントが発生する。

レースはセーフティカー(SC)が入ることになるが、このタイミングで上位4選手が一気にピットイン。これでローソン選手が名実ともにトップに躍り出た。宮田選手は坪井選手の後方、3番手でコースに復帰し、山下選手もこれに続く。同じタイミングでピットインした平川選手は、山下選手との間に牧野選手、佐藤選手が入ってしまったが、34周目にSCが離れリスタートが切られると、フレッシュタイヤを武器に次々とオーバーテイクし、わずか2周で4番手まで順位を取り戻した。

トップ争いは、リスタートをうまく切ったローソン選手が坪井選手を引き離していく展開。坪井選手は逆にタイヤが新しい宮田選手に迫られ、37周目のジェットコースターストレートで横に並ばれてしまう。ここではなんとかポジションを死守したが、38周目に入ったところでオーバーテイクシステム(OTS)を使って加速してきた宮田選手が坪井選手のイン側にマシンをねじ込み、2番手ポジションを奪うことに成功。3番手に下がった坪井選手は、残り3周で山下選手、平川選手にも迫られ最後の最後まで気の抜けない表彰台争いが繰り広げられることとなった。

2番手以下の激しい争いをよそに、リスタート後は着実にギャップを築いたローソン選手。残り3周で2番手に上がってきた宮田選手が猛追したが、惜しくも1.2秒届かず、ローソン選手が今季2度目のトップチェッカーを受けた。これで2勝目を挙げたローソン選手はポイントランキングでトップに浮上。2位に入った宮田選手も、野尻選手をかわしてランキング2位に。坪井選手は最後まで山下選手、平川選手の猛攻を退け3位表彰台を獲得し、ランキングでも3位に浮上した。

Driver’s Voice

リアム・ローソン 選手 (TEAM MUGEN)

【今回の成績 : 優勝】

スタートがあまりうまくいかずにポジションを下げてしまいましたが、チームが素晴らしいクルマを用意してくれたおかげでポジションを取り戻し、そしてトップまで上がっていくことができました。今回チームメイトの野尻選手はレースを欠場することになりましたが、サーキットに残って僕たちをサポートしてくれました。彼にとても感謝しています。次戦のSUGOも僕にとっては初めてのサーキットですが、ポイントリーダーとして挑めるのを楽しみにしています。

Engineer’s Voice

坂入将太 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発2グループ]

摩耗に厳しいオートポリス、且つ昨年同様気温の高いレースウィークとなっていたことから、決勝ではアンダーカット組とステイアウト組の後半のタイム差が大きくなるのではと考えていましたが、レース終盤まで僅差のバトルが展開されて非常に盛り上がるレースでした。残りのレースもトップドライバー達のタイヤマネジメントのレベルの高さによって非常に盛り上がると思います。

今大会でシーズンの約半分のレースが終了しましたが、新しいエアロと新しいタイヤの組み合わせでは、リアのデグラデーションが大きくなるということは多くのドライバーから聞いており、予選ではフロントにスクラブ品、リアにNEWタイヤという選択をするチームが目立ってきました。後半戦も予選ではタイヤの”おいしい”ポイントをどれだけアタックラップに合わせられるか、決勝ではこの特性を各チームがどう抑えていくかに注目したいと思います。

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