【NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ) 第9戦 / ドイツ・ニュルブルクリンク】

最終戦は終盤までトップ争いを繰り広げた34号車が惜しくも4位フィニッシュとなったが、2023年は全9戦中5勝を挙げて過酷なニュルブルクリンクの戦いでシリーズチャンピオンに輝いた!!

NLS Round 9

開催日 2023年10月7日
開催場所 ニュルブルクリンク
(ドイツ)
天候 公式予選 : 曇り
決勝 : 晴れ
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝時間 4時間
(1周=24,358m)

3月中旬に開幕した2023年のNLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)も、順調にカレンダーを消化して最終戦となる第9戦が10月7日(土)に開催された。最終戦ということもあってか最高峰のSP9 Proクラスには前戦よりも多い11台がエントリー、ヴァルケンホルスト・モータースポーツからは引き続き2台のBMW・M4 GT3が参戦した。

ヴァルケンホルスト・モータースポーツのドライバーラインアップは、34号車が第2戦からステアリングを握るクリスチャン・クログネス選手と、開幕からドライバーをつとめるヤコブ・ギエルマジアック選手のコンビ。35号車は第4戦から連続参戦となるダイラン・ペレイラ選手と、前戦に続いて今シーズン2回目の起用となったサミ-マティ・トロゲン選手が勝利を目指す。

8時30分から90分間のセッションが設けられている公式予選、開始時点の天候は薄曇りで路面はドライコンディション。予報を見る限りでは、この後も4時間の決勝レースを通じて雨の心配は無さそうだが、前戦でも同様の予報ながら決勝中に雨が降ってタフな展開となっているだけに、決して油断が許されないのはニュルブルクリンクらしいところと言えるだろうか。

結果的に予選はドライコンディションが保たれた中、34号車はギエルマジアック選手が7分55秒567のベストタイムをマーク。惜しくもトップには届かなかったものの、その差は僅か1.632秒でフロントローの2番手から決勝スタートを迎えることとなった。一方の35号車はペレイラ選手が7分56秒470をマーク、こちらは5番手のスターティンググリッドを獲得。ちなみに24,358mというコース距離のニュルブルクリンクだが、今回の予選はトップから3.703秒の中に上位6台のSP9 Proクラス勢がひしめき合い、決勝でも接戦が予想される結果となった。

レースはオンタイムで進行、12時に今シーズンを締めくくる4時間の決勝レースはスタートを切った。1周のフォーメーションを終えて先導するマーシャルカーがコースを離れ、各車が一斉にフルスロットルでストレートを立ち上がる。そして注目の1コーナー、34号車は4番手にポジションをドロップ。一方で5番手スタートの35号車は後続車からの接触を受けて姿勢を乱してスピンを強いられ、集団が通過して体勢を立て直すまでに40秒あまりをロスしてしまった。

その後も軽微な接触が散発する中、34号車は21号車(ポルシェ・911 GT3R)の先行を許して5番手でグランプリコースからノルトシュライフェへとギエルマジアック選手がマシンを進めていく。35号車はペレイラ選手がクラス最後尾となったが、ここからポジションを挽回するべくチャージを開始した。

3周目、2番手を走っていた24号車(アストンマーティン・ヴァンテージ GT3)をかわして4番手を奪った34号車は、3番手の21号車(ポルシェ・911 GT3R)の背後にピタリとつけて先行する機会を伺っていく。ポールポジションからスタートした5号車(アウディ・R8 LMS GTⅡ EVO)は5周を終えて2番手を12.826秒離したが、その後方は34号車を含む4台が狭い間隔で並び、2番手争いが激しい展開となった。

ラップダウン車両をかわす必要が生じるころには、コース上が部分的にダスティだったこともあり2番手争いを続ける34号車も慎重なドライビングが求められる。そのような中、5周を終えて34号車は早めのタイミングで1回目のピットイン、給油などを迅速にこなしてギエルマジアック選手が2スティント目に突入する。その翌周には35号車も入り、こちらもペレイラ選手が引き続きステアリングを握ってコースへ復帰した。

早めに1回目のピットをこなしたギエルマジアック選手は一気にチャージ、スタートから1時間を経過しクラス全車が1回目のピットを終えた8周終了時点で2番手に浮上。トップの3号車(ポルシェ・911 GT3R)とは6.377秒差だったが、さらにチャージを続け9周で1.230秒、そして10周を終えてその差を0.713秒に詰めていった。

3号車の真後ろにつけたギエルマジアック選手は11周目のザビーネ・シュミッツカーブで勝負をかけ、ポジションを守ろうとした3号車と接触を伴いながらも前に出ることに成功。この接触に対してはペナルティが出されること無く、トップのまま14周を終えて2回目のピットインを行いドライバーをクログネス選手に交代した。

スタート時の不運なアクシデントで順位を大きく下げていた35号車も、ペレイラ選手が2スティントで6番手にまでポジションを回復して、14周を終えて2回目のピットイン。ここでドライバーはトロゲン選手に交代、レース後半でのさらなるポジションアップを期してコースへ復帰した。

レースは折り返しとなる2時間を過ぎ、16周を終えて34号車がトップに立った。各車とも2回目のピットストップを終えており、ここからクログネス選手のさらなる快走が期待される展開となったのだが。装着したリムに問題があり、徐々にタイヤの空気が抜けていく事態が生じてしまった。空気圧の低下は深刻なアクシデントにつながる危険性があるため、安全を優先してチームは3回目のピットインを予定より1周早く行うことを決断した。

34号車の3回目のピットインは、スタートから2時間50分を経過した20周終了のタイミング。そして34号車の翌周から、SP9クラスの各車が最後となる3回目のピットインを行う。対して34号車は5号車に続く2番手で表彰台圏内で走行を続けていくが、3回目のピットインを早めに行うことを強いられてしまったことからチェッカーまでの燃料が足りなくなってしまった。

チームとしてはこの事態も織り込んだ上で、安全性を優先して早めに3回目のピットインを行ったもの。レースが残り10分を切った28周を終えたタイミングで34号車がピットイン、手早く燃料給油を済ませてコースへ復帰するも、ポジションは4番手にドロップ。

惜しくも最終戦は表彰台を逃す結果となってしまったが、全9戦で競われた2023年のNLSでヴァルケンホルスト・モータースポーツの34号車は5勝を獲得。シリーズの半分ほどを制する強さをヨコハマタイヤとともに見せ、2020年にBMW・M6 GT3で獲得して以来となるチャンピオン(NLS Speed-Trophäe 2023 / NIMEX Team-Trophäe 2023)に輝いた。

Driver’s Voices

クリスチャン・クログネス 選手 (ヴァルケンホルスト・モータースポーツ)

【今回の成績 : SP9 Proクラス 4位 (シリーズチャンピオン)】

2023年を締めくくる最終戦は、自分が乗った3スティント目でリムの問題が生じて表彰台のチャンスが消えてしまいました。しかし、そのようなトラブルがあったのにも関わらず4位という結果を得られたことは、充分に満足出来ると考えています。

Engineer’s Voice

三好雅章 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ]

2023年のレースが終わって少しホッとしていますが、NLSではシリーズチャンピオンを獲得出来た一方で、24時間レースは満足な結果にはなっておらず、悔しい気持ちも抱いています。今シーズンを振り返ると、チームとオフシーズンテストで課題を共有してタイヤへの理解がすすんだことにより、状況に合わせてタイヤを使い分けることが出来ました。その象徴的な一戦が雨混じりの非常に難しいミックスコンディションとなった第2戦で、ADVANカラーでの初戦で勝利できました。

ニュルブルクリンクの耐久レースではかなり幅広い温度域に対応する必要があり、タイヤには外的要因に影響されにくい性質が求められます。ほかのタイヤコンペティションとは異なり、性能を維持したまま環境変化に対応できるかが試されます。ニュルブルクリンクはご存じのようにコースが20km超と長く、一つのトラブルが大きな影響を及ぼします。タイヤとして安定した性能/品質を提供できたことから、シリーズチャンピオンという結果につながったと考えています。

素晴らしい結果を残してくれたチームとドライバーには、オフシーズンのテストからこれまで一緒にタイヤ開発に協力してくれたことに感謝しています。ドライバーとも常に「どのようにすればパフォーマンスを発揮できるか?」ということを、ともに協議しながら進めることが出来て感謝の言葉しかありません。来年は目標である24時間耐久レースで良い結果を残せるように、チームならびにドライバーとより強固な関係を築いていきます。

Text : 斉藤武浩(Takehiro Saito / office North-Star)

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