【NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ) 第7戦 / ドイツ・ニュルブルクリンク】

前日に続いて34号車が圧勝を飾り、35号車が準優勝でヴァルケンホルストが速さと強さを見せた第7戦、ヨコハマタイヤ勢のワン・ツー・フィニッシュと34号車の連勝でニュルブルクリンクは“YOKOHAMAウィーク”となった!!

NLS Round 7

開催日 2023年9月10日
開催場所 ニュルブルクリンク
(ドイツ)
天候 公式予選 : 晴れ
決勝 : 晴れ
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝時間 6時間
(1周=24,358m)

前日に34号車が最後尾スタートからの大逆転優勝を飾った興奮も残る中、9月10日(日)にはNLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)の第7戦が開催された。6時間の決勝で競われる2日連続の開催日程だが、この第7戦は前日の第6戦と決勝時間こそ同じ6時間だがスタートは正午と早められて、日暮れ前にチェッカーを迎えることとなる。

ニュルブルクリンクは土曜日に続いて日曜日も好天に恵まれ、アイフェルの森は緑が目映い絶好のレース日和となった。そんな陽気にも誘われたか、前日に続いて多くの観客がグランドスタンドやコースサイドを埋めつくしている。そして、この観客はヴァルケンホルスト・モータースポーツとヨコハマタイヤが主役となったドラマについて、再び目撃者となった。

公式予選は第6戦より30分遅く、8時30分のコースオープン。セッションは90分間となるが、前日の勝者である34号車はヤコブ・ギエルマジアック選手が計測1周目に8分を切る7分59秒216を刻むと、アタック2周目には7分56秒523にタイムアップ。その後にクリスチャン・クログネス選手も確認のためにステアリングを握り、ギエルマジアック選手のベストラップにより総合6番手のスターティンググリッドを獲得した。

チームメイトはSP9 Pro-Amクラスの36号車(ペター・ポサバック選手/キャリー・シュライナー選手/チャールズ・ウィールツ選手/クリスチャン・ボルラス選手)が総合9番手につけた一方、SP9 Proクラスの35号車(ニクラス・クルッテン選手/ダイラン・ペレイラ選手)は総合22番手となった。

前日より短い予選から決勝までのインターバル、11時15分には決勝コースインが開始となる。第6戦の116台よりは少ないものの、第7戦の出走台数は91台を数えており、いつものようにいくつかのクラスをまとめた3つのグループが形成されて、それぞれが隊列を組んでスタートに臨む。もちろん最高峰となるSP9 ProとSP9 Pro-Amの両クラスは全体の先頭となるグループ1に分類され、34号車は6番手、35号車は10番手、そして36号車が8番手のスターティンググリッドについた。

正午に6時間の決勝がスタート、3列目左から34号車はギエルマジアック選手が1コーナーへアプローチ。しかし加速中に前が若干詰まりブレーキングを余儀なくされ、この間にひとつポジションを下げてしまった。しかしここは慌てることなくリカバリー、すぐに6番手に復帰すると、前を行く11号車(メルセデスAMG GT3)を激しくプッシュしていく。これに堪えかねたか11号車はコースを外れ、タイヤにダメージを負ってピットへと姿を消して行った。

なおもギエルマジアック選手がポジションアップに向けて快走する一方、後方からスタートした35号車はクルッテン選手がオープニングから3周連続で自己ベストを更新する猛追を見せ、4周を終えて6番手に浮上。そして5周を終えると1回目のピットイン、ドライバーは交代することなくクルッテン選手が2スティント目に臨んだ。同様に34号車も開始1時間を待たずして1回目のピットインを行い、こちらもギエルマジアック選手が連続でステアリングを握る。

ところでニュルブルクリンクと言えば、“ニュルウェザー”と称される不安定な天候、そして“グリーンヘル(緑の悪魔)”という二つ名をご存じの方も多いことだろう。今回に限って言えば前者とは無縁の週末だが、後者については例え天候に恵まれたコンディションであってもタフなレースの舞台であることに変わりは無く、“悪魔”は容赦なく牙を剥いてくる。そんな餌食になったのは2番手を走っていた5号車のアウディ・R8、スタートから1時間20分を過ぎたところでタイヤを壊して戦列を離れた。これでギエルマジアック選手の視界に映るのはSP9 Pro-Amクラスの19号車(フェラーリ・296 GT3)、ただ一台となったのである。

その19号車は2時間経過を前に13周を終えてピットイン、トップに立ったギエルマジアック選手は一気にチャージしてマージンを稼ぎ15周を終えてピットへ戻ると、ステアリングをクログネス選手にリレーした。クログネス選手はマージンをさらに拡大、17周を終えて22.965秒だった2位との差を翌周には38.597秒とした。

そして、このクログネス選手に続いたのが35号車、クルッテン選手からマシンを受け継いだペレイラ選手が18周目に19号車をかわして2番手へ浮上。6時間の決勝は折り返しを待たずして、ヨコハマタイヤで戦うヴァルケンホルストがワン・ツー体制を構築した。

レースは後半に入り、ヴァルケンホルストは36号車が24周目に惜しくもクラッシュを喫して戦列を離れたものの、SP9 Proクラスの2台は磐石の走りで周回を重ねる毎にワン・ツー体制を確固たるものとしていった。ピットインタイミングの関係で、2番手については見た目の順位が一時的に入れ替わる場面こそあったものの、総合トップを行く34号車については大量マージンを背景に常にタイミングモニターの最上段にその名を刻み続けていく。

スタートから5時間を経過してトップは34号車、2番手が35号車。その後ろ、3番手と35号車の差はおよそ1分30秒と大きく、ヴァルケンホルスト/ヨコハマタイヤのトップ2は完全にレースの主導権を握って栄光のフィニッシュへ向かっていく。

長く過酷な6時間耐久レースの2連戦もいよいよフィナーレ、残り10分のタイミングでクログネス選手が7分56秒743という完走車の中では最速のタイムを叩き出してあらためて速さを見せつけつつ、第6戦に続いて第7戦でもウィニングチェッカーを受けることに成功。そして35号車がこれに続いて準優勝を獲得、圧巻のワン・ツー・フィニッシュでニュルブルクリンクは“YOKOHAMAウィーク”とも言える週末となった。

Drivers’ Voices

クリスチャン・クログネス 選手 (ヴァルケンホルスト・モータースポーツ)

【今回の成績 : SP9 Proクラス(総合) 優勝】

このようなダブルヘッダーで連勝をしたことは無かったと思います。私のバッグの中には優勝トロフィーがふたつあり、ノルドシュライフェ(ニュルブルクリンク北コース)で夢のような週末になりました。2つのレースを完璧なものにしてくれた、ヴァルケンホルスト・モータースポーツとヨコハマタイヤのみなさんに感謝しています。

ダイラン・ペレイラ 選手(ヴァルケンホルスト・モータースポーツ)

【今回の成績 : SP9 Proクラス(総合) 2位】

昨日の第6戦は技術的な問題がありましたが、今日は全てが順調でした。何一つ問題は生じませんでしたし、マシンもタイヤも暑さにうまく対応してくれました。全てはあるべき姿で戦うことが出来て、獲得した2位を祝いたいと思います。

Engineer’s Voice

三好雅章 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ]

第5戦が終わった後、これまでの情報を基にして状況に応じたタイヤ選択などについてしっかり整理して、チームやドライバーと共有しました。第5戦では車両の技術的な問題が発生して完走出来なかったので、まずは私たちを含めておのおのがやるべきことをやれば結果はついてくると考えて臨んだ週末でした。

同じ週末での2連戦ですが、第6戦は夕方から夜間のセッションがあり、第7戦は日中のみと、それぞれのレースは異なる環境になると考えていました。例年9月にはニュルブルクリンクもかなり涼しくなるのですが、実際には好天に恵まれて想定していたよりも高い温度となりました。

そんな中で2戦連続の優勝、第7戦については2台揃って表彰台に上がることが出来て、ドライバーとチームに感謝しています。レース後はドライバーからメカニックまでチームの全員から祝福をしてもらい、私たちヨコハマタイヤもチームに受け入れられていることを実感して、とてもありがたく思っています。高い温度域でタイヤと車のパフォーマンスを如何に発揮させられるかについて、チームとしっかり情報共有したことで安定した走りが出来て連勝につながったと考えています。

Text : 斉藤武浩(Takehiro Saito / office North-Star)

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