【NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ) 第4戦 / ドイツ・ニュルブルクリンク】

ドライコンディションに恵まれ深緑も鮮やかなアイフェルの森を快走したヴァルケンホルストの34号車が、第2戦に続いて今季2回目となる総合優勝を飾った!!

NLS Round 4

開催日 2023年6月17日
開催場所 ニュルブルクリンク
(ドイツ)
天候 公式予選 : 晴れ
決勝 : 晴れ
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝時間 4時間
(1周=24,358m)

全9戦で競われる2023年のNLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)は中盤戦に突入、6月17日に4時間の決勝レースで第4戦が行われた。この中盤3戦は4時間、6時間、12時間と長丁場の2戦も含まれており、シリーズチャンピオン争いにとっては重要な位置づけ。ゆえに長時間の2戦を控えた今回の第4戦は、それまでと同じ4時間レースながらここをしっかり勝って次へつなげることが求められる。

ヴァルケンホルスト・モータースポーツは、ヨコハマタイヤを装着してSP9 Proクラスに2台のBMW・M4 GT3をエントリー。ドライバーラインアップは、34号車がヤコブ・ギエルマジアック選手とクリスチャン・クログネス選手のコンビ、35号車はトーマス・ノイバウアー選手とニクラス・クルッテン選手、そしてダイラン・ペレイラ選手のトリオ。先のニュルブルクリンク24時間レースからチームに復帰したクログネス選手は高い安定感と速さを兼ね備え、今回初めてチームに加わったクルッテン選手は2002年10月生まれの弱冠20歳ながらフォーミュラからツーリングカーまで幅広い経験を有する期待の若手だ。ペレイラ選手はポルトガル出身、先のニュルブルクリンク24時間レースではCup2クラスに参戦して準優勝を獲得している。

今回の第4戦、SP9クラスのエントリーは合計9台。その内訳はProクラスに5台、Pro-Amクラスは3台、Amクラスに1台となる。その中でBMWはヴァルケンホルストの2台のみ、このほかのアウディ・R8 LMS GT3 EVOⅡ、メルセデス-AMG GT3、フェラーリ・296 GT3、アストンマーティン・ヴァンテージ GT3、ポルシェ・911 GTRといった顔ぶれとの車種間バトルも見どころのひとつとなる。

6月17日(土)は爽やかな初夏の陽気に恵まれたニュルブルクリンク、アイフェルの森は木々の緑も深まり鮮やかな様相を見せている。そんなドライコンディションで迎えた午前中の公式予選、34号車はクログネス選手、35号車はノイバウアー選手がアタックを担当した。

クログネス選手は果敢に難攻不落のニュルブルクリンクを攻略していくことが期待されたが、アタックラップでは序盤を除いて各所でコースオフなどが生じたことから、Code60という速度制限区間が随所に設けられてしまい満足な走りが許されず。しかし、それでもしっかりタイムをまとめ7分56秒559をマーク、今回最大のライバルと目される5号車・アウディに3秒あまりの僅差で2番手の決勝スターティンググリッドを獲得した。また35号車は8分2秒585で、こちらは総合5番手から決勝スタートを迎えることとなった。

時計の針が正午を指し、4時間の決勝レースがスタート。気温24度/路面温度38度(ヨコハマタイヤ調べ)という、4月の第2戦と比べて大幅に高い値が示された中でローリングスタートが切られる。

34号車はギエルマジアック選手がドライブ、ポールポジションの5号車と3番手スタートの17号車・アストンマーティンがスリーワイド状態になりながら1コーナーへアプローチ。ギエルマジアック選手は3台の真ん中の位置から5号車の後ろにつけたが、5号車のペースがあがらず行く手を遮られるようなかたちになった。その間に17号車が先行してポジションを3番手に下げたが、5号車は路面の異物を踏んでタイヤを壊したことからピットへ向かい、34号車は2番手のポジションへ復帰した。

オープニングラップを2.410秒差の2番手で終えた34号車は、2周目の終盤で11号車・メルセデス-AMGの先行を許して3番手に下がるも、接触アクシデントが散発する状況の中で安定した走りを見せる。同じライバルメーカーのタイヤを装着する前の2台に対して反撃のチャンスを伺うギエルマジアック選手だったが、6周目に11号車はカルッセルでクラッシュバリアに衝突して戦列から消えて行った。

再び2番手となった34号車、2秒あまりの僅差で6周を終えて前を行く17号車と同じタイミングで1回目のピットイン。ヴァルケンホルストのスタッフは迅速かつ的確な作業でピットをこなし、17号車と並ぶかたちで2番手を維持したままコースへとマシンを送り出した。そしてスタートから1時間が経過した8周目にギエルマジアック選手は17号車をパスしてトップに立ち、100台を超えるエントリー車両を率いてレースを主導していく。

一方でチームメイトの35号車はクルッテン選手からペレイラ選手へリレーしていたが、両者の見事な追い上げで9周目には2番手へ浮上。「ADVAN」を装着したBMWがワン・ツー体制を構築した。

しかし、1時間30分を経過した10周目、シュヴァルベンシュヴァンツで35号車は壁に接触、右リアのホイールなどを破損してしまい緊急ピットイン。ダメージは小さくなく残念ながらトップグループからその姿を消してしまった。

一方の34号車は、13周を終えて2番手につけていた26号車・フェラーリと同じ周回でピットイン。ここでドライバーをクログネス選手に交代、既に1分以上の大量マージンを構築していたことから、レースの主導権を完全に握りつつあった。もっとも、さまざまな車両がコース上に混在していることから、外的要因によるアクシデントなどフィニッシュまで何か起こるかわからない。“魔物が棲む”と言われるサーキットのひとつに数えられるニュルブルクリンク、それは24時間レースでもNLSでも変わらないのだ。

クログネス選手は安定した走りで後続とのマージンも保ちつつ、チェッカーフラッグへ向けて快走を続けていく。後続との差は終盤にもどんどん開き、最終的には2分以上の大差をつけて今シーズン2回目のウィニングチェッカーを受けることに成功。惜しくも35号車との2台揃ってのフィニッシュは叶わなかったが、一時はワン・ツー体制を構築するなど「ADVAN」装着車が大いに速さと強さを見せた一戦となった。

Drivers’ Voices

ヤコブ・ギエルマジアック 選手 (ヴァルケンホルスト・モータースポーツ)

【今回の成績 : SP9 Proクラス(総合) 優勝】

NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)のこれまでのレースの半分で優勝出来て、信じられないほど嬉しいです。マシンは完璧なものでした。24時間レースではアンラッキーに見舞われてしまいましたが、今回の勝利は残りのシーズンを全開でスタートする結果となりました。

クリスチャン・クログネス 選手 (ヴァルケンホルスト・モータースポーツ)

【今回の成績 : SP9 Proクラス(総合) 優勝】

私たちのBMWは、まるで時計のごとく正確に周回を重ね、レースを走りました。ヨコハマタイヤが私たちに、あらゆる温度に適したタイヤも用意してくれています。。

Engineer’s Voice

三好雅章 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ]

今季2勝目ということで、素直にホッとしたというところが正直な感想です。ニュルブルクリンクは様々なトラブルが発生するため、トップのまま無事に走りきって欲しいと考えて見守っていましたが、現地のエンジニアから「ナーバスになっているのか?」とレース中に言われて心境を感じ取られていました。

前回の優勝は4月のはじめということで気温が低く、雨も絡んだミックスコンディションでした。今回は前回と比べて路面温度は最大30度近く上がっています。このように異なる温度でタイヤのパフォーマンスを発揮出来たことは、幅広い温度領域に対応出来ることの証明にもなって良かったと思います。

開発を一緒に進めているクログネス選手、ギエルマジアック選手と共に、今回も結果を残せたことが嬉しい一戦になりました。24時間レースは残念な結果になりましたが、NLSでは再び勝利することが出来たので、来年の24時間レースに向けて「ADVAN CHALLENGE」として最大限良い結果を得られるよう、チーム/ドライバーと一戦一戦結果を残せるような取り込みを行っていきます。

Text : 斉藤武浩(Takehiro Saito / office North-Star)

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