【NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ) 第3戦 / ドイツ・ニュルブルクリンク】

僅差の予選4番手から逆転での連勝を目指したヴァルケンホルストの34号車は、スタート直後の不運なレーシングアクシデントで勝負権を失う結果に

NLS Round 3

開催日 2023年4月15日
開催場所 ニュルブルクリンク
(ドイツ)
天候 公式予選 : 曇り
決勝 : 曇り
路面 公式予選 : ドライ
決勝 : ドライ
決勝時間 4時間
(1周=24,358m)

3月の第3土曜日に開幕を迎えた2023年のNLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)は、中一週での開催が続くカレンダー。ここまで降雪に祟られることも無く順調に日程を消化し、4月15日(土)には第3戦が今回も4時間の決勝レースで競われた。

先の第2戦では、SP9 Proクラスにヴァルケンホルスト・モータースポーツから参戦する2台のBMW・M4 GT3が、ともにADVANカラーをまとい大いに注目を集めた。そして期待に応えるかたちで快走を見せ、34号車がライバル勢を寄せつけることなく堂々の総合優勝を飾ったのは記憶に新しいところ。今回の第3戦、ヴァルケンホルストはSP9 Pro-Amクラスにも1台をエントリー、3台体制で戦いに臨んだ。

ドライバーラインアップは、34号車は優勝した前戦と同じヤコブ・ギエルマジアック選手とイェッセ・クローン選手のコンビ。35号車は前戦もステアリングを握ったトーマス・ノイバウアー選手とイェンス・クリンクマン選手に、開幕戦以来となるジェイク・デニス選手を加えた3人体制。そしてSP9 Pro-Amクラスに出場の36号車は、チームオーナーのヘンリー・ヴァルケンホルスト選手とヨルグ・ブリューワー選手、ペター・ポサバック選手という顔ぶれだ。

午前中に行われた公式予選、ドライコンディションで雨の心配もない中で90分間のコースオープンを迎えた。しかしドライコンディションであってもニュルブルクリンクを侮ることは許されず、他クラスではハイスピードからガードレールへ激突するクラッシュも発生してしまう。

そんな中、最初の計測で9番手につけた34号車は、さらにチャージしてポジションを2番手にアップ。アタックを担当するギエルマジアック選手は、トップの5号車(アウディ・R8)がマークしたタイムを上回るべく、さらに果敢な攻めの走りを展開していく。

しかし、性能差も大きな様々な車種が合計で100台以上も走る中、24kmを超える長いコースでああるがなかなかクリアラップをとるのは難しい。予選セッションも終盤に入り、98号車と44号車という2台のBMW M4・GT3が先行し、34号車は4番手というポジションで予選を終了。トップとのタイム差は僅か1.336秒、惜しくも開幕戦に続いてのポールポジション獲得こそ成らなかったものの、トップグループの一角を占める速さを今回も遺憾なく見せてくれた。

また、チームメイトの35号車は14番手、Pro-Amクラスに参戦の36号車はクラス5番手のポジションから、それぞれ4時間の決勝レーススタートを迎えることとなった。

第2戦までと同様に、現地時間の正午にスタートする4時間の決勝レース。ニュルブルクリンクの1コーナーは右ターン、34号車は2列目アウト側のスターティンググリッドに陣取った。上空は灰色の雲が覆っているが、今にも雨が降りだしそうという気配は無く、まずはドライコニディションのままレースのスタートを迎えた。ただ、カレンダーは4月も中旬になったが日中も肌寒く、風も吹いて気温はこれまでの2戦とあまり変わらず低めに推移。賑やかなスターティンググリッドの人々は、みんな長袖の上着を着込んでいる。

11時42分にフォーメーションラップが始まり、コクピットにおさまったギエルマジアック選手のロケットスタートに期待が固まる中でフォーメーションを先導したマーシャルカーがコースを離脱。2列に並んだ各車が一斉にフルスロットル、アイフェルの森にエギゾーストノートが響きわたり4時間の決勝レースが幕を開けた。

1コーナーへとなだれ込んでいく各車、34号車はコース幅の中程からアプローチ。しかし左から並んできて少し前に出てきた車両と接触、その反動で右側にいた車両にもヒットする不運に襲われてしまった。このレーシングアクシデントによって34号車は右フロントの足回りにダメージを受け、緊急ピットインを余儀なくされてしまう。

チームはメカニックが総出で修復作業にあたりマシンを戦列へ復帰させたが、周回遅れとなり勝負権を失ってしまった。しかし、この先の24時間レースに向けたセットアップの貴重な機会として走行を継続。最終的に充分なデータを得られたとしてレースから離れたためリザルトは残念ながら非完走扱いとなったが、来週の24時間予選レースに向けて意義のある参戦とした。

チームメイトの35号車は14番手スタートからじわじわとポジションを上げて、終盤には7位を走行。しかしチェッカーまで残り僅かとなったところで電気系のトラブルに見舞われてしまい、無念のリタイアを喫してしまった。SP9 Pro-Amクラスの36号車は、安定した走りでノートラブル、ノーアクシデントの快走。スタートからポジションを上げて、クラス3位を獲得した。

Engineer’s Voice

三好雅章 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ]

NLSには昨年からと今年のレースを通して、ドライバーとチームから得られた情報を元に、どのような条件でタイヤ選択をするか、そのタイヤをどのように使えば良いかという課題を共有し、タイヤの性能を100%発揮できるようにすることをテーマとして臨んでいます。

公式予選は、トップと僅差の4番手でした。ただ、予選で上位にいることは大事だと思いますが、耐久レースという性質上そこまでピークを求めているわけではありません。その中で上位に食い込めたことは自信につながり、今回の結果もポジティブに捉えています。

今回のレースでは金曜日の走行からタイヤにあわせたセットアップを行ってきました。決勝は残念なアクシデントに見舞われましたが、その後も走行してタイヤを活かすようにセットアップが進んできていると感じています。一方では、まだまだ課題もありますので、チームとディスカッションを続けています。

3戦を終えて、いよいよ24時間の予選レースと本番がこの先に控えています。まずは予選レース、夜間と昼間の2回のレースが行われます。状況が異なる厳しい条件下ですが、どのような環境でも安定した性能を発揮できるタイヤを提供して、良い結果につなげていきます。

Text : 斉藤武浩(Takehiro Saito / office North-Star)

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