【NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ) 第2戦 / ドイツ・ニュルブルクリンク】

装い新たにADVANカラーをまとって参戦するヴァルケンホルスト・モータースポーツ、その初戦で34号車が堂々の総合優勝を飾る速さと強さを見せた!!

NLS Round 2

開催日 2023年4月1日
開催場所 ニュルブルクリンク
(ドイツ)
天候 公式予選 : 雨 のち 曇り
決勝 : 曇り
路面 公式予選 : ウェット~ハーフウェット
決勝 : ドライ
決勝時間 4時間
(1周=24,358m)

難攻不落のサーキットとして世界中のドライバーを魅了するドイツのニュルブルクリンクは、多くの自動車やタイヤのメーカーが開発の舞台としても活用している。ここを舞台に競われているNLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)、ヨコハマタイヤを装着してSP9 Proクラスに参戦しているヴァルケンホルスト・モータースポーツは、開幕戦に続いて2台のBMW・M4 GT3でエントリーした。

NLSはタイヤコンペティションで競われており、いくつかのメーカーがワークスカラーリングのマシンを投入している。そして今回の第2戦から、ヴァルケンホルストのマシンも2台ともに伝統のADVANカラーをまとっての参戦となった。5月に開催される24時間レースを見据えて参戦台数も増え、SP9はPro、Pro-Am、Amの3クラス合計で30台を数え、その中でもADVANカラーの2台は大いに注目を集める存在となった。

2週間前の開幕戦では34号車がポールポジションを奪う速さを見せたヴァルケンホルスト、ADVANカラーのNLSデビュー戦となる今回はますますの快走が期待される中で4月1日(土)のレース本番を迎えた。

公式予選は現地時間の8時30分からスタート、路面はウェットコンディションで気温が低い中での走行となる。予選で34号車のステアリングを握るのはイェッセ・クローン選手、32歳のフィンランド人ドライバーは2023年のBMW M ワークスドライバー陣にも名を連ねる実力派である。

ウォータースプラッシュを巻き上げながらの走行では、1回目のアタックランで9分11秒919をマークして、タイミングモニターの4番手にその名を刻んだ。そして2回目のアタックで9分10秒599へタイムアップ、暫定トップのポジションを奪う速さを見せた。

90分の予選中は一時的に雨足が強まる場面もあったが、終盤になり雨が止むと路面コンディションは時間の経過とともに好転していく。各車ともタイムアップが進む中、トップが入れ替わる中でクローン選手もポジション奪還を目指して力走したが、コース上の混雑に引っ掛かる場面もあり思ったようにタイムアップすることが叶わず。34号車はトップと4.015秒差の4番手、そしてチームメイトで同じくADVANカラーをまとう35号車はイェンス・クリングマン選手がドライブして16番手という予選結果になった。

予選終了から決勝スタートまで2時間のインターバルは、灰色の空が上空を覆っていたものの雨が降ることは無かった。路面はじわじわとコンディションを変化させ、ライバルも含めた大半のマシンはスリックタイヤでスターティンググリッドへマシンを進めた。

4番手グリッドにつけた34号車、スタートドライバーをつとめるのは開幕戦でもステアリングを握ったヤコブ・ギエルマジアック選手。開幕戦におけるポールポジション獲得の立役者は、ローリングスタートで迎えたオープニングラップで、スタート直後こそ一時的にポジションをひとつ下げたものの、アイフェルの森で見事な猛追を披露。まだ路面の大半が黒く濡れており、上位陣の中からもクラッシュを喫するマシンが現れる中、ギエルマジアック選手は2番手に浮上してホームストレートへと帰って来た。

そして2周目、ビードル・シケインで12号車のメルセデス-AMGをかわしてトップに立つと、ここからファステストラップを連発して後続に対するマージンを稼いでいく。2周目で8分26秒798をマーク、3周目は8分15秒296、4周目は8分08秒960と、走行ラインからドライへと転じて行ったコースを確実に捉え、5周目の8分04秒769まで4周連続でファステストラップを更新した。また、チームメイトの35号車はクリングマン選手がドライブ、こちらも16番手スタートから9番手にまでポジションをアップ、6周を終えて1回目のピットインを行った。

34号車は開始から1時間を経過した7周を終えて1回目のピットイン、このタイミングで上位陣の12台が入ったことからピットロードは大賑わいとなった。タイヤ交換と燃料補給を行い、ドライバーはギエルマジアック選手が2スティント連続でステアリングを握ってコースへ復帰。既にコースはほぼ全面がドライへと転じていたが、34号車より2周早くピットインを済ませていた911号車のポルシェ・911が先行しており、その差は14秒あまりであった。

2スティント目は前述の通り路面コンディションが好転していったが、それに伴って全体のペースが上がったことに比例してスピンやコースオフといったアクシデントも発生箇所が増えていた。ゆえに速度制限や追越禁止となる区間も多く、やや我慢のラップという場面が続いていく。そして2回目のピットインは911号車が13周を終えたタイミング、34号車は2周後の15周を終えて敢行した。

スタートから2時間を過ぎてレースは折り返し、先行する911号車、3番手の3号車という2台のポルシェと激しく首位を争う34号車はクローン選手が後半の2スティントを担当する。クローン選手は911号車との差を詰めていき、18周を終えて7.068秒だったビハインドを翌周には3.941秒とし、残り1時間を切った20周目にはファステストラップを更新しつつ911号車をパスしてトップに立った。

しかし、トップに立ったからと言って安心するのはまだ早い。クローン選手に背後から襲いかかったのは同じBMW・M4 GT3、BMWジュニアチームから参戦する44号車だった。21周目にはサイド・バイ・サイドが繰り広げられたが、クローン選手がポジションを守り抜いてトップを譲ることはなく。24周目、19秒以上のマージンを持った状態で最後となる3回目のピットイン、タイヤ交換と燃料補給を行うと1分44秒という短いピット時間でコースへ復帰した。

3回目のピットインまでに稼いでいたマージン、これを背景に後続からポジションを脅かされることもなくアイフェルの森を快走するADVANカラーの34号車。ノートラブル・ノーアクシデントで磐石のレース運びを見せてウィニングチェッカーを受け、ADVANカラーでのNLSデビュー戦を見事な優勝で飾ることに成功。チームメイトの35号車も後半をトーマス・ノイバウアー選手がしっかり走りきり、12位で完走を果たした。

Drivers’ Voices

ヤコブ・ギエルマジアック 選手 (ヴァルケンホルスト・モータースポーツ)

【今回の成績 : SP9 Proクラス(総合) 優勝】

私はニュルブルクリンクでしかレースをしていないので、“ミスター・ノルトシュライフェ”と呼ばれることはとても嬉しいですね。とにかくニュルブルクリンクが好きで、ここでばかり走っているので、あちこちのサーキットを走っている人たちに対して少しアドバンテージがあるのだと思います。今日は、ヨコハマタイヤにとっても最高の結果になりました。ヨコハマタイヤは本当に良いタイヤを供給してくれましたし、車はいつものように素晴らしかったです。チームが凄い仕事をしてくれて、大いに満足しています。

イェッセ・クローン 選手 (ヴァルケンホルスト・モータースポーツ)

【今回の成績 : SP9 Proクラス(総合) 優勝】

今回のレースは、ヨコハマタイヤに因るところがとても大きく、本当に素晴らしいタイヤを作ってくれました。これで、どのようなコンディションでも戦えることが証明されました。ヴァルケンホルストというチーム、ヨコハマタイヤ、そしてBMWを誇りに思います。これで24時間レースが、ますます楽しみになってきました。この週末全体を通じて、本当にいろいろなことがあって大変でした。それだけに、24時間レースに向けて理想的な準備が出来ました。これ以上ないほどに嬉しく、24時間レースでも間違いなく上位を走れるはずだと思います。

Engineer’s Voice

三好雅章 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ]

今回からADVANカラーの参戦となりましたが、私にとってこのカラーは憧れの存在であり、これまで横浜ゴムに関わった多くの方々が作り上げてくださった価値のあるものだと考えています。ADVANカラーでの参戦にエンジニアとして携わることは、とても感慨深いものがありますね。

週末はすっきりしない空模様でしたが、昨年のこの時期には雪でレースが中止になりましたから、気温や路面の低さは想定の範囲内であり、レースを出来ただけ去年よりは良かったかのではないかと思っています。公式予選ではトラフィックの影響もあってタイムを最後に伸ばしきれませんでしたが、ウェットコンディションの中で4番手というトップグループに入れたことは良かったと考えています。

実は天気予報から決勝はウェットレースになると思っていましたが、さすがはニュルブルクリンクでそう簡単にいかないミックスコンディションのドライレースとなりました。週末はほとんどドライで走れていなかった中、タイヤ選択を含めて難しい状況ですが。しかし、チームとしっかり情報共有出来たことが、勝利につながった大きな要因のひとつだと思います。

今回のレースではいろいろなデータを採れましたが、気温の低い中でしかここまで走れていないので、今後のレースではさらに様々な環境での性能を確認していく必要があります。そんな中、今回の第2戦を優勝したことで、チームとドライバーともにとても士気が高まっていると感じており、私たちもADVANカラーに恥じないレースを出来るように準備を進めていきます。

Text : 斉藤武浩(Takehiro Saito / office North-Star)

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