【SUPER GT 第8戦 / モビリティリゾートもてぎ】

GT300はJLOC ランボルギーニ GT3がタイヤ2本交換戦略も功を奏した勝利を獲得、GT500はWedsSport ADVAN GR Supraがポイント獲得でシーズンを締めくくった!!

SUPER GT Round 8

開催日 2023年11月4日-5日
開催場所 モビリティリゾートもてぎ
(栃木県)
天候 決勝 : 曇り 時々 雨、公式予選 : 晴れ
路面 決勝 : ドライ~ウェット、公式予選 : ドライ
決勝距離 63周
(1周=4,801m)
参加台数 40台
(ヨコハマタイヤ装着車 16台)

2023年のSUPER GT最終戦となるもてぎ大会が、栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催された。泣いても笑ってもこれがシーズン最後の戦い。ヨコハマタイヤ勢は、「WedsSport ADVAN GR Supra」と「リアライズコーポレーション ADVAN Z」が、ともにシーズン締めくくりにふさわしい集大成の戦いを目指す。この最終戦は全車がサクセスウェイトを降ろし、開幕戦以来のガチンコ勝負に。完全な力勝負で勝利を目指すのは、GT300も同様だ。

好天に恵まれ、昼間は11月らしからぬ温かさとなったもてぎだが、公式予選が行われた11月4日(土)の朝は濃霧に包まれ、気温15度、路面温度は20度とややひんやりとした空気の中で公式練習がスタートした。ただ、時間が進むにつれて上空も明るくなり、GT300クラスの専有走行が始まる頃には気温は20度、路面温度は30度まで上昇。日向で観戦するGTファンには汗ばむほどの陽気となった。GT300クラスの専有走行では「JLOC ランボルギーニ GT3」の2位がヨコハマタイヤ勢最上位。これに「Bamboo Airways ランボルギーニ GT3」が5位とJLOC勢が続いた。

迎えた予選は、公式練習の終盤とほぼ変わらず、気温22度、路面温度27度というコンディションでスタート。GT300クラスのQ1は2組に分けられ、A組に6台のヨコハマタイヤユーザーが出走し元嶋佑弥選手がアタックを務めた「JLOC ランボルギーニ GT3」がトップタイムでQ2へ進出。

イゴール・オオムラ・フラガ選手の「ANEST IWATA Racing RC F GT3」もぎりぎりの7番手でQ1を突破した。続くB組には8台のヨコハマタイヤユーザーが出走したが、その中で「UPGARAGE NSX GT3」、「DOBOT Audi R8 LMS」、「Bamboo Airways ランボルギーニ GT3」、「グッドスマイル 初音ミク AMG」の4台がQ1を突破。なかでも坂口夏月選手がQ1を担当した「Bamboo Airways ランボルギーニ GT3」は、他車が続々とタイムを更新しいていく中で1つ、また1つとポジションを下げていったが、最後のアタックで6番手にポジションアップ。無事にQ2進出を果たした。

Q2では、元嶋選手からバトンを受け取った「JLOC ランボルギーニ GT3」の小暮卓史選手が快走。ポールポジションは、この1点でシリーズチャンピオンに望みをつなぐライバルチームがもぎ取っていったが、それに0.15秒という僅差で2位に着け、最終戦を1列目からスタートすることになった。

GT500クラスは「リアライズコーポレーション ADVAN Z」が平手晃平選手のアタックでトップから0.45秒差の4番手でQ1を突破。バトンを受け取った佐々木大樹選手も果敢な走りで4番手タイムをたたき出し、2列目のグリッドを手に入れた。「WedsSport ADVAN GR Supra」は国本雄資選手がQ1のアタックを担当したが、車両とタイヤの状態が路面コンディションとマッチしなかったか、本来の速さを発揮できず14番手。決勝での挽回を誓った。

一夜明けた5日(日)、決勝レースを前に20分間行われるウォームアップ走行は気温21度、路面温度28度というコンディション。上空には少し雲も見え、想定していたよりは涼しい状況だ。決勝前、最後の調整の時間で「WedsSport ADVAN GR Supra」は6番手タイム、「リアライズコーポレーション ADVAN Z」は9番手タイムを記録した。

GT300クラスでは「Bamboo Airways ランボルギーニ GT3」がトップタイム。「UPGARAGE NSX GT3」、「JLOC ランボルギーニ GT3」に続き「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」が4番手と、決勝前の重要なセッションでヨコハマタイヤユーザーが上位を占めた。特に「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」は予選が24位と振るわなかったが、巻き返しに向けて気合十分の様子だ。

決勝が近づくにつれ、上空にはやや暗い雲が広がり始める。予報では雨のマークがちらつく時間帯もあったが、気温22度、路面温度27度というコンディションでパレードランがスタート。さらにフォーメーションラップを経て、いよいよ63周の決勝レースがスタートした。

佐々木選手がスタートドライバーを務める「リアライズコーポレーション ADVAN Z」はオープニングラップで1台の先行を許すも、5番手で序盤を周回。「WedsSport ADVAN GR Supra」は国本選手がスタートを務め、「序盤のペースはきつかった」とレース後に振り返ったもののなんとか前方の車両に食らいついていく。

スタートから5周を過ぎたところで、ピットで雨粒が確認される。走行している車両も数台はワイパーを動かし、やはり雨が降っている様子。降雨はホームストレート付近のみでコース全体が濡れるほどではないが、この雨が影響したかペースが下がってきてしまったのが「リアライズコーポレーション ADVAN Z」で、9周目に大きく順位を下げてしまった。

10周目には13番手まで後退すると、13周を終えたところでピットイン。まだドライバー交代が可能な周回数ではなく、チームはタイヤ交換と給油作業を行って佐々木選手をコースへと送り出した。「WedsSport ADVAN GR Supra」は国本選手が規定周回数ぎりぎりまで粘り、22周を終えてピットへ。残り41周のロングスティントを阪口晴南選手へ託すこととなった。

阪口選手は、国本選手が履いたものとは別コンパウンドのタイヤでロングスティントへ。途中で局地的に雨が降ったりしたことからさらに気温、路面温度は低下していたが、コンディションにマッチしたか阪口選手はペースアップしてライバルたちを追い上げていく。途中、44周目にGT500クラスとGT300クラスの車両が接触しコースアウトしたことからフルコースイエロー(FCY)が掲示され、グリーンフラッグで再開するタイミングも味方につけてさらに接近。終盤は4台パックの中でポジションを争う激しいバトルが繰り広げられた。

残り10周を切る頃になると再び雨が降り始めるが、今度は雨脚が強く周囲ではウェットタイヤに交換する車両も現れた。ただ阪口選手はドライタイヤのままでレースを続行。結果的に周りよりもパフォーマンスの高い状態を維持し、4台での争いで大きくポジションアップに成功した。63周を無事に走破し、8位でチェッカー。予選14位から6ポジションアップを果たし、最終戦をポイント獲得で締めくくった。

規定周回数前に1度タイヤ交換を行った「リアライズコーポレーション ADVAN Z」は、40周を終えたところで2度目のピットイン。後半スティントは平手選手が担当する。終盤に雨が降ってきたところでは、「WedsSport ADVAN GR Supra」と異なりウェットタイヤへの交換を選択。ピットインのロスタイムが響きポジションアップには届かなかったが、上位陣でも足元をすくわれミスが生まれる難しいコンディションを力強く走り切り、14位でチェッカーを受けた。

GT300クラスは、クラス2番グリッドからスタートした「JLOC ランボルギーニ GT3」が序盤にトップに躍り出た。スタートドライバーを務めた元嶋選手は、序盤の雨が降ってきたタイミングでトップの車両に接近しチャンスをうかがうと、14周目の3コーナーでインに鋭く切り込みオーバーテイク。もともとこのもてぎを得意とするランボルギーニ ウラカンと元嶋選手の組み合わせだが、天候も味方につけてついにトップ奪還に成功した。元嶋選手はそのまま24周を走り切るとピットイン。後半スティントを小暮選手へと託す。タイヤはリヤタイヤ2本のみの交換でさらにロスタイムを削る作戦だ。

これで事実上のトップを守ったままコースへと戻った「JLOC ランボルギーニ GT3」は後続とのマージンを築いてレース中盤へと入ったが、このタイミングで雨が降り出し、2位の車両が急接近してくる。一時はバックストレートで横に並ばれるなど危ない場面もあったが、小暮選手の踏ん張りでトップを死守すると、再び雨もやみ路面コンディションも回復し、それに合わせてまた2位とのギャップを広げていった。

最終的には7.1秒のマージンを築いてチェッカー。JLOCとしてはSUPER GT参戦30年目という節目の年の最終戦で嬉しい勝利を飾った。2位を挟み、3位には予選13位からスタートした「DOBOT Audi R8 LMS」が今季3回目の表彰台獲得。そしてタイヤ無交換作戦で驚異の18ポジションアップを遂げた「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」が6位入賞を果たした。

Drivers’ Voices

国本雄資 選手 (WedsSport ADVAN GR Supra)

【今回の成績 : GT500クラス 8位】

もてぎは自信のあるサーキットなので予選から前に行きたかったのですが、自分たちが望んでいたようなクルマのバランスやグリップレベルが出ずに苦しい予選になりました。決勝レースも僕のスティントではウォームアップやペースが苦しかったのですが、阪口選手のスティントではそこが向上したし、雨が降ってきたときには周りよりもパフォーマンスが高く、そこで追い上げてポイントを獲得することができました。今シーズンは目標としていた優勝に届いたし、とても価値のある1年でしたが、シリーズ争いがしたかったというのも正直なところ。来シーズンはコンスタントにレースができるよう、もっと準備を整えて力強くシーズンを戦っていきたいと思います。応援ありがとうございました。

阪口晴南 選手 (WedsSport ADVAN GR Supra)

【今回の成績 : GT500クラス 8位】

国本選手のスティントとは違うコンパウンドのタイヤで走りましたが、追い上げていくことができました。途中で雨が降ってきたときには、そのコンディションの中をスリックタイヤで走るという状況は周りに比べてタイムの落ちも小さかったように思います。今シーズンは浮き沈みが大きかったですが、その中でチームやヨコハマタイヤとともに価値のある1勝を挙げられました。その一方でウェイトを積んだ後は苦戦したので、また新たな課題に直面したという感じです。1年目、2年目とそれぞれ良かった部分を振り返り、もっと強くなっていきたいです。今シーズンも応援ありがとうございました。

佐々木大樹 選手 (リアライズコーポレーション ADVAN Z)

【今回の成績 : GT500クラス 14位】

今回はしっかりと日ざしも出ている温かいコンディションを想定してタイヤを持ってきたのですが、じっさいは自分たちが望んでいないコンディションになってしまいました。そこでタイヤが持たなくなってしまい、ピット回数も多くなってしまったので、それが今日の敗因だと思っています。開発の一環としてそういったタイヤを持ち込み、予選ではしっかり結果を出すことができたので、それは良かったと思っています。今シーズンは予選の速さや決勝での強さを見せることができた半面、天候や運の部分でかみ合わないことが多かったように感じます。レースはそれをかみ合わせることがとても難しく、そういう中で結果は出せませんでしたがポテンシャルの高さは証明できたと思っています。「WedsSport ADVAN GR Supra」と合わせてヨコハマタイヤの進化を見てもらえたシーズンだったと感じているので、来シーズンも引き続き頑張っていきたいです。

平手晃平 選手 (リアライズコーポレーション ADVAN Z)

【今回の成績 : GT500クラス 14位】

スタート前から雲が多く、僕たちが望んでいるような温かいコンディションではなくなってしまったので、正直どこまで行けるかはやってみないと分からない状況でしたが、結果的に耐えるだけのレースになってしまいました。最後に雨が降ってきたときにはウェットタイヤも履いてみましたが、少しデータも獲れたので何もないよりは良かったと思いますが、予選からするとかなり悔しい結果になりました。今シーズン、予選での速さは去年にもましていいところが見せられたと思います。運に見放されたり天候に左右された部分があって思うような結果につながらなかったのは本当に悔しいですが、タイヤ開発の方向性はだいぶ絞れてきているので、そこを改善し、予選でも決勝でも高いパフォーマンスを発揮できるタイヤを作って行きたいです。

小暮卓史 選手 (JLOC ランボルギーニ GT3)

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】

前半の元嶋選手が本当に頑張ってくれました。彼が大きなチャンスを作ってくれたと思っています。僕が担当した後半スティントは相当厳しく、辛いところもありました。特に終盤の雨はすごく集中力を使いましたし、状況的には決して楽ではなかったです。ヨコハマタイヤのパフォーマンスが良かったことで、予選からいいタイムで走ることができました。

元嶋佑弥 選手 (JLOC ランボルギーニ GT3)

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】

スタートしてからトップに立ってマージンを作り2輪交換と、プラン通りに進めることはできましたが、やはり優勝はそんなに簡単なものではなかったです。後半は雨が降ったりライバルに追い詰められたり、トラブルが起きたりと、“初優勝ってこんなに遠いの?”と思うぐらい、小暮選手のスティントを見ている時間は長く感じました。やっと勝てて本当にうれしいし、ホッとしています。ヨコハマタイヤが準備してくれたタイヤは、正直無交換でも戦えるぐらいのポテンシャルがありました。ただマージンもあったし、より安心して戦えるようにと手堅く2輪交換にしました。それでもトップに出られる自信はあったので、本当にヨコハマタイヤのおかげです。

Engineer’s Voice

白石貴之 [横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発1グループ・リーダー]

GT500クラスは、状況的には前戦オートポリス大会と同様で想定よりも相当温度が低く、さらにレース中に雨が降ってくるというようなコンディションでは、高温側が作動しませんでした。もう少し低温側でも対応できていなければいけなかったというのが反省点です。

GT300クラスでは「JLOC ランボルギーニ GT3」が勝利しましたが、JLOCとは長く一緒に開発をしてきていました。今年はその中でミッドシップ向けの新しい構造でいいものが見つかり、それが「UPGARAGE NSX GT3」のパフォーマンスにも貢献したりしていました。さらにコンパウンドの面でも9月のもてぎテストの結果をベースに新しいものを持ち込みましたが、来年に向けて構造、コンパウンドの両面でいいものが見つかったと思っています。

GT500クラスも今年見つかった課題を、新しいアイテムを投入しながらオフシーズンの間にしっかりと改善していきたいです。

Text : 浅見理美(Satomi Asami)
Photo : 小笠原貴士(Takashi Ogasawara) / 佐々木純也(Junya Sasaki)

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