SUPER GT

SUPER GT 2023
Rd.7 AUTOPOLIS
路面温度が大きく左右した
今季最後の450kmレース。

2023.10.18

九州ラウンドとなるSUPER GT 第7戦 オートポリス。この第7戦ではサクセスウェイトが半減し、ハンデ差が縮まることにより更なるバトルが毎年繰り広げられるが、今回はオートポリスとして初の450kmレースとなる。GT500クラスは想定温度の違いで苦戦を強いられ順位を大きく落とすが、GT300クラスでは#56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rが17番手スタートから大幅に順位を上げ5位となり、YOKOHAMA / ADVAN勢最上位となった。

Words:菅 正次 / Masatsugu Suga
Photography:田村 翔 / Sho Tamura

#19 WedsSport ADVAN GR Supraが
今シーズン3度目のフロントローを獲得。

10月14日、15日の2日間、大分県のオートポリスでSUPER GT第7戦が開催された。

今年も残り2戦となった今シーズンのSUPER GT。九州ラウンドとなるこのオートポリスはアップダウンの激しいテクニカルコース。しかも天気の変化も激しく予報通りにならないこともある。
今大会ではサクセスウェイトが半減し、さらに今季5回目、オートポリスでは初めての450kmレースとなる。昨年は、GT500クラスでは、#24 リアライズコーポレーション ADVAN Zが3位表彰台を獲得し、#19 WedsSport ADVAN GR Supraも5位入賞とポイントを獲得している。その他にもYOKOHAMA / ADVAN勢にとっては好成績を残しているサーキットでもある。

GT500クラスにとっては、19号車、24号車共に表彰台を狙えるチャンスが十分にあると言っても過言ではない。

そしてGT300クラスでは、シリーズランキング2番手の#18 UPGARAGE NSX GT3とランキング4番手の56号車がシリーズ争いに残れるか重要なラウンドとなる。
また、オートポリスは天気が目まぐるしく変わるサーキットでもあり、SUPER GTにとって過酷とも言える450kmレースを走り切ることができるのか?

450kmを無事に走り切りYOKOHAMA / ADVAN勢がトップでチェッカー受けることを願ってこのラウンドを迎える。

曇り空で迎えた14日予選日。早朝に雨が降り若干路面が濡れていたものの、公式練習までにはすっかり乾きドライコンディションとなった。他の車両にアクシデントはあったが、19号車は1分32秒900で3番手のタイムをマークし順調な滑り出しとなった。

15時から行われた予選では、GT300クラスではQ1 Aグループで#4 グッドスマイル 初音ミク AMGが4番手、Bグループでも18号車が3番手で通過し、計6台のYOKOHAMA / ADVAN勢がQ2へ進出。シリーズランキング上位の56号車は惜しくもQ1 Aグループ9番手でQ2進出することができなかった。
続くGT500クラスのQ1では19号車が順調に5番手で突破。しかし24号車は本来の速さを見せることができず11番手でQ1を終えた。

その後のGT300 Q2では4号車がYOKOHAMA / ADVAN勢トップとなる5番手を獲得し、次に#88 JLOC ランボルギーニ GT3が6番手を獲得。
最後のGT500クラスのQ2では、19号車が阪口晴南選手のアタックで今季3度目の2番グリッドを獲得し、明日の決勝はフロントローからのスタートとなった。

【GT500クラス予選結果】
1.#16 ARTA MUGEN NSX-GT (1’31.131)
2.#19 WedsSport ADVAN GR Supra (1’31.604 / YH)
3.#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra (1’31.997)

11.#24 リアライズコーポレーション ADVAN Z (1’32.768 / YH)

【GT300クラス予選結果】
1.#2 muta Racing GR86 GT (1’42.016)
2.#61 SUBARU BRZ R&D SPORT (1’42.141)
3.#31 apr LC500h GT (1’42.342)

5.#4 グッドスマイル 初音ミク AMG (1’43.466 / YH)
6.#88 JLOC ランボルギーニ GT3 (1’43.709 / YH)
9.#18 UPGARAGE NSX GT3 (1’43.880 / YH)

明日の決勝も450kmの長丁場。予報では天候が荒れることはなさそうだが、レース展開は今までのオートポリス以上に未知数と言える。
その分、予選上位はもちろん下位となってしまったチームも決勝で追い上げるチャンスは十分にある。

#56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rが
17番手スタートから5位入賞!

迎えた15日決勝日。晴天ではあるものの昨日以上に肌寒さを感じる。スタート時の気温は15℃。路面温度は24℃と昨年より明らかに低い。
オートポリスでは初となり今季最後の450kmレース。周回数は97周。2回の給油ピットインが義務付けとなる。

13時30分にスタートが切られ、GT500クラス 2番グリッドスタートの19号車 国本雄資選手は1コーナーで一つポジションを落とし3番手に。その後も2番手についていくのが難しく、大きく差が開き始め、更にその後もポジションを落としていったため、7周目で1回目のピットイン。そこで早速給油とタイヤ交換を行う。
一方、11番手スタートの24号車もスタートから苦戦を強いられ8周目でピットインし、タイヤ交換を行う。
その後、2台共に一時他の車両と同ペースで走ることもできていたが、24号車は4回、19号車は3回のピットインを強いられ、12位、13位でレースを終えた。

GT300クラスでは、13周目で、シリーズランキング2位の18号車が1コーナーで後方から来た車両に追突され、大きく順位を落としチャンピオン争いからも脱落してしまう。一方、17番手スタートの56号車は名取鉄平選手のドライブで徐々にポジションを上げ、45周目までタイヤを維持してJ.P.デ・オリベイラ選手と交代。
その後たった2周の47周目で再びピットイン。給油だけを行うスプラッシュ&ゴーで送り出す。これにより大きくポジションアップに成功し、GT300クラス全車が2回目のピットを行った頃には5番手まで浮上した。
その後、6番手を走行していた4号車とバトルを繰り広げるが順位を変えることなく、5位と6位でチェッカーとなり、56号車はFIA GT3車両の中では最高位に。さらに#88 JLOC ランボルギーニ GT3が7位に続いた。

【GT500クラス決勝結果】
1位.#36 au TOM’S GR Supra
2位.#16 ARTA MUGEN NSX-GT
3位.#3 Niterra MOTUL Z

12位.#24 リアライズコーポレーション ADVAN Z (YH)
13位.#19 WedsSport ADVAN GR Supra (YH)

【GT300クラス決勝結果】
1位.#52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT
2位.#2 muta Racing GR86 GT
3位. #31 apr LC500h GT

5位.#56 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R (YH)
6位.#4 グッドスマイル 初音ミク AMG (YH)
7位.#88 JLOC ランボルギーニ GT3 (YH)

今回悔しい結果となったGT500クラス、KONDO RACINGのドライバー2人、TGR TEAM WedsSport BANDOHのドライバー2人、さらには坂東監督の声を聞いた。

KONDO RACING
佐々木大樹選手

予選に関しては、日産勢が苦戦したところもありましたが、24号車に関してはタイヤのグリップでももう少し欲しいというか、路面温度が低いことで苦戦し結果が出ませんでした。決勝に関しても、スタートのタイヤはグリップが厳しい状況でしたが、第2スティントで履いたタイヤはペースも良く追い上げていくことができて5、6番手ぐらいまで行けると思ったんですが、生憎同じスペックのタイヤが無く3スティント目以降は違う仕様のタイヤで行ったため、順位を落とす結果となりました。GTのレギュレーション上、持ち込み本数も決められているため限られた中での仕様選択となりますが、今回の想定以上に気温が下がった状況で、予想以上にコンディションにタイヤが合っただけでも収穫だったっと思います。最終戦は得意なもてぎですが、24号車の速さを見せるために今回の教訓を活かしコンディションに合ったタイヤでレースをすればチャンスがあると思うので頑張りたいと思います。

KONDO RACING
平手晃平選手

僕のスティントに関しては、バックアップとして持っていたタイヤが良かったんですが1セットしかなく、佐々木選手が最初に履いたタイヤと違うスペックのタイヤしかなかったため、なんとか最後までいけたらと思ってレースをしましたが、なかなか路面コンディションが暖かくならずタイヤ本来の性能も発揮せず厳しい結果となってしまいました。バックアップとして用意していた第2スティントで装着したタイヤが良いタイムで走れたのでそれは大きな収穫だったと思っています。次戦はもう最終戦。我々の持っている全てを予選で出し切り、決勝もしっかり走り切って表彰台に乗って、今シーズンを締めくくれるように頑張りたいと思います。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
国本雄資選手

2番グリッドからスタートしましたが、自分たちが想定していたよりも路面温度が上がらないような状況でのスタートだったので、タイヤの温まりが非常に遅く、最初に1周目の1コーナーで抜かれてしまい、さらに大きく出遅れてしまいました。第1スティントは約30周走る予定でしたが、走れる状況ではなかったので7周目でピットインしました。第2スティントでは違う仕様のタイヤでコースに復帰しましたが、タイヤのピックアップもすごくて、全く戦うことができなかったので、非常に残念なレースとなりました。新たな課題も見つかったので、それを踏まえ最終戦は逃げ切るレースをしたいと思います。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
阪口晴南選手

第1スティントからかなり苦しいレース展開となりました。国本選手の第1スティントが非常に苦しい状態だったので早めにピットインしましたが、セカンドスティントも苦戦し、結果的に3回のピットインとなってしまいました。オートポリスで戦う上で、決勝で一番安定感のあるタイヤフォーマットを選択して挑みましたが、想定外な結果となってしまいました。昨年のオートポリスラウンドは2022年の中ではレースペースも良かったので今回も期待していましたが、路面温度が想定より10℃以上下がり全く別のコンディションとなってしましました。次戦のもてぎはチームとしっかりミーティングを行い臨みたいと思います。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
坂東正敬 監督

13位でした。序盤のタイヤからセカンドスティント、サードスティント、そして最終スティント、4スティントの中で路面温度、コース状況が変わっていく中で今回持ち込んだタイヤがトップ集団と同じレベルで機能することができなかったので、全てのスティントで課題の残る結果となりました。今年に関してはオートポリスのテストをせず鈴鹿、富士を中心にテストをしてきましたので、今回の課題を横浜ゴムと共にミーティングしてライバルメーカーと戦えるようにチーム一丸となって頑張っていきたいと思います。

GT300クラスでYOKOHAMA / ADVAN勢最上位となったKONDO Racingのドライバー2人の声も聞いた。

KONDO RACING
J.P.デ・オリベイラ選手

今回のオートポリスでは他の車と異なるストラテジーが必要でした。17番手からのスタートなうえに、GT-Rはストレートスピードがあまり速くないので、オーバーテイクが非常に難しい状況でした。そこでロングスティントにトライしました。それは他のチームとは違うストラテジーで、今日のオートポリスラウンドではいい戦略となりました。それにより FIA GT3車両でJAF-GT勢(現GT300車両規定)のすぐ後ろまで来ることができました。彼らは少し違うカテゴリーだと思いますね(苦笑)。今日のキーポイントは、ロングランができたタイヤのパフォーマンス。チームワークも良かったし名取のファーストスティントも良かったです。大体半分ぐらいの周回数まで走れればと思っていたが、彼はしっかりそこまで走ってくれた。僕に交代してすぐスプラッシュのピットインをしたこともいい作戦だったと思います。

KONDO RACING
名取鉄平選手

今回予選が厳しく17番手スタートとなりましたが、持ち込んだタイヤの仕様が新しく、今日のコンディションでの走行が未知だったので、とりあえず自分としてはできるたけ持たせることに専念しつつ、その中でストラテジーを組んでいくという作戦でエンジニアと話していました。結果タイヤをもたせてスティントを伸ばすことができました。安定して走れたのでそこが大きかったと思います。残念ながらシリーズチャンピオン争いには残れませんでしたが、次戦は最後にもう一度勝ちたいと思います。

最後に横浜ゴムMST開発部 / 白石貴之にも第7戦・オートポリスを振り返ってもらった。

横浜ゴム株式会社 MST開発部 技術開発1グループ
グループリーダー 白石貴之

タイヤの選択は19号車と、24号車で違うところもありますが、その中でも19号車は低温でもグリップすることができ、予選2番手となりました。しかし決勝に関しては、昨年の暖かい時にいい結果だったことを少し引きずってしまったという部分があり、決して低温を見ていなかったわけではありませんが、結局昨年よりも路面温度が低く、それに向けての準備が足りない結果となってしまいました。56号車に関しては、一発のタイムよりレース全体を見据えての作戦が優れており、それによりタイヤをうまく使っていると思います。次戦のもてぎは今回の結果をベースに、対策をしっかり行っていきたいと思います。

今回は予想以上の気温、路面温度の低さに苦戦を強いられながらも新たな発見もしたYOKOHAMA / ADVAN勢。
次戦は最終戦となる第8戦が11月4日(土)5日(日)にモビリティリゾートもてぎで開催される。
新たな発見からYOKOHAMA / ADVAN勢のチャレンジは続く。

(了)

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