SUPER GT

SUPER GT 2023
Rd.6 SUGO
菅生の魔物が
すべての結果を覆す。

2023.9.20

東北での開催となるSUPER GT 第6戦・菅生ラウンド。曇り空となり前戦までの猛暑から幾分落ち着いた気温となった。GT500クラスでは惜しくも表彰台には届かなかったものの、#️24 リアライズコーポレーションADVAN Zが今季最上位を獲得。GT300クラスでは、#6 DOBOT Audi R8 LMSが今季2度目の3位を獲得してYOKOHAMA / ADVAN勢最上位となった。

Words:菅 正次 / Masatsugu Suga
Photography:小笠原 貴士 / Takashi Ogasawara

サクセスウェイト100kg搭載の
2台が上位グリッドを獲得

9月16日、17日の2日間、宮城県のスポーツランドSUGOでSUPER GT第6戦が開催された。

スポーツランドSUGOでは昨年、#19 WedsSport ADVAN GR Supraの阪口 晴南選手が1分9秒627というタイムでコースレコードを塗り替えポールポジションを獲得している。さらに一昨年は #24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rもポールポジションを獲得しているYOKOHAMA / ADVAN勢にとって相性の良いコースである。

次戦の第7戦からサクセスウェイトが半減し、最終戦は全車ノーウェイトとなるため、この菅生ラウンドがサクセスウェイトの差が最もある状態での戦いとなる点も見逃せない。GT500勢は、24号車がサクセスウェイトの差を活かし今回こそポール・トゥ・ウィンを達成することができるのか? または鈴鹿で優勝した19号車が今季2勝目を飾ることができるのか?

一方のGT300勢は、前回優勝しドライバーポイントランキングのトップとなった #18 UPGARAGE NSX GT3と、同ランキング3位の #56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rがポイントをさらに重ね、シリーズチャンピオンへより一層近づくことができるのか?

この第6戦もYOKOHAMA / ADVAN勢の勝利の可能性が十分にあると言える。

曇り空となった16日予選日。正午には本格的な雨となり、最初の予選となるQ1/GT300クラスのAグループはウェット宣言でのスタートとなった。

56号車をドライブするJ.P.デ・オリベイラ選手が、100kgのサクセスウェイトを搭載しているにも関わらず7番手でボーダーラインを通過し、Bグループでは同じくサクセスウェイト100kgを搭載する18号車の小林 崇志選手もトップタイムをマークし、共にQ2進出を果たしている。その後のQ2では56号車がYOKOHAMA / ADVAN勢最上位の5番手、18号車が6番手で通過し、明日の決勝でポイントを獲得するのに十分なスタートポジションを確保することができた。

一方のGT500クラスでは、19号車がフリー走行から路面状況に悩まされ、Q1でも実力を発揮することができず11番手でQ2に進むことができなかった。24号車はQ1を平手晃平選手がアタックし、好調なタイムで4番手通過。佐々木大樹選手にバトンを渡し、Q2では7番手で予選を終えている。

GT500クラス、GT300クラスともにYOKOHAMA / ADVAN勢が表彰台を狙える位置を獲得し、明日の決勝に期待が高まる。

【GT500クラス予選結果】
1.#8 ARTA MUGEN NSX-GT (1’09.413)
2.#23 MOTUL AUTECH Z (1’09.486)
3.#17 Astemo NSX-GT (1’09.607)

7.#24 リアライズコーポレーション ADVAN Z (1’10.727 / YH)
11.#19 WedsSport ADVAN GR Supra (1’10.789 / YH)

【GT300クラス予選結果】
1.#96 K-tunes RC F GT3 (1’17.098)
2.#20 シェイドレーシング GR86 GT (1’17.768)
3.#61 SUBARU BRZ R&D SPORT (1’17.855)

5.#56 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R (1’18.426 / YH)
6.#18 UPGARAGE NSX GT3 (1’18.472 / YH)

#6 DOBOT Audi R8 LMSが
今季2度目の3位を獲得!

予選日と同様に曇り空で迎えた17日の決勝日。スタート時の気温は28℃、路面温度は33℃と久しぶりに30℃を切る過ごしやすい気温となった。菅生ラウンドの決勝は開幕戦以来の300kmレースとなり、周回数は84周、給油ピットインも1回のみとなる。

13時30分にスタートが切られ、大きなアクシデントもなく周回を重ねる中、GT500クラスでは24号車はひとつポジションを上げ6番手となり、19号車は11番手を維持。

GT300クラスでは56号車と #6 DOBOT Audi R8 LMSが共にポジションを上げ中盤を迎える中、39周目にGT500クラスの #100 STANLEY NSX-GTと56号車がストレートで接触し、100号車がガードレールにヒットしてしまう。車両は大きく破損し、レースは赤旗中断。

15時20分よりレースが再開。56号車は100号車との接触で、危険なドライブ行為判定と、赤旗中の作業手順違反で2度のドライブスルーペナルティーが課せられ大きく順位を落とす。18号車は徐々に順位を上げ、終盤には2位に浮上。トップの #52 埼玉トヨペットGB GR Supra GTにはわずかに届かず、そのままゴールを迎えると誰もが思った矢先、トップを走っていた52号車が燃料切れでスローダウン。それにより18号車はコントロールラインまで数mというところで52号車をかわしトップでチェッカーを受け、前回の鈴鹿に続き2連勝。一方、GT500クラスは、24号車が6位と今季最上位を獲得、19号車は9位でゴールとなり、GT500クラス YOKOHAMA / ADVAN勢は共にポイント獲得となった。

ところが、暫定表彰式を終えたあと更なる波乱が起きた。

GT300クラスで見事優勝を飾った18号車が車両規定違反により失格。GT300クラスすべての順位がひとつ上がり、YOKOHAMA / ADVAN勢のGT300最上位は6号車となり、今季2度目の3位獲得となった。さらにGT500クラスでも優勝を飾った #17 Astemo NSX-GTが同じく車両規定違反で失格。これにより24号車が5位、19号車が8位となっている。

【GT500クラス決勝結果】
1位.#8 ARTA MUGEN NSX-GT
2位.#23 MOTUL AUTECH Z
3位.#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra

5位.#24 リアライズコーポレーション ADVAN Z (YH)
8位.#19 WedsSport ADVAN GR Supra (YH)

【GT300クラス決勝結果】
1位.#52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT
2位.#20 シェイドレーシング GR86 GT
3位.#6 DOBOT Audi R8 LMS (YH)

5位.#4 グッドスマイル 初音ミク AMG (YH)
7位.#50 ANEST IWATA Racing RC F GT3 (YH)
10位.#56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R (YH)

今回最上位でゴールを迎えたGT500クラス、KONDO RACINGのドライバー2人、そして悔しい結果となったTGR TEAM WedsSport BANDOHのドライバー2人、さらには坂東監督の声を聞いた。

KONDO RACING
佐々木大樹選手

SUGOは狭いコースなので、オーバーテイクポイントが少なくなかなか抜けなかったのですけれど、300クラスが絡んだ時のオーバーテイクで抜くことができて、一旦離されていたクルマにも追いつき自分のスティントを終えることができました。今回のタイヤも改善点が明確なので、そこを改善できればピークのポテンシャルとしては十分勝っているとは思います。次戦のオートポリスですが、昨年はピットのタイミング次第では優勝できていたレースですので、今年も優勝目指して頑張ります。

KONDO RACING
平手晃平選手

今回のSUGOでは前半を佐々木選手が担当し、後半に自分がバトンを受けとりました。今回は新しいタイヤを持ち込みましたが、事前にロングランのデータを十分には取れていない中でもしっかりと最後まで走り切れて、途中4位まで順位を上げることもできました。生憎300クラスのトラフィックで順位を落としてしまいましたが、スターティンググリッドよりも上でゴールすることができましたし、周りと戦えたこともあり、今季最上位の順位を獲得してホッとしています。特にQ1ではトップとのタイム差は0.2秒しかなく4番手で通過できたので、今回もタイヤに関しては負けていないと思っています。決勝のロングランに関してはこのSUGOでテストができていないというのもあって、良い部分と改善したい部分もありましたが、ラップも安定して走ることができたので、今後の方向性も見えて良かったと思っています。次戦のオートポリスですが、昨年は表彰台争いをして3位という結果が残せているので、今年も予選からしっかり戦って結果を残したいなと思います。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
国本雄資選手

今回は路面状況も想定と違い、フリー走行からタイヤのウォームアップが厳しかったので決勝では内圧を高めでスタートしました。最初は順位を落とさずカバーできましたが、今度は内圧が上がり過ぎてグリップが低下したためミニマムでピットインしました。阪口選手と交代した後半スティントはいいペースでコンスタントに走行できました。最近は決勝レース中、特に後半になって急にグリップが低下することがなくなったので、そこに関してはすごく良くなったと思います。タイヤの使い方も含め、この状態をワンステップ上げられたら、上位でゴールできたと思います。次戦はオートポリスですが、去年はパフォーマンスがありコンスタントに戦えていたので、次回こそ優勝を獲れるようにしっかり準備していきたいです。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
阪口晴南選手

決勝では後半スティントを担当しましたが、ドライバー交代した直後に大きなクラッシュがありました。長い時間の赤旗中断から、セーフティーカー走行が開けた段階でのタイヤのウォームアップ自体は悪くなく、前のクルマもかわすことができました。さらにラスト数周でも周りのクルマと十分争える状態でもあったので、そこは良いところだったと思います。SUGOでは常に300クラスの合間をぬって走っているので、ラップタイムがさほど変わらなくてもかわせるタイミングもあれば、逆にタイムが速くてもかわせないこともありますが、今回はあと数周あったらもうひとつポジションを上げられたと思っています。そう考えると予選のパフォーマンスを取り戻すことが先だと思います。あとは、やはりサクセスウェイトとの向き合い方でロスしてしまっていると思います。次戦のオートポリスは搭載するサクセスウェイトが今の半分になるので、ボクたちにとっては追い風だと思いますし、コース的にもタイヤとクルマはマッチすると思っているので、結構オートポリスの方がチャンスかなと思って思います。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
坂東正敬 監督

攻めの部分を考えながらSUGOに向けたいろいろな策を練ってきましたが、大きなミスもない中で結果に繋げられることができず、ドライバーのパフォーマンスを十分に発揮できる状態にすることができなかったと感じています。去年のポールポジションを取ったタイヤと違うタイヤで予選アタックをチャレンジしましたが、コンディションが合わず上位のポジションを獲得できませんでした。決勝ではコンスタントに走行できていたので、次戦のオートポリスでは予選で上位を狙い決勝に繋げて優勝を目指したいと思います。

最後に横浜ゴムMST開発部 / 白石貴之にも第6戦・SUGOを振り返ってもらった。

横浜ゴム株式会社 MST開発部 技術開発1グループ
グループリーダー 白石貴之

SUGOは昨年のレースは雨で、今年に関してはタイヤメーカーテストもできていないので、データが揃っていない状態での戦いとなりました。そうした中、GT500クラスには夏の富士と鈴鹿の結果から予測しタイヤを持ち込みました。温度に関しては想定通りでしたが、タイヤの負荷に関しては課題が残りました。サーキットに対してのタイヤの合わせ込みが足りなかったと思っています。そこが合っていれば、予選もさらに上に行けたと思いますし、決勝のペースラップでも上位に行けたと思っています。

GT300クラスに関しては、サクセスウェイト100kgを搭載した2台が高いパフォーマンスを発揮してくれたと思っています。車重が重い分、タイヤを温めやすかったり荷重を利用してグリップが上がるというところの良さを出すことはできますが、やはり重い分だけ摩耗が厳しく、かつロングランの性能で課題が残る場合が多い中、18号車、56号車は最適なセットを見つけて、重くてもポテンシャルが発揮できることを証明してくれました。残るオートポリスと最終戦もてぎは我々の認識だと(コースごとに)正反対に近いような特徴があり負荷の部分もだいぶ違います。そこを考慮して準備をしますが、去年のオートポリスではGT500クラスで24号車が良い結果を残しているので、YOKOHAMA / ADVAN勢に期待しております。

(了)

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