SUPER GT

SUPER GT 2023
Rd.4 FSW
雨の先にあった課題。

2023.8.9

SUPER GTの2023年シーズン前半戦を締め括る第4戦・富士ラウンド。天候に翻弄され赤旗中断も挟む荒れ模様のレースとなったが、最後は450kmを走り切って無事チェッカーで幕を閉じることができた。この第4戦はYOKOHAMA / ADVAN勢にとって課題の多く見つかるレースでもあった。予選ではGT500 / GT300の両クラスでのダブル・ポールポジションを達成するものの決勝では不本意な結果に。そうした状況の中、#6 DOBOT Audi R8 LMSが3位でゴールし、YOKOHAMA / ADVAN を表彰台に導いてくれた。

Words:菅 正次 / Masatsugu Suga
Photography:田村 翔 / Sho Tamura

YOKOHAMA / ADVAN勢が
見事ダブルポール!

約2ヶ月のブランクを開けて、8月5日(土)、6(日)の2日間、静岡県の富士スピードウェイでSUPER GT 2023シーズン前半戦の最後となる第4戦が開催された。

富士での開催は、第2戦に続き2回目。チーム搬入日の4日(金)は日本各地で猛暑となり、この富士スピードウェイも35℃を超え茹だる暑さとなった。

YOKOHAMA / ADVAN 勢では、第2戦・富士ラウンドで予選2位からの決勝リタイヤと悔しい結果となった #24 リアライズコーポレーションADVAN Z が、その“借り”を同じコースで返すべく勝利を掴み取ることができるのか?

あるいは、第3戦・鈴鹿ラウンドで7年ぶりの優勝を成し遂げた#19 WedsSport ADVAN GR Supra が、得意とするこの富士で2連勝を達成することができるのか?

いずれにしても、YOKOHAMA / ADVAN勢の勝利の可能性が十分にあると言える状態で迎えた富士での第4戦となったが、決勝日の予報が雨となり、日が近づくにつれ降水確率も上がっているだけに、450kmと長丁場の戦いはどのような展開となるのか全く予想がつかなかった。

搬入日に続き5日(土)の予選日も晴れ。朝から強い日差しに見舞われる中、午前のフリー走行ではGT300クラス #4 グッドスマイル 初音ミク AMGがトップタイムをマークして好調な滑り出しとなった。

GT500クラスでは24号車が佐々木大樹選手のドライブで5番手タイムをマークするが、最後のGT500クラス専有走行中に他車がコースサイドでストップしてしまったためセッションは赤旗終了。アタックラップを行うことができなかったが、YOKOHAMA / ADVAN勢は予選に向けて十分に期待がもてる走行となった。

そして15時20分からはじまった予選。GT300クラスQ1では、フリー走行から好調な4号車が片岡龍也選手のアタックで1分36秒896のトップタイムをマークし、見事Q2進出を果たす。

続くGT500クラスQ1では、平手晃平選手がアタックする24号車が1分27秒935をマークし、2番手でQ2進出を果たした。一方19号車は、わずかにタイムが及ばず9番手でQ1敗退となっている。

すぐに迎えたQ2 GT300クラスでは、4号車の谷口信輝選手が片岡選手のタイムをさらに上回る1分36秒395で、見事6年ぶりとなるポールポジションを獲得。GT500クラスも24号車が佐々木大樹選手のアタックで1分27秒763をマークしてポールポジションを獲得し、YOKOHAMA / ADVAN勢は堂々のダブル・ポールポジションを達成したのである。

【GT500クラス予選結果】
1.#24 リアライズコーポレーション ADVAN Z (1’27.763 / YH)
2.#16 ARTA MUGEN NSX-GT (1’27.813)
3.#8 ARTA MUGEN NSX-GT (1’27.852)

9.#19 WedsSport ADVAN GR Supra (1’28.608 / YH)

【GT300クラス予選結果】

1.#4 グッドスマイル 初音ミク AMG (1’36.395 / YH)
2.#61 SUBARU BRZ R&D SPORT (1’36.705)
3.#11 GAINER TANAX GT-R (1’36.854)

4.#88 JLOC ランボルギーニ GT3 (1’36.882 / YH)
5.#6 DOBOT Audi R8 LMS (1’36.982 / YH)

天候に翻弄されながら
決勝は意外な結末に

天気予報の通り午前から雨となった6日(日)の決勝日。スタート進行の間に一旦雨が止んだものの、スタート直前には再び降りはじめ、全車ウェットタイヤでのスタートとなった。今回も450kmでの長丁場レースとなり周回数は100周。給油ピットインも2回が義務付けられる。

2周のセーフティカーランを経て3周目でレースがスタート。GT500クラス・ポールポジションの24号車は順調なスタートを切ったが、19号車はスタートから順位を落としはじめ、再びストレートに戻ってきた時にはGT500クラス最後尾の15番手に。24号車も4周目で#3 Niterra MOTUL Zにかわされトップを譲ってしまうと、そこから徐々に順位を落としはじめてしまう。

一方、GT300クラス ポールポジションの4号車は3周目に2台にかわされて順位を落とすものの、7周目で再びトップを取り返し、さらにYOKOHAMA / ADVAN勢の#88 JLOC ランボルギーニ GT3が2番手と続く。

スタート時に降った雨も止みラインも乾きはじめ、11周目でGT500の24号車、19号車共にピットインし、ドライタイヤに履き替える。GT300の4号車は9周目でピットインし、その後も順調にトップをキープし周回を重ねる。

36周目で1度目のアクシデントとなる車両火災が発生。セーフティーカー導入となり、41周目でレースは再開となるが、その後もGT500クラスの19号車、24号車は思うように順位を上げることができないまま中盤を迎え、19号車は53周目で阪口晴南選手、24号車は55周目で平手選手に、そしてGT300クラスではトップを快走している4号車が58周で谷口選手にバトンを渡す。

レースも後半となった67周目で再び車両火災による2度目のアクシデントが発生。すぐには火の勢いが収まらないことから赤旗中断となる。各車ホームストレートで待機中に再び雨が降りはじめ、雷雨に発展したことから16時半までディレイとなった。

再び全車ウェットタイヤに履き替えレース再開。雨も止み徐々に路面が乾きはじめた残り20周あたりから、ドライタイヤに履き替えて勝負を掛ける車両が続出する。

4号車も残り10周でピットインし、限界だったレインタイヤからドライタイヤに履き替えピットアウトするが、コカ・コーラコーナーで痛恨のスピン。それにより大きく順位を落としてしまう結果となる。その後もさらに目まぐるしく順位が入れ替わる中、YOKOHAMA / ADVAN勢の #6 DOBOT Audi R8 LMSが3位に浮上し、100周のレースが終了となった。

【GT500クラス決勝結果】
1位.#3 Niterra MOTUL Z
2位.#64 Modulo NSX-GT
3位.#16 ARTA MUGEN NSX-GT

10位.#24 リアライズコーポレーション ADVAN Z (YH)
12位.#19 WedsSport ADVAN GR Supra (YH)

【GT300クラス決勝結果】
1位.#11 GAINER TANAX GT-R
2位.#7 Studie BMW M4
3位.#6 DOBOT Audi R8 LMS (YH)

4位.#56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R (YH)
8位.#88 JLOC ランボルギーニ GT3 (YH)
12位.#4 グッドスマイル 初音ミク AMG (YH)

今回、悔しい結果となったGT500クラス、TGR TEAM WedsSport BANDOHのドライバー2人と監督、そしてKONDO RACINGのドライバー2人の声を聞いた。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
国本雄資選手

今回、新しいコンパウンドのウェットタイヤを持ち込みましたが、ぶっつけ本番だったこともあり、思ったようなグリップ感も出せないまま、非常に厳しいレース展開となりました。スタートから数周で数十秒も遅れてしまい、その時点で勝負権がなくなってしまいました。今回のウェットタイヤの問題点を改善するのはもちろん、ドライタイヤもコンスタントに戦えるような仕様を持ち込めるように改善したいと思います。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
阪口晴南選手

決勝はサードスティントから担当し、ドライ / ウェットと走りましたが、ドライタイヤはあと一歩のところまでフィーリングを掴むことができましたが、ウェットタイヤの課題が大きく、特に雨量の多い時は全く機能しませんでした。しかし、今回のレースで多くのデータも獲れ、方向性も見えてきましたので、今回のような天候時でも性能を発揮するタイヤ開発をしていきたいと思います。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
坂東正敬監督

第4戦・富士が終わりました。天候が目まぐるしく変わる中、9番手スタートから順位を下げてしまい、結果12位でチェッカーを受けることとなってしまいました。僕らが岡山で感じていたウェットタイヤの良い特性を活かすことが全くできませんでした。何が原因で何が足りなかったか、すぐにチームでミーティングを行い、もう一度仕切り直してウェットタイヤの開発を横浜ゴムと共に頑張ります。

KONDO RACING
佐々木大樹選手

今回のような荒れたレースになると、タイヤに求められる性能の幅がすごく重要で、ドライタイヤでもウェット路面でウォームアップさせなければならない、でも乾いた時はタレないようにしなければならない。難しい話ですけれど、そこは他社と比べ圧倒的な差があると感じました。今回のように温度も雨量も変化が大きいコンディションでは合わせきれず、幅のなさを感じましたが、そういうタイヤを開発するのは一発のタイムを出すより遥かに大変で、幅を意識しすぎると、その分ピークも減り、(開発は)とても難しいと思います。

KONDO RACING
平手晃平選手

今回のレースで、ドライタイヤに関してはロングランもショートランもとても良く、全く不安要素はないと思いました。一方で、ウェットタイヤも3月の公式テスト富士ではいい感触だったので期待していましたが、用意されたウェットタイヤは今回のレースには全く合っていませんでした。この仕様では鈴鹿はもっと厳しい。ウェットタイヤに関しては、まだまだまだ改善しなきゃいけない部分が多いです。今回は残念な結果で終わりましたが、次の鈴鹿ラウンドもまだウェイトは軽いので、ドライコンディションであれば、予選からポールを狙えると思うし、決勝も逃げ切れると思います。

今大会で、見事 YOKOHAMA / ADVAN勢 トップのGT300クラス3位表彰台を飾ったTeam LeMansのドライバー2人の声を聞いた。

Team LeMans
片山義章選手

序盤は今回のコンディションだとダンロップ勢が速いと想定していました。しかし、思ったより落ち込みも早く、そのかわりヨコハマタイヤはそこから少しポテンシャルが伸び順位をあげることができました。今回、ピット作業ミスがいくつかあり、それが無ければ勝っていたかもしれないと思うと、初表彰台で嬉しい反面、悔しさもある。ヨコハマタイヤはドライに関してはとても良いと思います。今回もドライタイヤが良い機能をしてくれました。すごくコンペティティブでいいと思う。ウェットタイヤもヨコハマタイヤの開発コンセプトは自分に合っていると思います。

Team LeMans
ベルト・メリ・ムンタン選手

スーパーGTで初めての表彰台を経験することができて本当に良かったです。しかし、正直に言えば決して満足できる結果ではありません。それは、今回の僕たちのパフォーマンスを考えれば優勝も十分に狙えたからです。少しミスがあってタイムロスしたところもあり、それがなかったら勝てたかもしれません。今回は本当に厳しいレースで、すごく順位の入れ替えの激しいレースになりました。僕自身もコース上で何台だったか覚えていないくらいオーバーテイクしました。チームの競争力は開幕戦の岡山からあったと思うけど、それが今回結果につながって嬉しいです。

最後に横浜ゴムMST開発部 / 白石貴之にも第4戦・富士を振り返ってもらった。

横浜ゴム株式会社 MST開発部 技術開発1グループ
グループリーダー 白石貴之

GT500クラスは、ドライタイヤに関しては24号車の予選も結構良いところには行くだろうなとは予測していました。他社のマシンも速いので何とも言えないところでしたが、結果的には高いパフォーマンスを出していただいてポールポジションを獲得し、非常に満足しています。19号車はサクセスウェイトを44kgも積んでいるので、予選の結果は仕方ないと思っており、その状況の中で最善を尽くしてもらったと思っています。
しかしウェットタイヤですが、シーズン前の富士の合同テストで良い結果を出し、開幕戦の岡山ラウンドでは問題点はあり改善してきましたが、この夏場の比較的気温が高い富士スピードウェイでゴムも構造も今回のレースパターンに合わせることができず、結果を出すことができませんでした。
一方のGT300クラスは、ドライタイヤだけではなく、ウェットタイヤも合わせ込みがうまくできていたと思っています。そして6号車が初の表彰台は非常に嬉しい結果となりましたが、ずっと力強い走りを魅せてくれた4号車の結果は残念でした。
次戦、鈴鹿ラウンドまであまり時間がありませんが、鈴鹿を想定したタイヤを持ち込んで結果を出したいと思っています。

次戦・第5戦は8月26日(土)27日(日)に鈴鹿サーキットで開催される。SUPER GTの2023年シーズンもいよいよ後半戦へと突入するが、YOKOHAMA / ADVAN勢が確かな結果を出してくれることに期待したい。

(了)

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