SUPER GT

SUPER GT 2023
Rd.3 / SUZUKA
大波乱の先の栄光。

2023.6.12

前戦に引き続き450kmの長丁場レースとなったSUPER GT 2023の第3戦・鈴鹿ラウンド。赤旗で幕を閉じる波乱の展開となってしまったが、そんな不穏なレースの中にあってもGT500クラスのYOKOHAMA / ADVAN 勢は揃ってポイントを獲得。19号車 / WedsSport ADVAN GR Supraは実に7年ぶりとなる優勝を遂げ、YOKOHAMA / ADVANにとっても7年ぶりとなるGT500クラスでの価値ある勝利をもたらしてくれた。

Words:菅 正次 / Masatsugu Suga
Photography:田村 翔 / Sho Tamura

ポールポジションから最後尾
誰もが予想しない展開に

第2戦・富士から約1ヶ月が経った6月3日(土)、4日(日)の2日間、三重県の鈴鹿サーキットでSUPER GT 2023シーズンの第3戦が開催された。2日(金)のチーム搬入日は台風2号の接近により日本各地で大荒れの天候となり、鈴鹿サーキットのある東海地方も線状降水帯による非常に激しい雨に見舞われていた。

当初、この雨は3日の予選日まで続く予想だったが、3日以降の天気予報は晴れへと変わり、予選・決勝共にドライコンディションで行えることに。しかし、当初の予報のままであれば3月の雨の富士合同テストにおいて注目を浴びた新型のウェットタイヤの実力を試すチャンスでもあったが、幸か不幸か、それはまた次の機会へと持ち越しとなった。

昨年の鈴鹿ではYOKOHAMA / ADVAN 勢の #19 WedsSport ADVAN GR Supraを駆る国本雄資選手が予選Q2で1分44秒112をマークして見事ポールポジションを獲得。さらにはコースレコードまで更新してその記録は現在も破られていない。

国本選手は再び自身のレコードを更新することができるのか? さらには前戦・富士で惜しくも2位表彰台を逃した、#24 リアライズコーポレーションADVAN Zがその借りを返すべく今回は表彰台獲得となるのか? 第3戦・鈴鹿も450kmと長いレースとなるが、だからこそチャンスも多く、YOKOHAMA / ADVAN勢の勝利への期待が一層高まる。

予報通りの晴天で迎えた3日予選日。朝はところどころに水溜りの残った路面も、フリー走行が始まる頃にはすっかり乾きドライに。そして、午後に迎えた予選。サポートレースの決勝が遅れたことにより20分遅れでのスタートとなった。

GT500クラスでのQ1は、19号車が阪口晴南選手のアタックで1分44秒366と素晴らしいタイムをマークして見事トップタイムで通過。次に佐々木大樹選手がドライブする24号車が1分44秒443で2番手のタイムをマークし、YOKOHAMA / ADVAN 勢のワン・ツーとなった。

その後に迎えたQ2では、YOKOHAMA / ADVAN 勢は1周のウォームアップでアタックできると判断して他車より1周遅れてコースイン。最初にトップタイムをマークしたのは24号車の平手晃平選手。2番手には #36 au TOM’S GR Supraの坪井選手が入り、誰もが残る19号車のアタックを注目する中、国本選手は1分44秒679で惜しくも3番手となった。当然トップタイムを狙い自身のコースレコードも意識していただけに本人にとっては悔しい結果となったが、YOKOHAMA / ADVAN 勢としては明日の決勝に十分期待できる位置を確保できた。

しかし、Q2終了後の車検で24号車は検査結果で不合格となりタイムが抹消となってしまう。決勝はGT500クラス最後尾の15番手スタートと悔しい結果となった。それにより19号車は1つ順位が繰り上がり、2番手フロントローからのスタートとなる。

【GT500クラス予選結果】
1.#36 au TOM’S GR Supra (1’44.585)
2.#19 WedsSport ADVAN GR Supra (1’44.679 / YH)
3.#100 STANLEY NSX-GT (1’44.763)
-
15.#24 リアライズコーポレーション ADVAN Z ( − / YH)

一方、GT300クラスでは開幕戦から徐々に力を見せはじめていた #25 HOPPY Schatz GR Supra GT が、YOKOHAMA / ADVAN 勢最高位の5番手となり、次に#244 HACHI-ICHI GR Supra GTが7番手、前回ポール トゥ ウィンを達成した #56 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rは、サクセスウェイトを66kgも積みながら9番手と健闘している。

【GT300クラス予選結果】

1. #61 SUBARU BRZ R&D SPORT (1’55.775)
2. #11 GAINER TANAX GT-R (1’56.095)
3. #60 Syntium LMcorsa GR Supra GT (1’56.454)
-
5. #25 HOPPY Schatz GR Supra GT (1’56.552 / YH)
7. #244 HACHI-ICHI GR Supra GT (1’56.827 / YH)
9. #56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R (1’57.007 / YH)
10. #88 JLOC ランボルギーニ GT3 (1’57.092 / YH)

24号車の佐々木選手、平手選手共に感極まる喜びから一転、失格の通知後は落胆の表情を隠しきれなかった。しかし、24号車のポテンシャルは十分に高いことは誰もが認識している。450kmの長丁場を有利に捉え、最後尾から全力で追い上げると誓った。

大クラッシュにより赤旗終了
19号車が表彰台を飾る

台風による風の影響もなくなり、その分だけ一層の暑さを増した決勝日。予定通り13時30分に450km / 77LAPのレースがスタート。長丁場だけに今回も給油ピットインは2回が義務付けられている。

GT500クラス2番手からスタートした19号車は国本選手がドライブ。安定した走りで2番手を維持して周回を重ね、26周目で1回目のピットイン。阪口選手に交代して32周目には一時トップにまで浮上する。

GT500クラス最後尾からのスタートとなった24号車は平手選手がドライブ。1周目で1台をかわし、その後も徐々にポジションを上げながら34周目に1回目のピットインで佐々木選手に交代する。

そして19号車は2番手をキープし続けながら46周で2度目のピットイン。24号車は9番手までポジションを上げ54周で2度目のピットインを終え、共にドライバー交代せずにあとはゴールに向けて走るのみとなった。

この時点で規定となる2回目のピットインを終えていないのはトップを走る3号車のみ。しかし、19号車のトップが目前となった60周目、130Rの立ち上がりでGT500マシンとGT300マシン2台が絡む大クラッシュが発生してしまう。赤旗でレースは中断となり、そのまま終了と判断された。この時点で19号車は2位で今季初の表彰台、24号車は8位で今季初のポイント獲得というリザルトとなった。

一方、GT300クラスでは、9番手スタートの56号車が重いウェイトを積みながらも徐々に順位を上げ、4位と惜しくも表彰台に届かなかったが、確実にポイントを獲得している。今回2位となった #2 muta Racing GR86 GTと同点ながらも、GT300クラスのポイントランキングでトップとなったことも大きなトピックだろう。

GT500クラスについては決勝表彰後、2回の給油義務を果たしていなかった優勝のチーム / マシンに対して10チームより抗議文が提出され、結果としてトップの順位が入れ替わることで19号車が2位から繰り上がり、その時点での暫定優勝となった。その後、2023年6月12日には正式リザルトが発行され、19号車の優勝が確定している。これはチームにとって2016年のタイランド戦以来、実に7年ぶりの優勝となり、日本では記念すべき初優勝となる。

【GT500クラス決勝結果】
1. #19 WedsSport ADVAN GR Supra (YH)
2. #36 au TOM’S GR Supra
3. #1 MARELLI IMPUL Z
-
8. #24 リアライズコーポレーション ADVAN Z (YH)

【GT300クラス決勝結果】
1. #7 Studie BMW M4
2. #2 muta Racing GR86 GT
3. #52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT
-
4. #56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R (YH)
-
9. #30 apr GR86 GT (YH)

GT500クラスで優勝を遂げたTGR TEAM WedsSport BANDOHの両ドライバー、そして監督の声を聞いた。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
国本雄資選手

予選は去年から実績のあるタイヤで戦いました。阪口選手がQ1ですごく良いアタックをしてくれて、自分のQ2でもいけると思ったんですが、ミスでコンマ3秒落としてしまいました。でもタイヤはパフォーマンスがあって、特に中・高速コーナーのグリップ感があって良いアタックができていたので満足ですね。レースは1周目から結構力強いレースペースで、その後のペースも安定して走ることができました。ファーストスティントはすでに実績のあるタイヤでしたが、セカンドスティント、サードスティントは新しいタイヤで、それがとても良くて逆転できたので、間違いなくヨコハマタイヤさんの開発のおかげで今回の順位につながったと言えます。開発陣のこれまでの努力がこうして結果に結び付いていると思うと、そこは本当に嬉しいですね。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
阪口晴南選手

クラッシュした2台に関して、何よりドライバーさんが心配でしたし、今回起きた事故もすごく残念に思いますけど、まずは命に別状がないということでホッとしています。前回の富士ではボクたちのセッティングが少し足りていない部分があり、24号車の方が速くって、ボクたちにとっては厳しい結果となりましたが、今回の鈴鹿はヨコハマタイヤの進化にボクたちも合わせることができたと思います。特に今回すごく良くなったのは、低速域でグリップがあって、ブレーキングでのトラクションにも優れるところです。レース中低速域でのグリップの低下がなかったので、良いペースで走ることができました。それにより苦手だった区間を克服することができたと思っているので、そこは今回の決勝結果につながったのかなと。今後も450kmのロングレースは続き、さらに暑いラウンドになりますが、それはボクたちにとって得意なコンディションだと捉えているので、そこでポイントを稼いでシリーズ争いの一角に加われるように頑張りたいと思います。

TGR TEAM WedsSport BANDOH
坂東正敬監督

去年の結果を見てもわかるとおり、8戦中5回はヨコハマがポールポジション。ボクらに至っては8戦中8回のQ1突破、今年の2戦も含めて10戦連続でQ1を突破しているんですけど、“1発のタイヤ”の使い方という部分に関しては、セットとタイヤの特性が比較的マッチしていたと思っています。去年のレースの中での課題はアウトラップ。そこを課題としてシーズンオフ、いろいろなことをテストしてきました。しかし、第2戦の富士は予選2位からスタートしてボクらが思っているペースよりもドロップしてしまって徐々に順位も落としてしまった。でも24号車は(アクシデントまでは)確実に2番手を走行していたので、そうした現実を再度見つめ直して鈴鹿に挑みました。ボクらは今回予選と決勝に向けてセットをガラリと変えた。結果としてアウトラップ / ウォームアップが速く、そのおかげもあってコース上で他車を抜くこともなく今回のポジションを維持できた。ヨコハマタイヤの予選の速さに加えて、レースのストラテジーとウォームアップも良かったので、これを武器に次につなげていければ、シリーズチャンピオンがどんどん見えてくると思います。

ポールポジションを獲得するも車検で失格となり、2戦続いて悔しい戦いとなるも、決勝では追い上げ入賞を果たしたKONDO RACINGのドライバー2人の言葉も聞いた。

KONDO RACING
佐々木大樹選手

今回はセカンドスティントからタイヤを変えた結果、思ったようなタイヤの動きじゃなくなってあまりペースが上げられなかったけれど、逆に言えば、ファーストスティントはクリアになってからの平手選手のペースが良かったし、そういう意味ではタイヤのチェックもできたので収穫もあったのかなと思う。やっぱり予選の順位は大事なので15位から(スタート)は決して楽じゃない。そこも含めて今週は自分たちに流れがなかった。速さはあったしデータも獲れたので、そういう点は次戦に生かせると思うので、しっかり見直して次の富士に挑みたい。

KONDO RACING
平手晃平選手

予選後に失格になってしまい、ボクらとしては特に速さに関わるところで(車検に)引っかかってしまった訳ではなかったので、本当に悔しいというか、残念でしようがない感じですね。それでも、決勝日は後方からスタートして、力で順位を上げて8位でゴールできたというのは、タイヤもそうですし、チームとしてのポテンシャルも高い位置にあると再確認できたと思います。ただ、本当に予選の結果自体が残念だったというのがあるので、ボクらとしてはこの鈴鹿でタイヤも含めポテンシャルの良い部分が垣間見えたので、次の富士もそうですし、さらには真夏の鈴鹿に対してもものすごくポジティブなイメージを持って入れると思います。

最後に横浜ゴムMST開発部 / 白石貴之にも第3戦・鈴鹿を振り返ってもらった。

横浜ゴム株式会社 MST開発部
技術開発1グループ
グループリーダー
白石貴之

24号車はタイヤを活かすセットをシーズンの早い段階から取り組んでもらっていて、その分だけの結果もここまで見えていました。一方の19号車は予選の速さというところに加えて、今回はさらにタイヤを活かす“決勝向け”の使い方をセットアップの段階からかなりいろいろやってもらったところもあって、決勝でもいいペースを保つことができた。そこは非常に良かったと思います。次戦まで時間が開きますが、7月にはテストも予定しているので、今回の結果をベースにしてテストメニューを組んでいけると思います。

GT300クラスについては、予選で他社さんに上に行かれたとき、当初想定していたタイムよりかなり速かったので、そこはかなり気にしていましたけど、ウチはもともと決勝の450kmの距離の中で、全体的にレースペースを出すような形で考えていたので、結果的にはある程度想定の範囲内だったのかなと思います。その中で、56号車がチームの総合力で上位に入ってくれた。さらに今回のレースではヨコハマとして、他のチームの車両でもいろいろと試したところがあったんですけれども、結果的にまだ想定したところまでいけませんでした。そこはGT500クラス同様に、この先の夏の富士/鈴鹿で順々に結果を出していけると思っています。

YOKOHAMA / ADVAN勢、特にGT500クラスでは決勝での“安定性”がより一層高まったと感じられた第3戦。次の第4戦・富士ラウンドでは19号車、24号車共に表彰台に登ることも決して夢ではないだろう。

(了)

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