YOKOHAMA LOVER

加熱するアメリカの第二世代“GT-R”人気。
その足元をYOKOHAMA / ADVANが支える。

2023.11.09

アメリカでの第二世代スカイラインGT-Rの人気が加熱して久しい。新車販売時に適用された並行輸入規制が緩和される「25年ルール」が新たに適用されることで、アメリカのマニアにとって「日本専用モデル」であった伝説的なスカイラインGT-Rを手に入れるチャンスが生まれたことに起因する一大ムーヴメントである。今回は第二世代の二代目モデル、BCNR33をベースとしたよりスペシャルなチューンドマシンを愛する男たちの姿と共に、遥かアメリカの地で“日本の誇り”が愛される理由を探る。

Words:髙田興平 / Ko-hey Takada(Takapro Inc.)
Photography:安井宏充 / Hiromitsu Yasui(Weekend.)

ストリートを駆け抜ける
生粋のレコードブレーカー。

「Video OPTIONの映像では谷田部のバンクを300キロオーバーで駆け抜けるこのクルマの姿を何百回と繰り返し観たものだよ。それこそVHSのビデオテープが擦り切れてしまうほどにね(笑)。オレにとってこのクルマはまさしく“ユニコーン”なのさ。唯一無二、他に代わるものがない神聖な存在、という意味でね」

アリゾナ州スコッツデールに暮らすジョーダン・スウォーカーは自身の愛機・HKS T-002を前にそう熱く語る。第二世代スカイラインGT-R、その二代目となるBCNR33をベースに日本を代表するチューニングメーカーであるHKS(エッチ・ケー・エス)が“ワークス”としての意地とプライドを注ぎ込んで仕上げた生粋の“レコードブレーカー”──T-002とはそういう特別な生い立ちを纏ったモンスターマシンである。

このマシンが誕生した当初の目的は筑波サーキットにおけるチューニングカー最速ラップの樹立だった。時は1995年、HKSが当時新開発したばかりのGT2540タービンによって600psの最高出力が与えられたT-002は、58秒716という“筑波1分切り”がまだ特別な領域だった時代においてまさに極限域でのラップタイム・レコードを樹立している。

そしてT-002はその後もさらなる進化を遂げる。より大型のタービンの開発を目的として谷田部(茨城県)のJARI高速周回路で開催されていた0→300km/hアタックへとステージを昇華させ、2.8ℓストローカーKIT+GT3037ツインターボ仕様で920psという途方もないパワーを生み出し、0→300km/h加速/17.64秒の最速記録までを樹立したのである。当時は20秒の壁を破ることが大きな目標とされていた時代。HKSがT-002で打ち立てたこの圧倒的な記録が世の名だたるチューナーたちを震撼させたことは言うまでもない。

「オレがT-002の存在を知ったのはまだ14歳の頃だった。Video OPTIONで観た300キロアタックの映像はともあれ、オレのその後の人生観を一発で変えてしまった。パワーとスピードにすっかりと魅せられて、免許を取ってからも常に強烈な刺激を追い求めて色々なクルマに乗ったものだよ。それこそ2000hpを超えるツインターボ仕様の(ランボルギーニ)ガヤルドなんかにも乗ってきたけれど、14歳の頃にあの映像を通して強烈なパンチを喰らわされたT-002の衝撃を超えるマシンには、ついぞ出会えなかった」

垂涎のスピードマシンたちが並ぶジョーダンのシークレットガレージ。その中でもこのT-002は一際の輝きを放っている。

ビジネスで大きな成功を収めたジョーダンは現在、自身の秘密のガレージに相当数のスピードマシン(そのどれもがクルマ好き、何よりスピードを愛する者には垂涎の車両ばかり)をコレクションしている。その中でも特別にして特別な存在として彼が愛してやまないのが、今から数年ほど前に東京オートサロンを舞台に開催されたコレクタブルカー・オークションで落札したこのHKS T-002なのである。

「まさかオレのユニコーンが日本のオークションに出品されるとは思ってもみなかった。だから出品をネットで知った時は心底驚いたし、すぐにオークション会社に連絡を取って海外からのフォーンビット(電話入札)で参加して競り落としたんだ。オークションではライバル(競合入札者)もいたけれど絶対に引かない気持ちだったね。幾らでもビット(応札)してやるつもりだったよ(笑)」

生粋の“レコードブレーカー”であるT-002にとって、ジョーダン・スウォーカーという、こちらも生粋のカーガイの元へとやって来られたことが何より幸運だったと言うべき事実がある。そう、ジョーダンはこの自身にとってのユニコーンとも呼ぶべき特別なレコードブレーカー(サーキット専用マシン)に、なんとライセンスプレートを取得してストリートでも走行することを実現させてしまったのだ。

「アメリカでは州によって車両の登録レギュレーションが異なる。オレはこうした特殊な車両の登録(ライセンスプレート取得)に関する仕事も手掛けているから、T-002も最初から正式な登録をするつもりで手に入れたんだ。オークションで落札後にHKSでさらに細やかなモディファイも時間を掛けて施している。タイムアタックに特化した純粋なレースカーとも呼ぶべきスペックのマシンを、よりストリータブルにするための改良を加えたのさ。もちろん、だからといってT-002が持つ本来の強烈なパフォーマンスは一切損なうことがないようにね」

T-002は件の0→300km/hアタックで揺るぎない金字塔を打ち立てた後は、長らくHKS本社工場内のストックヤードで眠っていたのだが、2019年に現代の最新テクノロジーを投入しての大改修が施され、今日にまで続くHKSとしての「第二世代スカイラインGT-R事業(レストアやモディファイ)」の象徴的な存在として甦らされた。ジョーダンはそんな“新生T-002”にさらなるモディファイを加え、遙かアメリカの地において“伝説のレコードブレーカー”をストリートカーとして走らせているのである。

RB26 2.8ℓ KIT(STEP3)を軸にGTⅢ-5Rタービンを装着。制御はF-CON V Pro。各部の美しい仕上げが“HKSワークス”の魂をより強く感じさせる。サスペンションはHKS HIPERMAX MAX Ⅳ SP、ホイールはADVAN Racing GT(前後共に18×11J)、タイヤはADVAN A052(前後共に295/35-18)を履く。

「このクルマには本当に驚かされるばかりだよ。強烈なパフォーマンスはもちろんだけれど、何より驚かされるのはその扱いやすさ。特に足回りのセッティングには感激させられるばかりだよ。HIPERMAXのカスタムサスペンションは理想的なしなやかさを持っていて、荒れた路面でも確実にグリップとトラクションを保ってくれるし、乗り心地もいい。
タイヤはYOKOHAMA / ADVANのA052を履いている。オレはYOKOHAMAの大ファンでもある。日本の伝説的なチューニングカーやレースカーの足元にはYOKOHAMAのタイヤが履かされていることが多かったからね。まさにタイヤのレジェンドだよ」

実際、A052の性能にも大いに満足しているのだという。彼はT-002以外にもレーストラック(サーキット)での走行を愉しむためのマシンにはA052を履かせている。戸田レーシングの手でエンジンチューンの施されたフェラーリF355などは、A052を履かせたことで「マシンをコントロールする楽しさが倍増した」と評すほどだ。

主にサーキット走行を楽しむためのマシンだという戸田レーシングチューンのF355。その足元を支えるのもADVAN A052だった。

「10代の頃から憧れ続けた究極のレコードブレーカーを手に入れ、しかもこうしてストリートでも楽しめるとはね、まさに夢のようだよ!」

そう言ってアクセルを踏み込むジョーダンの表情が、まるで“最高の玩具”を手にした少年のように輝いていたことが印象的であった。

より現代的な視点で仕上がった
BCNR33のレストモッド。

現在、アメリカの中古車マーケットにおける第二世代スカイラインGT-Rの人気はすこぶる高い。いわゆる「25年ルール(製造から25年以上が経過したモデルはクラシックカーとしての登録が可能となり、関税や排ガス規制、さらには右ハンドルの日本車などに対する規制が緩和され、登録が可能となる)」の影響でBNR32を皮切りに、現在ではBCNR33までの輸入・登録が可能となったことから、“日本マーケット専用モデル”として位置付けられていたスカイラインGT-Rへのマニアからの需要が一気に高まり、それと比例するかのように第二世代GT-Rの中古車相場も高騰を続けているわけだが、第二世代の最終形となるBNR34の“輸入解禁”もすぐそこまで迫っていることから、この人気はまだしばらく加熱し続けるものと見られている。

「今となってはフェラーリやポルシェといった世界的に価値の高いスポーツカーと肩を並べる存在です。希少なグレードやコンディションの良い個体ともなれば、それら以上の値が付けられることも珍しくはないですね」

そう説明するのは「DAI 33」と名付けられたBCNR33のレストモッドをプロデュースした“Dai”こと吉原大二郎である。FORMULA DRIFT®で長らく活躍(2011年にシリーズチャンピオンを獲得)し、現在も様々なカテゴリーで活躍するプロのレーシングドライバーであり、日本のカーカルチャーをアメリカの地で広く正しく啓蒙するインフルエンサーとしても精力的に活動する男である。

昨年のSEMAショーでお披露目された「DAI 33」は、GReddy Performanceの手による珠玉のクレートモーターを搭載したコンプリートマシン。2.8ℓストローカーにGP64Rタービンを組み合わせ、新品ブロック&ヘッドには特殊なCNCポート加工などを施すことで最大1500hpにまで耐用するという。さらにトランスミッションはシーケンシャル式でパドルも備えるという現代的なパフォーマンスが与えられているのも特長だ。

現代的なパフォーマンスを標榜して作り上げられた「DAI 33」。GReddy Performance製の2.8ℓストローカーにGP64Rタービンを組み合わせ、新品ブロック&ヘッドには特殊なCNCポート加工が施される。トランスミッションはシーケンシャル式で現代的なパドルシフト機構も備える。

「エンジン自体のポテンシャル(許容度)はかなり高いですが、このクルマでは敢えて700hp程度に抑えてあります。あくまでストリートユースが前提ですし、突出した過激さよりもバランスの取れたスムーズなパフォーマンスを求めた結果です。もう25年以上も前のクルマですけれど、NASCARや航空宇宙産業で培われた技術を投入することで、現代の一線級のスーパースポーツにも引けを取らないクオリティを手に入れているのです」

その言葉の通り「DAI 33」の佇まいは実に現代的だ。そして、その現代的なコンプリートGT-Rの足元を支えるのがADVAN NEOVA AD09。そう、“ストリート最強”を標榜するADVAN NEOVAの最新世代モデルである。

ホイールはTITAN 7のT-07S3(前後共に18×10.5J)、タイヤはADVAN NEOVA AD09(前後共に265/35-18)を履く。

「トータルバランスに優れているところが、このクルマにとてもマッチしている。何かが突出することを求めた時期もありましたが、やはり歳を重ねるごとに全体のバランスが上手に取れたパフォーマンスを心地よく感じられるようにもなる。NEOVA AD09の感触はまさに、そうした心地よさまでを感じさせてくれるところが気に入っていますね」

第二世代スカイラインGT-Rのアメリカでの人気はもはや一過性のものではなく、確かな地位をアメリカのマーケットにおいても築き上げていると感じた。90年代のモデルであっても、現代に通用する世界レベルのクオリティとポテンシャルまでを、“国内専用車”ながら立派に備えていたことは誇らしくもある。

さらに、今回ご紹介した2台のようなスペシャルモデルともなれば、そのパフォーマンスはさらに高まり、よく舌の肥えたアメリカのカーガイたちをも唸らせるだけの魅力を放つことも確認できた。そしてその足元を支えるYOKOHAMA / ADVANのタイヤもまた、アメリカの熱きカーガイたちの想いをしかと受け止めるだけの深い度量があるのだと知って、なんだかとても嬉しくなった。

(了)

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