Grip the Soul

感性に寄り添い万能に走る──
ボクらの味方「ネオバとカレラ」

2023.10.6

日本はおろか世界各国を見渡しても、チューニングカー界隈の定番タイヤとして「ADVAN NEOVA」が認知されるのは間違いない。それは単にドライグリップ力に長けた一点突破系の銘柄というわけではない。ADVANブランド自身を含めて、それを訴える銘柄は他に多々ある。歴代NEOVAが謳うのは「ストリート最強のスポーツタイヤ」である。その“最強”の真意はどこにあるのか? 気鋭のポルシェチューナーであるチェックショップの大塚直彦や、ポルシェ専門誌「ポルヘッド」編集長の髙田興平の印象を前に、最新作「ADVAN NEOVA AD09」の真の魅力に迫る。

Words:中三川大地 / Daichi Nakamigawa
Photography:安井宏充 / Hiromitsu Yasui(Weekend.)

「街乗りのタイヤは、
何にも特化していなくていい」
──Check Shop 大塚直彦

今まで多種多様なポルシェのストリートカーを基に、速くて色気のあるマシンを提案し、実際に結果を残してきたポルシェマイスターであるチェックショップの大塚直彦は、顧客のために設えた991型ポルシェ911カレラSを転がしながらそう言う。「何にも特化していなくていい」とは、彼らしいぶっきらぼうな言葉だが、それは決して没個性でいいということではなく、増して「タイヤなんてなんでもいい」と言っているわけではなかった。

チェックショップとしてカスタムの理想像、そして速いクルマ(ポルシェ)づくりを追求する。いつも歯に衣着せぬ物言いながらも、その意見は真をついていて、レーシング、ストリート問わずに理に叶ったクルマをつくる。「サーキットでのタイムアタックカー、レーシングカーとは別の側面でカレラ系に相応しいタイヤを」としてADVAN NEOVA AD09を推奨する。

「いつもタイヤに合わせてスプリングレートを選び、減衰力を何度も変えてセットアップする。下手にタイヤを変えるとイチからやり直しだから。タイヤに合わせた足まわりを、ひとつずつ究めていく」と常日頃から断言し、日々サーキットに通い詰め、それを実践する男である。991前期型GT3RSを使って富士スピードウェイで、1分45秒2というレーシングカーを凌ぐようなタイムを叩き出したかと思えば、昨今は本格的なレースへの参戦を開始した。GTワールドチャレンジ・アジアの日本ラウンドでは仲間たちとチームを立ち上げ、718ケイマンGT4RSクラブスポーツを自らも駆ってクラス・チャンピオンを獲得するなど、その実力は折り紙付きだ。

この911カレラSの足もとを支えるのは、ADVAN NEOVA AD09(F:265/35R19、R:325/30R19)である。ADVANブランドが誇る「ストリート最強のスポーツタイヤ」の最新作として、2021年12月9日に発表された銘柄だ。「Nコード(ポルシェ認証)」に象徴されるように世界で一番タイヤにこだわるポルシェに対して、それでも敢えてADVAN NEOVA AD09をマッチングさせ、その意見を大塚に委ねたのだ。

結果としては、なにもネガティブな評価はなかった。むしろ、純正承認タイヤを凌ぐほどに、991型911カレラSの性能と世界観にフィットしたという。

「思ったより静かで乗り心地もいいし、いざ攻めればちゃんと食うしね。どっかへ飛んでいっちゃう感じもしない。純正タイヤから履き替えたら、むしろNEOVA AD09のほうがいいと思う場面が多々あった。いつ何時(なんどき)もオールマイティで、いいタイヤだと思う」

大塚が述べる「何にも特化していなくていい」というのは、簡単なようでいて一番難しい要求性能だということを知る。ドライ、ウェットを含むグリップ性能に加えて、静粛性を含めた常用快適性、耐摩耗性といったコストパフォーマンスの高さなど、あらゆる要求性能をすべて高い次元で整えたがゆえの「何にも特化していない」ということだ、と。ヴィジュアルを含めてストリートカーでの理想像を突き詰め、その上でレーシングカーの世界をも知るようになった大塚にとっては、この「全方位的高性能」が肌感覚で馴染むのだろう。

「タイヤの能力を身体全体で感じる。
自分の未熟さを早いうちから教えてくれる」
──ポルヘッド編集長 髙田興平

「YOKOHAMA/ADVANが思い描くハイグリップスポーツタイヤの頂点とされるADVAN A052は、凄まじいほどのドライグリップ性能を持っています。それは確かに、実際に自分の腕をカバーしてくれるほどの包容力を持ちます。グリップ限界値まで余裕がある領域であれば、その安心感とか、実際に速さという意味では素晴らしい。だけど、いざグリップの限界値付近を迎えたとき、そのスイートスポットってけっこう狭くて、限界を超えた先の領域ではボクは何もできない。自分の腕を超越しているプロツール的なグリップ力であることを感じました」

964型911カレラ2を愛車として、日々の移動からスポーツ走行までこなすポルシェ専門誌「ポルヘッド」編集長、髙田興平はそう過去を振り返る。ADVAN A052が有する頂上的性能の、その片鱗を理解したうえで、ADVAN NEOVA AD09に履き替えての印象だった。

「ADVAN A052ではパイロンコースのレッスンで、突っ込みきすぎて何度もスピンしたRのキツいコーナーが、ADVAN NEOVA AD09ではその手前で何とか凌げるんです。“あれ、グリップ力の限界はここかも!?” って伝わってくるという感覚。たとえ自分が未熟であっても、タイヤと対話できて、タイヤの限界を相談できるかのような乗り味に驚きました。この964型911カレラ2は、約30年前のクルマ。グリップ力だけを追い求めた最新のスポーツタイヤではチグハグな部分が出てきます。コンマ1秒を削り取るプロフェッショナルならまだしも、当時の乗り味を含めて走りを楽しむクラブマンが“ポルシェを愉しむ”という意味では、ADVAN NEOVA AD09に魅力を感じました」

ADVAN NEOVA AD09の魅力は、柔軟性にあると思う。国産軽自動車を含むコンパクトカーから、500psを軽く超えるようなチューニングカー、そして髙田が親しむようなヤングクラシックなポルシェまで、走りを楽しむ多種多様なカテゴリーのそのすべての世界観を受け止めることこそがNEOVAの強みだと再確認した。それはヤングクラシックなモデルを最前線へと連れ戻す手助けをして、大塚が表現する「ストリートチューニングの理想像」も支える。

ポルシェ911カレラ=ADVAN NEOVA AD09。
“ストリート最強”とは、すなわちそういうこと。

ADVAN NEOVA AD09は、過去に例がないほどのサイズ拡充を図っている。下は15インチから上は21インチまで。ポルシェ界隈で言えば、現行992型、あるいは991型であっても911GT3-RSに対応する21インチサイズまでを取り揃えた。GT3 RSをロードコーイングできるレーシング直系マシンと言うのなら、それは確かにADVAN NEOVA AD09の方向性と符合する。前段で記したポルシェを愛するジェントルマン・ドライバーたちを満足させつつも、そうした進化を絶やさないことがまたADVANらしい。

装着サイズは991カレラSがF:265/35R19、R:325/30R19、964カレラ2がF:225/40R18、R:265/35R18となる。

考えてみたら、それってポルシェが提唱する“カレラ”の定義とそっくりだ。レーシング直系のホットモデルとして君臨するGT3/RS系、そしてラグジュアリーグランツーリスモとしてこの世のハイエンドを謳歌するターボ系ばかりがポルシェ911ではない。その狭間で「ポルシェらしさ」を突き詰めてきた軸にあるのがカレラ系だ。それは、いつ何時もライバルを蹴散らすほどの動力性能を秘めていながらにして、普段は鼻歌混じりで転がせるほどに快適なまま24時間365日連れ出すことができて、あらゆるライフスタイルにマッチする。

「ストリート最強のスポーツタイヤ」というのは、決して通のみが扱えるような激辛銘柄ではない。クルマ好き、走り好きという趣味嗜好の範疇に立ったうえで「あらゆる用途を受け入れる」という意味での“最強”である。同じコンセプトでクルマをつくり続けてきた911カレラとのマッチングを前にして、そう再確認した。尖っているから“最強”なのではなく、全方位的に優秀かつ使い勝手がいいから“最強”なのだ、と。

911GT3系に象徴される21インチまでの拡充を踏まえ、今回の取材では改めて「ADVAN NEOVA AD09とはすなわち、ポルシェ911カレラなのだ」ということを認識したのだった。

(了)

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