ニュースリリース

第三世代のタイヤ設計基盤技術を開発

設計の幅や精度が飛躍的に向上

2005年05月24日

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横浜ゴム(株)(社長:南雲忠信)は、第三世代のタイヤ設計基盤技術を開発した。新技術は、高精度シミュレーション技術「マルチスケール・シミュレーション」と数千の最適設計案を地図情報で表示する「マルチパフォーマンス・マップ」によって構成される。新技術の確立によって、タイヤ設計の幅や精度が飛躍的に向上するとともに、乗り心地、操縦安定性、静粛性などをより高い次元でバランスしたタイヤ作りが容易になった。

「マルチスケール・シミュレーション」は、人体の働きを、個体、器官、細胞など大きさの異なるスケールごとに解明し、その関連性で考察しようというバイオメカニクス(生体工学)の概念を導入した新技術。従来はタイヤ単体を基本にしたシミュレーションだったのに対し、「マルチスケール・シミュレーション」は、ポリマーなどのミクロな材料物性、構造などのマクロなタイヤ特性、さらにクルマとの装着状況などと、幅広いスケールでのシミュレーションが可能になる。この結果、例えばコンパウンドの組成による物性値予測、コンパウンドと凹凸のある路面との摩擦係数予測を踏まえた上で、FR車を想定した前・後輪それぞれの摩耗状態が評価できるなど、より実際に近い状態で性能予測ができるようになった。

一方「マルチパフォーマンス・マップ」は、遺伝による生物の進化過程を模擬し、さらに数多くの最適解を一度に算出する工夫を凝らした多目的遺伝的アルゴリズムを応用して開発した。タイヤに要求される多くの性能は、一方を優先するともう一方を犠牲にする関係にある。このため性能バランスの最適解は複数存在するが、従来の最適化技術では一つの「最適化」案しか提示できなかった。それに対し、「マルチパフォーマンス・マップ」は、数千にも及ぶ「最適化」案とその設計情報を導き出せ、地図情報で表示できる。この結果、例えば乗り心地、操縦安定性、静粛性について、「最もバランスの良い設計」「乗り心地を最高にした場合の他性能の状態」などが、基本設計段階において容易に分かるようになった。

一般にタイヤの設計は、最初に目標性能を設定した後、形状、構造、材料を決定し、試作、性能評価、設計変更を繰り返して、最終的に乗り心地や操縦安定性などのバランスを図り商品化する。こうした設計作業の流れは昔も今も大きくは変わらないが、かつて実際に試作品を作り性能評価したのに対し、現在はコンピュータ・シミュレーションを中心とした第二世代的手法が主流になっている。これに対し新タイヤ設計基盤技術は、全く新しい「マルチスケール・シミュレーション」と「マルチパフォーマンス・マップ」の導入によって、設計の幅や精度が飛躍的に向上した第三世代の設計技術といえる。