ニュースリリース

生体情報で感覚を定量評価する手法を開発

ヒトの感性を活かした運転しやすいタイヤづくりに活用

2004年06月24日

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横浜ゴム(株)(社長:冨永靖雄)は信州大学繊維学部感性工学科と共同で、生体情報によって、運転のしやすさなどの感覚を定量的に評価する方法を開発した。運転操作に伴う上肢の筋肉の収縮活動から運転のしやすさを、また、歯の噛み締めなどの力みによって運転のストレスを評価するもので、いずれもドライバーの筋肉の収縮活動の変化を筋電図によって測定する。従来、タイヤの操縦安定性の評価は、その多くをテストドライバーの官能評価に頼っており、運転のしやすさや運転のむずかしさといった 感覚を物理的に計測したりシミュレーションで数値化することは困難とされていた。

運転のしやすさの測定では、左右の上肢を動かす三角筋がハンドル操作の方向に応じて交互に収縮することに着目した。左右の三角筋は、スムースなハンドル操作が行われている場合には交互に収縮するが、運転操作が難しい場合には左右同時に収縮する。性能の異なる複数のタイヤ間でレーンチェンジ走行による比較を行ったところ、標準的なタイヤに比べて高性能タイヤの方が、またオーバーステア傾向のタイヤよりアンダーステア傾向のタイヤの方が、左右同時に収縮する頻度が少ないことが判明した。これは、操縦安定性に優れた高性能タイヤの方が運転しやすいという従来の官能評価とも一致した。

一方、運転のストレスの測定では、運転中の様々な精神的負担によって生じる歯の噛み締めに着目した。顎の咬筋という筋肉の収縮を筋電図によって計測し、噛み締めの頻度を数値化した。性能の異なる複数のタイヤ間で比較を行ったところ、標準的なタイヤに比べて、オーバーステア、アンダーステア傾向のタイヤでは、ともに噛み締めの頻度が倍以上高いことや、同じタイヤでも日中より夜間の方が噛み締めの頻度が倍以上高いことが判明した。このストレスの測定技術は、タイヤ以外に、車両そのものや道路状況などドライバーを取り巻く様々な環境の評価にも活用できる。

生体情報を利用した評価手法が確立したことによって、これまで官能評価の表現の難しさから入手が困難だった一般ドライバーによる評価データが収集できるようになった。今後、横浜ゴムでは、幅広い年齢層の男女ドライバーから、運転時間、走行距離、天候など様々な走行条件でのデータを収集し、ヒトの感性を活かした運転しやすいタイヤの開発に取り組む考えである。

※筋電図
皮膚表面に貼り付けたセンサによって、筋肉の収縮度合いに応じて変化する微弱な電位を計測する手法で、筋肉の収縮活動を電気信号として応答良く計測できる。

※写真をクリックすると印刷用高解像度画像がダウンロードできます。

筋電図の測定状況。身体にセンサを貼り付け筋肉の収縮活動を測定する。

筋電図の測定状況。身体にセンサを貼り付け筋肉の収縮活動を測定する。