ニュースリリース

ゴム廃材をタイヤ原料へ再利用

高品質の再生ゴムでタイヤの品質が低下しない

2001年10月29日

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横浜ゴム(株)(社長:冨永靖雄)は、(株)豊田中央研究所(本社:愛知県長久手町)が中心となって開発した「せん断流動場反応制御技術〔(株)豊田中央研究所、トヨタ自動車(株)、豊田合成(株)の3社による共同開発〕」を応用し、使用済みのゴム部材やトラック・バス用タイヤのトレッド部分をタイヤ原料などに再利用するマテリアルリサイクル技術を実用化した。
「せん断流動場反応制御技術」では、従来技術で実現できなかった高品質のゴム原料に再生できるため、新タイヤに配合しても品質が低下しない。また薬剤を使わず、電気と水のみで製造するため従来の処理方法による再生ゴムに比べコストが安くなる利点がある。同技術を導入することで今後、工場で発生したゴム廃材を自社内で再生処理し新タイヤの原材料などにリサイクルしていく。2004年には年間1,500トンの廃棄物を削減できる計画。リサイクル設備は三重工場に設置する予定。
ゴムは加硫することで、鎖状のゴム分子同士が硫黄分子により結合(架橋)され強固で弾力のある加硫ゴムになる。従来の熱と薬剤による再生ゴムの製造方法では、鎖状のゴム分子自体を切断してしまうためゴムの物性が大きく低下することが問題となっていた。「せん断流動場反応制御技術」では熱、圧力、せん断力を与えることで加硫ゴムの硫黄分子の結合部分(架橋点)を選択的に切断することができる。そのため、再生したゴムは新ゴムに近い加工性と物性を持つ。
当初はゴム分子の構造上、再生処理しやすいブチルゴム製の加硫ブラダーと天然ゴム比率の高いトラック・バス用タイヤのトレット部分で再生ゴムを生産する。ブラダーは、グリーンタイヤを加硫する際に高温、高圧の蒸気でゴム風船のようにふくらみタイヤを内側から金型に押しつけるためのゴム部材で、数百回使用した後に再生処理する。トラック・バス用タイヤについては、製造過程で発生するトレッド部分のゴム屑やスクラップタイヤのトレッド部分などを再利用する。これまでは再生ゴムメーカーから再生品を購入し、タイヤのインナーライナーなどに使用していたが、タイヤの全ゴム量の1.5%未満にしかならなかった。新技術の導入で、再生ゴム使用量の増加が見込めるほか、2004年には原材料費を年間1億6,000万円減らせる計画。
今後、乗用車タイヤの再生ゴム化をめざすとともに、配合技術の確立に力を入れ、軽量化や低燃費化を図った高性能タイヤにも再生ゴムを使用できるようにしていく。最終的には社内で発生する産業廃棄物の完全ゼロ化を図っていく考え。
横浜ゴムは、車の燃費を改善する「ECOタイヤ DNA」シリーズを発売するなど環境保全に積極的に取り組んでいる。廃タイヤのリサイクルについても、1997年にマテリアルリサイクル化プロジェクトを発足し、豊田中央研究所、トヨタ自動車、豊田合成と協力して技術開発を進めてきた。

<タイヤのマテリアルリサイクルをめぐる動き>

近年、資源を有効に使い、ゴミをリサイクルして環境にできるだけ負担をかけない循環型社会をめざす気運が高まっている。2000年5月には、循環型社会形成推進基本法が成立。同基本法では廃棄物の発生抑制に加え、燃料として利用するサーマルリサイクルから、材料として再生利用するマテリアルリサイクルへの転換を促している。
マテリアルリサイクルが社会的に重視されるなか、タイヤリサイクルの現状は、2000年度のリサイクル率が88%を確保しているものの、60%が燃料利用などのサーマルリサイクルで、再生ゴムやゴム粉として再利用されるのは10%にすぎない。従来の化学的処理で再生したゴムは品質低下が大きく製造コストが高いことが要因となっている。そのため、再生ゴムの新タイヤへの配合量は限られ、軽量化や低燃費化など高性能タイヤの需要が高まるにつれ使用量はますます減少している。