■2022年度上期決算説明会
■中期経営計画「YX2023」
■2022年上期の取り組み
■2022年下期の取り組み
■2023年度に売上収益1兆円へ
■サステナビリティ経営
■YOKOHAMAデジタル戦略
おわりに
   
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皆さん、こんにちは。社長の山石でございます。本日はお忙しい中、横浜ゴムの2022年度上期決算説明会にご参加頂き誠にありがとうございます。

これより2022年度上期における中期経営計画『YOKOHAMA Transformation 2023』(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)の進捗と2022年度の年間見通しについてご説明いたします。

「YX2023」(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)は2021年から2023年の3カ年の計画となっており、「Y」はヨコハマ、「X」はトランスフォーメーション、つまり横浜ゴムを深化と探索で変革するという意味がございます。

「YX2023」(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)では、我々が強みとして持っている既存事業の「深化」と、100年に1度の大変革期である市場変化の取り込み、つまり「探索」を同時に推進することにより過去最高の業績達成を目指します。

今後のタイヤ市場についての、我々の考えるシナリオをご説明いたします。

タイヤ市場は、乗用車用タイヤなどの「消費財」とトラック・バス用、農業機械用タイヤなどの「生産財」の2つに分かれておりますが、現在のその市場規模は、おおよそ半々となっています。しかし、今後「CASE」「MaaS」「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」が浸透するにつれ、個人所有の車が減少し、人や物の移動を支えるインフラ車両の増加が予想されます。つまり、お客様が個人から法人へと変化することで、タイヤ市場における、タイヤ消費財の生産財化が進むのではないかと考えております。このようなタイヤ市場の変化に対し、当社は「深化」と「探索」の2つのアプローチによる戦略を推進してまいります。

タイヤ消費財においては「高付加価値品比率最大化」を掲げ、ウルトラハイパフォーマンスタイヤ、SUV・ピックアップトラック用タイヤ、ウィンタータイヤの3つのカテゴリーに注力し、当社の「ADVAN」、「GEOLANDAR」、「ウィンタータイヤ」の販売を「深化」させてまいります。

次に、タイヤ生産財についてです。世界市場と当社の足元の現状を見ますと、世界市場は消費財と生産財の構成比が1:1であるのに対し、当社は3:2と消費財に偏った構成になっています。タイヤ生産財は、全体で市場構成比に近づけるのと、収益の拡大のためOHTの拡大が急務でありました。今回、TWS事業が加わることにより、全体構成の適正化のみならず市場に比べて良いMIXになり、我々のタイヤ生産財の打ち手「商品ラインアップ」「コスト」「サービス」「DX」を強化できると考えております。

2022年度上期はロシア・ウクライナ情勢のほか、原材料価格や物流費の高騰、自動車メーカーの減産影響など厳しい経営環境でしたが、海外におけるタイヤ販売やOHTタイヤの販売伸長のほか為替の円安も寄与し、売上収益3,915億円、事業利益277億円、営業利益269億円、当期利益233億円となり増収増益を確保しました。

それでは、中期経営計画の進捗について、まずタイヤ消費財についてご説明いたします。

YX2023(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)では、タイヤ消費財の販売本数における高付加価値商品、「ADVAN」、「GEOLANDAR」、「ウィンタータイヤ」の構成比率を2019年度の40%から50%以上に引き上げることを目標としています。「ADVAN」「GEOLANDAR」の新車装着の拡大、補修市場でのリターン販売強化、ウィンタータイヤを含む商品のサイズラインアップ拡充、各地域に合致した販売施策を強化いたします。

それでは、次項で2022年度上期に実施した内容についてご説明させて頂きます。

まず、プレミアムカーへの新車装着についてです。

ADVANはトヨタ自動車「bZ4X」とスバル「ソルテラ」に「ADVAN V61」が装着されました。GEOLANDARにおいては、トヨタ自動車「Lexus LX」に「GEOLANDAR X-CV」が装着されています。補修市場においては、2022年度を「ヨコハマ夏の陣」と位置付け、ウルトラハイパフォーマンスタイヤ「ADVAN Sport V107」と、高性能ストリートスポーツタイヤ「ADVAN NEOVA AD09」を中心に「ADVAN」ブランドの販売強化に努め、好調な実績を収めることができました。また、ミニバン専用低燃費タイヤの7年ぶりの新商品である「BluEarth-RV RV03」は、多くのお客様からご好評を頂いています。

モータースポーツ活動では、アメリカで開催された「第100回パイクスピーク・インターナショナル」にて総合優勝を果たしました。また、今年初供給となったバイオマス由来のブタジエンゴムを採用した「ADVAN A052」を装着した車両はクラス6位で完走いたしました。

当社が高付加価値品と位置付ける「ADVAN」「GEOLANDAR」「ウィンタータイヤ」、そして18インチ以上の上期販売実績はこちらのとおりです。それぞれ2021年度上期を上回る販売伸張となりました。

また、AGW各カテゴリーの新商品投入とサイズ拡大においても、計画どおり進捗しています。

当社は、3月25日にTrelleborg Wheel Systems事業の買収についてTrelleborg社と合意しました。本取引の概要です。

本買収におけるTWSの企業価値は20億4千万ユーロで、EBITDAマルチプルは約9倍です。EUをはじめ必要な各国の競争法に基づく手続きを経た上で、2022年度下期以降の買収完了を予定しています。買収資金は、自己資金および借入金で賄う予定です。当社はキャピタルアロケーションの方針に基づき、2021年には、3月に新橋にある本社ビルを、また11月にはハマタイト事業を売却しました。加えて、国内拠点統廃合等により横浜ゴムグループの不動産を順次売却しております。また、政策保有株式についても順次売却を進めております。

これら施策によりキャッシュを創出し、M&Aなどの新たな成長分野に経営資源を振り向けております。なお、TWS買収発表後の3月28日に、JCRより、当社のキャッシュフロー創出力から見て中期的に財務構成を相応の水準まで改善できることから、当社の格付をA+に維持するとの見解が発表されました。この信用力を活かし、6月には、普通社債300億円を好条件で発行しております。

次に、MB事業です。

ホース配管事業では、北米における自動車用ホース配管の生産体制の再編を行っています。

工業資材事業ではコンベヤベルトの国内シェア最大化を掲げており、国内では上期に約5割までそのシェアを伸ばしております。今後、更なるシェア最大化に向け、今年3月より平塚製造所の生産能力増強を進めており、2023年10月より生産を開始する計画です。

また、航空部品事業は工業資材事業との事業統合を今年3月に行い、構造改革を推進しています。

それでは、2022年度下期の取り組みをご説明いたします。

当社はかねてより、MIX改善投資を実施しており、この下期からは18インチ以上の生産設備が順次稼働を開始いたします。
新城工場では、18インチ以上の新設ラインでの生産を開始し、三重工場では、大型SUVサイズの増産を開始いたします。18インチ以上の生産能力は、2023年度には構成比41%となる見込みです。

続いて、タイヤ生産財の成長ドライバーであるOHT事業についてご説明いたします。

YOHTは買収時から市場の成長率を大きく上回り成長を続けております。これに対応し、2023年に稼働予定だったヴィシャカパトナム工場を、本年8月より前倒しで生産を開始いたします。これにより2022年度末の生産能力は2019年度比で約4割増となります。今後、より多くの需要に応えられるよう、2025年には更なる増強を計画しています。

また、TBR事業においては、米国ミシシッピ工場はかねてより改善に取り組んでまいりましたが改善が進み、本年の生産本数は過去最高となる見込みです。今後も米国の旺盛なTBR需要に応えてまいります。

更に三重工場では、国内および欧米で需要の高まりを見せる小内径のトラック・バス向けタイヤの増産投資を行います。今年は氷雪性能重視型スタッドレス「905W」やオールシーズンタイヤ「BluEarth 711L」といった新商品を投入し、更なる拡販に努めてまいります。

以上を踏まえた2022年度の年間予想です。

売上収益は8,550億円、事業利益は625億円、営業利益は605億円、当期利益は420億円を見込んでおります。また、配当金につきましては、中間配当は一株当たり33円、年間では一株当たり66円を予定しており、2期連続の増配を計画しております。

当社は創立100周年の2017年に、売上高1兆円/営業利益1,000億円を目標としましたが、果たせませんでした。今期は、「GD2020」で果たせなかった売上収益の目標を3年遅れで達成する見通しです。

2023年度には、我々が強みとして持っている既存事業の「深化」と、100年に1度の大変革期である市場変化の取り込み、つまり「探索」を同時に推進することにより、「GD100」で成し得なかった売上収益1兆円、過去最高の業績を達成し、過去100年の集大成といたします。

続いて、サステナビリティです。当社のESGの取り組みと事業戦略の関連性についてご説明いたします。

当社は、「未来への思いやり」というスローガンのもと、「地球環境のために」「製品を通して」など5つのマテリアリティを事業戦略に結びつけ、基本理念の実現を目指します。

環境分野では、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの取り組みだけでなく、生物多様性保全の取り組みを平塚市の金目川など拠点周辺地域で実施しており、今般、海洋分野への取り組みとして神奈川県栽培漁業協会への活動支援金の寄付も行いました。

また、地域共生、人権尊重、ダイバーシティ、コーポレートガバナンスなどE・S・Gすべての重要課題に取り組み、これらを持続的な企業価値向上に繋げてまいります。

カーボンニュートラルでは、2050年にネットゼロの目標を掲げています。

高付加価値品生産の主力工場である新城南工場では、太陽光発電と再エネ電力の導入、水素等の脱炭素燃料への転換により、2030年までにカーボンニュートラルを実現します。更に、脱炭素化の進行に合わせて「カーボンニュートラルタイヤ」の生産を増やし、市場展開を順次行ってまいります。

続いて、サーキュラーエコノミーのロードマップです。

2月に公表したロードマップを改訂し、2050年の目標を「サステナブル原料100%」としました。この高い目標に向かって、サステナブル素材を使用したレースタイヤの開発やNEDOグリーンイノベーション基金事業などの技術開発を進めてまいります。

社会の取り組みでは、まず人権尊重の取り組みを強化してまいります。

人権方針を4月に策定し、人権デューデリジェンスの取り組みについても今年度実施分より開示を進めてまいります。

ダイバーシティ&インクルージョンでは、2019年より「ダイバーシティ推進タスク」が中心となり、女性活躍だけでなく、多様な人材の活躍できる職場を目指して活動を行っています。

また、人的資本の価値向上も重要な課題となります。

「ウィズコロナ・ニューノーマル」を模索している現在、本社・平塚の統合を機に、ホームオフィス制度やサテライトオフィスの導入など、場所・時間にとらわれない働き方の改革を行い、付加価値人材の育成と選抜などの人事改革を通じて人的資本の価値向上を、持続的な企業価値の向上に繋げてまいります。

また、製造現場でのリスク対策や暑熱対策など、従業員が安全で健康的に働くことのできる職場づくりにも努めてまいります。

コーポレートガバナンスでは、中長期的な企業価値向上に向けた「攻めの経営」の実現のため、2021年度から中期業績連動報酬制度を導入、事業計画へのコミットメントを従来以上に明確にしました。

また、当社の役員は、当社の経営戦略に必要なスキルを有する人材により、多様性を確保し、適切と思われる人員で構成することを基本的な考え方としています。

情報開示につきましては、今年の8月に当社として初めての統合報告書を発行する予定です。その他、TCFD提言に基づく気候関連情報や人権デューデリジェンスなどの情報の開示も、今後更に拡充してまいります。

以上が、上期決算ならびに「YX2023」(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)の進捗となります。

これまで決算発表の場などで、タイヤのデジタル化による情報サービスの強化について、異業種とのアライアンス体制の構築や実証実験開始など新たな付加価値サービスを創出するDXの取り組みをご報告してきました。

今回「YX2023」(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)推進のためのIT/デジタル戦略について整理いたしましたので、担当より説明いたします。

IT企画本部の中村と申します。IT・デジタル戦略について説明いたします。

中長期のビジョンは、企業価値を向上させる為にデジタルを駆使し、更なる成長に向けて持続的な変革を牽引するということです。YX2023を進めるにあたって過去の取り組みと既存資産も有効に活用し、将来に向けて深化・探索による変革を連鎖させていきます。

深化と探索による変革の取り組みは、デジタルを活用して更に加速していきます。深化では、データを活用してプロセスを変革して競争力を強化、探索では、デジタル技術を駆使し新たなお客さまの価値・サービスを創造しレベルアップを図ります。

また、働き方改革を推進し、企業風土改革につなげていきます。プロセス改革を中心に、必要に応じて既存資産のモダナイゼーションを内製化中心で進め、ガバナンス強化にも活用していきます。

深化によるプロセス改善の取り組みを説明します。

次ページでもご説明しますが、横浜ゴムでは既にHAICoLabというデジタルと人の力の協奏で改革を進めるという概念を発表しています。過去から蓄積されたデータ・ノウハウを繋げ、プロセスを制御していくことで、継続的な改善と強い仕組み作りを行い、競争力を高めます。

製品開発では開発の高度化・効率化と技術伝承を実現します。生産ではもの作りのデジタル化を進めます。物流では倉庫管理の展開によるサプライチェーン内のトレーサビリティを2023年までに実現します。国内の販売会社では、物流改革と合わせ注文からお届けまでの効率化により、軽労化を図っていきます。バリューチェーンで繋げていくことで意思決定の迅速化も可能になります。

HAICoLabは人とAI・デジタルの協奏、データ活用と人のひらめき・解釈を加えて「プロセス」と「製品」と「サービス」を革新するというものです。製品開発ではこの概念をベースに開発者が活用するAIエンジンを搭載したコンパウンド開発・タイヤ開発のシステムを既に実現化しております。

加えて本日、プレスリリースにて目標物性値を満たすゴムの配合提案が可能となったシステムの実用化開始を発表させて頂きました。

また、HAICoLabをベースとした開発により、既にEV車両向けの高い静粛性と転がり抵抗の大幅な低減を両立したタイヤの承認をカーメーカーより頂いています。

続いて探索によるサービス拡大への取り組みになります。

当社は2003年からT.M.S(タイヤマネジメントシステム)を展開しています。T.M.Sで培ったノウハウを高度化させていき、タイヤ点検の効率化、更にはビッグデータを活用した独自の点検サービスを拡充・充実させることで「お客様の困りごと解決」を目指しています。

また、既に発表しているセンサータイヤの実証実験を通し、摩耗状態の推定、異常、スローパンクの検知などを実現化することで高付加価値サービスを創出していきます。

働き方改革では、新型コロナウイルスによる出社制限の中、在宅勤務を可能にするネットワーク・コミュニケーション環境の整備をしました。

来年年初に迫る本社移転を機に、迅速な意思決定推進とサテライトオフィスやホームオフィス制度への対応を進めております。自動化・効率化・コミュケーション革新で個・組織の能力を最大化させ、リモートワークでも今まで以上の業務品質を担保し、生産性の向上と更なる価値創造へのシフトを加速させます。

将来に向けて、顧客付加価値向上のためのビジネスモデルの創出、競争優位に向けたプロセスの改革として強い仕組み作りと、多様な働き方でも、デジタルで業務品質担保・生産性向上・業務継承を可能とし、アウトプットを最大化させていきます。これらの活動を事業と一体となり推進、改革を継続できる企業風土を目指していきます。

デジタル戦略は以上です。

ご紹介してきました各戦略を着実に推進し、全社一丸となって「YX2023」の目標達成を図ってまいります。
ご清聴ありがとうございました。