■中期経営計画 YX 2023
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■中期経営計画 YX 2023
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社長の山石でございます。
本日はお忙しい中、横浜ゴムの2020年度決算説明会にご参加頂き、誠に有り難うございます。

これより新・中期経営計画『YOKOHAMA Transformation 2023』(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)についてご説明いたします。

まずは「GD2020」の振り返りです。
「GD2020」では各事業の強みを再定義した成長戦略を実行してまいりました。

タイヤ消費財事業では「プレミアムタイヤ市場における存在感の更なる向上」を掲げ、4つの戦略を推進してまいりました。

1つ目のプレミアムカー戦略ではハイインチ高性能タイヤを中心に新車装着を拡大し、ポルシェ「カイエン」やBMW「X3」など13車種に採用されました。

2つ目のウィンタータイヤ戦略ではオールシーズンタイヤ「 BluEarth-4S AW21 」や北米向けスタッドレスタイヤ「iceGUARD iG53」など3商品を投入しました。

3つ目のホビータイヤ戦略ではSUV・ピックアップトラック向け「GEOLANDAR X-AT」などあらゆる自動車ユーザーの趣味に対応する6つの新商品を投入しました。

また、4つ目のコミュニケーション戦略ではデジタルを活用したダイレクトマーケティングを強化し、エンドユーザーとのコミュニケーションを活性化いたしました。その結果、市場でのプレゼンスを向上させることができました。

タイヤ生産財事業では「タイヤ生産財を次の100年の収益の柱へ」という目標を掲げてOHT事業、TBR事業の強化に取り組んでまいりました。2016年に買収したATGの強い成長により、売上高におけるタイヤ生産財事業の構成比率は、当初計画を上回ることができました。

また、TBR事業では2015年に操業を開始した米国ミシシッピ工場に関して、2018年に減損損失を計上し、皆様にはご心配・ご迷惑をおかけしてしまいましたが、設備面や人材面の課題に対応するなど供給改善に取り組み、販売拡大に努めております。

最後に、MB事業では「得意分野への資源の集中」を掲げ、自動車部品事業や海洋事業を強化してまいりました。自動車部品事業では北米での自動車用ホース配管の納入拡大、海洋事業では世界最大の超大型空気式防舷材の納入などを行うことができました。

以上、ご説明の通り、各事業において成長戦略を進めてまいりましたが、売上収益、事業利益に関しては2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の全世界拡大に伴う経済減速などにより、当初目標の売上収益7,000億円、事業利益700億円は達成することができませんでした。

一方で、財務体質は着実に改善することができました。
2016年のATG買収時に3,359億円だった有利子負債は、2020年度には2,078億円と大幅に削減した結果、D/Eレシオは0.5倍となり、「GD2020」の財務目標の0.6倍を達成いたしました。

その他、営業キャッシュフローは3年間累計で2,000億円という目標に対し、実績は2,365億円となり、配当性向30%という目標に対しては安定的な配当を実施し、39%という結果になりました。

以上が「GD2020」の振り返りとなります。

続いて、新・中期経営計画について、ご説明させて頂きます。

新・中期経営計画は2021年から2023年の3カ年の計画となっており、名称を『YOKOHAMA Transformation 2023』といたしました。「Y」はヨコハマで、「X」はトランスフォーメーション、つまり横浜ゴムを深化と探索で変革する、という意味でございます。

『YOKOHAMA Transformation 2023』では、我々が強みとして持っている既存事業の「深化」と、100年に1度の大変革期である市場変化の取り込み、つまり「探索」を同時に推進することにより、2023年に売上収益7,000億円、事業利益700億円という、過去最高の業績達成を目指します。

そして、2025年には「GD100」で成し得なかった売上収益7,700億円、事業利益800億円の実現を目指し、過去100年の集大成とすることを目標といたします。

それではこれより、その内容について簡単にご説明させて頂きます。

まず始めに今後のタイヤ市場についての我々の考えるシナリオをご説明します。タイヤ市場は乗用車用タイヤなどの「消費財」とトラック・バス用、農業機械用タイヤなどの「生産財」の2つに分かれていますが、現在のその市場規模はおおよそ半々となっています。 

しかし、今後「CASE」「MaaS」「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」が浸透するにつれ、個人所有の車が減少し、人や物の移動を支えるインフラ車両の増加が予想されます。つまり、お客様が個人から法人へと変化することでタイヤ市場における消費財タイヤの生産財化が進むのではないかと考えております。

このようなタイヤ市場の変化に対し、当社は「深化」と「探索」の2つのアプローチによる戦略を推進してまいります。

消費財タイヤにおいては「高付加価値商品比率最大化」を掲げ、ウルトラハイパフォーマンスタイヤ、SUV・ピックアップトラック用タイヤ、ウィンタータイヤの3つのカテゴリに注力し、当社の「ADVAN」、「GEOLANDAR」、「ウィンタータイヤ」の販売を「深化」させてまいります。

一方、生産財タイヤにおいては「コスト」、「サービス」、「DX」、「商品ラインアップの拡充」をテーマに掲げて市場変化を「探索」してまいります。

この2つの取り組みについては、順を追ってご説明させて頂きます。

まず、タイヤ消費財です。

本中期経営計画ではタイヤ消費財の販売本数における高付加価商品、すなわち「ADVAN」、「GEOLANDAR」、「ウィンタータイヤ」の構成比率を現在の40%から50%以上に引き上げることを目標とし、「ADVAN」「GEOLANDAR」の新車装着の拡大、補修市場でのリターン販売強化、ウィンタータイヤを含む商品のサイズラインアップ拡充、各地域に合致した販売施策、を強化いたします。

これら高付加価値商品の商品開発及びブランド力の更なる強化に取り組んでまいります。まず、プレミアムカーへの新車装着については技術力の高さの証明でもあり、引き続き注力してまいります。

また、ウィンタータイヤの氷雪性能向上にも積極的に取り組んでおり、北海道とスウェーデンに冬用タイヤのテストセンターを所有しています。北海道タイヤテストセンターでは屋内に試験設備を構えており、昨年11月には様々な温度域での開発を可能とする新たな冷媒装置を設置するなど開発体制を強化しています。

そしてモータースポーツ活動では昨年、ニュルブルクリンク耐久シリーズSP9 Proクラスでシリーズ・チャンピオンになったBMWカスタマーチームのワーケンホルスト・モータースポーツと最高峰クラスSP9 Proクラスでのシリーズ・チャンピオン連覇とニュルブルクリンク24時間レースでの総合優勝を目指します。

SUPER GT GT500では日産とトヨタの2台体制で臨み、表彰台そして優勝を目指し「ADVAN」ブランドの強化を行っていきます。オフロードレースでは北米やアジアのシリーズ戦に参戦し「GEOLANDAR」ブランドの強化を行ってまいります。

そして「商品・地域事業戦略」を推進し、各地域の市場動向に沿った商品を拡販してまいります。

例えば北米では、SUV・ピックアップトラック向けに「GEOLANDAR」、日本ではスタッドレス、欧州ではUHPタイヤの「ADVAN」や「ウィンタータイヤ」の拡販に取り組んでまいります。

それらの実現に向け、各地域の開発、供給、販売体制を最適化し、2023年の販売本数は2019年比で「ADVAN」で150%、「GEOLANDAR」で115%、「ウィンタータイヤ」で120%、18インチ以上のタイヤで155%の販売伸長を計画しています。

続いて、タイヤ生産財です。

タイヤ生産財では「CASE」「MaaS」「DX」などの大きな市場変化の取り込みとして、我々の提供価値を「探索」してまいります。

まず、1つ目の「コスト」です。
市場変化に伴うコスト低減要求の高まりを予測し、インドの乗用車用タイヤ工場であるYokohama India Pvt. Ltd.を「横浜ゴムグループで、最もコスト競争力に優れる乗用車用タイヤ工場」と位置づけ、これまでの生産体制を見直し、将来の市場を睨んだ低コストモデルの確立を目指します。また、タイのトラック・バス用タイヤ工場も同様に低コストモデルによる増産を検討していきます。

そして、2つ目の「サービス」です。
「CASE」「MaaS」の進行に伴う車両保有の法人化が進むにつれ、タイヤメーカーに求められる提供価値はタイヤ単体ではなく「タイヤ+交換」、メインテナンスなどのサービスになると考えます。当社は国内47の都道府県を広くカバーする販売、物流のネットワークを活かし、サービス体制の強化に取り組んでおります。

具体的にはカーディーラーやカーシェア運営会社など法人客先でのタイヤ交換、点検、管理を行うサービスカーの導入を今後も継続的に拡大し、より機動的なサービスの提供を目指します。

3つ目は「DXの推進」です。
今後はタイヤのデジタル化による情報サービスの強化が重要になります。当社は先進センサータイヤの開発を進めておりますが、その機能追加により段階的にサービスと顧客を拡大していく計画です。

まず空気圧に加え、摩耗計測によるフリート企業向け車両管理サービスを実現し、更には路面状況の検知による情報サービス企業などに向けた新たな付加価値サービスを創出します。

この実現に向け、異業種とのアライアンス体制の構築を進めます。本日、当社はアルプスアルパイン株式会社と株式会社ゼンリンと実証実験を開始したことを公表いたします。路面検知システムを搭載したセンサータイヤで得たデータを地図情報と紐づける実証実験を行うことで、新たなタイヤビジネスの検討を進めていきます。

4つ目は「商品ラインアップ」です。
こちらは物流のステージに応じた車両の現在と将来の変化を示しております。

現在はトラック・小型トラック・VANによる輸送が運転手によって行われております。しかし、将来的に車両の電動化・自動運転化が進むと長距離から近距離、人の手に荷物が渡るラストワンマイルまで無人化による輸送となることが予想されます。これら物流を構成する車両の多様化が進むと、タイヤにおいても様々な品種が必要になることが見込まれます。例えばラストワンマイルでの車両にはノーパンク、ソリッドタイヤが採用される可能性があります。

このような物流の変革に対し、トラック・バス用タイヤからエアレスのソリッドタイヤまで多品種のタイヤをワンストップで提供できるメーカーは多くなく、当社の強みです。今後も更なる品種の拡充を進め、市場での優位性を確保してまいります。

次に生産財事業の成長ドライバーであるOHT事業についてご説明いたします。

2016年よりATG、愛知タイヤを買収し、成長に向けたOHT事業の強化を進めてきました。

OHT事業は2021年より開始しております横浜ゴム、ATG、愛知タイヤの事業統合により、本中期経営計画において更に成長を加速させてまいります。そしてYOKOHAMA、ALLIANCE、GALAXY、PRIMEX、AICHIのマルチブランドによる市場展開、顧客要望への対応力を強みに事業拡大を進めていきます。

OHT市場は今後も旺盛な需要が見込まれており、インド・ヴィシャカパトナム新工場の建設など積極的に増産投資を行ってまいります。2025年には売上収益1,400億円、全社利益の3割をOHT事業で稼ぐことを目指します。

最後にTBR事業についてです。

TBR事業では既に販売が生産能力を上回りつつあります。引き続き、米国ミシシッピ工場の安定供給の確保に努め、需要にしっかり応える体制を構築してまいります。

また、TBR市場についても旺盛な需要が継続することが見込まれておりますので、TBR工場の更なる増産投資を計画し、2025年には1,000億円までの売上拡大を目指します。

続いてMB事業です。

MB事業では、当社の強みであるホース配管事業及び工場資材事業にリソースを集中することで、MB事業の成長をけん引し、安定収益を確保できる構造を確立いたします。特にホース配管事業では油圧ホース市場におけるプレゼンスの更なる拡大、「CASE」対応による新技術で成長をけん引していきます。また、水素社会に向けた取り組みも強化してまいります。

一方、ハマタイト事業においては得意分野に集中することで、事業体質の改善を図ります。また、厳しい環境が続く航空部品については構造改革を断行し、時代に見合った事業展開を目指します。

そして経営基盤の強化として「人事戦略」「ESG]についてご説明いたします。

一つ目の「人事戦略」です。
まず更なる成長を実現するため、人事制度を変革いたします。管理職以上に対しては報酬と業績の連動を強化することで、継続的に成長できる組織を目指します。そして管理職をジョブ型の配置と処遇にすることで適材適所を推進します。

また、社内教育を充実させるとともにキャリア採用、社内早期登用、グループ会社の人材、シニア層人材など様々な方面から最適な人材を登用することで、経営管理職層のレベル強化を図ってまいります。

そして、大きな環境変化に機動的に対応できる強い組織作りを目指し、現在、新橋本社と平塚製造所の統合を計画しております。生産、販売、技術、物流の拠点を統一しよりスピーディな意思決定を実現します。

この統合に伴い、従業員の働き方改革を継続して推進していきます。場所・時間を問わない在宅・フレックス勤務の拡充を通じて、ワークライフバランスの改善、出産・子育て世代の女性の活躍及びキャリア形成の実現、介護や育児・配偶者転勤に伴う離職の解消などを進めてまいります。

続いて「ESG経営」についてです。

当社では「未来への思いやり」をスローガンとして掲げ「ESG経営」に取り組んでおります。

まずは「E」の環境です。

当社では環境に配慮した製品の提供にこれまでも取り組んでまいりました。環境配慮への更なる高まりを受けて、自動車市場では今後EV化の加速が見込まれています。タイヤの軽量化、水素充填用ホースの拡販など環境商品の開発と販売を通じて環境負荷軽減に取り組んでまいります。

また、カーボンニュートラルを目指し、再生可能エネルギーの活用拡大や省エネ活動を引き続き推進してまいります。合わせてサーキュラーエコノミーへの取り組みとして、再生可能原料・リサイクル原料について、2030年に使用率30%以上を目指してまいります。

そして、2007年から継続して推進している「YOKOHAMA千年の杜活動」では、国内14拠点、海外では8カ国21拠点で植樹を実施し、2023年までに植樹と苗木提供をあわせて106万本を目標に今後も活動を計画しております。

続いて「S」の社会です。

当社では、2016年に設立された従業員による「YOKOHAMAまごころ基金」の活動において、昨年は新型コロナウイルス感染症対策支援活動として支援金の寄付及び当社の冬用タイヤテストコースがある北海道旭川市に消毒薬・マスクの寄付などを実施しております。

また、先日の福島県沖を震源とする地震の支援活動として、日本赤十字社を通じ義援金の寄付を実施しております。今後も地域社会に根ざした支援活動を通じて、企業としての責任を果たしてまいります。

続いて「G」のガバナンスです。

政策保有株式については株の解け合い時に自社株買いを実施し、株主価値の向上に努めます。またグループガバナンスでは子会社管理の強化、内部通報制度の海外拠点の展開などグローバルでのマネジメント強化を図ってまいります。

最後に、従業員にとって安全で働きやすい環境づくりについてです。当社ではダイバーシティを推進するためのワーキンググループを設置しており、管理職向けにLGBTセミナーを開催するなど多様な人材が働きやすい職場環境づくりを行っております。また、工場では職場リスク体感訓練を通じたリスクアセスメントを実施するなど従業員が安全で安心して働ける職場づくりを目指しています。

なお、当社のESG活動については世界的にも高く評価されており、ESG投資の世界的指数であるFTSE4Good Index Seriesにおいて16年連続選定いただいております。今後もESG活動を推進し社会貢献に努めてまいります。

以上、新中期経営計画『YOKOHAMA Transformation 2023』のご紹介をさせて頂きました。

今ご説明した戦略の推進によって、2023年にはこちらに記載の財務目標の達成を目指します。

今後とも皆様のご指導、ご鞭撻をどうぞ宜しくお願い申し上げます。
ご清聴まことにありがとうございました。