ロードバイクに乗るなら自分の体に気を遣うべし。プロ選手に聞く体のメンテナンスのこと
既に痛むのなら専門の医療機関に相談

取材中に体の痛みについて聞いたところ、真っ先に挙手してくれたのは宇賀選手でした。
腰痛はサイクリストのみならず、一般的にも多くの人を悩ませている痛みのひとつです。原因も人によってさまざまで、宇賀選手も具体的な原因は不明でした。手術を経て、現在は痛みも感じずに自転車に乗れているそうです。
「椎間板ヘルニアは患者数も多く、医療の進歩も凄まじいと聞きました。昔は数㎝切開して手術していたそうですが、自分のときは8mm切開で済みましたし。他にももっと低リスクでできる手術もあるそうですよ。」
腰痛のみならず痛みは体からのサインです。放置したり自己流でケアするのではなく、しかるべき専門医や医療機関に相談するのが得策でしょう。違和感や痛みを「どうせ治らないから」と決めつけずに、まずは一度向き合ってみることが大切です。
「予防」という観点でのフィッティング

多くのサイクリストを悩ませる痛みのひとつに、膝の痛みが挙げられます。腰痛同様、膝もさまざまな要因が痛みを招いているケースが多く、一概に原因を特定できないのが難しいところです。
その中で時折よく耳にするのが「クリート位置を変えたら膝が痛くなった」という話。選手のみなさんにも聞いてみたところ……。
*クリート:ビンディングペダルに固定するため、サイクルシューズにセットする消耗パーツのこと
バイクフィッターというのは、サイクリストの体格や可動域を計測し、サイクリストが所有するバイクを的確なポジションにセッティングする専門家のこと。一般サイクリストにとっては、あまり馴染みがない存在かもしれませんが、プロ選手にとっては大切なパートナーのひとりです。しかし、小石選手は「一般のサイクリストもフィッターにポジションをお願いした方がいい」と教えてくれました。
「長距離を走ろうと思うと、乗っている時間が長くなります。痛みを感じながら走るのか、それとも痛みを感じずに走るのかには大きな違いがあります。痛み始めて対処するのではなくて、予防できるなら初めから予防しなくてはいけません。これってアマチュアのサイクリストも同じことだと思うんです」(小石選手)
例えば体を鍛えるためにジムへ行くときも、初めはトレーナーの指導を受け正しいフォームを学ぶでしょう。それと同じように、自転車もその人にぴったりのフォームで乗り始めるのが本来なら理想とされています。
「みんなママチャリで自転車は乗っているから、『乗れている』と思っているんですよね。でもロードバイクとママチャリは違う乗り物なので、正しい乗り方を知る必要があります」(小石選手)
しかしサイクリストにとってフィッティングのようなサービスよりも、フレームやホイール、コンポーネントなど機材にお金をかけがちなのが現状です。タイムを縮めるため、遠くへ行くための投資も大事ですが、一方で体のケアへの投資も重要だと小石選手は指摘します。
「カーボンホイールとか高いじゃないですか。それを買うお金があるんだったら、フィッターとかトレーナーにお金を使った方がいいと思いますね。手足の長さや柔軟性も人によって全然違うので、最適なポジションも個人によって違いますし」(小石選手)
選手たちは通常、バイクが変わったときやクリートが変わったときにフィッティングしてもらうそうです。
痛みを感じてから対処するのは遅い、というのがプロの考え方。しっかりと最適なポジションを出した上で、正しいフォームで乗ることが最大の予防策です。
ロードバイクはライフタイム・スポーツですから

痛みの予防という観点から、合宿後やレース後のリカバリーも欠かせません。マッサージでほぐしてもらい、効果的に回復するのも重要だといいます。
「本来なら週1くらいでマッサージへ通うのが理想ですね。あとセルフケアには電極パッドを貼って疲労度を計測する機器もあります。自転車機材への投資もいいんですけど、体へのケアに投資した方がいいですよ。やっぱり目に見えて違います」(小石選手)
ここまで選手たちが自身の体へ真剣に向き合うのは、もちろん彼らがプロの選手というのもありますが、もうひとつに「自転車が生涯楽しめるスポーツだから」という理由があります。
ライフタイム・スポーツとはプロ・アマや国籍、性別など関係なく、誰もが平等に楽しめるスポーツを指します。自転車はレースのみならず、ポタリングからツーリングまで幅広い楽しみ方ができるスポーツです。
痛みは放置せず専門の医療機関で受診すること。自転車を乗るために必要なサービスに投資をすること。この2点を念頭に、自転車ライフを長く楽しんでくださいね。
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