【日帰り秘湯】川の畔で野天風呂。地元リピーター絶えぬ西伊豆「大沢荘・山の家」

質の良い温泉へ、気軽にサクッと行ってみたい——疲れた現代人の夢と希望が詰まった【日帰り秘湯】では、週末のドライブにぴったりな立ち寄り湯をご紹介します。今回は伊豆半島の西側、松崎町からほど近い「大沢荘・山の家」。地元の方もリピートする、源泉かけ流し×炭酸泉という名湯中の名湯を堪能してみましょう!
2018.08.29

清流またいで旅情溢れる風呂へ

伊豆半島の西側に所在する松崎町から県道15号を東に約6km、徐々に深まる緑を感じながら川沿いを上流に向かいます。すると右手に現れるのが「大沢荘・山の家」です。

「川が増水したら流されちゃうのでは?」
と心配になるような木造の橋を渡った先に、入浴施設があります。それにしても建物の年季の入り方、表構え……すでに名湯の予感に胸のトキメキを抑えられません。

川に面した受付と休憩室からは、せせらぎの音が溢れかえります。出迎えてくれるのは愛想の良い主人。休憩室には冷房はないものの、扇風機とうちわが備え付けられています。う〜ん風流!たまらん!
決して新しい建物ではありませんが、丁寧に扱われており清潔さがにじみ出ています。そして休憩室には所狭しと有名人やテレビ番組の色紙が貼られてあります。もしかしてここは、とんでもない名湯なのでは? 予感が徐々に確信に変化していきました。

“かけ流し×炭酸泉”という至福の泉質!

「ここはやっぱり泉質が自慢なんですよ!」
そう語るのは、受付のおじさん。そうそれもそのはず、ここは「源泉かけ流し」の「炭酸泉」! 源泉の温度は約46度で、勢いの良いあつ湯を堪能できます。

炭酸泉と言えば、ここ最近で一番流行に乗っている泉質といっても過言ではありません。スーパー銭湯などに行くと人工的に作られた炭酸泉に入浴できますが、かけ流しでここま良質な炭酸泉を楽しめるのは日本でも数少ないのです。

「うちは繊細な泡で、体がポカポカ内側から温まるんです」
とにんまり語る受付のおじさんの表情にも、自信が溢れかえっています。さらに弱アルカリ性で美肌効果もあるため「化粧の湯」としても有名なのだとか。
そんなこと言われたら、早く入りたくなっちゃうじゃない! はやる気持ちを抑えて、いざ入浴です。

「もうここしか来ないわよ」地元リピーターさんと遭遇

のれんをくぐれば外に直接つながっている脱衣所、そして露天浴場が広がっています。洗い場も細長いホースの先から流れ出るお湯(後日調べてみたらこちらも源泉とのこと)のみで、秘湯感満載です。備え付けの石けんはないため、訪問の際には持参することをオススメします。

それでは体を流して自慢のお湯にちょっくらお邪魔いたしましょう。先に入っていたお客様に会釈をし、いざ入湯!
「おお、あっつい!」
訪問したのが5月下旬の晴れの日ということもあり、少々お湯も熱めに感じてしまいました。徐々に足先から慣らし、ゆっくり全身で浸かります。とにかく柔らかい印象を受けるお湯です。体の芯にじわじわあたたかさが染みこんでくるようでした。

「ここのお風呂、とってもいいでしょう?」
と先客のおばさまが微笑んでくれます。
「これからの季節は少し熱く感じてしまうかもしれないけれど、寒くなってからは最高なの。上がったあともずっとポカポカ暖かくて本当にすごいのよ。私も隣町に住んでいるけれど、もうここのお風呂だけ通ってるの」

出ました、地元のお客さんお墨付き!
数分浸かって、しばらく緑を見上げながら体を休ませます。全裸で新緑の中に佇むのも爽快の極み。ゆっくり熱を冷まし、再度お湯に浸かります。秋ならば紅葉を楽しみながら、冬の凍てつく日もなお味わい深いだろう……妄想がはかどります。そうこうしているうちに小一時間があっという間に過ぎていきました。

「やっぱり良く温まったでしょ?」
という受付のおじさんに力強く頷いてしまう筆者。火照った体を冷ますべく、川を眺めて休憩室で一休みです。
なんと「大沢荘・山の家」では、湯治として宿泊も可能なのだとか。こんな素敵なロケーションで、時には風呂に入り時にはごろ寝をする——これ以上ないほどの贅沢な時間を過ごせてしまいます。

関東近郊からもほど近い、究極の川沿い名湯を発見してしまいました。疲れた心と体を携えて、西伊豆に向かってはいかがでしょうか。

この記事を書いたライター

大城実結


フリーランスライター・編集者。自転車や地域文化、一次産業、芸術を専門に執筆している。紙雑誌やWeb媒体問わず活動中。イラストや漫画も発表。月の半分は日本のどこかにおり、その土地の温泉や酒、食材に唸る日々が続く。

Webサイト:miyuo10qk.wixsite.com/miyuoshiro



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