令和の旧車乗りの「三種の神器」とは

2021.08.06

昭和の経済成長期の頃(1950年代後半~)には、豊かな暮らしの象徴として「三種の神器」と呼ばれた家電があった。その三種とは「白黒テレビ」「洗濯機」「冷蔵庫」……。
 
そして、1960年代後半になると人々の暮らしはさらに豊かになり、今度は「カラーテレビ」「クーラー」「クルマ」が「新・三種の神器」と呼ばれるようになる。それぞれの頭文字をとって「3C時代、来たる!」なんて言われたりして。
昭和の時代は、豊かさが「所有するモノ」で測られた時代だった。隣の家がカラーテレビを買ったとなれば、負けじと我が家も。向かいのクルマが1000ccなら、我が家は1100cc……。
 
ちなみに1970年代後半の中古車屋には、プライスボードに「クーラー・カセットデッキ・アルミホイール付き!」なんて誇らしげに書かれたクルマが並んでいた。
当時のクルマ好きな若者(自分も含めて、ほとんどの男子がそうだった)にとっては、まさにそれが「三種の神器」だったのだ。「おぉ、クーラーが付いてる!」なんてね。
 
やがて80年代に入ると、「モノからコトの時代へ」なんてキャッチコピーが飛び交うようになり、気がつけば、いつのまにやら「三種の神器」なんて言葉は聞かれなくなった。
平成の時代には、誰もが同じように同じようなモノを所有していた。クルマにエアコンやオーディオが装備されているのは当たり前になった。

そして令和の今は、スマホひとつあれば、モノさえ所有する必要のない時代…… と言いたいところだが、若者たちはともかく昭和生まれのおじさんは、そうはいかない。
クルマでもなんでもシェアすりゃいいじゃん、そのほうが経済的でしょ!なんて、生まれた時から十分すぎるほどのモノに囲まれて育ってきた世代の発想にちがいない。
 
モノにこだわるおじさんにとっては、今でもクルマは神器なのだ。むしろ、今となっては「クーラー・カセット・アルミ無し!」なんてクルマのほうが神々しかったりする。だから、クルマ馬鹿と呼ばれる。まさに、神器なき戦いである(あ、この駄洒落も今や通じないか)。
 
去年の夏あたりから、街角で小型扇風機を首に掛けて歩く人を見かけるようになった。「ネッククーラー」なんて呼ばれているらしい。
こんな便利なグッズが、クーラー無しのボロ車を乗り回していた“あの頃”にあったら、どんなに助かっただろう、としみじみ思う。

いや、待てよ。エアコンの不調に悩まされる現代の旧車乗りの人たちにとっては、これこそ、まさに令和の神器じゃないか?ラリーカーのヘッドホンみたいに見えなくもないし。ネッククーラーさえあれば、旧車選びの幅も広がるだろう。
 
令和の旧車乗りの「三種の神器」は……
 
「スマホのカーナビ」と「ネッククーラー」と、忘れちゃいけないヨコハマタイヤの「G.T.SPECIAL CLASSIC」(ヒストリックカー用のクラシックタイヤ)。
 
安全で快適なドライブに欠かせない高品質なタイヤは、いつの時代にも神器なのである。

この記事を書いたライター

夢野忠則

自他ともに認めるクルマ馬鹿であり、「座右の銘は、夢のタダ乗り」と語る謎のエッセイスト兼自動車ロマン文筆家。

現在の愛車は手に入れたばかりのジムニーシエラと、トライアンフ・ボンネビルT120、ベスパET3 125。

   

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