Drive in Christmas ~サンタさんは、クルマに乗って~

雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるでしょう……カーラジオから流れる天気予報を聞きながら、まるでJRのコマーシャルみたいね、と助手席できみが笑った。
2018.12.18

雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるでしょう……

カーラジオから流れる天気予報を聞きながら、まるでJRのコマーシャルみたいね、と助手席できみが笑った。

だけど、あの歌と違うのは、今夜がひとりきりのクリスマスイブではないってこと。さぁ、出発しよう。フロントウィンドウに当たるこの雨が雪へと変わったら、そこはふたりのホワイトクリスマスだ。ぼくは、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ……。

ラジオからは、クリスマスにおなじみの曲が流れている。

わたし、子どもの頃、サンタクロースを本気で信じてた。

クリスマスイブに大雪が降ったことがあって、はしゃぐ私を寝かせつけようと父が言ったの。早く寝ないと、サンタさんが来てくれないよって。

サンタさんは、どこにいるの?

ほら、トナカイのソリの音が聞こえるだろう?

その時、本当に聞こえたのよ。窓の外から、シャンシャン、シャンシャンって。あとで気づいたんだけど、それはチェーンを巻いて雪道を走るクルマの音だったの。

ぼくもサンタクロースを信じていたよ。

ある年のクリスマスの朝、風呂場にお菓子のつまった長靴が落ちてた。すると、おやじが大真面目な顔で言ったんだ。

サンタクロースが煙突から出ていく時に、慌てて落としていったにちがいない……。

ぼくは、サンタがホントにやって来たぁ!って興奮したけど、よくよく考えたら風呂に煙突なんてなかったんだ。おやじが、前の晩にわざとそこに置いといたってわけさ。

あなたもわたしも、あの頃は父がサンタクロースだった。でも、ユーミンのこの歌のとおりだったわ。大人になれば、きっとわかるって。今夜8時に、サンタさんはやって来たもの、クルマに乗って……。

あれから何度、ふたりでクリスマスソングを聴いてきただろう。そして、これから何度、クリスマスソングを聴いていくことだろう。長いドライブの途中でクルマは変わっても、ラジオから聞こえてくる歌は変わらない。雪はとけても、刻まれたシーンが消えることはない。

後ろのチャイルドシートでは、息子がすやすやと眠っている。もう今では、雪が降ってもチェーンを巻いて走るクルマはあまり見かけなくなった。この子は、煙突すら見たことがないかもしれない。ぼくらは、どんな夢を見せてあげられるか。

フロントウィンドウの上を、細かな雪が舞いはじめた。明日は三人で過ごす、初めてのホワイトクリスマスになりそうだ。

カーラジオから、今年もジョンと子どもたちの歌声が流れている。

Happy Christmas ……

この記事を書いたライター

夢野忠則

自他ともに認めるクルマ馬鹿であり、「座右の銘は、夢のタダ乗り」と語る謎のエッセイスト兼自動車ロマン文筆家。愛車は一万円で買った90年式のVWゴルフ2と、数台のヴィンテージバイク(自転車)



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