タイヤプランナーの独り言(スタッドレス担当者編)~タイヤ保管の前に~

タイヤの製品企画者はタイヤに関する興味・関心・愛着は人一倍。その接触度合いは非常にディープです。

今回は横浜ゴムのスタッドレスタイヤ・プランナーが発した独り言やつぶやきをまとめてみました。メンテナンスの参考にでもなれば幸いです。

2020.05.15

スタッドレスタイヤを脱いで、サマータイヤに履きかえるタイミングって、難しい。

今年の東京は暖かく、3月上旬には「もう脱いじゃった!」という方がとても多かったと聞いている。僕も実は脱いでいた。もう、雪なんか降るわけがないじゃんと。
ところが!

3月29日に都心で1cmの積雪!!(2020年)

32年ぶりだそうで、それはもうビックリ。

スタッドレスタイヤの開発プランナーのくせに、ひっそりと雪が止むのを自宅で待つことに。。。

スタッドレスタイヤの保管準備

さて、スタッドレスタイヤを脱いだら僕が必ずやっていること。

ちょっとだけ教えちゃう。

出来る限り永く使いたい気持ちはユーザーの皆さんと同じ。

次の冬まで、半年以上も履かないのでタイヤの空気圧は半分くらいまで落とす(タイヤの緊張状態を緩めてあげる)
直射日光を避けるためにタイヤカバーで覆う(ゴムの硬化を抑制)

そして、「小石を取り除いてあげる」ことも大切。

小石を取り除く!?

なんじゃそりゃ!? かもしれないけれど、スタッドレスタイヤの「健康維持」には欠かせない儀式。

スタッドレスタイヤの表面には、氷上の水膜を吸水する「サイプ」がある。

サイプが水膜を吸水することで、スタッドレスタイヤは氷に密着してグリップ力を得る。

これが氷の上を走れる理由。

スタッドレスタイヤのゴムは柔らかいので、サイプを指で押し広げれば底まで覗き込めるほど。

ところが、氷や雪の無い乾いた路面を走ると、柔らかいゴムのサイプの中に、路上の小石が入り込んでしまう。

小石が入り込んで「パカッ」と押し広げられたままのサイプを半年以上も放置すると、次の冬に装着するときには、開いたサイプのままでゴムの硬化が進む。

タイヤの表面全体で言えば、スタッドレスタイヤが氷に接地する面積が減少し、凍結路面での性能が低下してしまう。

そんなの嫌ですよね!?  せっかく買ったのに!

サイプの小石取りが快感

唐突だけど、梱包材の「プチプチ」を潰す瞬間って、癖になる。頭を空っぽにして、ひたすら「プチプチ」。  あースッキリ!

サイプの小石を取り除くのは、「プチプチ」を潰す快感に近いかもしれない。必要な道具はマイナスドライバー1本だけ!

サイプの穴にマイナスドライバーを差し込んで、小石を「ピンッ!」
ぐるりとタイヤ1周、ひたすら 「グリグリ」 「ピンッ!」  
 
これで来シーズンもバッチリだぜ!

ちなみに、クルマの駆動方式によって、サイプに挟まる小石の量は大きく異なる。
最も小石が挟まるのは、FF車両のリヤタイヤ。

フロントタイヤは駆動力が伝えられ、左右に曲がる際にはタイヤのブロックが変形し、
サイプに小石が入り込んでも、すぐに外へ飛び出す力が働く。

つまり、FF車両のフロントタイヤに挟まる小石の数は非常に少ない。
ところが、リヤタイヤは左右に曲がるときでもタイヤは真っ直ぐのまま。

しかも、駆動力も伝わらず、ひたすら転がるだけなので、小石を吐き出す機会も無い。
さらに、フロントタイヤが蹴り上げた小石はリヤタイヤがキャッチしてしまう。。。

FF車両のリヤタイヤは、小石の攻撃を最も受ける過酷な環境に置かれている可哀そうな子。
「おうち時間」にもう一度タイヤをチェックしてもらえると嬉しいなぁ。。。


スタッドレスタイヤの保管方法は動画でも解説しておりますので、こちらもご覧ください!

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横浜ゴム株式会社
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