2021 JRC Round 9 Report

【全日本ラリー選手権 第9戦 / 北海道帯広市】

SS距離の短縮でスプリント色が濃くなったRALLY HOKKAIDO、
JN-1の新井大輝選手組はトラブルを乗り越えて準優勝フィニッシュ!!

JRC Round 9

開催日 2021年9月10日-12日
開催場所 北海道帯広市 近郊
天候 Leg1) 曇り のち 晴れ
Leg2) 雨 のち 曇り
路面 Leg1) ドライ
Leg2) ウェット
グラベル(未舗装路)
総走行距離 669.66km
SS合計距離 86.04km (9SS)
得点係数 1.2 (未舗装路 50km~100km未満)
参加台数 58台(国際格式、およびオープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 14台)
2021 全日本ラリー選手権 第9戦

20周年の節目を迎えた「RALLY HOKKAIDO」は、今年も帯広市をホストタウンに陸別町など北十勝地域をフィールドとして9月9日から12日にかけて開催された。残念ながら昨年に続いての無観客開催となり、当初予定されていた帯広駅前でのスタートセレモニーなどは取りやめとなり、新型コロナウイルスの感染拡大防止に最大限努めて競技が行われた。

良質でハイスピードなグラベル(未舗装路)のステージが特徴の本大会だが、今年は昨年よりもさらにコンパクトな大会に。フィールドの広さは全日本選手権随一であることに変わらないものの、SS(スペシャルステージ)は予定を短縮して9本とされ、合計距離が100kmを下回ったことからポイント係数は1.2が適用される。

特に日曜日のLEG2は3本のSSのみを設定し、その合計距離は22.64kmに留まる。SS距離の比率ではLEG1がおよそ74%とウェイトが大きく、各選手ともスタート前にはオープニングステージから全開で攻めていかなければ勝てないと語っていた。

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過去19回のRALLY HOKKAIDOで、全日本選手権が組み込まれたのは16回。最高峰クラスではそのうちの11回でヨコハマタイヤ勢が優勝を飾っており、海外参戦も通じて鍛え上げられたタイヤのパフォーマンスを見せ続けてきている。

そんな「RALLY HOKKAIDO」、今年もスタートから強さを見せたのはヨコハマタイヤ勢だった。激しいアタック合戦が予想されたSS1「YAM WAKKA SHORT 1 (14.54km)」を制したのは、「RALLY HOKKAIDO」2連勝中の新井大輝選手/小坂典嵩選手組、これに続く2番手は新井敏弘選手/田中直哉選手組で、両者の差は14.54kmを走って僅かに0.2秒という熾烈な親子対決で戦いの幕は開いた。

SS2「RIKUBETSU LONG (4.63km)」はシュコダR5の柳澤宏至選手/保井隆宏選手組がステージベスト、新井親子は大輝選手組が6番手、敏弘選手組が7番手に留まるもSS2を終えての親子ワン・ツー・フォーメーションは変わらず。そしてサービスをはさんで迎えたSS3「NUPRIPAKE 1 (12.53km)」はベストこそライバルに譲ったものの、大輝選手組は0.9秒差のセカンドベスト、敏弘選手組はトップから1.3秒差のサードベストで、大輝選手組はトップを堅守する。

しかしSS3のフィニッシュ直後に大輝選手組のマシンはエンジンに不調が生じてしまい、本来のパフォーマンスを発揮出来なくなってしまった。オープニングステージのリピートとなるSS4「YAM WAKKA SHORT 2」では大輝選手組が4秒差のサードベスト、対する敏弘選手組が本大会初のステージベストを奪ってトップへ躍り出た。

ところがSS5「RIKUBETSU LONG 2」で、まさかの展開になってしまう。トップに立った敏弘選手組は 走行中にエンジンルームから出火、クルーに怪我がなかったのは不幸中の幸いだったが戦線離脱を余儀なくされてしまった。大輝選手組も苦しい戦いになってしまったが、SS5とSS6をなんとか走りきってこの日の最終サービスへ帰還、2番手で初日を終えた。

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日付が変わったころから雨が降った十勝地方、日曜の朝は雨足こそ強くなかったもののステージはウェットコンディション。大輝選手組のマシンはサービスでチェックが行われたがエンジン不調を修復するには至らず、一時は始動に手こずってリタイアを覚悟するという満身創痍の状況であった。

我慢の戦いを強いられた大輝選手組、後ろからは3番手のライバルが差を詰めてくる。LEG2オープニングのSS9「OTOFUKE REVERSE 1 (6.12km)」を終えて2番手の大輝選手組と3番手のライバルとの差は11.9秒だったが、SS10「PAWSE KAMUY 1 (10.40km)」を終えて3.7秒にまで縮まってしまった。最終ステージの「OTOFUKE REVERSE 2 (6.12km)」へポジションキープを期して臨んだ大輝選手組、ステージ順位はライバルにひとつ先行されるもタイム差を1.6秒に留めて2番手を死守。そのままフィニッシュまで走りきり、苦しい戦いながらも準優勝を獲得することに成功した。

また、惜しくも表彰台にはあと一歩届かなかったが、柳澤選手組はLEG1のSS2でステージベスト、SS5とSS6ではセカンドベストを刻んだ。LEG2でもSS7でセカンドベスト、そして終盤のSS8とSS9では連続ステージベストを刻み、R5車両の進化とこれからに期待が高まる戦いぶりを見せてくれた。

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JN-3クラスで圧倒的な速さを見せたのは、前戦の「ARKラリー・カムイ」で優勝を飾っている大竹直生選手/藤田めぐみ選手組(86)。オープニングのSS1から格上のクラスを上回る速さで、同じクラスの2番手にはおよそ28秒の大差をつけるステージベストをマーク。1kmあたり2秒近くライバルを凌ぐ速さはSS2以降も衰えることなく、連続ステージベストでLEG1を終えて40秒以上の大量マージンを構築した。

LEG1の後半ではミッションに若干のフィーリング悪化もみられた大竹選手組だったが、そこは大きな“貯金”も活かして、マシンを労りながらLEG2もフィニッシュに向けて快走。手元の計算ではシリーズポイントを94.0に伸ばし、今回欠場したライバルを上回りランキングリーダーに躍進した。

JN-4クラスでは須藤浩志選手/新井正和選手組(スイフト)が、LEG1とLEG2それぞれで1回のステージベストを刻んだ。ややセットアップで苦労した部分はあったとのことだが、全体の距離は短いもののタフさは変わらない北海道のステージを、ベテランらしく経験値も活かして走りきって準優勝でフィニッシュした。

DRIVER VOICE

新井大輝 選手 [ADVAN KYB WRX STI]

【今回の成績 : JN-1クラス 準優勝】
SS1の1コーナーでは、海外参戦で乗っているR5車両に対してグループN車両との速度差に慣れていなくて、危うくコースオフするところでした(苦笑)。そこからはアジャストしていったのですがSS3のフライングフィニッシュを通過してTC(タイムコントロール)へ至るまでの間で原因不明のエンジンストールが発生してしまいました。そこからエンジンの不調が悪化していき、一時はリタイアも覚悟しての戦いになりました。不完全燃焼なラリーになってしまいましたが、こういうこともあるということですね。次から仕切り直して、ターマック(舗装路)ラリーでもしっかり速さを見せていきます。

大竹直生 選手 [ADVAN KTMS ヌタハラRS 86]

【今回の成績 : JN-3クラス 優勝】
結果は優勝でしたが、もうちょっと内容が良ければ……。RALLY HOKKAIDOで勝たなければいけない、という強い思いを抱いて臨みましたが、タイムと自分の思いが少しリンクしていない感じでした。車高を少し上げて車の動きは良くなったのですが、一方ではトラクションが少し薄くなってしまうなどの問題も出てきました。難しいこともありましたが、戦いの中でセットアップをいろいろ試してみて、収穫もある一戦になりました。ライバルがLEG2で立て続けに駆動系トラブルでリタイアしましたが、自分はそこを労るためにハーフアクセルを使ったりしてクリアしました。そこは初日で大きなマージンを稼げたので、車を労ることが出来たのも大きかったですね。

須藤浩志 選手 [スマッシュ BRIG コマツ YH スイフト]

【今回の成績 : JN-4クラス 準優勝】
参戦する予定だった「横手ラリー」が中止になったので「RALLY HOKKAIDO」に来たのですが、長い距離だからこそドタバタがあるのもある意味面白くて、その中で自分のペースで走りきるのが常ですが、今回はその戦い方ではダメでしたね。今年はスプリント色が強くなるとは思っていましたが、もっと最初からガンガン行ってよりスプリントを意識するべきだったと思っています。仕様変更もしてきたので試した部分がありましたが、そこでライバルにタイム差をつけられる結果になりました。ただ、車の仕上がりは自分の思い通りに動くベストの状態なので、タイムを出すという点でさらに良いところへ持って行けると思っています。

TECHNICAL INFORMATION

RALLY HOKKAIDOとしては異例とも言える短いSS距離で競われた20周年記念大会だったが、ヨコハマタイヤ勢はトラブルに苦しめられる少々残念な展開となってしまった。しかし序盤では新井大輝選手組と新井敏弘選手組が僅差のステージベスト争いを繰り広げ、「ADVAN A053」の優れたポテンシャルはリザルトにもしっかりと刻まれた。

LEG1はドライ、LEG2はウェットの戦いとなったが、さらに今年は一部のステージで草刈りがいつも以上にしっかり行われていて道幅を広く使えるという声や、砂利が多くて走りにくいという話もレッキ後の選手からは聞かれた。そんな中で前述の通り、オープニングの林道ステージでステージトップ2を占めるなど、随所でユーザーが速さを見せた。