2021 JRC Round 5 Report

【全日本ラリー選手権 第5戦 / 京都府京丹後市】

JN-3の竹内源樹選手組が丹後を2年連続で制覇、
JN-4では須藤浩志選手組が現在のマシンで嬉しい初優勝を飾った!!

JRC Round 5

開催日 2021年5月21日-23日
開催場所 京都府京丹後市 近郊
天候 Leg1) 曇り 一時 雨
Leg2) 曇り のち 晴れ
路面 Leg1) ウェット~ドライ
Leg2) ドライ
ターマック(舗装路面)
総走行距離 293.13km
SS合計距離 120.66km (12SS)
得点係数 1.2 (舗装路100km以上)
参加台数 55台(オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 20台)
2020 全日本ラリー選手権 第5戦

2021年の全日本ラリー選手権は、5月のゴールデンウィークに開催を予定していた第4戦の「久万高原ラリー」が延期となったことから、およそ一ヶ月半のインターバルを置いて第5戦が行われた。京都府北部の京丹後市をホストタウンとする「RALLY丹後 2021」は、SS(スペシャルステージ)の合計距離が120.66kmのターマック(舗装路)ラリー。全てのSSが成立するとポイント係数は1.2が適用されることから、シリーズを争う上で重要な一戦となる。

戦いの舞台は丹後縦貫林道、2日間で12本のSSが設定されたアイテナリー。土曜のLEG1は北から、日曜のLEG2は南からそれぞれ半島を縦断、「Tsunotsuki」と「Nariai」のSSは各日で走行方向を変えるかたちになる。これに土曜は「Iwatsuki Okuyori」、日曜は「Taiko Downhill」を加え、二日間ともに各SSを2回ずつ走行する。

ラリーを前に5月16日(日)には、統計開始から最も早い梅雨入りとなっている近畿地方。木曜日に強い雨が降ったものの週末は雨に祟られることは無さそうな天気予報が出されていたが、実際には不安定な空模様に翻弄される展開となっていった。

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22日(土)は9時ちょうどに1号車が京丹後市中心部をスタート、SSへと向かっていく。上空は一面を灰色の雲が覆っていたが、早朝の段階で路面は徐々に乾いた箇所が多くを占めるようになっていた。ところが競技開始が近くなって山では雨が降った箇所も多く、路面は多くの箇所がウェットへと転じてしまう。

ヨコハマタイヤ勢はドライグリップにより優れる「ADVAN A08B」か、ウェット性能により優れる「ADVAN A052」を選択出来るが、雨は無いと判断して前者を装着した選手がほとんどという状況。そんな選手にとってはまさかのウェット路面が待ち受けていたが、そんな中でJN-3クラスの竹内源樹選手/木村悟士選手組(BRZ)は「ADVAN A08B」を巧みにコントロールしてオープニングのSS1「Tsunotsuki 1 (12.62km)」で2番手を16.9秒と1kmあたり1秒以上引き離す速さでステージベストを奪い、好調な滑り出しを見せた。

さらに竹内選手組はSS3「Iwatsuki Okuyori 1 (6.56km)」で3.5秒差のステージベスト、午後のリピートセクションに入ってもSS4「Tsunotsuki 2」では14.2秒差の総合6番手相当というタイムをマークする速さを披露。初日で25.4秒のマージンを構築して、クラスのラリーリーダーとして23日(日)のLEG2に臨んだ。

終日ドライ路面での勝負となったLEG2、竹内選手組はSS7とSS8で立て続けにステージベストを刻んでリードをさらに拡大。そのまま危なげ無い走りでマシンをフィニッシュまで運び、昨年に続いて「RALLY丹後」を優勝で飾った。

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同様にLEG1で大量リードを築いたのが、JN-4クラスの須藤浩志選手/新井正和選手組(スイフト)。SS4「Tsunotsuki 2」では総合8番手相当のタイムを刻む韋駄天ぶりを見せ、終わってみればLEG1の6本全てのSSでベストを奪い2番手に46.6秒という大差をつけた。

この大量リードを背景にして、LEG2はリスクを背負わずペースをコントロールしながらSSを次々にクリアしていった須藤選手組。まさに先行逃げきりのスタイルでベテランらしい安定した戦いぶりを披露、2018年の「MONTRE」以来2年ぶりとなる優勝を獲得した。

また、JN-3クラスでは山口清司選手/大倉瞳選手組(86)、JN-4クラスでは黒原康仁選手/美野友紀選手組(スイフト)も力走、惜しくも表彰台にはあと一歩届かなかったがそれぞれクラス4位でフィニッシュしてシリーズポイントをしっかり加算した。

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最高峰のJN-1クラスは、前戦の唐津でGRヤリスのデビュー戦を表彰台で飾った奴田原文雄選手/東駿吾選手組がオープニングをセカンドベストでスタート。リピートとなるSS4ではポテンシャルの高いR5車両勢もおさえてステージベストを叩き出したが、LEG1を締めくくるSS6でミッションに不調を抱えてしまった。このためLEG1の最終サービスでミッション交換を敢行、メカニック陣が総力を上げて作業を遂行したが規定時間を4分オーバーしたためペナルティを科されてしまった。

また、新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)は、SS4で路面を覆っていた水の影響でマシンを土手にヒットしてしまい、ダメージを受けたことから無念のデイリタイア。奴田原選手組は表彰台圏内が少し遠くなってしまったが、LEG2もしっかり走りきって4位でフィニッシュして、こちらもシリーズを戦う上で貴重なポイントを獲得した。

JN-1クラスで表彰台の一角に立ったのは、柳澤宏至選手/保井隆宏選手組(ファビアR5)。LEG2ではオープニングから同じR5車両のライバルとコンマ差の争いを繰り広げ、ステージ名の通り下りのチャレンジングな「Taiko Downhill」は2回ともにベストを刻むことに成功。

柳澤選手組は3位で唐津に続いて表彰台を獲得、地元開催となる次戦の「MONTRE」での初優勝に向けて期待も高まる結果となった。

DRIVER VOICE

柳澤宏至 選手 [ADVAN CUSCO FABIA R5]

【今回の成績 : JN-1クラス 3位】
LEG1は予想外の雨でしたが、条件的にはみんな同じなのでなんとも言えないのですが、そこでタイムをちょっと落としてしまったのが響いてしまいました。ウェットについてはテストもしているので、ドライビングそのものについての不安はありません。ただ、タイヤについて言えば雨量はその時によって異なるので、なかなかテストだけで把握しきれない面もあって、選択が難しいところでもあります。「Taiko Downhill」は2回ともにステージベストでしたが、路面の目が粗い感じでタイヤとのマッチングが良かったと思います。次は地元の「MONTRE」ですが、地元ですからいろいろ戦略も練って臨んでいきます。

奴田原文雄 選手 [ADVAN KTMS GRヤリス]

【今回の成績 : JN-1クラス 4位】
表彰台にはなんとか登りたかったのですが、ちょっと足りなかったですね。LEG1の最後にミッション交換を行いましたが、LEG2はその影響でちょっと苦しい部分がありました。結果としては交換作業によって遅着となりましたが、初めての作業をあの時間で終えられたのですから、次に同じことがあっても時間内に終えられると思います。メカニックのお蔭でしっかり完走出来たことはシリーズを戦う上で大きな成果ですし、次の「MONTRE」では再び表彰台を獲得して、その先のグラベル(未舗装路)に向けて準備も整えて行きます。

竹内源樹 選手 [YH CUSCO 大阪冷研 BRZ]

【今回の成績 : JN-3クラス 優勝】
LEG1は思っていたよりも路面に水があって、最初からわかっていたら「ADVAN A052」を装着して行ったかもしれません。実際は「ADVAN A08B」でスタートしたのですが、あのレベルのウェットで使うのは初めてでした。「どこまで行けるかな?」という思いがあった反面、ライバル勢の選択したタイヤを見てこちらにアドバンテージがあると思ってSS1からフルアタックしました。そこで1kmあたり1秒以上のタイム差をつけたので、主導権を握ることが出来ました。LEG2はマージンを活かしてペースコントロールをして勝てました。次戦のMONTREは地元ですから「そこで勝てなければ、どこで勝つんだ」という思いでしっかり準備を進めて勝ちに行きます!!

須藤浩志 選手 [スマッシュ BRIG コマツ YH スイフト]

【今回の成績 : JN-4クラス 優勝】
LEG1では後半で225サイズのタイヤをフロントに装着してテストも兼ねて走ったのですが、これも当たって大きなマージンを稼ぎだすことが出来ました。ですからLEG2は、焦らずペースもコントロールしてしっかり走りきっての勝利です。さらにLEG2でもタイヤについてはドライ路面で試したかったことを実践して、いろいろなデータを得ることが出来ました。余裕があると自分の心が「まだ、後続との差に余裕があるね」となるとサボってしまうので(笑)、なんとかまとめて自分のペースに持ち込めた感じがします。次は「MONTRE」をスキップして、グラベル(未舗装路)に参戦します。グラベルは基本的に好きなので、楽しみつつ勝てれば良いな、と思っています。

TECHNICAL INFORMATION

LEG1では競技開始前に局所的に雨が降り、攻略が難しい展開となった。そんな中、JN-3クラスを制した竹内選手組は、ADVAN A08Bの新品をリアに、昨年の丹後のLEG2でリアに履いたユーズドをフロントに装着してスタートした。そのまま一日を通して走り、LEG2ではリアに履いていたものをフロントへ移して、リアには新品を装着するというローテーションで臨んだ。

こうしてユーズド2本と新品4本で走りきったが、LEG2でリアに履いたものは次戦のMONTREでフロントに装着する予定とのこと。タイヤを巧く使う走り方で、参戦する大会のみならず以降のことも考えたローテーションプランを実践した上で速さを見せての勝利だった。