2019 JRC Round 9 Report

【全日本ラリー選手権 第9戦 / 岐阜県高山市】

台風19号の影響により3ステージをキャンセルして開催、
JN-1とJN-6はヨコハマタイヤ勢が表彰台を独占!!

JRC Round 9

開催日 2019年10月11日-13日
開催場所 岐阜県高山市 近郊
天候 Leg1) 雨
Leg2) 曇り
路面 Leg1) ウェット
Leg2) ウェット~ドライ
ターマック(舗装路面)
SS合計距離 51.59km (9SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km未満)
参加台数 54台 (オープンクラスを含む)
(ヨコハマタイヤ装着車 19台)
2019 全日本ラリー選手権 第9戦

全10戦で競われる2019年の全日本ラリー選手権、ターマック(舗装路)で最後の戦いとなる第9戦「第47回 M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2019」は今年も岐阜県高山市のモンデウス飛騨位山を拠点に開催された。

47回目を数える今回は、2日間で12本のSS(スペシャルステージ)を設定。土曜日のLEG1では2014年から設定されている大会最長となる「あたがす (9.57km)」を皮切りに「牛牧上り (6.19km)」、ギャラリーステージの「アルコピア-無数河 (6.11km)」を2回ずつ走行するアイテナリー。日曜日のLEG2は初めて使う「トヤ峠 (3.48km)」、2013年以来となる「大山線 (5.32km)」、土曜日とは逆向きに走るギャラリーステージ「無数河-アルコピア (6.06km)」を、前日同様に各2回ずつ走行するアイテナリーが組まれていた。

しかし、この週末は非常に勢力の強い台風19号が日本列島に接近。金曜日のレッキは曇り空で比較的穏やかな一日となったが、各選手はウェットコンディションを想定して各ステージの下見を行いペースノートを作り上げて行った。

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LEG1が行われた12日(土)は、早朝から雨が降り始めてウェットコンディションとなる中で競技がスタート。チャンピオン争いが佳境に入っている最高峰のJN-1クラス、ヨコハマタイヤ勢は「ADVAN A052」を装着して各選手がオープニングステージへと臨んだ。

そんな中、SS1「あたがす 1」では3.25km地点でシリーズを争うライバルが早々に戦線離脱、対するヨコハマタイヤ勢は新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX)がステージベスト、奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)が0.3秒の僅差でセカンドベスト。逆転チャンピオンを狙う新井大輝選手/小坂典嵩選手組(WRX)はトップから5.7秒差の4番手で、まずはベテラン勢が速さを見せた。

しかし、前戦「RALLY HOKKAIDO」を制して逆転チャンピオンに向けて勢いに乗る新井(大)選手組がSS2「牛牧上り 1」ではステージベストでトップとの差を0.8秒詰めて3番手に浮上、これに対してSS3「アルコピア-無数河 1」では新井(敏)選手組が本大会2回目のベストを刻んでポジションをキープ。新井(大)選手組はSS3のセカンドベストで奴田原選手組をかわして2番手に浮上、ヨコハマタイヤ勢がトップ3を独占してセクション1を終えた。

オープニングから3本のSSを走った各車はサービスパークへと戻るが、この日はSS1開始前の6時21分に岐阜地方気象台が暴風警報と大雨などに関する注意報を発表していたこともあり、午後に予定されていたSS4からSS6まではキャンセルされることに。TC3Cをもってパルクフェルメとされ、16時までオフィシャル立会いの下で台風対策の作業のみが許され、各車はモンデウス飛騨位山で明朝まで保管されることとなった。

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一夜明けた13日(日)は、SS7「トヤ峠 1」から競技を再開。夜明けの時点で雨は霧雨程度だったが路面はウェットコンディション、さらに台風の接近に伴う強い風の影響で夜のうちに路面は大量の落ち葉で覆われた箇所が多く、金曜日のレッキとはその様相を大きく変えていた。

そのような難しい状況でスタートしたSS7、JN-1クラスのヨコハマタイヤ勢は前日に引き続き「ADVAN A052」を装着してステージに臨む。そして二日目に入ってチャージしたのが新井(大)選手組、SS7とSS8「大山線 1」で連続ステージベストを奪うとトップの新井(敏)選手に1.8秒差と詰め寄り、連勝への期待を高めて行った。

しかしセクション3の締めくくりとなるSS9「無数河-アルコピア」は、落ち葉や泥がさらに酷い路面コンディションを作り出していた。ステージ中間で新井(大)選手はコーナー出口でアクセルオンした際にマシンが滑りながら加速し、コースオフを避けるためにマシンをコース上でスピンさせて止めた。しかし走行方向とは逆向きに止まったため、向きを戻すのにも時間を要して大きくタイムロスを喫してしまった。また、新井(敏)選手はセカンドベストに留まった一方、ステージベストを奪ったのは奴田原選手組。新井(敏)選手組を5.1秒上回る速さで、新井(大)選手組を抜いて再び2番手を取り戻すとトップとの差も1.7秒にまで詰めてきた。

残るはセクション4の3SS、合計距離は14.86km。2番手の奴田原選手組と3番手の新井(大)選手組の差は13.0秒と開いたため、今回の優勝争いはヨコハマタイヤで戦うベテランの2クルーに絞られた。雨もあがり路面はドライコンディションへと変化していったことから、各車ともサービスでタイヤを「ADVAN A08B」に交換して最終セクションに臨む。

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SS10「トヤ峠 2」、路面はドライとなっているものの濡れ落ち葉などは1本目のままという難しい状況が続いている。先頭でスタートした新井(敏)選手は、奴田原選手組の追撃を振り切るべく猛ダッシュでステージを駆けて行ったがスタートからおよそ3kmを走った峠の頂上付近で痛恨のコースオフ。道には復帰したが5番手タイム、ベストを刻んだ奴田原選手組が一気にトップの座を奪い2番手となった新井(敏)選手組には5.9秒の差をつけた。

さらに奴田原選手組の快走は続き、圧巻の4連続ステージベスト。SS10からは、「ADVAN A08B」を装着して速さを見せた。最終的には13.6秒の大差をつけて圧勝、第3戦の唐津以来となる今シーズン2勝目を飾った。ちなみにヨコハマタイヤ勢はハイランドマスターズの最高峰クラスを3年連続優勝、奴田原選手組は2012年以来久しぶりのハイランドマスターズ制覇となった。そして今回は2位が新井(敏)選手組、3位が新井(大)選手組、4位は柳澤宏至選手/保井隆宏選手組(WRX)という結果になり、最高峰クラスはヨコハマタイヤ勢がトップ4を独占した。

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JN-1クラスと同様に、ヨコハマタイヤ勢が表彰台を独占して強さを見せたのがJN-6クラス。その主役となったのは伊藤隆晃選手/大高徹也選手組が駆る日産・ノートe-POWERだった。伊藤選手組はLEG1のオープニングステージをセカンドベストであがると、ライバルがSS2で戦線離脱したのを尻目にステージベストを刻む快走を見せる。雨の中で勢いは留まることなくSS3も連続ベスト、3本のステージのみとなったLEG1を23.7秒という大差のトップで終えた。

この大量マージンを背景にLEG2も危なげ無い走りを見せた伊藤選手組は、最終ステージでもベストを刻みつつフィニッシュまでマシンをしっかり運んで昨年の最終戦・新城以来となる優勝を獲得。そして2位にはSS8でステージベストを奪った清水和夫選手/高波陽二選手組が駆るCVTトランスミッションのトヨタ・ヴィッツ、3位には中西昌人選手/福井林賢選手組が駆るオートマチックトランスミッションのマツダ・RX-8が入り、ヨコハマタイヤで戦うバラエティ豊かなマシンの顔ぶれが表彰台に揃った。

このほか、JN-3クラスは織戸学選手/羽琉選手組(86)の参戦が話題を集めたが、エンジンの不調に苦しむ展開に。それでもLEG1のSS2でサードベストを刻むなど粘り強い走りで8位完走を果たした。トップ争いは山口清司選手/竹原静香選手組(86)がステージタイムではトップだったものの、ペナルティにより2番手にドロップ。山本悠太選手/山本磨美選手組(86)が繰り上がるかたちになり優勝という結果になった。



なお、10月31日~11月3日に福島県いわき市で予定されていた第10戦(最終戦)の「MSCCラリー in ふくしま」は、開催地が台風で大きな被害を受けたことにより10月16日に開催の中止が発表された。

これにより2019年の選手権は全9戦中のベスト6戦で決することとなり、手元の計算ではJN-1クラスはドライバー部門を新井敏弘選手、ナビゲーター(コ・ドライバー)部門を田中直哉選手がともに連覇することが確定。2位は新井大輝選手と小坂典嵩選手、3位が奴田原文雄選手と佐藤忠宜選手というシリーズ順位になり、トップ3をヨコハマタイヤ勢が独占した。(選手権順位の最終決定は、後日のJAF発表による)

DRIVER VOICE

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN-1クラス 優勝】
LEG1はウェットのセットアップに失敗して少し出遅れてしまいましたが、LEG2でコンディションが回復してドライになっていく方向での手応えはありました。車が良く仕上がっていてターマックのドライは最近調子が良いですから、路面がドライに好転していく中での対応するノウハウが出来てきているので、そこが良かったですね。LEG2での一面の濡れ落ち葉は滅多に無いコンディションですが、ハイランドマスターズでは濡れ落ち葉で痛い目にあったこともあるので、その時の経験値も活かしてマシンをしっかりフィニッシュまで運びました(笑)。

新井敏弘 選手 [富士スバル AMS WRX STI]

【今回の成績 : JN-1クラス 2位】
「ADVAN A052」と「ADVAN A08B」の特性が思っていた以上に異なり、LEG2のセットアップを間違えてしまいました。LEG2のオープニングで車を曲げきらずにアンダーステアでコースから外れて、草むらを突っ切るかたちになりタイムロスしてしまいました。

新井大輝 選手 [ADVAN KYB AMS WRX]

【今回の成績 : JN-1クラス 3位】
父(新井敏弘選手)と同じセッティングですが、同様にLEG2が厳しい結果となってしまいました。セクション3ではベストを刻んで詰めて行けましたが、ウェットコンディションではそんなにセットアップの善し悪しが出ないんですよね。初めてのVAB型WRXでのターマックラリー、コンディションはウェット、ブッツケ本番の状態で表彰台フィニッシュ出来たのは収穫だったと個人的には思っています。

山本悠太選手 [Sammy☆K-one☆ルブロスYH 86]

【今回の成績 : JN-3クラス 優勝】
台風が接近していましたが、競技は始まったのでいつもと同じ心構えでSS1に臨みました。ただ「あたがす」と相性がよくないのか、これまでもタイムが伸ばせなくて今回もそうだったんです。セクション1を終えて調子を掴みきれておらず、後半で巻き返そうと思ったらキャンセルが発表されて「えーっ!!」となって。LEG2で取り返すのは厳しい状況でしたが、いつもの自分なら抑えるところで多少無理して攻めた箇所もいくつかあって、それも結果につながったと思います。LEG2後半セクションでは「ADVAN A08B SPEC G」を投入しましたが、フィーリングはこれまで以上のコーナーリングスピードで行けるので好印象です。

伊藤隆晃 選手 [PD YH ノートe-POWERニスモS]

【今回の成績 : JN-6クラス 優勝】
まさか、まさかの優勝です(笑)。新しい道の「トヤ峠」は距離が短いのでe-POWERのバッテリー持続という面では助かりますが、「大山線」はストレートが長いので厳しいとわかっていたので、そこをどのように走るのかが鍵でした。新城の「鬼久保」でやったように、最初フットブレーキをかけ、あとは回生で曲げていけばコーナー立ち上がりは速いだろうと思ったので実践しました。ただ、LEG2は路面が悪くて難しい部分もあり、後続に差を詰められてしまいました。下りを元気に行けたのが勝因というか、巧いe-POWERの走らせ方を出来たことと「ADVAN A052」のウェットパフォーマンスが大きかったですね。

TECHNICAL INFORMATION

ウェット、ドライ、さらに汚れた路面と難しいコンディションで競われた第9戦。ヨコハマタイヤ勢はJN-1の各選手が「ADVAN A052」でスタート、LEG2中間サービス以降は路面コンディションがドライに転じたことから「ADVAN A08B」に交換して戦った。3つのSSがキャンセルされて9本で競われたが、奴田原選手組が4つ、新井(敏)選手組が2つ、新井(大)選手組が3つのステージベストを奪ってヨコハマタイヤ勢が独占。ウェットでの「ADVAN A052」とドライでの「ADVAN A08B」、いずれの路面でも速さを見せる結果となった。

一方、JN-3クラスでは山口選手組が「ADVAN A052」を一貫して装着、9本のSSを4本のみで走りきってステージタイム合計ではトップとなった。一方で山本選手組と織戸選手組はLEG2のセクション4のみ、竹内源樹選手組はLEG1スタートから「ADVAN A08B SPEC G」を投入。竹内選手組はLEG2で路面が好転するに従ってタイムアップ、4つのステージベストを奪うとともに4本のみで9本のSSを走りきった。