【全日本ラリー選手権 第8戦 / 北海道帯広市】
JRC Round 8
開催日 | 2019年9月20日-22日 |
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開催場所 | 北海道帯広市 近郊 |
天候 | Leg1) 晴れ Leg2) 晴れ |
路面 | Leg1) ドライ Leg2) ドライ グラベル(非舗装路面) |
総走行距離 | 661.09km |
SS合計距離 | 167.11km (14SS) |
得点係数 | 1.5 (非舗装路100km以上) |
参加台数 | 46台 (全日本選手権部門) (ヨコハマタイヤ装着車 13台) |
前戦の秋田県横手市から“夏休み”をはさんで、2019年の全日本ラリー選手権もいよいよ終盤3戦に突入。第8戦は北海道十勝地方を舞台とする「RALLY HOKKAIDO」、FIA APRC(アジア-パシフィック・ラリー選手権)も併催される、スケールの大きなグラベル(未舗装路)ラリーだ。
今年も帯広市の北愛国交流広場を拠点として、北部の陸別町などに設けられた林道SS(スペシャルステージ)を設定。手軽に観戦出来るサービスパーク隣接のショートステージも含めて、全日本選手権は全14SS合計距離167.11kmで競われる。ポイント係数は1.5と過去の規定に比べれば大きくないものの、やはりシリーズタイトル獲得にはRALLY HOKKAIDOでのポイント獲得が大きな重みを持っていることに変わりはない。特にヨコハマタイヤで戦う3クルーが主役の激しい接戦が続いている最高峰のJN-1クラスにおいて、誰がRALLY HOKKAIDOを制するのかは大いに注目を集めた。
そんな中、第4戦の久万高原から参戦している新井大輝選手/小坂典嵩選手組が、マシンをVAB型のスバル・WRX STIにスイッチ。父・敏弘選手と全く同じ車種、型式で同じラリーの同じクラスを戦う、つまり“同じ土俵”で初めて戦うことになった。
19日(木)から20日(金)にかけて選手はレッキ、メカニックは車検など本番への準備を整えていく。設定されたSSはほぼ例年同様で大きな変化こそないものの、レッキから帰った選手の多くが「YAM WAKKA」と「KUNNEYWA」が思った以上に荒れていたと語り、ともに20kmを超えるロングステージであることからこの2つをいかに攻略するかが勝敗の大きなポイントとなる。
20日(金)の午後からは北愛国交流広場でラリーショーが催され、多くの市民やファンと触れ合った選手たち。中でも新井大輝選手組、新井敏弘選手/田中直哉選手組、そして奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)、JN-1クラスでタイトル争いを演じている3クルーは大人気。ラリーショー開催中はサインや記念写真を求めるファンの列が途切れることなく、沢山の声援を集めていた。
そしてラリーショーが終わるとサービスパーク隣接のSS1「SATSUNAI 1 (1.47km)」がスタート、既に日は暮れており多くのマシンが補助灯を装着して臨む。ところが乾いた路面からは盛大に土埃が舞い上がり、視界が効かず難しい状況に。そんな中でベストタイムを刻んだのは新井(大)選手組、0.8秒差の2番手が奴田原選手組、2.0秒差の4番手が新井(敏)選手組というオーダーでRALLY HOKKAIDOの戦いはスタートした。
21日(土)は陸別地方が主な戦いの場、早朝からクルーは移動を開始した。朝から気持ちよい秋晴れの空が広がった十勝地方、日中は風も穏やかで過ごしやすかったが、朝晩の気温は一桁台前半にまで下がり冬の足音も聴こえ始めている。
土曜日は「RIKUBETSU LONG (4.63km)」、「YAM WAKKA (23.49km)」、「KUNNEYWA (28.75km)」のステージを各2回、そして帯広市に戻って「SATSUNAI」を1回走行する。オープニングのSS2「RIKUBETSU LONG 1」はライバルにステージベストを譲ったものの、2番手の奴田原選手組から新井(大)選手組、新井(敏)選手組とヨコハマタイヤ勢がしっかり上位のタイムをマーク。そしてロングの林道ステージに入ると「ADVAN A053」が優れたパフォーマンスを遺憾なく発揮し、SS3「YAM WAKKA 1」は新井(大)選手がステージベスト、5.1秒差のセカンドベストは新井(敏)選手組。これによりSS3を終えて、“親子ワン・ツー・フォーメーション”が構築された。
続くSS4「KUNNEYWA 1」も同様に、新井(大)選手組がベスト、新井(敏)選手組は1.6秒という僅差のセカンドベスト。後半セクションではSS7「KUNNEYWA 2」の終盤で新井(大)選手組がマシンの足回りにダメージを受けてしまうも、ステージ終盤だったことから影響は最小限に留めてステージベストを刻むことに成功。終わってみれば20kmを超えるロングの林道ステージを新井(大)選手組が4本全てベストであがり、LEG1を15.4秒差のトップで終えた。2番手は新井(敏)選手組、その後ろのライバルとは10.3秒差をつけて、親子ワン・ツー・フィニッシュへの期待が高まる展開となった。
勝負を決する22日(日)も、快晴に恵まれた十勝地方。残すSSは6本で合計距離は50.43km、この日は比較的短めのステージが戦いの舞台となる。朝からチャージしてきたのは3番手のライバル、対する新井(敏)選手組はインカムのトラブルでオープニングのSS9「OTOFUKE REVERSE 1 (6.12km)」でタイムを伸ばせず詰め寄られ、さらにSS10「NEW HONBETSU 1 (13.79km)」の舗装路面となっている後半で速さを見せたライバルに逆転を喫して3番手へとドロップした。
徐々に差が詰まってきたものの、トップを走る新井(大)選手組はライバルのタイムも見ながら主導権を握っての戦いであることは変わらず。SS12「NUORIPAKE 1 (12.53km)」でこの日初のステージベストでマージンを拡大、さらにSS13「OTOFUKE REVERSE 2 (6.12km)」でもライバルを抑えてフィニッシュまでマシンを運び、今シーズン3勝目を飾った。
一方、3番手にドロップした新井(敏)選手組はSS13でステージベストを刻むなど猛追、最終ステージを残してライバルと0.9秒差に詰め寄った。1.47kmのSS14「SATSUBAI 3」、新井(敏)選手組はステージベストを刻むもライバルにはあと0.6秒届かず。惜しくも“親子ワン・ツー・フィニッシュ”は次戦以降へのお預けとなったが、ランキング争いでは新井(敏)選手がトップへ浮上。手元の計算では有効得点で14.5点差の3番手が奴田原選手、そして新井(大)選手が16.1点差の4番手となった。
JN-3クラスでは今回の大会スタート前にシリーズチャンピオンが確定した山本悠太選手/山本磨美選手組(86)が、LEG1は順調にタイムを刻んでトップに立った。しかしLEG2でマシントラブルからタイムを伸ばせず、トラブルシューティングも叶わない厳しい状況となったが粘りの走りを披露。マシンをフィニッシュまでしっかり運び、準優勝を獲得した。
JN-5クラスは小川剛選手/佐々木裕一選手組(フィット)が、3位で表彰台を獲得。そしてJN-6クラスはいとうりな選手/大倉瞳選手組(ヴィッツ)がSS2でコースオフを喫して大きく後退したのに対して、中西昌人選手/福井林賢選手組(RX-8)はミス無く堅実な走りを見せて準優勝でフィニッシュ。手元の計算では有効得点でいとう選手組との差を一気に詰め、2.1点差の3番手から残り2戦でシリーズ2位の座を狙うこととなった。
【今回の成績 : JN-1クラス 優勝】
VAB型を駆ってブッツケ本番状態で戦いに臨み、LEG1でのトラブルからLEG2はダンパーを父(敏弘選手)と同じ仕様のものに換えての走行だったので、戦い方が難しかったですね。特にLEG2はガラッと走らせ方を変える必要があり、父と同じような走らせ方でタイムロスを最小限に抑えることを念頭に置いていました。これで3勝目ですが、今回の戦いは「守って勝つ」という展開でしたね。現時点で自分にはペースノートなどに課題もあるので、コンビを組む小坂選手とともに精進して残る2戦もしっかり戦っていきます。
【今回の成績 : JN-1クラス 3位】
同じVAB型を駆って大輝と戦ったわけですが、どこかのステージで大きく離されることはないものの少しずつやられるので、こちらの“心のダメージ”がありましたね(苦笑)。最後はあと一歩届きませんでしたが、これでタイトル争いは自分と大輝の一騎討ちという色合いが濃くなってきたと思います。残り2戦、親父の威厳を無くしては困るので、しっかり勝てるように頑張りますよ!! (笑)
【今回の成績 : JN-3クラス 2位】
LEG2の2つめのステージで異音が出て、そのままパワーダウンしてしまいました。原因不明ですが、なんとか無事にフィニッシュまで帰って来れました。LEG1では大きなマージンを築いただけに残念ですが、もしかしたらLEG1でプッシュしたことで車に負担をかけてしまったのかもしれませんね。スタート前にチャンピオンが確定しましたが、3年目の今シーズンは初心に帰った気持ちで臨んできました。応援してくださるみなさんには結果でお返ししなければと思い続けてきたので、チャンピオンを獲得出来たことは本当に嬉しく、みなさんへの感謝の気持ちでいっぱいです。
【今回の成績 : JN-5クラス 3位】
RALLY HOKKAIDOには参戦4年目ですが、まだちょっと攻めきれていないところがあるんですよね。だから「余力あり」というのが実際のところですが、現状の足回りやタイヤ外径といった条件においてはこれ以上攻めても上には届かないだろうな、という感じです。マシンについてはボディが良くなったので、「KUNNEYWA」は特に走るのが楽でした。1本目ではジャンプしなかったのですが、2本目では思い切って飛んでみましたが、何事も無かったです。
【今回の成績 : JN-6クラス 2位】
タフなラリーでしたが、天気が良くて助かりました。早々にいとう選手組が後退したのでちょっと気合いが入らなくて、土曜日の前半は少しタイムが伸び悩んでしまいました。後半では気合いを入れ直したら、しっかりタイムが出せるようになって一安心でした(笑)。今年は自分としてはとても走りやすかった印象のRALLY HOKKAIDOですが、RX-8のオートマチックならではの走らせ方も慣れてきた感じです。SS14のクラスベストタイムに贈られる特別賞、これは狙っていたのですが全てが上手くいきました。一ヶ所だけ失敗したのですが、車の姿勢が大きく乱れず前へ前へと進んでくれました。
近年のRALLY HOKKAIDOでは、最高峰クラスでヨコハマタイヤ勢が強さを見せてきている。2014年と2015年を奴田原文雄選手組、2016年と2017年は新井敏弘選手組が優勝を飾っており、2009年以降の10回中7回でヨコハマタイヤ勢が優勝を飾った。
そんな歴史に新しい1ページを刻んだのが、今回優勝を飾った新井大輝選手。海外で鍛えられたドライビングスキル、ドライバーとしてのパフォーマンスは北海道の地でも遺憾なく発揮された。その走りを支えたのは「ADVAN A053」、大輝選手にとってVAB型を駆って初めての全日本選手権で優勝を飾る走りに貢献した。