2019 JRC Round 7 Report

【全日本ラリー選手権 第7戦 / 秋田県横手市】

全日本ラリー選手権初開催で大いに盛り上がった秋田県横手市、
LEG2は波乱の展開となる中でJN-3はトップ4を独占!!

JRC Round 7

開催日 2019年7月26日-28日
開催場所 秋田県横手市 近郊
天候 Leg1) 晴れ
Leg2) 晴れ 一時 雨
路面 Leg1) ドライ
Leg2) ドライ(一部ウェット)
グラベル(非舗装路面)
総走行距離 304.64km
SS合計距離 113.00km (12SS)
得点係数 1.5 (非舗装路100km以上)
参加台数 41台 (全日本選手権部門)
(ヨコハマタイヤ装着車 15台)
2019 全日本ラリー選手権 第7戦

7月は2戦が組まれている2019年の全日本ラリー選手権、第7戦は秋田県横手市をホストタウンに「横手ラリー 2019」が開催された。秋田県内での全日本ラリー選手権開催は実に35年ぶり、横手市では初めての開催ということで地元は歓迎ムード一色に。セレモニアルスタートでは秋田県知事と横手市長がスターターをつとめ、秋田の郷土芸能である「なまはげ」も会場を盛り上げた。

チームの拠点となるサービスパークは横手市中心部から車で10分ほどの「秋田ふるさと村」に設けられた。近くには高速道路のインターチェンジや郊外形のロードサイド店舗とショッピングモールが立ち並び、市民にとってもアクセスしやすいロケーション。地元の新聞やテレビでもラリー開催が報じられたことから、多くの市民がサービスパークや沿道で声援を送ってくれた。

SS(スペシャルステージ)は3つの林道で構成される。土曜日のLEG1で2回ずつ走行、日曜日のLEG2で逆方向に再び2回ずつ走行する全12本の設定。合計距離は113.00kmとなり、ポイント係数1.5が適用される。ステージはハイスピードとツイスティな区間が織り混ざり、さらに最大12%の勾配も待ち受けている変化に富んだもの。路面は一部にコンクリート舗装があるが、良質なグラベル(非舗装路)で硬く締まった道が多くを占める。

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全日本ラリー選手権では直近のシリーズランキングをひとつの要素としてゼッケンを割り振るが、前戦のカムイを終えて最高峰のJN-1クラスはランキングのトップ3をヨコハマタイヤ勢が独占している。ゼッケン1は奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)、ゼッケン2が新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI・VAB型)、そしてカムイを制して2勝目を飾った新井大輝選手/小坂典嵩選手組(WRX・GRB型)がゼッケン3をつけて横手の戦いに臨む。

LEG1が行われた7月27日(土)は気温30℃を超える真夏日、厳しい暑さの中で快走を見せたのが前戦で今シーズン2勝目を挙げた新井(大)選手組。オープニングステージの「Nango1 (11.95km)こそライバルにステージベストを譲ったものの1.7秒の僅差でセカンドベスト、続くSS2「Kosuzumori 1 (8.56Km)」とSS3「Shiroki 1 (7.96Km)」でステージベストを刻み、16.6秒差のラリーリーダでセクション1を終えてサービスイン。2番手は奴田原選手組、そして新井(大)選手組と同じサスペンションを装着して臨んだ新井(敏)選手組はマシンコンロールにやや苦労する展開となり4番手となった。

セクション2に入っても新井(大)選手組の勢いは留まることなく、リピートとなるSS4から6までを全てステージベストであがり、SS2から5連続ベストでマージンを28.5秒に拡大。奴田原選手組は2番手、ライバルをはさんで4番手が新井(敏)選手というオーダーでLEG1を終え、今回も“平成生まれクルー”が大量リードを背景にLEG2も逃げきるかと注目を集めた。

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一夜明けた28日(日)は、未明に雨が降ったことからオープニングのSS7「Shiroki R1 (8.51km)」はウェットコンディション。この日は前日のステージを逆方向に2回ずつ走行するが、逆方向となることで道のキャラクターが変化し、登り下りも入れ替わる。さらに路面の一部は、ワダチが深く掘れてきている。

そんな難しいコンディションの中、新井(大)選手組は大量マージンを背景にSS7とSS8をサードベストであがりトップをキープ。しかしSS9「Nango R1 (11.16km)」のスタートから3.9km地点で、何の前触れも無く突然エンジンがストップ。そのまま息を吹き返すことは無く、まさかのリタイアとなってしまった。

この時点で奴田原選手組は、ひとつ前のSS8で側溝にタイヤを引っかけて痛めたことによりポジションを下げていたことから、ライバルが繰り上がってトップに立つことに。新井(敏)選手組が6.8秒差の2番手、奴田原選手組は3番手でポジションアップを目指しチャージしていく。しかし、新井(敏)選手組もSS10でコースを外れかけた際にタイヤを痛めて万事休す。新井(敏)選手組は2位、奴田原選手組は3位でフィニッシュという結果になった。

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JN-3クラスは、今回もヨコハマタイヤ勢が活躍を見せた。山本悠太選手/山本磨美選手組(86)がSS1を制すると、第5戦の「MONTRE」で全日本初表彰台を獲得している和氣嵩暁選手が原澤潤平選手とのコンビで駆るスバル・BRZで初めての全日本選手権ステージベストを奪って巻き返す。さらに和氣選手組にとって職場の先輩となる竹内源樹選手が、竹原静香選手とのコンビで駆るBRZもセカンドベストを連発して存在感を見せてきた。

LEG1を終えてトップは山本選手組、1分近い大量マージンを構築することに成功。2番手は竹内選手組、これに僅か0.2秒差で和氣選手組が食らいついており、職場の先輩と後輩が繰り広げる熾烈な2番手争いはLEG2に入ってさらにヒートアップするという展開に。

気を引き締め直してLEG2に臨んだ山本選手組はLEG2でも6本中5本のステージでベストタイムをマーク、安定した速さで今シーズン6勝目を獲得。次戦「RALLY HOKKAIDO」に向けて、悲願のチャンピオン獲得に王手をかけることに成功した。また竹内選手組が2位で逃げきり、3位の和氣選手に“先輩の貫祿”を見せつけた。さらに加納武彦/横手聡志選手組(BRZ)が4位でフィニッシュ、ヨコハマタイヤ勢がトップ4を独占した。

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JN-6クラスでは、いとうりな選手/大倉瞳選手組(ヴィッツ)が、中西昌人選手/廣島真選手組(RX-8)と、こちらも前戦同様に激しい2位争いを展開。LEG1ではいとう選手組がペナルティを受けたこともあって3番手、LEG2は前戦の借りを返すべく猛チャージを見せていく。

ともに2ペダルだが、駆動方式がヴィッツは前輪駆動でRX-8は後輪駆動という違いがあり、マシンの特性も活かした戦いが求められる。いとう選手組、中西選手組ともに一進一退の攻防戦を展開。

LEG2オープニングのSS7はいとう選手組、SS8は中西選手組がタイムで上回ったが、SS9で大きくリードしたいとう選手組が中西選手組を逆転。最終セクションの3本はいとう選手組が全てで中西選手組をおさえ、準優勝を飾ることに成功。中西選手組は3位でフィニッシュ、こちらは次戦「RALLY HOKKAIDO」での雪辱に燃える結果となった。

DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [スバル WRX STI]

【今回の成績 : JN-1クラス 2位】
速くてちょっときついコーナーでペースノートのタイミングがズレて、「間に合わない!!」となって道から外れたところでタイヤにダメージを与えてしまって、そこから先のペースを上げられなくなってしまいました。それが無ければ、トップ争いは面白くなっていたでしょうから残念ですね。シリーズポイントがこれでどうなったのか計算はまだしていませんが、それよりもなによりも次のRALLY HOKKAIDOは「絶対に勝つ!!」しかないですよね(笑)。

奴田原文雄 選手 [三菱 ランサーエボリューションⅩ]

【今回の成績 : JN-1クラス 3位】
タイヤを痛めてしまってペースアップ出来なかったことが辛かったですね。路面もハードでなかなか難しいラリーでしたが、さらに気温も高くなって人にも車にも厳しい一戦でした。そんな中で完走して表彰台を獲得出来たことは大きいですし、新井(大)選手組がノーポイントに終わったことでシリーズ争いも混沌としてきました。優勝を何回したかが最終的なシリーズの行方を分けることになりますから、次のRALLY HOKKAIODをしっかり勝てるようにチーム一丸となって臨んでいきます。

山本悠太選手 [トヨタ 86]

【今回の成績 : JN-3クラス 優勝】
横手の道はリタイアのリスクよりも、タイムを出すことが難しい路面だったという印象です。LEG1からトップに立てましたが、なかなかクルマを前に出すことが出来なくて自分の中では不完全燃焼というところもありました。結果としてはLEG1で大きく差をつけられたのですが、そうなると“競っている時の気合い”をキープするのが難しいんですよね。LEG2は下りが主体なので後輪駆動は比較的楽になるので、気をつけるべき箇所をしっかりおさえて走りきることに集中しました。

竹内源樹 選手 [スバル BRZ]

【今回の成績 : JN-3クラス 2位】
去年の嬬恋以来、1年半ぶりの全日本出場で準優勝を獲得できて良かったです。今年はグラベルとターマックを各1戦ずつ出場するスケジュールです。久しぶりの全日本でしたが、とりあえずLEG1は無かったことにして(笑)。本番ペースが久しぶりだったのでセットアップもままならず、自分にとってのリハビリという一日でした。LEG2ではセットアップを変えて、少しペースを上げることが出来ました。山本選手組とのタイム差を比較したりしながら、いろいろと収穫のある一戦になりました。後輩の和氣選手組との“負けられない戦い”にも勝つことが出来て良かったです(笑)。

和氣嵩暁 選手 [スバル BRZ]

【今回の成績 : JN-3クラス 3位】
MONTREで表彰台も獲得出来たので、先輩の竹内選手を「やっつけてやる!!」と意気込んでいたのですが返り討ちにあってしまいました(笑)。ですが、初めての全日本選手権でのステージベストを奪い、最終ステージでも竹内選手組に勝って一矢を報いることが出来たかな、と。横手は去年の地区戦を走っているので、その経験も活かして全日本での初ベストにつなげられました。ただ、LEG2ではウェットになったことに対応しきれないところもあって……。車を壊さず次に続けることが大切なので、その点は実践できて良かったです。次はRALLY HOKKAIDOに出ようと思っているので、この夏は新井敏弘選手の“道場”で鍛えてきます!!

いとうりな 選手 [トヨタ ヴィッツ]

【今回の成績 : JN-6クラス 2位】
初めての全日本開催となった横手ですが、私の中では「Shiroki」のステージが難しかったですね。あのステージが、路面的にうまく対応出来なかったのが反省点です。LEG1ではペナルティもあって3番手でしたが、追われる立場でプレッシャーを感じて走るよりも、追う立場の“アゲアゲ”で走る方が気持ち的にはやりやすいですよね。アクセルを踏めるところはしっかり踏んで行った方がクルマの挙動も安定しますし、暴れるようなら抑えればいいんだ、という感じでマシンを運んでいきました。予定通りに逆転して2位でフィニッシュ出来たので一安心、LEG1は暑さにやられたところもありましたが、LEG2は熱中症対策で色々なドリンクを用意したり万全整えたので、無事に走りきることが出来ました。私ももちろんRALLY HOKKAIDOでも中西さんには負けられません、楽しく競り合って最後は上でフィニッシュします!!

中西昌人 選手 [マツダ RX-8]

【今回の成績 : JN-6クラス 3位】
LEG1が始まったところからいい感じでタイムを刻んでいけたのですが、セクション2でインカムの調子が悪くなって“手旗信号”でコ・ドライバーとやりとりせざるを得なくなって大変でした。いとう選手組のペナルティもありましたが、LEG1は勝ったけれども差は思ったほど開きませんでした。LEG2では私たちがいとう選手組に10秒を“お返し”してしまったのですが、その時点ではまだ辛うじて勝っていて。しかしその次で逆転され、最終セクションのいとう選手は速かったので届きませんでした。今回はマシンの挙動にちょっと違和感があって、高速の箇所で離されたのはその辺りに原因があるのではないかと思っています。とても悔しいので、RALLY HOKKAIDOではいとう選手に勝ちますよ!!

TECHNICAL INFORMATION

全日本選手権初開催の横手は、行政の強力なバックアップもあって大いに盛り上がりを見せた一戦となった。ギャラリーステージは満員御礼、サービスパークにも多くの市民が見学に足を運んだほか、リエゾン区間でも沿道の至る所から市民が声援を送り、選手たちもその歓迎と盛り上がりに驚きの声を口にしていた。

JN-1クラスのトップ争いはアンラッキーが次々にヨコハマタイヤ勢を襲う結果となり、残念ながら優勝には一歩届かなかった。しかしリタイアになってしまったものの、今回も新井(大)選手組が多くのステージベストを奪って速さを見せたことからも、ADVAN A053の優れたパフォーマンスは実証されたと言えるだろう。

LEG2ではウェットコンディションになった部分もあるが、終わってみればエンジントラブルの新井(大)選手組を除いてヨコハマタイヤ勢は全車が完走、今回も多くのユーザーの走りを最後までしっかりと支える結果となった。