【全日本ラリー選手権 第6戦 / 北海道ニセコ町】
JRC Round 6
開催日 | 2019年7月5日-7日 |
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開催場所 | 北海道ニセコ町 近郊 |
天候 | Leg1) 曇り のち 晴れ Leg2) 曇り のち 晴れ |
路面 | Leg1) ドライ Leg2) ドライ グラベル(非舗装路面) |
総走行距離 | 433.65km |
SS合計距離 | 117.78km (10SS) |
得点係数 | 1.5 (非舗装路100km以上) |
参加台数 | 56台(オープンクラスを含む) (ヨコハマタイヤ装着車 19台) |
カレンダーが後半戦に突入した2019年の全日本ラリー選手権は、第6戦の「2019 ARK ラリー・カムイ」が昨年に続いて北海道ニセコ町をホストタウンに、隣の蘭越町に10本のSS(スペシャルステージ)合計距離117.78kmを設定して開催された。
今年は道内最大手の民間バス会社の協賛で、世界的にリゾート地として知られるニセコアンヌプリ国際スキー場に大会本部やサービスパークを設定。林道には新たなSSも設けられたが、LEG2には昨年に続いて23.09kmのロングステージも選手たちを待ち受けた。
昨年の大会は雨も勝負に影響を与えたが、今年は週末を通じてドライコンディションが保たれる結果に。しかし、アベレージスピードの高いグラベル(非舗装路)ラリーは、気持ちよく走れると選手たちから好評を集めているがワンミスが命取りの一戦。ドライコンディションゆえの“罠”もそこには待ち受けており、終盤にはまさかの展開が繰り広げられる結果となった。
グラベルラリーで勝敗に影響を与える要素がいくつかあるが、そのひとつが出走順。全日本選手権では前戦終了時点でのシリーズランキングをひとつの基準としてLEG1の出走順が決められるが、ゼッケン1をつけるランキングリーダーの新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI・VAB型)はトップスターターとしてLEG1を戦っていく。
早いスタート順はいわゆる“砂利掻き役”を強いられるが、LEG1のセクション1は浮き砂利が多く各ステージともに難しい路面となっている。そんな中で新井(敏)選手組はSS1と3をセカンドベスト、SS2もサードベストで速さを見せるが、それを上回ったのが5番手スタートの新井大輝選手/小坂典嵩選手組(WRX STI・GRB型)だった。
オープニングの新設されたステージ「NEW SUN-RISE 1 (3.68km)」で3.9秒と、新井(敏)選手組にキロ1秒の差をつけてステージベストを奪うと、SS2「STREAM 1 (10.94km)」は2.3秒、SS3「SCHUNK 1 (14.05km)」では12.8秒とマージンを拡大して3連続ステージベストを奪取。セクション1を終えて新井(敏)選手組に20.8秒の大差をつけ、序盤から主導権を手中におさめていった。
SS1からSS3のステージを再び走行するSS4からSS6のセクション2は、浮き砂利が掃けたことから新井(敏)選手組を筆頭とするベテラン勢の巻き返しが予想された。しかし新井(大)選手組の勢いが留まることは無く、SS4ではベテラン勢が僅差で迫るも2番手に0.5秒差をつけて逃げきり4連続ステージベストを奪うことに成功。SS5はライバルに1.1秒の僅差でベストを譲るもセカンドベストをマーク、そしてLEG1を締めくくるSS6は2.3秒差でこの日5回目のベストを叩き出した。
LEG1を終えて、新井(大)選手組は2番手に22.6秒の大差をつけてのトップに。新井(敏)選手組はセクション2でタイムが伸び悩んで4番手、この状況を打破するために最終サービスでは足回りとターボチャージャーのタービンを交換してLEG2での巻き返しを期する態勢を整えた。
一夜明けたLEG2の朝、前日同様に空は灰色の雲に覆われていたが雨が降ることは無く、ドライコンディションのハイスピードグラベルステージで勝負を決する展開となる。LEG1の結果を受けて出走順は新井(大)選手組がトップでスタート、新井(敏)選手組は4番手となる。前述の“砂利掻き役”という視点で言えば、LEG2は新井(敏)選手組に有利な条件だ。
しかし、グラベルラリーで出走順が与える影響のもうひとつに、“前走車が巻き上げる土埃”がある。トップでスタートする新井(大)選手組は常にクリアな視界で走行出来るが、状況によっては2番手以降の選手の視界は土埃に遮られてしまうこともあり得るのだ。
その“罠”が2番手スタート以降の選手に容赦なく襲いかかり、LEG2オープニングのSS7「KNOLL REVERSE 1 (7.13km)」で波乱が起きた。4番手の新井(敏)選手組は、鋭いダッシュでスタートを決めてアタックしていく。そしておよそ890mの地点、クレストを超えて次のコーナーへと進入するが、クレストの先に広がっていたのは前走車が巻き上げた土埃が滞留して全く視界の効かない状況だった。田中選手の読むペースノートにあわせてステアリングを切るも、僅かなタイミングのズレが生じてマシンは道から外れて無念のコースオフ。一方の新井(大)選手組はステージベストでフィニッシュ、新井(敏)選手組が戦列を離れたことで2位のライバルとの差は41.6秒に拡大した。
SS7のリピートとなるSS9でも上位のライバルが新井(敏)選手組と同じ場所でリタイア、対する新井(大)選手組はそのままフィニッシュまでマシンを運んで第4戦の久万高原以来となる今シーズン2勝目を飾ることに成功。また、LEG2でペースを上げた奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)が3位表彰台を獲得、この結果によりシリーズランキングのトップに浮上した。
JN-3クラスは山本悠太選手/山本磨美選手組が、今回はLEG1からしっかりとトップに立って貫祿を見せた。安定した走りでそのポジションを脅かされることなくフィニッシュ、シーズン4勝目を獲得して悲願のチャンピオン獲得に向けて大きな一勝を手中におさめた。また、2位は19歳の若手・大竹直生選手がベテランの竹下紀子選手とのコンビで全日本初表彰台を獲得。3位には山口清司選手/島津雅彦選手組が入り、ヨコハマタイヤで戦うトヨタ・86が表彰台を独占した。
JN-6クラスは、ヨコハマタイヤ勢が激しく2番手を争う展開に。マツダ・RX-8のオートマチック車で戦う中西昌人選手/福井林賢選手組を、トヨタ・ヴィッツのCVT車を駆るいとうりな選手/大倉瞳選手組が追うという展開に。SS1と2を中西選手組がセカンドベストであがると、ともにサードベストだったいとう選手組はSS4と5をセカンドベストで追い上げる。しかしSS5と6は再び中西選手組が上回って、LEG1をいとう選手組に20.4秒差の2番手で終えた。
LEG2に入ってSS7でいとう選手組が16.1秒に差を詰めて反撃の狼煙を上げるも、ロングステージのSS8では中西選手組が再びセカンドベストで引き離す。中西選手組はロングステージのリピートでもいとう選手組を制してフィニッシュ、マツダ・RX-8ではマニュアル車時代の2016年以来となる準優勝を獲得した。また、いとう選手組もしっかり3位で表彰台を獲得した。
【今回の成績 : JN-1クラス 優勝】
LEG1のタイムを稼げるときにしっかり稼いだことが、大きく優勝につながる結果になりました。LEG1のセクション1で得た20秒ほどのマージンをどう使っていくか考えていたら2番手争いが激しくなって、そのうちに自分と2番手との差がどんどん広がりました。50秒を超える差になるのは予想外でしたが、そこまで差が広がらなかった場合のシミュレーションもしていました。結果的には、差が詰まったときに想定していた若干のリスクも背負う戦い方を試す必要が無くフィニッシュ出来て良かったです。シリーズランキング争いは、あまり意識していません。一戦一戦を大切にすることが第一です。今回はタイム差があって、一人旅状態でのラリー運びをしっかり出来たことが収穫ですね。
【今回の成績 : JN-1クラス 3位】
しっかり完走して、表彰台に立つことが出来ました。車も良くなってきてLEG2ではタイムアップしているので、この流れを次の横手ラリーにもつなげていく予定です(笑)。もちろん横手では、LEG1から優勝争いに加わっていきますよ!! 今回、自分のことではないですが、JN-3で大竹直生選手が表彰台を獲得したことも嬉しいですね。絶対完走という目標だったのでLEG1などではストレスの溜まる場面もあったかと思いますが、良い結果で終えられて本人の自信にもつながったと思います。
【今回の成績 : JN-3クラス 優勝】
シーズン4勝目、しっかり今回はLEG1からトップに立って獲得することが出来ました。SS1からあまり抑えすぎないで行くことは意識していましたが、それを実現出来て「自分の気持ちの問題だったな」と思いました。でも、自分は追われるより追うほうが気持ち的には楽なんですけれどね(苦笑)。今回は自分のフィーリングと実際のタイムが一致しなくて、例えばLEG2の最初はベストだと思い、その次はやっちゃったな、と思っていたのですがタイムは逆だったんです。それはそれとしてあまり考えすぎず、悪かったところを分析してリピートステージでそこをしっかり走るように気をつけていきました。僕自身の性格としてすぐに気を抜いてしまうところがラリーに限らずあるので、残り4戦もしっかり気を張って臨んでいきます!!
【今回の成績 : JN-3クラス 2位】
準優勝という結果で、ビックリしています。前戦のMONTREにAPRC(FIAアジア-パシフィック・ラリー選手権)部門で参戦してリタイアしてしまったのですが、そこで「必要なところはしっかり抑える」ことを学んだので、その経験を活かすことが出来ました。奴田原文雄選手が主宰するラリースクールで、ペースノートについて一から学んできましたが、それがなければ完走すら出来なかったと思います。また、コ・ドライバーの竹下紀子選手からは「運は使いたいときに使える練習をしておけ」と教えてもらったので、それも日頃から練習しなければ(笑)。ここ2戦でいろいろと学べましたので、これからもいろいろ経験して精進していきます。
【今回の成績 : JN-6クラス 2位】
マニュアル車のRX-8時代に準優勝をしたことがありますが、オートマチック車でも同じ結果を残すことが出来ました。オートマチックということでマニュアルモードを使ってシフトアップとダウンをしていますが、ダウンについては3速から2速へ落とす際にエンジン回転数との兼ね合いがあって難しいのです。そこで3速のままコーナーへ入っていくというドライビングも多用したのですが、かなりその走らせ方にも慣れてきたので失敗も少なくなりました。歯がゆい場面もあるのですが、グラベルについてはかなり手応えを掴めています。セッティングもMONTREでの経験から良い方向に来ているので、次の横手も頑張ります。
【今回の成績 : JN-6クラス 3位】
中西選手に全然届きませんでした……、普通に攻めていたのですがロングステージのターマック(舗装路)部分では流れていく景色が遅く感じられたので、そこが反省点かなと思っています。ただ、前後差もあったので絶対にリタイアはしないことを心がけつつ、その中で攻めるところをしっかり攻めることが出来ました。ラリー全体を通じて走りも気持ちも乱れずにフィニッシュまで運び、表彰台を獲得出来たので自信は深まっています。ただ、同じ車種で走るトップとの差は大きいので、ここはもっと詰めていかなければ。次の横手ラリーも、今回のように安定した走りでもっとタイムを上げられるように頑張っていきます。
北海道らしいハイスピードなグラベルステージで競われた「ARK ラリー・カムイ」は、昨年とは異なり二日間を通じてドライコンディションとなった。JN-1クラスでは新井大輝選手組が序盤から独走態勢を構築しシーズン2勝目をフルポイントで挙げたことにより、ランキング争いもますます面白い展開となってきた。
本大会では規則により使用出来るタイヤの本数は最大14本と定められているが、JN-1クラスのヨコハマタイヤ勢はLEG1を6本の使用に留めた。LEG2に8本を残すことで、新品4本でスタートして中間サービスでさらに新品4本を投入するという戦略、これによりLEG2で勝負どころと目された23.09kmのステージを万全の態勢で攻略することが出来る。
LEG2での追い上げが期待された新井敏弘選手組の戦線離脱は残念だったが、トップを走る新井(大)選手組は大量マージンを背景に、LEG2のロングステージを2本ともに僅差のセカンドベストであがってADVAN A053のポテンシャルを遺憾なく発揮。また、LEG2でペースアップした奴田原文雄選手組が3位表彰台を獲得してシリーズランキングのトップに浮上、ヨコハマタイヤ勢が今回も最高峰クラスで強さを見せた結果となった。