2019 JRC Round 5 Report

【全日本ラリー選手権 第5戦 / 群馬県嬬恋村】

タフなステージと不安定な天候の中で競われたモントレー、
新井敏弘選手組が地元で強さを見せて5年連続優勝を飾った!!

JRC Round 5

開催日 2019年6月6日-9日
開催場所 群馬県嬬恋村 近郊
天候 Leg1) 曇り のち 雨
Leg2) 曇り のち 雨
路面 Leg1) ドライ&ウェット
Leg2) ウェット
グラベル(非舗装路面)
SS合計距離 95.85km (17SS)
得点係数 1.2 (非舗装路50km~100km未満)
参加台数 48台(全日本選手権部門)
(ヨコハマタイヤ装着車 21台)
2019 全日本ラリー選手権 第5戦

全10戦で競われる2019年の全日本ラリー選手権は、前半戦の締めくくりとなる第5戦「MONTRE 2019」が群馬県嬬恋村をホストタウンに開催された。今年も県境を超えて長野県にもSS(スペシャルステージ)が設けられるグラベル(非舗装路)ラリーとしての開催、新たなSSも設けられたがタフな道と不安定な天候の難しい一戦となった。

天候については「モントレー・ウェザー」と称される不安定さが知られているが、今年も6月6日(木)は青空が広がったもののレッキが行われる7日(金)には東北南部から東海までの広い地方で梅雨入りが発表されて、開催地も朝から雨模様となってしまった。そのままラリーウィークの週末を通じてスッキリした晴れ間は見られることがなく、曇りのドライ路面から雨のウェット路面までがステージによって混在したほか、ところによっては濃い霧がステージを包むような状況になってしまう。

ステージは昨年も使われた「四阿(あずまや)」と「スポーツランド信州」は全線グラベル、「群馬坂」と「大前須坂」はグラベルとターマック(舗装路)のミックス、そして「峰の原」とサービスパークに隣接する「SAMMY SSS」は全線がターマック。そして新たに全線グラベルの「松代」が加わったが、この新設ステージは全体の8割が非常に道幅が狭い上にガレ場のような状況でワンミスが命取りになってしまうタフなステージとなっている。

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このモントレーで強さを見せているのが、群馬の新井敏弘選手と長野の田中直哉選手というスバル・WRX STI(VAB型)を駆る地元コンビ。昨年まで4年連続で優勝を飾っており、今年も優勝候補の本命と目される中で8日(土)に競技はスタートした。ドライ路面のオープニング「SSS SAMMY 1 (0.35km)」、前日の雨でウェット路面のSS2「四阿A 1 (8.19km)」と連続ステージベストを刻んだ新井(敏)選手組は、新設の「松代 1 (9.60km)」もベストであがりトップの座を磐石なものとしていく。そしてSS4「松代 1」では奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)がセカンドベストで続きポジションを2番手に上げてヨコハマタイヤ勢がワン・ツー体制を構築した。

さらにセクション1の締めくくりとなるSS5「峰の原 1 (11.28km)」では、前戦で全日本選手権の最高峰クラス初優勝を飾っている新井大輝選手/小坂典嵩選手組(WRX・GRB型)がベストを奪って6番手から4番手にポジションアップ。しかし新井(大)選手組のマシンはオープニングからミッションのフィーリングが悪く、このSS5ではほぼ3速を使えない状況になってしまっていた。

峰の原リモートサービスに各車は入るが、新井(大)選手組のマシンは45分という限られた時間の中でミッション交換作業を敢行。舗装されていないサービスパークにビニールシートを敷いただけというラリーならではの過酷な環境の下、トップチームを支えるメカニック陣はきっちりと時間内で作業をこなして新井(大)選手組を再びステージへと送り出した。

メカニックの奮闘に応え、サービス明け最初のステージとなるSS6「スポーツランド信州 2 (1.11km)」では新井(敏)選手組がステージベスト、新井(大)選手組かセカンドベストで親子ワン・ツーを決め、悪天候の中で見守る大勢のギャラリーに速さを見せつける。さらに新井(大)選手は1走目に続いてリピートの「峰の原 2」でもステージベスト、ライバルに6.7秒差をつける速さを見せて一気に2番手へとポジションをアップした。

一方の新井(敏)選手組もSS9「四阿A 2」を制して、この日5回目のステージベストで“親父の威厳”を見せつける。結果、LEG1を終えてトップは新井(敏)選手組が21.6秒の大量リードで完全に主導権を把握した。2位争いは、ライバルに対してLEG1最終ステージを制した奴田原選手組が3.1秒差。新井(大)選手組は最終ステージでのミスが響き4番手、奴田原選手組の2.3秒後ろというポジションで初日を終えた。

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9日(日)のLEG2、オープニングのSS11「群馬坂 1 (5.74km)」は曇り空の下でスタート。ここを制したのは新井(大)選手組、奴田原選手組をかわして3番手に浮上する。続くSS12ではトップの新井(敏)選手組がガレ場路面でタイヤを傷つけてしまうアンラッキーがあったが、タイムロスを最小限に留めてトップの座を堅守。一方で新井(大)選手組はライバルと接戦を演じて勝負は最終セクションへと突入していく。

最終セクションはショートステージの「SSS SAMMY 3」を経てミックス路面のSS15「群馬坂 2」と進むが、群馬坂はインターバルの間に雨が降り路面コンディションは悪化していた。そんな中で新井(大)選手組がベスト、新井(敏)選手組がセカンドベスト、4年ぶりとなる親子ワン・ツー・フィニッシュへの期待も高まっていく。

しかし、雨の影響による路面状況の悪化もあり13時に公式通知で最終ステージとなるSS18のキャンセルが発表に。これにより本大会は全17本のSSで競われ、合計距離が95.85kmとなることからポイント係数は1.2を適用されることとなった。

2番手奪取を目指す新井(大)選手組だが、SS16「松代リバース 2」でインカムにまさかのトラブルが発生。コ・ドライバーの読み上げるペースノートが聞こえなくなったことでタイムアップが叶わず。それでもLEG2最速でレグポイントも獲得、3番手でのフィニッシュとなった。一方で新井(敏)選手組はマージンを背景にペースコントロールしながらマシンを運ぶ貫祿の走りでウィナーとなり、モントレーでの連勝を5へと伸ばしシリーズランキングのトップを奪還した。

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JN-3クラスでは初日にややタイムが伸び悩んで3番手となっていた山本悠太選手/山本磨美選手組(86)がLEG2で猛チャージ。6連続ステージベストで大逆転劇を演じ、今シーズン3勝目を飾ってシリーズランキングのトップに立った。

JN-6クラスは、第2戦・唐津で準優勝を飾っているヴィッツのいとうりな選手が、大倉瞳選手とのコンビでタフなラリーを攻略。LEG1を2番手で終えると、LEG2もマシンを労りながら攻めどころはしっかり走ってフィニッシュを目指す。しかし3番手の伊藤隆晃選手/大髙徹也選手組(ノート)が追い上げ、SS16を終えて僅か1.0秒差に。最終のSS17、ミックス路面で上りの「大前須坂 2」に勝負が懸かったが、ここはいとう選手組がしっかりミス無く走りきって2番手を守りきり今シーズン2回目の準優勝を獲得。伊藤選手組も3位フィニッシュを果たした。

このほか、JN-3の和氣嵩暁選手/久保田真生選手組(BRZ)、JN-5の小川剛選手/佐々木裕一選手組(フィット)、JN-2の竹岡圭選手/佐竹尚子選手組(Polo)も3位を獲得、今回も多くのクラスでヨコハマタイヤ勢が好成績をおさめる結果となった。

DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [スバル・WRX STI]

【今回の成績 : JN-1クラス 優勝】
第2戦以降なかなか勝てなくて、前戦では息子(大輝選手)に勝たれてちょっとストレスが溜まっていましたから地元での優勝は嬉しいですね(笑)。LEG1で2番手を少し離すことが出来ればLEG2は楽になると思っていたので、その通りに運ぶことが出来ました。LEG2ではライバルも追い上げてきましたが、マージンがあるのでそれほど気にはなりませんでした。こちらとしては手を抜くわけではないですが、ペースをコントロールしてリスクを避けながらマシンをフィニッシュまで運ぶことに専念しました。「松代」では運悪くタイヤを痛めてしまいましたが、それでもそのまま残り2kmを走りきってタイム差は大きくなかったですしね。タラ、レバですがあれで20秒近くロスしていたので、それが無ければブッチ切りで勝てたでしょうね。息子は速いときは速いですが、1~2秒の大切さをもっと理解しなければ。つまらないミスによる1~2秒を林道で取り返すのがどれだけ大変なのか、そこを再認識させなければなりませんね。

新井大輝 選手 [スバル・WRX STI]

【今回の成績 : JN-1クラス 3位】
LEG1最終ステージでのミスが最後まで響いてしまいました……。展開としては父(敏弘選手)がどんどん離れて行ってLEG1を終えてのタイム差を見て、深追いするのは止めて2位にターゲットを絞りつつ父に何かがあれば上に行けるところを確実に走ることにしました。足回りがちょっと硬めでタイヤグリップありきで曲がっていたところがあり、こんなに修正舵の多いラリーは初めてでした。LEG1のミッション交換も大きなポイントで、あれが無ければ完走も出来ていなかったでしょう。本当に、メカニックのみなさんには感謝しています。後でビールの一杯と、自分は貧乏ですがつくね串くらいまではご馳走しなければいけませんね(笑)。

山本悠太選手 [トヨタ・86]

【今回の成績 : JN-3クラス 優勝】
SSのタイムを見ると、舗装の「峰の原」以外はLEG1も悪くなかったんです。ただ、悪いところが悪すぎて、峰の原はキロ1.5秒くらいと差が大きすぎて……。LEG2は気持ちも切り替えて臨み、逆転して3勝目を獲得出来たのでホッとしています。ただ、今シーズンはLEG1を2~3番手で終えてLEG2に逆転というパターンになっているので、これは改善しなければならないと思っています。ダートトライアル出身だからなのか、先に走った人のタイムを聞いて「あのタイムで行けるんだ」と自分がスタートするほうが楽なのかもしれません(苦笑)。今回はノートラブルで運が良かった部分もありますが、次の北海道は運だけではなくてドライビングでも対処して車を労りながらベストタイムを獲得出来るように精進していきます。

いとうりな 選手 [トヨタ・ヴィッツ]

【今回の成績 : JN-6クラス 2位】
本当にタフなラリーでした(笑)。全体を通じて大きなトラブルもなく走りきって、2回目の準優勝を獲得出来ました。グラベルは嫌いではないですが、下りの「群馬坂」はスピードが乗るだけに道の上にしっかり留まるのが難しかったですね。とにかく車を壊さないことが第一、その中で自分の出来ることをしっかりやっていこうと心がけていました。ただ、アクセルを踏めていないところがまだ多いことは課題だと思っています。同じ車のライバルが速いタイムを出しているということは、車のポテンシャルとしてそこまで行けるということ。アクセルをなるべく離さないように努力はしていますが、ヤバそうなところは守りに入ってしまうんですよね。ただ、昔のように我武者羅に踏んでいくだけではなく、焦らず変な欲も出さず常に平常心で戦えるようになってきたと思います。次の北海道はハイスピードですが、その方が好きなんです。あとは優勝しか上のポジションは残っていないので、一回くらいは獲りたいですから狙っていきます!!

和氣嵩暁 選手 [スバル・BRZ]

【今回の成績 : JN-3クラス 3位】
生き残った結果として順位がどんどん上がり、3位になることが出来ました。あんなに尖った岩がある道は初めてでしたが、レッキの段階から気をつけていても「松代」ではタイヤを痛めてしまいました。車が出来上がって、ほぼブッツケ本番で臨んだのですが、手応えは掴めたものの上位との差が大きいので少しでも近づけるように頑張っていきたいですね。次のARKラリー・カムイにも参戦しますが北海道大学出身なので第二の地元とも言えるラリーです。2012年ごろにラリーデビュー、就職で群馬に移って県戦や東日本戦へ参戦して今回の全日本戦出場という流れできています。新井敏弘選手からはタイヤを壊さない走らせ方を教わり、「松代」のリバースで心がけて走ったら上手くいったので、これからも色々教えていただきながら上達を目指します。

伊藤隆晃 選手 [日産・ノート e-POWER NISMO S]

【今回の成績 : JN-6クラス 3位】
車の特性として上りの「峰の原」では1分以上離されてしまうので厳しい展開も予想していましたが、3位になったことは素直に嬉しいですね。LEG2の「松代」ではタイヤや足回りを壊してしまったのですが、リピートは気をつけて行ったらステージベストを奪えました。その「松代」はストレートがそれほど長くなくてロングコーナーがあるので、そのロングコーナーにアクセルオフで入っていくと回生も効いてオン・ザ・レールな感覚で行けるんです。こうすると充電できるので次の一発目の加速で車がグンと前に出てくれることを見つけました。これがリピートでのベストにつながったのですが、新たな発見を今後に活かしていきます。

TECHNICAL INFORMATION

今年も梅雨入り時期の開催となり、天候にも翻弄されたモントレー。新たなステージの「松代」はタフな道で、尖った石によりタイヤを痛めてしまったケースも見られる中でヨコハマタイヤ勢は最高峰のJN-1クラスとJN-3クラスを制した。

現在のモントレーはグラベルラリーとして開催されているが、全線舗装のステージも設けられておりタイヤ選択もポイントとなる。JN-1クラスの選手は全線舗装のステージでフロントにADVAN A036を装着して走り、走行後には全輪ADVAN A053に交換するというパターンで戦った。

そんなJN-1勢の中では、「峰の原」を新井大輝選手組が2本ともにベストであがったほか、LEG1のショートステージ「SSS SAMMY」を新井敏弘選手組と奴田原文雄選手組が制し、ヨコハマタイヤ勢が速さを見せた。