2018 JRC Round 4 Report

【全日本ラリー選手権 第4戦/愛媛県久万高原町】

4年ぶりのグラベル開催となった久万高原はタフでサバイバルな一戦、
最高峰のJN6クラスではヨコハマタイヤ勢がワン・ツー・フィニッシュ!!

JRC Round 4

開催日 2018年5月18日-20日
開催場所 愛媛県久万高原町 近郊
天候 Leg1) 曇り のち 晴れ
Leg2) 晴れ
路面 Leg1) ハーフウェット~ドライ
Leg2) ドライ
グラベル(非舗装路面)
総走行距離 196.60km
SS合計距離 67.82km (12SS)
得点係数 1.2 (非舗装路50km~100km)
参加台数 51台(オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 16台)
2018 全日本ラリー選手権 第4戦

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全10戦のカレンダーで競われる2018年の全日本ラリー選手権は、この第4戦から第8戦までグラベル(非舗装路)ラリーが続く。ターマック(舗装路)ラリーと比べてポイント係数が大きく、シリーズタイトル獲得には重要な意味を持つグラベル5連戦、その皮切りとなる「久万高原ラリー」が愛媛県の久万高原町で開催された。

例年同様、標高1,000mに位置するハイランドパークみかわ(旧・美川スキー場)に大会本部やサービスパークが設けられる一戦。しかし2015年から3年続けてターマックラリーとして開催された大会は、4年ぶりにグラベルラリーに戻された。土日の2日間で12本のSS(スペシャルステージ)、合計距離67.82kmで競われる。

久万高原のグラベルステージと言えば、そのタフなコンディションが知られている。今回は土曜日のLEG1で上り方向の「大野ヶ原線 (8.95km)」と下りの「大谷支線 (9.61km)」、そしてギャラリーステージとなる「スキー場 (1.28km)」をそれぞれ2回ずつ走行。日曜日のLEG2は「大谷リバース (6.15km)」と下り方向の「安田 (6.64km)」、そして前日に続いて「スキー場」を2回ずつ走行する。このうち2日目の林道ステージは、一部に初日のステージと重複した箇所があり、路面に深いワダチが刻まれた中の走行になる。

土曜日の朝、久万高原町役場で華やかに催されたセレモニアルスタートで競技は始まった。地元の子供たちが奏でる太鼓の勇壮な音色にも見送られて、各選手は林道のステージへと向かう。しかし、久万高原地方は前夜に強い雨が降り、スタート時点では既に止んでいたものの路面は湿って一部に水が出ているような状態で選手たちを待ち受けていた。

想像以上にタフなコンディションの路面は容赦なく牙を剥き、オープニングステージからリタイアを喫する選手も見受けられる。そんな中、ADVAN A053の205/65R15サイズを装着するヨコハマタイヤ勢が好スタートを見せてくれた。新井敏弘選手/田中直哉選手組と柳澤宏至選手/加勢直毅選手組、2台のスバル・WRX STIが2連続でステージをワン・ツー・フィニッシュ。SS2「大谷支線 1」では三菱・ランサーエボリューションを駆る奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組がサードベスト、SS3「スキー場 1」は奴田原選手組が制して、セクション1を終えて新井選手組、柳澤選手組、奴田原選手組とヨコハマタイヤ勢が1-2-3フォーメーションを構築した。

だが、決して何事も無くここまで来たわけではなかった。SS3では新井選手組が、ブレーキライン破損のトラブルに見舞われてしまう。ブレーキが無いという絶体絶命の状況、しかしなんと新井選手はエンジンブレーキを巧みに使って無事にフィニッシュ。タイムロスも4.4秒に留め、直後の30分サービスではメカニック陣が時間内にしっかり修復して戦いへの影響を最小限におさめた。

午後のセクション2、SS4「大野ヶ原線 2」では柳澤選手組にアクシデント。荒れた路面も影響したかタイヤにダメージを受けてしまったうえ、マフラーも破損してタイムダウンを余儀なくされる。これで惜しくもポジションを4番手にドロップしてしまったが、そこは世界のラリーを戦ってきたCUSCO RACING、粘りの力走で上位争いの一角に留まり続ける。

一方、新井選手組はSS4こそステージベストをライバルに譲ったものの、SS5は同秒ベスト、SS6はセカンドベストであがって、18.2秒のマージンを稼いで初日を終了。これに続いたのは奴田原選手組、スキー場のリピートとなるSS6で2回目のベストを刻み、優勝争いは両者に絞られていった。

日曜日の久万高原地方は、朝から青空が広がる絶好のラリー日和となった。気温も上昇、お昼には25℃近くなりサービスパークも汗ばむ陽気に。LEG1の順位により先頭は新井選手組、その1分後に奴田原選手組がスタートするという順番になるが、グラベルでは路面の砂利が多い先頭や2番手のスタート順は不利という見方も出来る。

いわゆる“砂利掻き役”となる先頭スタートの新井選手組だったが、LEG2オープニングのSS7「大谷リバース 1」でステージベスト、0.3秒という僅差のセカンドベストが奴田原選手組。第2戦・唐津でも同様に新井選手組を奴田原選手組が追う展開のLEG2となり、その時は奴田原選手組が逆転に成功したが今回は新井選手組が鉄壁の戦いぶりを見せていく。

SS8「安田 1」でも連続ベストを叩き出した新井選手組、2番手タイムのライバルに対して5.2秒、3番手タイムの奴田原選手組には6.3秒差をつける速さを見せる。しかし、なんと続くSS9「スキー場 3」で昨日の悪夢が再来、またもブレーキラインを損傷する憂き目に。ただ、このピンチも再び新井選手の卓越したドライビングテクニックと、チームのメカニック陣による迅速なサービスでの修復作業により乗り越え、トップの座を譲ることなく最終セクションへ。

SS10「大谷リバース 2」では奴田原選手組がベストを奪って差を縮めたが、SS11「安田 2」は新井選手組がベストで再びリードを拡大。新井選手組は待望の今シーズン初優勝、そして4回のスキー場SSを全て制した奴田原選手組が2位でフィニッシュ、サバイバルラリーな一戦の最高峰クラスでヨコハマタイヤ勢がワン・ツー・フィニッシュを飾った。

JN2クラスは有力選手もリタイアを喫していく中、GEOLANDARでクロスカントリーラリーを戦ってきている青木拓磨選手が粘りの力走を重ねた。桝井和寛選手とのコンビで、運転補助装置「アクティブクラッチ」を備えたトヨタ・86を駆っての全日本ラリー初参戦だったが、オープニングステージでリアウィングが振動から脱落したりトラブルにも襲われたものの、リタイアを喫する選手たちを尻目に堅実にマシンを運んだ。この結果、初参戦の全日本戦で準優勝を飾り、フィニッシュで笑顔を見せてくれた。

また、JN1クラスでもグラベルラリー初参戦という伊藤隆晃選手と大高徹也選手のコンビが力走。グラベルでの戦闘力が未知数だった日産・ノート NISMO Sをタフなコンディションの中でしっかり運び、こちらも準優勝でフィニッシュを飾った。

DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [富士スバル AMS WRX STI]

【今回の成績 : JN6クラス 優勝】
やはり、1つ勝てると気分的に楽になれますよね(笑)。ブレーキが2回も無くなる大変なラリーでしたが、それ以上の大きなトラブルが無かったのは勝因のひとつでしょうね。ブレーキのトラブルは左右で1回ずつ、こんなの今まで経験したことがありません。それ以外は全体的に思い通りに戦えた感じで、初日でしっかり“貯金”を稼いだことに加えて、オープニングから2連続ベストで後続を引き離せば、相手のやる気も削げますからね(笑)。グラベル初戦を勝てて良い流れを掴めたと思うので、次は地元のモントレーですから連勝していきますよ!!

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN6クラス 2位】
現状、いろいろと課題もあるとは思うのですが、グラベル初戦を2位で終えられてまずまず良かったというのが率直な完走です。車も小さいトラブルはいくつかありましたが、大きなものは無かったので流れも悪くないと思います。もちろん現状で満足しているわけではなく、タイムを上げるためにもうちょっと詰めなければならないところも見えてきているので、そこはしっかり対応して次に向けて準備を整えていきます。ADVAN A053の205サイズはトラクションがしっかりかかって、とても安定していました。濡れた路面から砂利、乾いた路面まで幅広いシチュエーションでとても良いパフォーマンスを見せてくれました。

青木拓磨選手 [アクティブクラッチ・86・REPSOL]

【今回の成績 : JN2クラス 2位】
初めての全日本選手権参戦でしたが、オープニングステージからリアスポイラーやアンダーガードが脱落して大変でした。運転支援装置も初めてこんなタフなラリーに投入したことから、トラブルも生じてしまいました。アクセルが全開にならなくて、「どうしてこんなに攻めているのに、タイムが出ないんだろう?」って。ただ、今回の参戦は支援装置の開発進化も大きなテーマなので、いろいろな収穫もありました。ブッツケ本番状態で臨んで、終盤にはタイムも伸ばすことが出来ましたし、最終的に準優勝でフィニッシュ出来たのでとても良いラリーになりました。

伊藤隆晃 選手 [プレイドライブ YH ノート NISMO S]

【今回の成績 : JN1クラス 2位】
初めてのグラベルラリーでしたが、クルマが壊れなくて良かったです。途中でスローパンクチャーに見舞われたのですが、SSスタート前のTC(タイムコントロール)待ちの間に気がついたので、戦況には何の影響もないままにトラブルシューティングが出来ました。ギア比の関係で1速で高回転域まで引っ張る箇所が多かったのですが、そうすると路面のギャップを乗り越えた直後の入力でドライブシャフトなどを破損する恐れがあったので、なるべくパーシャルを使うスロットルワークを心がけました。LEG1の下りでクルマのセッティングも進化させられたので、次戦以降のグラベルラリーに向けた手応えを掴むことも出来ました。

TECHNICAL INFORMATION

LEG1で3割以上のマシンがリタイアを喫し、4年ぶりのグラベルで開催された久万高原ラリーは予想通りにサバイバルでタフな戦いとなった。路面に深く掘れるワダチ、大きな石はマシンやタイヤへの負担も大きく、十分に注意していてもタイヤを傷つけてしまう選手も見受けられた。

土曜の未明まで降った雨の影響もあり、粘土質を含む路面はところにより非常にスリッパリーなコンディション。そんな中でADVAN A053の205/65R15サイズが優れたポテンシャルを発揮、序盤から強さを見せた。全12本のステージ中、11本で新井選手組と奴田原選手組がステージベストを獲得(SS5はライバルと同秒)したことが、コンディションを選ばないADVAN A053の真価をあらためて証明したと言えるだろう。