2016 SUPER GT Round 7 Report

【SUPER GT 第7戦/チャーン(タイ)】

GT500はWedsSport ADVAN RC F、GT300はVivaC 86 MCが制して、
両クラスをヨコハマタイヤ勢がポール・トゥ・ウィンで完全勝利!!

SUPER GT Round 7

開催日 2016年10月8日-9日
開催場所 チャーン・インターナショナルサーキット
(タイ)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 66周
(1周=4,554m)
参加台数 41台
(ヨコハマタイヤ装着車 20台)
SUPER GT 第7戦

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年に一度、海を渡ってレースを行うSUPER GTシリーズが、その舞台をマレーシアからタイに移して、今年が3シーズン目。昨年は6月の開催だったが、今年は初年度同様、10月の開催となった。すでに日本は秋の気配を十分に感じさせるまでとなったが、その日本から西南に約4,500km離れたタイは常夏の国。雨季にあたるため、年間を通じると過ごしやすい方だとはいうが、日中の気温は絶えず30度を超えることから、再び激しい暑さとの戦いとなることが予想された。

ランキングトップのチームが、すでにハンデの最大値となる100kgを積んでいるのに対し、幸か不幸かランキング9位の「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は44kg、同11位の「WedsSport ADVAN RC F」は40kgと、ともに半分以下であることから、一気に差を詰めてランキングを上げるにはまたとない機会になりそうだ。第4戦で優勝を飾った「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」ながら、その後は不運な展開が続いて入賞ならずの一方で、「WedsSport ADVAN RC F」は15戦もの間コツコツと入賞を重ねてきた。現状は対照的であっても、表彰台に揃って上がることが期待された。

一方、GT300にはチャーン・インターナショナルサーキットに、絶対の自信を誇るチームがある。それが星野一樹選手をエースとする「B-MAX NDDP GT-R」だ。一昨年はルーカス・オルドネス選手、昨年は高星明誠選手と、パートナーはシーズンごと入れ替わっているが、過去2回負け知らず。今年もヤン・マーデンボロー選手とともに記録を重ねられるか。混戦模様のGT300において、全戦入賞を重ねる唯一のチームとしても注目がかかる。

予選が行われた土曜日は、強烈な暑さに襲われるかと思いきや、日中の気温はせいぜい30度に達するかどうかで、むしろ拍子抜けの感も。未明にはスコールが降って、早朝のコースを濡らしたものの、早朝の公式練習が行われる頃には、ほぼドライコンディションに戻っていた。その公式練習のトピックは、GT500で「WedsSport ADVAN RC F」と「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」のワン・ツーだったこと。「うちのチームは例年、このコースでは速くて、昨年も関口がQ1で2番手。軽さも効いていますが、何より路面とタイヤがすごくマッチしています」とRACING PROJECT BANDOHの坂東正敬監督も満足そうだった。

続いて行われた予選では、まずはGT300ではQ1のヨコハマタイヤユーザー最上位が「UPGARAGE BANDOH 86」の山田真之亮選手で3番手だったものの、11台がQ2進出に成功。4番手には昨年もポールポジションを奪った「VivaC 86 MC」の土屋武士選手がつけたのに対し、過去2年間連続で優勝を飾っている「B-MAX NDDP GT-R」の星野一樹選手は14番手でギリギリクリアを果たすという、極めて対照的な結果となる。

だが、「VivaC 86 MC」、「B-MAX NDDP GT-R」ともに若きパートナーが躍進を遂げる。1分31秒到達もあと一歩の好タイムを「VivaC 86 MC」の松井孝允選手が叩き出し、今季3度目のポールポジションを獲得。そして、「B-MAX NDDP GT-R」のヤン・マーデンボロー選手が、0.7秒ほどの差をつけられるも、2番手につけたのだ。これには土屋選手、星野選手とも脱帽!

「松井選手がすごいタイムを出してくれてびっくりしました」と土屋選手が語れば、「Q1では内圧が合っていなかったようなので、武士さんからのインフォメーションを受けて調整していったら、それが完璧に決まりました。朝のフリー走行からクルマの調子は、すごく良かったです。でも、僕たちは今年3回もポールを獲っているのに、まだ一度も勝てていないので、明日こそ勝つことが大事。しっかり準備していきたいと思います」と松井選手。一方、「フリー走行で使っていないタイヤを履いたら、思った以上にフィーリングが合いませんでした。でもヤン選手がしかり挽回してくれた、すごく感謝しています」と星野選手。

GT500では「WedsSport ADVAN GT-R」はQ1で国本雄資選手が4番手だったものの、難なくQ2進出に成功。続いて走行した関口雄飛選手が先頭を切ってアタックを開始し、周を追うごとタイムを縮めていく。ラストアタックで全セッションを通じ、この日のトップタイムをマークし、RACING PROJECT BANDOHにとって、GT500で2012年のオートポリス以来2回目となるポールポジションを獲得する。

「Q1ではちょっとだけタイヤとクルマに足りない部分があったようですが、国本選手にフィードバックしてもらって、セットを変えたり、タイヤも違ったものを入れたりしたことで完璧な状態になって。自分でもすごいタイムが出たと思います。チームとヨコハマタイヤさん、チームメイトに感謝します。レースペースにも自信があるので、ミスやトラブルがなく、自分たちの走りがしっかりできれば、きっと勝てると思います」と関口選手。

予選日と同じドライコンディションながら、一部に晴れ間が拡がる好天で明けた日曜日。早朝から30分間のウォームアップ走行が行われ、各チームは、決勝レースに向けたマシンの本番セットを確認する。ポールポジションからスタートする「WedsSport ADVAN RC F」は、予選の時とフィーリングが違っていたことから急きょセッティングを変更。決勝レースのスタート進行時に行われる8分間のウォームアップで最終確認を行い、トップタイムをマークしたことで確かな手ごたえを得ることに成功する。

その「WedsSport ADVAN RC F」のスタートを担当するのは関口選手だった。ローリングを終え、スタートが切られると同時に、猛ダッシュを決めてポジションキープ。さらに後続を引き離そうとペースを上げていく。スタート直後こそ後続に迫られたものの、5周を過ぎたあたりから2番手とのタイム差はじわじわ拡がっていった。その後も関口選手はさらに後続を引き離していく。

だが、10秒ほどのギャップを築いたところで、予定より早めのピットストップを強いられることとなる。関口選手が「タイヤを使い切ってやろうと思った」結果、タイヤの摩耗が想定よりも早く進行したのである。ただしコース後半部分でのアクシデント発生だったため、大きなタイムロスなくピットまでたどり着くことができ、代わった国本選手は、実質的なトップをキープしたまま、再スタートすることができた。

ただ、同じタイヤで同等の周回を走ることになっていたから、国本選手のスティントでもトラブルが発生しないか心配する声もあったが、それは杞憂に終わる。国本選手は再び後続とのギャップを拡げ、嬉しい初優勝のトップチェッカーを受けることになった。

一方、後方のグリッドからスタートした「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は柳田選手がスタートを担当。思い通りに順位が上がらなかったことから、作戦を切り替えてタイヤ無交換でポジションアップを狙ったが、レースウィークいちばんの暑さの中でのタイヤ無交換にはやはり無理があったようだ。後半のスティントを担当した佐々木選手が、タイヤ交換のためにイレギュラーのピットインを強いられることになり、結局、13位で完走するに留まった。

GT300ではターン1での先陣争いこそ、「VivaC 86 MC」の土屋選手が制したものの、ストレートの続くコース前半では、ターボによる加速が自慢の「B-MAX NDDP GT-R」を駆る星野選手を相手になす術もなく、ターン4で逆転されてしまう。その後も一台の先行を許した土屋選手だったものの、その「GANNER TANAX GT-R」がGT500との接触で順位を落としたことから、2番手に順位を戻す。そして、26周目には松井選手への交代を行うとともに、タイヤは無交換。これが功を奏して、全車がドライバー交代を終えると、「VivaC 86 MC」は再びトップに躍り出た。

その時点で2番手を走るのは「UPGARAGE BANDOH 86」の中山友貴選手で、3番手は「B-MAX NDDP GT-R」のマーデンボロー選手。逃げる松井選手に対し、中山選手とマーデンボロー選手のバトルが激しくなり、これがレース後半の焦点ともなる。だが、逃げる最中の中山選手は、52周目のターン5でGT500と接触。完走扱いとはなったものの、ピットでレースを終えることとなった。

視界の開けたマーデンボロー選手は、ゴール間際になってファステストラップを連発して、松井選手にどんどん迫っていく。一時は10秒近くに達した差は徐々に詰まっていくが、間も無く1秒を切るというところでチェッカーが。これで「VivaC 86 MC」を駆る土屋選手と松井選手が今季初優勝を挙げるとともに、ランキングでもトップに返り咲く。そして2位でゴールの「B-MAX NDDP GT-R」もランキング2位に。その差はわずか5ポイントとあって、ヨコハマタイヤユーザーによるランキング上位の独占に期待がかかる。

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DRIVER VOICE

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 優勝】
朝のフリー走行ではちょっと不安もあって、気温の違いから前日とは異なるフィーリングになっていたんです。それで8分間のウォームアップでセットを若干変えてみたら調子を取り戻せて、自信を持って決勝に挑むことができました。最初のうちは後ろにつかれてしまいましたが、5周ぐらいで離すことができて、自分のペースがいいのは分かっていたから、ミスしなければ勝てると思っていました。ピットのタイミングが近くなって、じゃあタイヤを使い切ってしまおうと思ったら、予定より5周ぐらい早くピットに戻らなければならなくなって(笑)。幸い、ターン7だったと思うんですが、最小限のロスで済んだので、こうして勝つことができたんだと思います。初表彰台が初優勝になって、チームやヨコハマタイヤ、TRD、ファンの皆さんに感謝しています。

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 優勝】
マサさん(坂東正敬監督)はいつも僕たちのため、ストレスのない環境を作ってくれるので、こうして優勝することができたので、本当に嬉しいですし、ご恩に応えられました。2位のチームのアクシデントで、そのあとに大きく差を広げることができたので、僕はタイヤのことだけ考えて、1〜2秒抑えて、タイヤを滑らせないようにして走らせていました。なので、タイヤはしっかり使い切ることができました。大変なレースでしたが、自分を見失うことなく走り続けることができ、チームのGT500初優勝に貢献できて良かったです。

柳田真孝 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 13位】
序盤もペースが思ったより上がらなくて、タイヤ交換をするかしないか無線でチームとやりとりしていたのですが、無交換というギャンブルを採った結果、それが外れちゃって、あのような形で終わって残念です。午前中からその傾向があったのですが、できると思ったんですけれど、多少伸びてはいましたがダメでした。もてぎとは相性は悪くないと思うので、気持ちを切り替えて頑張ります。

土屋武士 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
まずGT500で勝ったふたりに、本当におめでとうと言いたいですね。ちょっとやそっとで立てる場所(表彰台の中央)じゃないですから。今回は(松井)孝允の走りから盗んだところもあったし、それと同時にクルマも完璧に準備できました。後半を孝允に託して、終盤にはヤン(・マーデンボロー選手)と激しいバトルになってしまったのは、燃料ポンプのトラブルがあったのか、息尽きも出ていたみたいで、ガス欠してしまう可能性もあったんです。だけど、チャンピオンシップのことを考えるとピットに入れてしまえば、勝負権を失ってしまうので、あえて勝負に出ましたが、いい方向に出てくれました。本当に今回は、孝允の走りで優勝に導いてくれたので、すごく嬉しいです。

松井孝允 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
やっと勝つことができました、今年3回目のポールポジションから! 本当に勝ちたかったので、すごく嬉しいですね。今回は武士さんが完璧なクルマを作り上げてくれた、そのことが一番の勝因なので感謝しています。今回もタイヤ無交換で行ったんですが、最後までタレのない素晴らしいタイヤでした。乗り始めの燃料が重い状態でも、軽い状態でもいいパフォーマンスで走れたので、これも勝因のひとつだと思っています。

星野一樹 選手 [B-MAX NDDP GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
悔しいっすね。序盤、トップに絶対立とうと思っていたし、昨日、予選で悔しい思いをしたから、1周目に絶対トップに立つというのがあったので、それはできました。あとはリードを築くというレースができていたのですが、ピットロードに入る時にピットレーンリミッターに触ってしまって、エンジンが止まってロスがあって。ただ、それがなくても25号車(VivaC 86 MC)に無交換で前に出られていたんで、厳しいレースになりました。やっぱり3連覇したかったです。でも、シリーズランキングの2位になったと聞いたので、ここからもてぎに向けてまた頑張りたいと思います。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

2クラスともポール・トゥ・ウィンです。ありがとうございました。まずGT500ですが、基本的なタイヤのパフォーマンスは他社以上だったと思います、ラップタイムを見れば。でも、実際には楽に勝てたわけではなく、年々タイムが速くなってきて、タイヤに対するシビアリティが上がってきているという部分で、非常に厳しいレースにもなってしまったかな、という気がします。

「WedsSport ADVAN RC F」はふたりとも速くて、当初は全然楽勝だろうと思っていたのですが、フリープラクティスで、タイヤの耐久性の部分で不安要素が見つかり、それがレースに出てしまいました。その為、2スティント目の国本選手に対しては、「こことここのコーナーを抑えて」と指示を出させてもらいました。我慢の走行を強いてしまった事については、申し訳ないことをしました。ただ、2番手とのギャップがあったので、そのあたりをうまくコントロールできたという感じですね。

GT300に関しては、「UPGARAGE BANDOH 86」が残念な形でリタイアしてしまったので、久々の表彰台独占ができなかったんですが、「VivaC 86 MC」は公式練習から隙なしというか、すごく速くて順当に勝てた感じですね。一方で「B-MAX NDDP GT-R」は、ウエイトを考えたり、FIA-GT3ということを考えたりすると、この2位というのは上出来。チームとドライバーの頑張りは、ありがたかったです。

次のもてぎは2戦連続ということで、ここと同様に我々としては苦手としていないサーキットなので、2戦とも狙います。次はハンデが半分になりますし、最終戦はノーハンデなので、そこはやっぱり勝ちにいきたいと思います。そういった意味では、GT500は2台とも勝ちを狙っていきたいと思います。GT300に関しても昨年はシリーズを逃しているので、それを取り返すつもりで行きます。