2016 SUPER GT Round 6 Report

【SUPER GT 第6戦/鈴鹿】

WedsSport ADVAN RC Fが今季二度目となる5位でゴール
GT300でUPGARAGE BANDOH 86がPP獲得も決勝は4位に

SUPER GT Round 6

開催日 2016年8月27日-28日
開催場所 鈴鹿サーキット
(三重県)
天候 曇り 時々 雨
路面 ドライ 一時 ウェット
決勝周回数 173周
(1周=5,807m)
参加台数 44台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
SUPER GT 第6戦

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2016年のSUPER GTシリーズ第6戦、「INTERNATIONAL SUZUKA 1000km」は、歴史と伝統を誇るレースであるとともに、チームの真価を試される一戦でもある。なにしろ1周5,807mのテクニカルコースを173周、時間にすれば6時間近くもレーシングスピードで走り通さねばならず、そこに真夏の暑さが加わり、マシンにとっても、ドライバーにとっても過酷な戦いとなるからだ。だが、それだけに最後まで戦い抜けば、ボーナスポイントというご褒美も。シリーズ前半戦、力を出し切れなかったチームも、ここでの高得点を足がかりに、逆転タイトルを目指すことも可能である。

14戦連続入賞も、ランキング12位に甘んじる「WedsSport ADVAN RC F」は、ウェイトハンデの軽さを活かして、一気に優勝を狙いたいところ。しかも、それを後押しするのが、昨年の鈴鹿での好成績。予選10番手からスタートし、雨がらみの荒れた展開となった決勝で、確実にポジションを上げ、4位でゴールしたのである。当然、それを上回る成績を見据えている。また、第4戦で優勝を飾った、「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」に対しても期待は大きい。

GT300は依然としてポイントの分散が著しく、毎回めまぐるしくランキングの上位が入れ替わっている。ヨコハマタイヤユーザーとしては前回のレースでは苦戦を強いられ、表彰台に1チームも立てないという由々しき状況に陥っていた。が、この混戦模様は逆に言えば、一気に上位進出も可能だということを意味してもいた。

予選が行われた土曜日は、予想どおり猛烈な暑さに見舞われた。予選開始時の気温は33度、路面温度は44度。これが予選でピタリとマッチしたことは、GT300のQ1でヨコハマタイヤユーザーが、実に11台も突破なったことからも明らかだ。

中でも気を吐いたのは、「シンティアム・アップル・ロータス」の第3ドライバーとして登録された牧野任祐選手。昨年、あと一歩のところで涙を飲んだものの、最後までFIA-F4でタイトルを争い、今年はルーキーとして挑む全日本F3選手権では12戦中3回も表彰台に立って、実力を高く評価されているドライバーが、なんと初のSUPER GTにもかかわらず、トップタイムをマークしたのだ。これにはベテラン高橋一穂選手、加藤寛規選手も大喜び。

続くQ2ではセッティングの変更が裏目に出て、加藤選手がオーバーステアに苦しんだため、3番手に後退してしまったが。その加藤選手を上回ったのが、「UPGARAGE BANDOH 86」を駆る中山友貴選手だった。Q1でルーキーの山田真之亮選手が3番手につけると、中山選手は先輩としての意地を見せ、トップタイムをマークしたのだ。「ようやくポールポジションが獲れましたが、肝心なのは決勝なので、まだまだ気を抜くことはできません」と喜びも半々に、早々と意識を決勝に向けていた。そして、5番手には松井孝允選手がQ2を担当した「VivaC 86 MC」が。今回は土屋武士選手が出来る限りエンジニア役に徹したいと、やはり全日本F3選手権で活躍する、山下健太選手を第3ドライバーに加えていた。

GT500では「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は佐々木大樹選手が、「WedsSport ADVAN RC F」は関口雄飛選手がQ1を担当。それぞれ目の覚めるようなアタックを披露し、佐々木選手が2番手に、関口選手が3番手につけ、難なくQ2で待つパートナーにバトンを渡した。「フォーラムエンジニアリングGT-R」の柳田真孝選手は、そのQ2で7番手に留まったものの、佐々木選手と同じポジションは見えていたという。

一方、「WedsSport ADVAN RC F」は、国本雄資選手がアタックして4番手に。Q1よりもひとつ順位を下げたものの、今季予選最上位。これには関口選手も「昨年は予選10番手から追い上げられた。それが今年は4番手ならば、優勝に向けていい土台ができたのではないでしょうか」と大喜び。2台ともに優勝も視野に入れて、決勝に臨むこととなった。

日曜日の鈴鹿サーキットは、朝からあいにくの雨模様。今回は早朝のフリー走行が行わなかったため、通常はスタート進行の開始と同時に行われるウォームアップを8分間から20分間に延長、その際はウェットタイヤを装着の走行だったが、すでに雨はほとんどやんでいた。マシンがグリッドに並べられると、時間の経過とともに一台、また一台とドライタイヤにチェンジ。最終的にGT500は、全車がドライタイヤを装着してレースを開始する。

関口選手がスタートを担当した「WedsSport ADVAN RC F」は序盤6番手を走行し、その後ろに柳田選手がステアリングを握る「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」が続く展開に。しかし、17周目のS字で柳田選手はスピンしてコースアウト、グラベルにはまってしまう。オフィシャルの助けを借りて、コースに復帰できたものの、トップから4周遅れとなってしまい、万事休す。そのコースアウトの際にエアロパーツの多くを痛め、バランスは大きく崩れた状態ではあったものの、その後はコンスタントにペースを刻み続けたばかりか、最終スティントを担当した佐々木選手は、なんとファステストラップまで叩き出した。4ラップ遅れながら12位で完走を果たし、次戦に向けて一筋の光明を見出すこととなった。

「WedsSport ADVAN RC F」は関口選手が5番手に上げて、国本選手にバトンタッチ。最初のドライバー交代を終えた時点では、4番手にまでポジションを上げていた。だが、国本選手は激しいバトルの最中に接触でフロントスポイラーを損傷させたこともあり、それ以上のポジションアッップはかなわず。苦しい展開の中でも粘りの走りを関口選手と国本選手は見せて、第4戦・SUGO以来となる今季最上位タイの5位フィニッシュで、連続入賞記録を15まで伸ばすこととなった。

GT300ではポールポジションからスタートを切った、「UPGARAGE BANDOH 86」がレース前半のほとんどをリードするも、3時間目を間近に控えた段階でのセーフティカーランで、せっかくの貯金が水の泡に。そればかりか、そのSCラン前に3回目のドライバー交代を済ませていたチームの多くに、最後のドライバー交代後に先行を許すこととなる。タイヤ無交換でラストスティントを山田選手に託し、4番手からのチャージが期待されたものの、突然強く降ってきた雨に行く手を阻まれ、結局4位のままでゴール。

また、「UPGARAGE BANDOH 86」とともに最後まで激しくトップを争うことが期待された、「シンティアム・アップル・ロータス」はクラッシュで、そして「VivaC 86 MC」はミッショントラブルでリタイア。2台とも一時はトップを走っただけに、あまりにも惜しまれる結果となった。5位は「グッドスマイル初音ミクAMG」が、そして7位を山野直也選手と坂本祐也選手の駆る「Excellence Porsche」が獲得した。

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DRIVER VOICE

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 5位】
予選は良かったのですが、決勝ではそのフィーリングがなく、苦しいレースになってしまいました。でも、長いレースをミスなく走りきることができ、今シーズン最高位タイの結果で、また連続入賞を伸ばせたし、次回のレースに向けてレースをしながら、いいデータが取れたのは良かったです。

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 5位】
最初のスティントで、右フロントタイヤに違和感がありました。スティントの後半にブレーキングでフラットスポットを作ってしまい、かなりペースが落ちて……。その後もブレーキに不安を抱えて、思うように走れませんでした。

柳田真孝 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 12位】
後ろから来たクルマと接触してしまいました。あれがすべてでした。ベストではありませんでしたが、それなりのペースで走れましたし、次戦に向けていろんなタイヤを試すこともできました。気持ちを切り替えて、タイに挑みます。いい結果を残せるよう頑張ります。

佐々木大樹 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 12位】
右リアのディフューザーが壊れてしまいました。ダウンフォースを失った割には、速かったんじゃないかと思うのですが……。ドライコンディションには自信がありましたが、路面温度が低すぎて思うようなペースでは走れませんでした。次のタイはチームとしても得意ですし、昨年のデータもあるので、それを大いに活かせるようにしたいですね。

中山友貴 選手 [UPGARAGE BANDOH 86]

【今回の成績 : GT300クラス 4位】
僕がこのチームに呼ばれて2シーズン目になりますが、ポールが獲れたことでほんの少しだけ恩返しができたと思います。決勝ではほんの少しだけ、運が欲しかったですね。でも、チームとしての力はついてきたので、また次回も頑張ります。ファステストラップは獲れたようなので、それだけは満足しています。

谷口信輝 選手 [グッドスマイル 初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
やはりJAF-GTが速かったですね。まったくかないませんでした。ピットインするたびに10秒から40秒ぐらいまで離されるのでは……。頑張りましたが、FIA-GT3の中では2位だったので、それはそれで納得しようと思っています。

山野直也 選手 [Excellence Porsche]

【今回の成績 : GT300クラス 7位】
今回ようやく予選から結果が残せて、決勝でもやっと普通にバトルできるようになりました。せめて4列目にいないとダメだということに、改めて気づきました。スタート前の雨はRRのポルシェにとって恵みの雨になると思ったんですが、それもあっけなくやんでしまって。タイヤは硬めを選んでいた割には低い温度にもマッチしていました。できれば年に2、3度雨のレースを希望します。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

GT300は全部セーフティカーにやられてしまった感じですね。しょうがないですが、あのタイミングは悔しかったですね、うちの上位陣はみんな引っかかっちゃいましたから。上位でゴールした車両は、あの直前にドライバー交代を済ませていたのです。セーフティカーが入らなければ、基本的にそのままの順位がほぼキープされていたのではないでしょうか。順当に行けば、「UPGARAGE BANDOH 86」が勝っていたと思うので、ちょっとかわいそうでした。ただ、今年は相変わらずポイントが分散しているので、まだまだチャンピオン獲得のチャンスは我々にも残されていると信じています。

GT500は2台ともエアロパーツに損傷があり、特に「フォーラムエンジニアリングGT-R」はコースアウトもしていますから、良くない状態でのレースになってしまいました。ただ、予選では使わなかったのですが、SUGOや富士のレースを受けて、この鈴鹿に新しいスペックのタイヤを1種類持ち込んでいて、これを最後のスティントに試してもらったら、ファステストラップを奪ってしまって! 今後のタイ、もてぎに向けてレースの中でテストができたのは、良かったですね。「WedsSport ADVAN RC F」も難しい状況の中、ドライバーが頑張って最後まで走ってくれて、また連続入賞。本当は表彰台に行ってもらいたかったんですけどね。今回は正直、想定温度を外してしまいました。他社も同じ状況だったかと思いますが、そこで立ち行かなかった状況には反省しています。「どのような状況であってもしっかりパフォーマンスできるタイヤ」を突き詰められないといけませんね。残りのタイ、もてぎも頑張ります。