2016 SUPER GT Round 4 Report

【SUPER GT 第4戦/SUGO】

フォーラムエンジニアリングADVAN GT-Rが予選9番手から逆転優勝、
GT300でPPを奪ったVivaC 86 MCは準優勝でランキングトップに浮上!!

SUPER GT Round 4

開催日 2016年7月23日-24日
開催場所 スポーツランドSUGO
(宮城県)
天候 雲り
路面 ドライ
決勝周回数 74周
(1周=3,704km)
参加台数 43台
(ヨコハマタイヤ装着車 24台)
SUPER GT 第4戦

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

2016 SUPER GTシリーズの第4戦「SUGO GT 300km RACE」は、東北の中心都市である宮城県仙台市の南に位置し、遥かに蔵王連峰を臨むスポーツランドSUGOが舞台。豊かな緑に囲まれ、地形を生かしたきついアップダウンがありながら、フルブレーキングで進入するコーナー、上りながらアクセル全開のコーナーなどがある、テクニカルコースとしても知られるサーキットだ。

本来ならば、第2戦との間に挟むはずだったオートポリスの第3戦は熊本地震の影響で中止となり、代替レースがツインリンクもてぎの最終戦と併せて行われることに。レースそのものは2ヶ月以上のインターバルを置いた一方で、この間に2回の公式テストが開催されて、6月中旬のSUGOテストでは関口雄飛選手と国本雄資選手のドライブする「WedsSport ADVAN RC F」が総合2番手、そして佐々木大樹選手と柳田真孝選手のドライブする「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」が総合4番手のタイムをマークしている。

そのKONDO Racingにとって、SUGOは極めて相性が良く、昨年は3位、2013年にも5位に。テスト時の速さと、これまでのSUGOとの実績を加味すれば、十分優勝候補に数えられよう。一方、「WedsSport ADVAN RC F」も負けてはおらず、SUGOテストの好タイムに加え、その後に富士スピードウェイで行われたスーパーフォーミュラ第3戦で関口選手が、国内トップフォーミュラのデビュー3戦目にして早くも3位表彰台を獲得。その勢いは間違いなく、今回も保たれているはずだ。

GT300では開幕戦を、黒澤治樹選手と蒲生尚弥選手がドライブする「LEON CVSTOS AMG-GT」が、そして第2戦を星野一樹選手とヤン・マーデンボロー選手がドライブする「B-MAX NDDP GT-R」が制し、ここまでヨコハマタイヤユーザーで優勝を独占している。しかしながら、SUGOでは公式テストの結果を例に出すまでもなく、コーナリングマシンとして知られるJAF-GT勢が圧倒的に有利で、この2台のFIA-GT3勢はウエイトハンデをしっかり積んでいることもあって、どれだけ上位に食い込めるかをターゲットとする。そのため、新たな勝ち名乗りを挙げる、ヨコハマタイヤユーザーの登場に期待がかかった。

予選は曇り空の下で行われ、本来想定された温度域よりはやや低め、気温21度、路面温度26度というコンディションから開始された。まずGT300はヨコハマユーザー9台がQ1を突破。エアロパーツを改め、公式テストから好調だった「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤寛規選手の2番手を筆頭に、「VivaC 86 MC」の土屋武士選手が4番手につけてJAF-GT勢が予想どおり絶好調。その一方でウエイトハンデの影響は大きく、ランキングトップの「LEON CVSTOS AMG-GT」の黒澤選手は20番手、ランキング2位の「B-MAX NDDP GT-R」の星野選手は21番手に留まり、揃ってQ2進出を許されずに終わる。

続くQ2では「VivaC 86 MC」が大躍進。松井孝允選手が他を圧するレコードタイムを樹立して、ポールポジションを獲得、ベテランの土屋選手を唸らせた。4番手には同じマザーシャシーの、「UPGARAGE BANDOH 86」を駆る中山友貴選手がつけることとなった。

一方、GT500ではヨコハマタイヤユーザーを不運が襲う。Q1終了直前にクラッシュ車両があり、赤旗が出されて、そのまま計測は終了。「WedsSport ADVAN RC F」の関口選手は一度もアタックすることなく14番手に甘んじ、ミッションの不調を抱えた「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」の柳田選手もラストアタックにすべてを賭けるも、セクター1を自己ベストで通過した直後に赤旗が提示されてしまい、ともにQ2進出ならず。

決勝レースを前にして、マシンがグリッドに並べられていた頃には霧雨が舞っていたものの、全車ドライタイヤでのスタートに。序盤には「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」に、肝を冷やす光景が。スタートを務めた柳田選手が3周目のハイポイントコーナーで他車と接触して、13番手に後退。これを見た近藤真彦監督が「最終手段として考えていた」というタイヤ無交換作戦を決断する。

26周目にクラッシュ車両を回収するためにセーフティカーがコースイン。リ・スタートを待ち、30周目には真っ先にピットに滑り込んで、給油と佐々木選手への交代だけを行うことに。この時点で6番手を走行するも、全車がドライバー交代を済ませると、2番手に浮上。

そればかりかトップのタイヤはまだ冷えたままとあって、47周目のレインボーコーナーで佐々木選手が襲いかかってトップを奪い去る。終盤には激しいトップ争いを繰り広げ、加熱のあまり後続をさらに近づけたものの、再びクラッシュ車両があったため、5周を残して赤旗が出されて、そのままレースは終了。「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」が昨年の第5戦以来の優勝を飾り、マシンを落ちた佐々木選手が、ピットで見守っていた柳田選手に駆け寄り、しっかり抱き合う姿が印象的だった。

一方、「WedsSport ADVAN RC F」も魅せてくれた。関口選手が14番手スタートながら、華麗なるオーバーテイクショーを繰り返し、SCが入った時にはなんと2番手にまで浮上していたのだ。当初の予定どおり、ドライバー交代をギリギリまで遅らせる作戦で、44周目にはピットに。

続けて国本選手がトップを狙うはずが、タイヤ交換に手間取ってタイムロス。コースに戻った時には5番手に後退していた。それでも国本選手は快走を見せ、最後はトップ集団に追いついたものの、無情にも赤旗が。結果は5位ながら、十分に表彰台を狙える走りだった。これで「WedsSport ADVAN RC F」は、驚異の連続入賞記録を「13」にまで伸ばすこととなった。

GT300ではポールポジションからスタートした「VivaC 86 MC」の土屋選手が、そのままポジションを守り、一時は後続に10秒近い差をつけていた。SCランに合わせてピットに戻り、松井選手への交代と同時に、左側のタイヤ2本だけを交換。しかし、無線にトラブルが生じていたため、タイヤの内圧をしっかり合わせ切れなかったことで、松井選手は苦戦を強いられることに。その後、トップを走ったのは予選9番手だった「マネパ ランボルギーニGT3」。平峰一貴選手から織戸学選手への交代をギリギリまで遅らせ、なおかつタイヤを無交換としていたためだ。

しかし、終盤の温度上昇がペースを鈍らせることとなり、63周目にトップを奪われたばかりか、最終的に「マネパ ランボルギーニGT3」は6位でのフィニッシュに。対照的に「VivaC 86 MC」は65周目に2番手に浮上。そしてヤン・マーデンボロー選手が駆る「B-MAX NDDP GT-R」が70周目に5番手まで上がった直後に、最終コーナーでクラッシュがあって赤旗が。再開が望まれたものの、規定周回に達していたことからレースは、そこで終了となった。

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

DRIVER VOICE

佐々木大樹 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 優勝】
タイヤを保たせながら速く走るのは、柳田さんも僕も得意なんです。タイヤが厳しいのは分かっていましたが、ここは抜けないコース。後ろから迫ってこられましたが、要所をつかめば大丈夫だと思っていましたし、ベストな走りができたのではないでしょうか。次の富士は昨年も優勝していますし、この富士で結果を残せば、タイトル争いもできると思いますので、気を引き締めていくつもりです!

柳田真孝 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 優勝】
もともと無交換作戦の案もあったので、タイヤをいたわって走り続けました。セーフティカーが入った時に監督から無線が入ったので、『無交換で行けます!』って伝えて。大樹(佐々木選手)は50周近く走って大変だったと思います。僕の30周なんてたいしたことない(笑)。ピットでは、何も起こらないでくれ、ってずっと思っていましたね。

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 5位】
タイヤの温まりが遅かったのですが、あとはいいペースで走れました。次第にフロントタイヤが厳しくなっていったんですが、前を走るライバル達もタイムが落ちてきたから、僕はポジションを上げることができて。バトルをしたけれど、コースに留まることができて、以前の自分だったら、きっと飛び出していましたね(笑)。自分の成長を感じました!

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 5位】
僕は少し柔らかめのタイヤをチョイスして、行けると思ったんですが、最終コーナーから1コーナーにかけての速さが足りませんでしたね。一度は離されてしまいましたが、追いついた時に赤旗……。表彰台のチャンスもあったので残念ですが、14番手から追い上げて、ここまで来られたので、いいレースができたと思います。

土屋武士 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
左側2本だけ交換はスタンダードプランだったんですが、内圧が高過ぎたから、ちょっと下げようと思っていたのに無線が最初から使えなかったから、タカミツに苦しい思いをさせてしまって。もしSCが入らなかったら、もし無線が壊れていなければ、勝てたと思います。ふたつの不運がありましたけど、誰もミスをしているわけではないし、不運の中でもこうやって2位になれて、ランキングトップに立てたので、良かったです。

松井孝允 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
今回の結果は、すごく嬉しいというか、武士さん(土屋選手)が言ったとおり、誰がミスしたわけではなく、とにかくベストを尽くしての2位なので、最低限のような気がします。次の富士はおそらく厳しいと思うので、その次の富士で結果を残せるような準備をして、そこでもう一回巻き返しをはかりたいと思います。

星野一樹 選手 [B-MAX NDDP GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
予選21番手から5位というのはすごいと思うし、チーム全体として本当に素晴らしい仕事をしてくれました。予選まで気温が低かったせいで、すごく苦しかったんですけど、レースでは途中からどんどん上がってきてくれたので、タイヤもマッチしてくれて。信じられない結果ですし、チャンピオンシップ考えると、すごく大きいと思っています。

織戸 学 選手 [マネパ ランボルギーニGT3]

【今回の成績 : GT300クラス 6位】
今回も無交換。勝負に出て、また勝負に負けました(笑)。ちょっと厳しかったですね、温度が。急激に後半上がってきちゃって、そのあたりから無理が利かなくなってしまって。頑張ったけど、作戦的にはまぁまぁ。なおかつ僕らにとっては、途中で終わってラッキーでした。もうちょっとですね。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

本来であれば2台揃って表彰台を狙っていたSUGOだったのですが、Q1赤旗で計画が全て狂ってしまいました。「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」はタイヤ無交換でしたが、そこに至るまではいろいろありました。摩耗の確認は取れていたのですが、性能持続の部分が未確認だった為、レース終了までずっと不安でした。ドライバー2人の技量に加え、路面温度が低かった事と、全体のラップタイムが想定よりも遅かった事が、この作戦に有利に働いたと考えています。

ただ、タラレバになってしまいますが、Q1をちゃんと走れていれば、確実に2台ともQ2に進めていたはずですし、そうなっていれば、コンサバティブな作戦をとったまま優勝できていたと思っています。同様に、予選14位からセーフティカー前2位まで驚異の追い上げをみせた「WedsSport ADVAN RC F」についても、より上位でのフィニッシュが可能だったと考えています。いずれにせよ、SUGOに関してはテストからレースまでの組み立てをしっかりできた事で結果に結びつける事ができました。

GT300では「VivaC 86 MC」に勝って欲しかったのですが、第1スティントで内圧が上がり過ぎていた為、落として第2スティントに行くつもりが、無線が壊れていてチームにそれが伝わらずに、そのまま行かざるを得なかったので、松井選手をつらい状態で走らせてしまいました。ただ、「マネパ ランボルギーニGT3」の無交換とかや、「VivaC 86 MC」の2本交換とか、そういうトリッキーなことをしなくても、速い勝てるタイヤを作ることが課題だと思っています。また、「B-MAX NDDP GT-R」がいつの間にか上位に来ていたのですが、FIA-GT3勢にももっと楽なレースができるよう、全体のバランスを揃えてあげられるよう、修正していきたいです。