新技術の紹介

YOKOHAMA技術は新たなステージへ

エアロダイナミクス技術がさらに進化

横浜ゴムでは、タイヤのころがり抵抗低減と並ぶ環境対応技術として、タイヤ周辺の空気の流れをコントロールするエアロダイナミクス(空気力学)技術に着目し、2010年から空力シミュレーションを活用して研究を続けてきました。
自動車は走行時、車両のさまざまな方向から空気抵抗を受けており、その大きさが燃費に影響を与えます。一方、タイヤ付近の空気の流れは非常に複雑で、その動きが車両周辺の空気の流れに影響を与えていることも知られています。そこで、タイヤの側面にフィン(小さな突起)を配置するなど、形状の工夫でタイヤ付近の空気の流れを変えることにより、車両の空気抵抗低減につながれば、燃費の向上に貢献できるのではないか──。その発想が、研究の出発点でした。
最新の技術では、シミュレーション上、車両の空気抵抗が従来品と比較し2~3%削減できる見込みで、タイヤのころがり抵抗の2~3%削減に匹敵すると予測できます。
さらに空気の流れにこだわり、研究を進めた結果、走行時に発生する、車両のリフト(浮き上がらせる力)を抑制する新エアロダイナミクス技術の開発に成功しました。リフトの抑制は走行時の安全性だけでなく、車両の安定性の向上につながりますが、これまで空気抵抗低減との両立は困難とされていました。新エアロダイナミクス技術は、その双方に貢献できる画期的なものです。
この成果を発展させ、タイヤ性能の向上を進めるべく、さらに研究を重ねていきます。

  • 走行時の空気の流れ(イメージ)

    走行時の空気の流れ(イメージ)

  • サイドウォールにフィン状突起を配し、空気の流れを制御

    サイドウォールにフィン状突起を配し、
    空気の流れを制御

次世代技術基盤の構築

バイオマス原料の合成ゴム開発

タイヤの原料である合成ゴムは、大部分が石油資源から製造されたものです。石油資源を持続可能なバイオマス(生物資源)に置き換えられれば、CO2(二酸化炭素)排出量の削減に大きく寄与できることになります。当社ではバイオマス由来の合成ゴムの開発に向け、外部の研究機関と共同でさまざまな研究に取り組んできました。2015年度は、その成果として二つの新技術を生み出すことができました。
一つは、国立大学法人東京工業大学との共同研究による工業的に使われている固体触媒技術を用いて、セルロース(植物繊維の主成分である糖)からブタジエンを合成する技術です。耐久性、低温特性などに優れた合成ゴムの一種・ブタジエンゴムは、合成ゴムの中でも生産量・使用量が多く、バイオマス由来のブタジエンを実用化できれば、化石燃料の使用削減に大きな効果が期待できます。
そしてもう一つが、国立研究開発法人理化学研究所および日本ゼオン(株)との共同研究による細胞設計を用いたバイオテクノロジーにより、合成ゴムの一種・ポリイソプレンゴムの原料であるイソプレンをバイオマスから合成する技術です。ポリイソプレンゴムは、化学構造が天然ゴムに類似し「合成天然ゴム」とも呼ばれます。今回の新技術は、化石燃料使用を削減できるだけでなく、価格や生産量が不安定な天然ゴムの補填原料を確保するという大きな意味があります。
これらのバイオマス由来の合成ゴムが実用化された場合、そのCO2排出量は従来の約1/4にまで削減される見込みです。コスト面など多くの課題はありますが、環境負荷の削減に寄与し、安定的な原料確保の観点からも、実用化・量産化に向けた技術革新を果たすべく、研究開発に取り組んでいきます。

バイオマスから合成ゴム

バイオマスから合成ゴム