■2015年度決算説明会
■中期経営計画 「GD100」Phase Ⅳ 主な成果と今後の取り組み
前へ戻る 次へ進む

2015年からスタートした中期経営計画「GD100」フェーズIVに沿って、対処すべき課題についてご説明します。

「GD100」は「グランドデザイン100」の略称で、2006年にスタートさせた当社グループの成長戦略です。

ビジョンとして「創業100周年にあたる2017年に企業価値・市場地位において、独自の存在感を持つグローバルカンパニーを目指す」ことを掲げ、財務目標として、2017年に「売上高1兆円」「営業利益1,000億円」「営業利益率10%」を目指してスタートしました。

「GD100」は3年を1フェーズに区切り、各フェーズごとに戦略を立てて取り組んできました。すでに2014年までに3フェーズが終了し、2015年から2017年にかけ、仕上げのフェーズⅣに取り組んでいます。

過去9年間で着実な成長を続けていますが、この間の経済・社会情勢の変化で当初の売上高1兆円などの財務目標達成は2020年以降になるものと見込んでおり、2017年度の売上高は7,700億円、営業利益 800億円、営業利益率10.4%の達成を掲げています。

フェーズⅣはGD100の集大成のフェーズであり、次の100年における飛躍に向けた布石を打つフェーズとなります。そのため、これまでに積み残された課題を払拭するフェーズと位置付けています。

そこで、フェーズⅣでは、「成長力の結集 ~YOKOHAMAの可能性を結集して、次の100年を切り拓く~」をテーマとして掲げ、これまでの各フェーズで取り組んできた「成長」、グループ全体の「成長」、個々の「成長」など、あらゆる成長力を結集させる考えです。

フェーズⅣの基本的な考え方は「次の100年も、お客様に必要とされるタイヤ・ゴム製品メーカーで在り続けるために、顧客価値を高め、グローバルに規模を拡大する」ことです。

そのために、
①全社一丸で、あらゆる行動をお客様満足度向上に繋げる
②横浜ゴムらしい存在感のある商品
③健全な財務体質を生かした積極投資
の3つに力点を置いていきます。

こうした考え方の下、これからご紹介する様々な具体的戦略に取り組んでいます。

タイヤ事業戦略についてご説明します。

タイヤ事業戦略は「グローバルOE市場への注力」「大需要・得意市場でのプレゼンス向上」「生産財タイヤ事業の拡大」の3つの柱からなっています。

3つの柱のご説明に入る前に、まず基本的な考え方を説明します。

ここで改めて、私ども「ヨコハマ」の特色・強みを申し上げると、第1に、高性能を生み出す 「高い技術力」が上げられます。低燃費性能はもとより「走りのヨコハマ」の基本となる高速走行性能、グリップ力、ウェット性能など、様々な面で高い技術を保有しています。

そして、そこから生み出されたのが、フラッグシップブランド「ADVAN」に代表されるハイパフォーマンスタイヤやハイインチタイヤです。その高い技術や性能を実証しているのが、日本、欧州を始めとする各国のカーメーカーに対する数多くの新車用OEタイヤの納入実績とモータースポーツ活動です。

こうした当社の強み、つまり「YOKOHAMAの特色」を鮮明に打ち出すことで、新興タイヤメーカーが強みとする廉価の「コモディティ」商品との差別化を図り、価格競争に巻き込まれることなく、大需要市場、得意市場 そのなかでも特に北米の強化を図ります。以下にご紹介する事業戦略は、こうした考え方を基本にした上で実施中のものです。

3つの柱の第1である「グローバルOE市場への注力」についてです。

当社の海外OE事業は拡大を続けており、海外OE納入比率については、2014年に35%だったものを2017年に55%、さらに2020年には70%と、対2014年比で倍増を狙っています。

OE納入はカーメーカーからの高い性能や品質が求められ、それに答えられる技術を持つ僅かなタイヤメーカーしか納入出来ません。当社の強みである「低燃費技術」「高性能」は、世界のカーメーカーから認められており、昨年もメルセデスベンツGLCクラス、ポルシェ911カレラ、など最新の車両に新車装着を行いました。

今後は中国でも益々低燃費性能などが求められ、更に北米のカーメーカーの開拓も強化していくことで、OE納入拡大を図っていきます。

次の柱は大需要・得意市場でのプレゼンス向上です。

世界のタイヤ市場において「ヨコハマ」のプレゼンスを高めるには、まずユーザーに対し「ヨコハマ」の明確なイメージを伝える必要があります。その有力な手段となるのがモータースポーツです。当社はこれまでもマカオGP、WTCCなど数多くのレースやラリーにタイヤ供給を行ってきましたが、2016年からは新たにアジア最高峰と言われる全日本スーパーフォーミュラ選手権のオフィシャルサプライヤーとなります。こうした数々のモータースポーツ活動を通じて「走りのヨコハマ」のイメージを確立していきます。

また、モータースポーツはタイヤ技術向上の場です。厳しいコンペティションの場を通じて、高いタイヤ開発力、技術力が生まれます。そもそも、モータースポーツに参入できるタイヤメーカーには、OEタイヤの納入と同様、高い技術力が必要であり、参入できるタイヤメーカーは限られています。長年のこのようなモータースポーツ活動により、当社はクルマ好きのお客様から特に高性能なハイインチタイヤの人気が高く、当社の得意分野となっています。

このハイインチタイヤをさらに強化するため、このほど新城工場で18インチ以上のタイヤの生産を増強することを決定しました。ハイインチタイヤは収益性も高く、新車用、補修用ともに今後さらに需要が伸びると見込んでいます。

さらに「ヨコハマのプレゼンス向上」に向けた強力な手段となるのが、イングランド・プレミアリーグ「チェルシーFC」とのスポンサー契約です。

世界中にファンを持つ「チェルシー」のスポンサー企業になることで、グローバルにヨコハマの認知度向上を図ります。既に欧州市場に対する販売強化への期待感やこれからの成長ブランドと予測されていることなどから、他の販売店よりも先にヨコハマを囲い込みたいとして、複数の大手販売店と交渉を行なっており、既に新たな契約も生まれています。

そして今まで以上に、「世界のカーメーカーへのOE納入」や「モータースポーツ」を通じて、「高い技術力のヨコハマ」、「走りのヨコハマ」のイメージを浸透させることで、大きなタイヤ需要が見込まれる「北米・欧州・中国」、また得意市場である「日本・ロシア」で販売強化を図っていきます。

そして、大需要地域である北米市場の強化を図っていきます。

3つ目の柱の生産財タイヤ事業の拡大にも絡みますが、昨年10月にはミシシッピ州の新工場でトラック・バス用タイヤの生産が始まっており、本年以降「地産地消」体制がより一層強化します。同工場は自動化が進んだ最新鋭工場であり、年間生産能力は100万本を計画しています。今後北米市場における生産財タイヤの一大供給基地として活用していく計画です。なお同工場は東京ドーム約43個分に当る約200ヘクタールという広大な敷地の一画に建設されており、将来的な工場新設・拡張に対し十分な余地を残しています。今後の需要動向を見極めながら、機動的に事業展開を図る計画です。

また、北米で販売が好調のSUV用タイヤについても、新商品の開発を担うプロジェクトを進めています。そしてさらに、北米の経営体制の強化を図ります。

なお、新たな動きとして、米国の全米鉄鋼組合(USW)は中国から輸入したTBタイヤに対するダンピング防止と関税を米国国際貿易委員会(ITC)に1月29日に請願したとのことで、今後販売に好影響が現れるものと期待しています。

当社グループの国別タイヤ生産能力について2017年までの計画です。

当社は現在中国、フィリピンの両工場でも生産能力拡張工事を続けています。フェーズⅣの期間に総額1,200億円を投じ、全世界のタイヤ生産能力を、2014年度末の6,800万本から2017年度末までに7,400万本、海外生産能力比率を50%に引き上げる計画です。

なお、2020年度末には8,900万本まで引き上げる計画です。

MB事業戦略です。

1つ目の柱は「自動車部品ビジネスのグローバル展開」です。現在当社グループは、自動車用部品ビジネスとして、ホース・配管の生産拠点、自動車窓枠用接着材の生産拠点をそれぞれ4カ国に設置し、展開しています。昨年はメキシコに設立したYIAメキシコが開所式を行い、現地のカーメーカーへエアコンホース配管部品の供給を始めました。新製品の開発も意欲的に進め、地球温暖化への影響が少ない次世代冷媒に対応したカーエアコンホースの開発に成功し、欧州向け車両に当社製品が採用され、欧州自動車メーカーからの問い合わせもいただいています。また、ディーゼルターボ用オイル配管ホースも開発が完了し、タイのYRTCより現地カーメーカーへの納入を開始しました。なおホース・配管事業においては、国内の更なる業務効率化を図るため、長野の2工場を2016年末までに統合する計画です。

2つ目の柱は「海洋商品でNo.1カテゴリーを拡大」することです。海洋商品のマリンホースや空気式防舷材は、現在、世界シェア1、2位を競う有力商品です。インドネシアの海洋商品工場も本格操業に向けた準備を進めています。これにより一昨年買収したイタリアのYI-ITと併せ、2016年度にはマリンホースで世界3拠点、空気式防舷材で2拠点と体制の拡大を図り、得意とする事業の更なる強化を推進していきます。

3つ目の柱は「グローバルでの建機・鉱山ビジネス強化」です。現在当社グループは、世界の過酷な使用環境に対応したコンベヤベルトや建設機械向け油圧用高圧ホースを展開しています。長期的に拡大が見込まれる世界の資源開発に対応すべく、一層のビジネスの強化を図ります。

4つ目の柱は「独自技術を応用した新規事業の拡大」です。昨年には燃料電池自動車向け水素ステーション用ホースの本格販売を開始し、多くの水素ステーションで採用されています。また、電材分野では、無色透明性を保ちながら、スマートフォンのディスプレイなどを通して発せられるブルーライトをカットするハードコート材の開発などを強化し、当社の独自技術を応用した製品を新たな分野に積極的に展開していきます。

スポーツ事業です。

ゴルフ用品のPRGRにおいては、飛びに特化したオンリーワンのクラブ開発から生まれた「egg」ブランドより、シニアゴルファー向けにSLEルール適合外の「金 egg」シリーズと、ルール適合ながら飛び最優先の「赤 egg」シリーズを発売し、シニアゴルファーを中心に販売を伸ばしています。

また、昨シーズンは当社契約選手である、原江里菜プロが7年ぶり2度目の優勝を果たし、さらに小平智プロが「日本オープン」で優勝する嬉しいニュースもありました。

次に、技術戦略です。

「YOKOHAMA技術は新たなステージへ」では、昨年、タイヤ外側のサイドウォールにフィン型突起を配し空気の流れを制御する新しいエアロダイナミクス技術を開発しました。10月に開催された東京モーターショーに展示し、車両の空気抵抗や浮き上がりを抑える技術として注目を集めました。

また、「次世代基盤技術の構築」では、昨年、生物資源であるバイオマスを原料として二つの合成ゴム生成技術の開発に成功しました。一つは、東京工業大学との共同研究により、セルロースから直接ブタジエンを合成する触媒の開発に成功しました。さらに、理化学研究所、日本ゼオンとの共同研究により、バイオマスからイソプレンを合成することに成功しました。これらの新技術によって今後石油への依存度が低減でき、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素削減に貢献できることから、2020年代前半を目標に実用化を目指して研究開発を推進していきます。

昨年12月、北海道旭川市に新に冬用タイヤテストコースを設立しました。敷地面積は東京ドームの約19倍に当る90ヘクタールで、従来の冬用タイヤテストコースに比べて4倍の広さです。これにより今まで以上に高速での評価が可能になり、さらに高性能なタイヤを生み出すべく研究開発に力を注ぎます。

昨年、日本ではiceGUARD 5 PLUSを新商品として発売しました。さらに、昨年 ドイツのADAC誌で乗用車用ウインタータイヤのW*drive V905が最高レベルの好評価を得て、欧州市場で大人気となりました。今後はより一層の高レベルな冬用タイヤの開発が可能となるため、今まで以上にご期待いただきたいと思います。

全社共通戦略では、2006年からスタートした「ムダ取り活動」をフェーズⅣでも引き続き展開しています。「新・重要課題特別プロジェクト」、「製造原価低減プロジェクト」などを実行し、フェーズⅣの3年間で300億円規模の総コスト低減を目指しています。

さらに
・「M&A・提携の積極的な検討と推進」
・「グローバルに活躍できる人材の育成」
・「国際財務報告基準(IFRS)の導入検討」
・「ISOに基づいた業務基盤の整備」
を全社共通戦略のテーマに掲げ、その達成に向け取り組んでいます。

CSRへの取り組みについてご説明します。

現在、当社グループは、グローバルコンパクトの10原則、ISO26000の中核主題を元に、自社とステークホルダーにとって影響が大きく、関心の高いテーマを特定し、重要課題として「地球環境」、「地域社会」などの6つを掲げCSRに取り組んでいます。

最近の活動として、「地球環境」では、バージニア州のタイヤ工場で廃棄物の埋立て処分量をゼロにする完全ゼロエミッションを達成しました。 また、タイのタイヤ工場では、工場の敷地内で行っている生物多様性保全活動を地域住民やマスコミの皆様に公開するイベントを実施しました。

「地域社会」では、平塚製造所で昨年11月開催した体験型環境イベント「Think Eco ひらつか2015」の収益金を、東日本大震災の義援金として平塚市を通じて、石巻市に寄付しました。また、同イベントでは、前回に続き生物多様性パネルディスカッションを、大学、行政、環境NPOなどをパネラーに迎え、約60名の地域住民や従業員家族も参加し開催しました。

弊社はコーポレートガバナンス、コンプライアンスを重要な経営課題と考えており、今後もより一層組織・体制を強化していく所存です。皆様におかれましては、こうした当社の姿勢をご理解いただき、今後もご支援・ご鞭撻をいただければ幸いです。