2018年・ADVANカラーを駆る戦士たち – 斉藤邦夫選手 (後編)

ADVANカラーを駆る戦士たち
 
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  • 斉藤邦夫 選手 (全日本ジムカーナ選手権) 前編後編 |

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  • 奴田原文雄 選手 (全日本ラリー選手権) 前編後編 |

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  • 谷田川敏幸 選手 (全日本ダートトライアル選手権) 前編後編 |

全日本ジムカーナ選手権では16年ぶりとなるADVANカラーのマシンを駆って戦う、PN1クラスのディフェンディングチャンピオン・斉藤邦夫選手。大ベテランが思うジムカーナの楽しさをお聞きするとともに、ジムカーナ上達のヒントを教えていただきます。


コースを覚えるイメージは“紙芝居”

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斉藤邦夫選手インタビューの後編では、大ベテランからジムカーナ上達のヒントをお聞きしてみよう。ジムカーナは入門編モータースポーツとして始めやすいカテゴリーとされるが、実際に始めようとして最初の壁となるのが、如何にコースを覚えるかということではないだろうか。

「やり方は人それぞれですが、自分の場合はコースをスタートからゴールまで一度に全部覚えようとはしていません。イメージとしては紙芝居のようなもので、まずコースをいくつかに分割するんです。その上で、例えばスタートからフル加速して最初にステアリングを切るところまでを1ページ目とします。そこを走っている間にページをめくり、次のセクションに行くという感じですね」

“斉藤邦夫流”、紙芝居のようなコース習得法。この方法はビギナーにもお薦めできるという。

「スタートからゴールまでを連続で覚えるのは、そんなに簡単ではないと思います。むしろラリーで使うペースノートのような感覚で、全体を区切ってやったほうが覚えやすいのではないでしょうか。紙芝居に例えましたが、歌のように小節毎だったり文章でも句読点や文節がありますよね。ドライビングにおいて仕事量の少ない直線区間などを節目にして、コースをいくつかのセクションにわけると覚えやすいと思います」

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もうひとつ、1/1000秒を競いあうジムカーナでは必須とも言える、自分自身の集中力の高め方についてもコツを教えていただこう。

「別に、自分が走るタイミングにあわせて集中しようとしてやっているわけではありません。これまでの経験値で、自分で調子が良い走りをした時と、失敗した時の精神状態がそれぞれどのようなものかは理解しています。だから、調子が良かった時を思い出して、それに近い状態へ持っていくことを自然にやっているんですね」

経験値に基づいた上で、ひとつビギナーでも実践出来ることを教えていただいた。

「調子が良かった時をベースにして、ひとつのパターンを作るのが良いでしょう。何台前の車がスタートしたら自分の準備を始めるかとか、装備品をつける順番を決めておくとか。あまりやりすぎると囚われすぎる懸念もあるので注意が必要ですが、ある程度のパターンを構築して“戦闘態勢”に入るスイッチを上手く入れられれば、おのずと集中力も高まるでしょう」



ジムカーナは柔道や剣道にも通じる“道”

斉藤選手はプロドライバーとして、ジムカーナを戦ってきている。年が変わるにあたり、新年のカレンダーにまずは全日本ジムカーナ選手権の日程を書き込み、生活における優先順位のトップにジムカーナを据えているというのだ。そんな斉藤選手に、ジムカーナの楽しさは何なのかをお聞きして今回のインタビューを締めくくろう。

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「言ってみれば、ジムカーナというのは究極の自己満足なんですよ。複数の車が同時に走るレースは格闘技、相手がいてそれを倒すというスタイルですね。一方でジムカーナやダートトライアルは自分自身の理想を描いて、それに近い走りをするように道具や技術、理論をまとめて表現していくんです。柔道や剣道のような“道”、それを追求していく競技なんですね」

“道”を追求していくと語った斉藤選手。その道を走る原動力は、向上心にあるという。

「ジムカーナに100点は無いんですよ。自分自身のこれまでを振り返っても、100点の走りというのは無いんですね。もし100点があったら、ジムカーナを止めてしまうかもしれません。100点だと満足するということは、言い換えれば成長が終わって向上心が沸いていないということ。その時に出来るベストな走りというのはありますが、やはり99点や98点で『もっとこうすれば良かった、ああすれば良かった』という思いがあるんですよね」

さらに斉藤選手は、ベテランとして抱いている思いを語ってくれた。

「身体は年齢に比例して衰えますが、一方で運転のテクニックや知識などは蓄積されて向上を続けます。これが将来、どこかでせめぎ合って進化が穏やかになり、衰退が大きくなったら自分自身のレベルアップが止まり、トップでいられなくなりますよね。そうならないように、身体の衰えを他の要素で補っていこうと思っています。その上で、いずれ衰えを補えなくなったら、趣味として楽しいジムカーナをやると思います。もちろん今も好きでジムカーナをやっていますが、楽しいだけではダメで結果を追い続けています。楽しいジムカーナをやるのは、もうちょっと先のことでいいな、と思っていますよ(笑)」



次のページでは、全日本ラリー選手権をADVANカラーで戦ってきた奴田原文雄選手にお聞きします。


UPDATE : 30.Mar.2018

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  • 斉藤邦夫 選手 (全日本ジムカーナ選手権) 前編後編 |

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  • 奴田原文雄 選手 (全日本ラリー選手権) 前編後編 |

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  • 谷田川敏幸 選手 (全日本ダートトライアル選手権) 前編後編 |