2017 JRX – Japan Rallycross Exhibition Match (1)

欧米で人気のモータースポーツ、ラリークロス(Rallycross)。2017年11月、日本で初めて開催された本格的なラリークロス競技会「JRX – Japan Rallycross Exhibition Match」の模様をお伝えします。


欧米で人気のカテゴリー、“ラリークロス”とは?

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日本ではまだ馴染みの薄いモータースポーツカテゴリー、それが「ラリークロス(Rallycross)」。欧米での人気は高く、古くは1970年代からヨーロッパでFIA(国際自動車連盟)のタイトルが冠せられた「FIA ヨーロッパ・ラリークロス選手権」が開催されており、現在はこれが発展してFIA世界選手権としてヨーロッパを中心にシリーズが展開されている。一方、北米では「GRC(グローバル・ラリークロス)が人気を集めており、2014年から2年間はヨコハマタイヤがワンメイクタイヤを供給してシリーズを支えていた。

その競技形態は「ラリー」という名称を用いているものの、一般的に認識されているラリーとは大きく異なる。最大の違いはラリーが1台ずつタイムアタックを行って速さを競い合うのに対して、ラリークロスはサーキットレースのように複数の車両が同時にスタートして同じコース上でバトルを繰り広げながら速さを競うことになる。

また、似たカテゴリーにオートクロスがあり、日本では長野県のモーターランド野沢が唯一のJAF(日本自動車連盟)公認コースとなっている。オートクロスはコースの全てが非舗装路であり、ここで同時スタートによって複数の車両が競い合う。簡単に言えば、ダート路面でのレースということだ。

一方のラリークロスは、ひとつのコースに舗装と非舗装の路面が混在することが大きな特徴。さらに迫力あるジャンプスポットが設けられることも多く、エンターテイメント性の高いカテゴリーと言えるだろう。

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また、2017年にFIA WTCC(世界ツーリングカー選手権)でも試験採用されたジョーカーラップの存在も、競技を盛り上げる要素のひとつ。これはコースに設けられた“遠回りルート”で、競技中には必ずここを全車が1回は通過しなければならない。このジョーカーラップをどのタイミングで通るかは戦略の分かれ目にもなり、この判断のために競技の全体的な流れを確認しながら無線などでドライバーに指示を送る“スポッター”という役割のチームスタッフも存在している。

GRCについては、ヨコハマタイヤがワンメイクサプライヤーをつとめていた2015年に掲載した特集記事で詳しく当時の模様を紹介しているが、その時にも紹介しているようにGRCは開催されるコースのバラエティに富んでいるという特徴もある。

2017年のGRCを見ても、常設サーキットコースのみならず、コンベンションセンターや空港、港湾の敷地などが舞台となっており、市街地中心部からのアクセスも悪くないロケーションが多い。つまり、より誰もが気軽に観戦出来ることも人気の理由であり、将来的には日本でもこうした環境でも開催が期待されるところだ。



多彩なカテゴリーの有力選手が競い合ったJRX!!

2017年11月14日(火)、福島県二本松市のエビスサーキット。ドリフトやジムカーナでお馴染みのサーキット、この西コースを舞台に国内初の本格的なラリークロス競技会となる「JRX(ジャパン・ラリークロス)・エキシビジョンマッチ」が開催された。

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この大会を実現した立役者こそ、ドリフトやダートトトライアルの現役選手でありエビスサーキットを運営している熊久保信重選手。熊久保選手の呼びかけで2018年以降のシリーズ展開も視野に入れ、まずはテストケースとして「エキシビジョンマッチ」の位置づけとされた。

規則により、車両は3つのクラスに分類された。大きくは改造範囲の狭いプロダクションと、トランスミッション/デファレンシャル/クラッチ/ブレーキなどの変更が自由とされたアンリミテッドに分けられ、前者は2輪駆動のみで「RX-P」、後者は2輪駆動の「RX-D1」と4輪駆動の「RX-D2」というクラスになる。タイヤは規則で使用出来る銘柄が指定され、ヨコハマタイヤでは硬質グラベル用の「ADVAN A036」を装着しての出走となった。

そして、なんといっても注目を集めたのは参加選手の顔ぶれが豪華だったこと。ラリードライバーからは日本人で唯一GRCへの参戦経験を有する新井敏弘選手を筆頭に、奴田原文雄選手、柳澤宏至選手、明治慎太郎選手といったチャンピオン経験者が出場。ダートトライアルからも谷田川敏幸選手、竹本幸広選手、奥村直樹選手、佐藤史彦選手、小関高幸選手といった全日本選手権でお馴染みの顔ぶれが。レースからはSUPER GTで織戸学選手とコンビを組む平峰一貴選手、そして近年はダートトライアルにも挑戦しているドリフト出身の熊久保選手と末永直登選手といった、まさに“異種格闘技”とも言える顔ぶれが競い合った。

カレンダーも11月半ばということで寒さも厳しくなってきた福島県だったが、戦いの方は熱い内容となった。一般的なラリークロスのフォーマットに従い、タイムアタック、クオリファイ、セミクオリファイ、ラストチャンス、ファイナルレースと競技は進行、各選手はファイナルへの勝ち残りを賭けてバトルを繰り広げていった。

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RX-Pでは、タイムアタックから奴田原選手が貫祿の速さを見せた。しかしファイナルではスタートで痛恨の出遅れを喫し、この間に走行を重ねる毎にダート区間での速さに磨きをかけた平峰選手が先行。終盤に奴田原選手も猛追したが一歩届かず、平峰選手が逃げきって優勝を飾った。

RX-D1は、ファイナルで熊久保選手と末永選手が激しい“同門対決”を演じた。タイムアタックなどでは舗装区間で華麗なツインドリフトも見せた両選手だが、ファイナルともなれば掛け値無しのまさに“ガチンコ勝負”。熊久保選手がラリークロスを展開しようとした動機のひとつに「ドリフトで培った技術を活かせるカテゴリーだから」というものがあるが、まさにドリフトのテクニックも余すところなく見せて両選手が競い合う。先行していたのは末永選手だったが、勝負を決したのはラリークロスならではのジョーカーラップ。これを巧みに使った熊久保選手が逆転劇を演じ、見事にウィニングチェッカーを受けた。

そして最もハイパワーなマシンが競い合うRX-D2は、エキシビジョンならではの展開でファイナルのスタートを迎えた。それまではGDB型のスバル・WRX STIを駆って勝ち残った新井選手だったが、車両がターマック仕様ということでやや動きがシャープ過ぎた面があった。そこでファイナルへの進出が叶わなかった選手からグラベル仕様のGRB型WRX STIを借り受け、車両交換を主催者に認めてもらって出走。唯一のラリークロス経験者として追撃を図ったが、好スタートからリードした谷田川選手が逃げきって表彰台の真ん中を獲得した。



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次のページでは、本大会に参加した新井敏弘選手と平峰一貴選手の声をお届けします。