2017 VITA-01の世界 (4)

近年、モータースポーツで活躍する女性たちが改めて注目を集めているが、新たに女性だけのレースシリーズがVITA-01を用いて発足した。KYOJO-CUP(競争女子選手権)は、富士スピードウェイを初年度は3戦を開催、キャリアもプロフィールも個性的な女性ドライバー達が競い合う。VITA-01で戦われ話題を集めているKYOJO-CUPについて、ご紹介していこう。


2017年、KYOJO-CUPが華々しく幕を開けた!!

日本人初のル・マン24時間レース総合優勝ドライバーであり、現在は名門チームTOM’Sの監督を、そしてFTRSことフォーミュラトヨタレーシングスクールの校長も務める、関谷正徳氏のプロデュースにより、今年からスタートしたKYOJO-CUP(競争女子選手権)。文字どおり女性ドライバーだけによる、VITA-01を用いるレースとして開幕前から大いに話題を集めていた。

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女性ドライバーだけによる、いわゆるレディースカップは1980年代にもいくつか開催されていたが、「女の意地」が火花を散らすことも多く、シビックレディースだけは長く続いたものの、その他は短命に終わり、特にレンタル制のレースは事後の損傷があまりにも酷く、たった1年で終了の憂き目にあっていた。しかしながら、KYOJO-CUPは「日本初のプロを目指す女性ドライバーの戦い」をコンセプトとして前面に打ち立てていたこともあり、ドライバーそれぞれの意識は高く、大きな混乱を来すことはまったくなかった。注目度の高さも含め、今後の盛り上がりは大いに期待できそうだ。

初年度の2017年は全3戦で争われ、そのすべて富士チャンピオンレース、そしてインタープロトシリーズと併せて開催される。ちなみにKYOJO-CUPは予選、決勝ともに日曜日に行われ、土曜日にはオーナーズレースとして、オープンエントリーのレースも開催。つまり、1台のVITA-01で男女異なるドライバーが参加でき、また女性ドライバーが両レースに参加することも可能となっている。

さて、去る5月14日に決勝が行われたKYOJO-CUPの初戦だが、13名がエントリーした。そのうち、ふたりが初レースではあったものの、カートレース、サーキットトライアルの経験はそれぞれにあって、まったくのモータースポーツ初心者は存在しなかった。逆にフォーミュラ経験者は5名。FIA-F4に参戦中のドライバーは小山美姫選手、池島美紅選手、そして昨年まで出場していたのが今橋彩佳選手で、最も経験豊富なおぎねぇ(荻原なお子)選手はフォーミュラトヨタでポールポジションの経験を、藤島知子選手はフォーミュラスズキKei/隼の出場経験を持つ。

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予選では小山選手がひとり2分4秒台を出してポールポジションを獲得し、コンマ5秒差で今橋選手が2番手。そして、富士では初レースながら、鈴鹿や岡山でシビック、ロードスターを走らせていたツーリングカー代表の小泉亜衣選手が3番手、ドリフト出身でレースはJoy耐の出場経験を持つ鈴木幸子選手が4番手につけた。その一方で、おぎねぇ選手はステアリング系のトラブルに見舞われ、12番手に沈む波乱も。

決勝では今橋選手と小泉選手が好スタートを切り、コカコーラコーナーでは小山選手を含み、進入でスリーワイドになる光景も。「スタートは良かった! 一瞬トップに立って、自分でもびっくりしたけれど、スリーワイドなんて勉強してへん(笑)」と小泉選手が引く格好になり、小山選手と今橋選手に続いてクリアすることとなる。2周目に入ると、このふたりが一歩抜け出すも、その後に接触が。幸い、大事に至らなかったものの、今橋選手がトップに立って、小山選手が3番手に後退する。

だが、小山選手は3周目の1コーナーで2番手に返り咲き、1.6秒の差を詰めるべく、ファステストラップを連発。5周目には追いつき、7周目の1コーナーで今橋選手をパスすると、最終ラップに再びファステストラップをマークして逃げ切り、記念すべきKYOJO-CUP最初のウィナーに輝くこととなった。3位は小泉選手で、4位は池島選手。なお、アクシデントによってピットスタートを強いられていた鈴木選手は9位、激しい追い上げが期待されていた、おぎねぇ選手は一時9番手まで浮上するも、その後ふたつ順位を落としてゴールした。



基本的な運転操作の勉強になります – 小山美姫 選手

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YouTubeで「試乗女子」として話題を集め、FIA-F4に参戦中の小山美姫選手が、記念すべき最初のKYOJO-CUPウィナーに。5歳からカートレースを始め、目標は「F1ドライバー」と力強く語る実力派の、このレースに対する思いを紹介しよう。

「私が思うモータースポーツの魅力というのは、男女関係ないということ。なので、それを分けるのはどうなのかな、と思っている部分はあったのですが、男女関係ないんで(笑)。男だけであろうと、女だけだろうとあっていいと思ったし、初めての企画というので楽しみにしていたのもあるので、どこへ行っても勝ちたいな、という感じです。

VITAは速度感がないので、大丈夫なんですけれど、今のクルマは電気でパドルとかが多くて、それに対してHパターン(のミッション)というのが昔に戻るというか、基本的な操作、エンジン回転の合わせ方とか、そういうのは勉強になると思います。

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レースは、見ていた方には面白かったかもしれませんね。ちょっとホイールスピンしたんですが、そんなにスタートは悪くないと思っていたのに、いつの間にか横に来ていたので。無理して閉めることもできたと思いますが、最初の1コーナーでのぶつかりというのが、一番レースでは成立しないものだと思っていたし、そこまでやる必要はないので。7周あるし、じっくり行けばいいな、と思っていたので、あんまり焦ってはいませんでした。

最初から負けるという意識はなくて、F4の資金にも回さなきゃいけないので、出ると決まった時から私は賞金を獲る。でないと、F4がヤバいっていう、無事に獲れたんで良かった(笑)。楽しかったです、前から後ろに行って、また前に行くというパターンが。乗っているものとしてはむしろ楽しかったです。レースに勝つのは本当に久しぶりですよ。カートで最後ですからね、なんのレースでも勝てると嬉しいです!!」



母、姉、そしてライバルとして – おぎねぇ(荻原なおこ) 選手

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続いて紹介する、おぎねぇ選手はレースアナウンサーとして活躍する傍ら、自らも近年はスーパー耐久、昨年はもてぎシリーズでVITAにスポット参戦。KYOJO-CUPドライバーの中で最も豊富なレースキャリアを誇り、フォーミュラトヨタでポールポジション獲得の経験も持つ。

「VITAはハコとも違う、フォーミュラカーとも違う、ちょうど中間的なクルマで、女性ドライバーの入り口としては、すごくいいと思っています。このKYOJO-CUPという企画に関しては、関谷さんに『20年前だったら、すぐ手を挙げました』って言ったんです。というのは、カートから上がって来た10代、20代の子たちでやったら面白いと思っていたので、そういう企画になったらバックアップしますって。ただ、経験のない子を開幕戦に出すのはリスクがあるので、『乗ってくれませんか』ってことになったんです。

このレースから『プロのライン、合格だよね』って評価されるドライバーが、ひとりでもふたりでも出てくれたら企画としては正解だと思うし、そのためには見てもらわなくてはならないので、こういうプロモーションは必要だと思います。なにより運営スタッフの中には関谷さんの奥さん、ウエストレーシングカーズの神谷さんの奥さんがいて、女性が女性のレースをバックアップしてくれているというのがすごく大きい。ドライバーだけでなく、ファンの女性ももっと増えて欲しいし、女性が女性を応援するプロジェクトになってくれれば、すごく嬉しいですね。

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ただ、ドライバーそれぞれに考え方の違いがあるので、そこをまとめて行くのは大変だと思うので、私はある時は母であり、ある時は姉であり、ある時はライバルであり、という立ち位置にいられたらいいと。もちろん勝負事ですから私も勝ちたいし、そういう思いでレースに出たのですが、それとは別に自分が大先輩たちに、そうしてもらったという思い出もあるので、同じようにみんなの相談を聞いたり、クッション役になってあげたい、と思っています」



東北のレースを盛り上げていきたい – 鈴木幸子 選手

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3人目に紹介する鈴木幸子選手は、レース経験こそ少ないものの、予選は並みいる経験者たちを乗り越えて4番手を獲得。ドリフト出身のドライバーは、ある思いを抱いてKYOJO-CUPに挑んだのだという……。

「もともとドリフトをやっていて、その技術向上のために、ハコでタイムアタックをやっていました。その後、東北でモータースポーツを盛り上げようと思って、女性だけのチームで草レースなんですけど、耐久レースに参戦して。そういうのをきっかけに、私、岩手の出身なんですけれど、岩手の方でもモータースポーツに興味をもってもらえたらいいな、って思ってKYOJO-CUPに参戦しました。なので、公式レースのスプリントは初めて。もてぎEnjoy耐久に出たことがありますが。

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VITAに乗ってみて思った印象は、ちょっと雑な運転をすると、すぐに流れてしまったり、丁寧な運転で、的確な操作をしないと速く走れなかったりするので、そこはちょっと難しいとは思いますが、それをうまくこなせれば、楽しいですね。予選はもうちょっと行けたとは思うんですが、もともとツワモノ揃いの中で、とりあえずビリにならないよう頑張ろうという目標だったので、この4番手というのは、すごく自分でも評価できると思います。

これからどんどん、こういうのを見て、やりたいなと思う女性が、男性も増えてくれれば。今、東北のレースは厳しくて、関東に来ると盛り上がっていますが、東北の方でもこれぐらい盛り上がって欲しいですね。いろいろと広がりができれば、と思っています」



2017年シーズン後半も、ますます全国で盛り上がりを見せるVITA-01。ヨコハマタイヤはこのVITA-01やSuper-FJなどのグラスルーツカテゴリーも、引き続き足元から支えてまいります。