2017 Super Taikyu Series (3)

スーパー耐久シリーズを統括するSTO(スーパー耐久機構)にお聞きする、シリーズの現状と展望についての第2回。今回は2017年に新たに設けられたクラスや全クラスで導入されたウェイトハンデ制、そして積極的な情報発信などの取り組みについてお聞きしてみよう。


TCRとのパートナーシップ

2017年のスーパー耐久シリーズには、新たにST‒TCR(開幕戦はST‒R)とST‒Zというふたつのクラスが設けられた。前者はインターナショナルシリーズを筆頭に世界各地でシリーズ戦が展開されているTCR規格車両が、後者はGT4規格車輌が対象という、ともに世界的な流れの中にある車両で参戦できるクラスである。特に開幕戦から参戦チームがあるST‒TCRについて、STO事務局長の桑山晴美さんに導入の経緯をお聞きした。

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桑山晴美さん「TCRの存在を知ったのは1年前ほど。STOの海外渉外マネージャーから情報を入手し、『これはスーパー耐久に入れよう』と即決しました」

クラスが増える一方で、例えば4輪駆動ターボエンジン車両によるST‒2クラスは参戦台数が一時期より減少しているという現実もある。一部では、ST‒TCRがST‒2の代替的な位置づけではないか、という見方もあるが、この点は実際のところどうなのだろうか。

桑山さん「そういう理由での導入では、まったくありません。ST‒2クラスも走りたいという人がいれば今後も是非ご参加いただきますし、そもそもの生い立ちが違うクラスを統合しようという考えはありません」

開幕戦ではホンダ・シビックとアウディ・RS3が2台ずつ参戦したST‒TCR。そのパフォーマンスについて、開幕戦の走りを見てどのような印象を持ったのだろうか。STOで技術的な面も担当する事務局の三村壮太郎さんにお聞きした。

三村さん「速度的にはST‒1のポルシェとST‒3のレクサスの間ほどと思っていましたが、開幕戦を見た限りではそこまでの速度が出ていなかったような印象もあります。予選結果もST‒2やST‒3に混ざるような位置関係にありました。今年1年を通して、どれだけマシンの完成度がさらに高まっていくかに期待しています」

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新たな取り組みでシリーズの魅力をさらに高める

シリーズのカレンダーは全6戦だが、決勝のフォーマットは2通りが存在する。ひとつは全車が同時にスタートして競い合うもので、これは鈴鹿サーキットと富士スピードウェイで採用される。もうひとつが2レース制で、全体を2つのグループに分けて、それぞれに予選と決勝を行う方式だ。このグループはクラス毎にまとめて2つのグループに振り分けて構成されるが、その振り分け方に新しい試みが行われた。

具体的には、2016年は単純に絶対スピードの速さでST‒X/1/2/3とST‒4/5の2グループとしていたが、2017年の開幕戦ではこれがシャッフルされて、ST‒X/3/4とST‒1/2/5で構成される2グループとされたのである。

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桑山さん「本来は、すべての車輌が一斉に走るレースが『スーパー耐久』ですが、現状、各サーキットにより走行できる台数に制限があり2レースにするか、予選落ちレースにするしかありません。

参加型レースである以上、どのチームにも最後まで走り抜いていただきたいですし、最後まで順位がわからないのが耐久レース。ですから、予選落ちレースは私の中ではありえないですね。どのようなレースフォーマットがスーパー耐久シリーズにとって適しているのかを見極めたいですね」

三村さん「スーパー耐久シリーズは参加者のみならず、観客の皆さんにとっても多彩な車種が一斉に走ることが魅力なのだろうと思います。速度の順でグループを構成するのが最も簡単なところですが、変化をつけたいというところで開幕戦では変則的な組み合わせを採用しました。第2戦のSUGOでは昨年と同じ速度順のグループ分けにしましたが、こうした結果を精査した上で、今後は別の形にもトライしてみたいと思っています」

安全性という観点で言えば、速度順のグループ構成に利があると言えるだろう。一方で速度差がある構成の場合は、速い車両は遅い車をラップする機会が増えるが、逆にこれを活かして駆け引きの材料とすることも可能であり、これは耐久レースならではの面白さと言える。実際、開幕戦を終えたドライバーからは、この駆け引きが面白かったと評価する声も聞かれた。安全性とのバランスも考えながら、開催コースの特性にも応じたベストな形が、今後見いだされていくことになるだろう。



伝えたいのはレースの魅力、そして人の魅力

2017年のスーパー耐久では競技に直結する規則的な新機軸に加えて、プロモーション面でのソフト的な新機軸も産声を上げた。それが“スーパー耐久メディアプロジェクト”と呼ばれるもので、インターネットを複合的に活用してシリーズ自らの魅力を発信していこうというものだ。具体的には、現場からのライブ配信“エスタイテレビ”を核として、SNSなどとも連動した情報発信が行われている。

桑山さん「これからは我々自身がメディアになり、自分たちで色々な情報を発信していかなければならない、というのはここ2~3年ずっと考えていたことで、“スーパー耐久メディアプロジェクト”のスタートはひとつの答え。モータースポーツである以上、当然映像(動画)は必要ですが、大きな予算はかけられない。インターネットを駆使し、現場からのライブ配信を実施、そこにSNSを連動させる仕組みの第一歩をまずは作りました。

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各大会では、自分たちで部屋の中にスタジオを作り、グリッドやインタビューもライブでお届けしています。しかし今は予算の関係で、ピットやパドックでの撮影は、スマートフォンによるもので、走行シーンはサーキットのコース映像をつないでいます。

スマートフォンであるために画像が荒れたり、インターネット環境により音声が途切れたりすることもあり、またコース映像を使用しているためバトルがお届けできないということもあります。しかし、この枠組みを確定させ、いずれそれぞれのクオリティは高めていきます。『まずはライブで皆さんにお届けする』、それを第一優先に考えました。

“スーパー耐久メディアプロジェクト”には、もうひとつ目的があり、参加型レースのスーパー耐久シリーズとしては、1台でも多くの車、1人でも多くの選手を映したい。しかし、時間が限られたテレビ番組では、どうしても映される映像は限定的になってしまいますよね。“スーパー耐久メディアプロジェクト”を続けていくことで、ファンの皆様との距離感も近くなり、スーパー耐久シリーズらしい『人の魅力』もお伝えしていけると思っています」



次のページでは、ますます発展を遂げるスーパー耐久シリーズの将来展望などをお聞きしていきます。