2017 All Japan Dirt-Trial Championship Driver’s Voice (1)

北海道から九州まで全国を転戦し、非舗装の専用コースで1000分の1秒を競い合う全日本ダートトライアル選手権。2016年は4つのクラスでヨコハマタイヤ勢がチャンピオンを獲得したが、3月19日に栃木県の丸和オートランド那須で2017年の開幕を迎える。いよいよ始まる今シーズンを直前に控え、今年も活躍が期待されるヨコハマタイヤ勢の声をご紹介していこう。
なお2017年は、全日本選手権に加えて各地区戦やJMRCシリーズのダートトライアルもヨコハマ・モータースポーツ・スカラシップの対象カテゴリーとなっているので、参戦を計画している方はぜひご登録いただきたい。
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N2 Class – 星 盛政 選手

福島の星盛政選手は、全日本選手権のデビューが1998年という大ベテランの一人。三菱・ランサーエボリューションで参戦を続け、2017年は前年までに引き続きN2クラスを戦う。まずは2016年の戦いを振り返ってもらいつつ、2017年の目標からお聞きしていこう。

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「2016年は、最終戦のテクニックステージタカタが印象深い一戦でした。シリーズ争いで重要な一戦でしたが、ミスをした部分もあって上位に食い込めなかったのです。1点でも2点でも獲得していればランキングの上位に入れたので、悔しさが残る戦いでした。2017年は車もクラスも変わりませんが、シーズンを通して上位を獲得して最終的にはシード権を獲得することが目標ですね」

悔しいシーズンになったと、2017年を振り返ってくれた星選手。2017年は昨年同様に全8戦で競われる選手権、星選手が得意としているコースはどこなのだろうか。

「自分としては、優勝をしたこともあるスピードパーク切谷内が得意なコースになりますね。逆に不得意というか、丸和オートランド那須やテクニックステージタカタはハイスピードなのでどうしても“ビビリ”が入ってしまうので、そこは克服しなければならないと思っています」

切谷内と言えば、2016年は地元選手さえも経験が無いという逆まわりのレイアウトで競われたことが話題となった。星選手にとって、切谷内というコースはどのようなものなのだろうか。

「切谷内はコンパクトでアップダウンもあり、走り方を覚えると乗りやすくなるコースです。ただ、2016年の全日本は逆まわりのレイアウトで、下りのギャラリーコーナーはアクセルを踏んだまま行こうと思っていたのですが、実際に走ってみると怖くてブレーキを踏みました(笑)」

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ここで星選手は、2016年シリーズの裏話をひとつ教えてくれた。

「実は、ほとんどの大会を点火プラグが緩んだ状態で走ってしまっていました。タカタのストレートなどでは『今年はちょっと遅いな~』なんて思っていたんです。
 
2016年のシーズンイン前にプラグを交換したのですが、そのときにきちんと締め切れていなかったんですね。今年はもちろん、走る前にしっかりと締まっていることを確認していきますよ(笑)」

2017年の開幕戦を直前に控えて、最後に改めて開幕に向けた意気込みをお聞きしよう。

間もなく丸和からシーズンが始まりますが、丸和は下位に沈んだり転倒を喫したことがある一方で表彰台に立ったりもしてきたコースです。今年はしっかりと上位を獲得して、幸先よいシーズンインにしたいですね!!」



SA2 Class – 林 軍市 選手

2011年に全日本選手権デビューを果たした林軍市選手は、“軍ちゃん”の愛称でパドックで親しまれファンも多いドライバー。全日本に参戦する一方で地区戦の実況アナウンスを努めるなど、ダートトライアルの振興にも一役買っている存在だ。2017年も引き続き三菱・ランサーエボリューションⅩで、激戦区のSA2クラスに参戦する。

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「2016年と言えば……、輪島市門前モータースポーツ公園での第4戦で1000分の1秒差で準優勝というのがありました。優勝出来なかったことは悔しいですが、自分もあそこまで勝負を出来るようになったんだ、という思いも強いですね」

まばたきよりも短い、僅か1000分の1秒差。この差について林選手は、次のように分析してくれた。

「中間ベストで走っていたのですが、フィニッシュ前のギャラリーコーナーでミスがありました。そこ以外は自分なりに上手く走れたと思っているのですが、メンタル面でフィニッシュまで持続出来ていなかったことが反省点ですね。だから、車を乗りやすく仕上げるなど、ミスをしないでフィニッシュまで走りきれるようにすることが2017年の課題だと思っています」

では、具体的なところで車についてはどのように2017年の開幕に向けた準備を進めているのだろうか。

「オフシーズンを通じて、駆動系や前々から気になっていたフロントの足まわり関係などを見直しています。スプリングレートや車高をいろいろと試して最適な解を探っていますが、やればやるだけの収穫があるのでセッティングの善し悪しについての理解を自分で出来ているという実感があります」

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開幕戦の丸和に向けて、着々と準備を整えている林選手。開幕戦に向けた意気込みを、力強く語ってくれた。

「もちろん開幕戦に対して、自分でも照準をかなり合わせています。2017年に入ってから、もう50本くらいは丸和を走り込んでいます。SA2クラスは超激戦区なので勝てるという自信は正直なところ無いのですが、上位に食い込めたら嬉しいですね。
 
車も良く動くようになって車との“会話”も出来ていますから、目標としては去年の第6戦で獲得した6位以上のポジションです」

2014年の開幕戦・丸和では準優勝も飾っている林選手、まずは得意の丸和で好成績が期待される開幕戦。最後に2017年シーズンの目標をお聞きしよう。

「シーズンを通じて表彰式に呼ばれるポジションに、毎回いられるようにしたいですね。6位でも5位でも安定して入賞しながら、時に去年の門前のように優勝争いにも絡むことが出来たら、見ている皆さんも『えっ、林が来るの!?』という驚きがあって面白いのではないかと(笑)。ただ、同じクラスを戦うライバルの名前を挙げていくと、自分はどうしても6番目くらいになるんです。そこをミス無く走って表彰台、もしミスをしても入賞圏内にいられるように頑張ります!!」



SC1 Class – 佐藤史彦 選手

ダートトライアルのみならず、ラリーでも活躍を見せる佐藤史彦選手。ラリーでは2017年の東日本選手権・第2戦「Rally of Tsumagoi」で、堂々の優勝を飾っている。一方の全日本ダートトライアル選手権は、2007年からDクラスに参戦を続けていたが、2016年にSC1クラスへとスイッチ。大きな転機の年となった昨シーズンについて、まずは振り返っていただこう。

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「20年ほどモータースポーツをやっていますが、4WDからFF(前輪駆動)に乗り換えて初めて2輪駆動で戦った2016年でした。何がなんだかわからない状態だった、そんな一年だったような感じもありますね」

初めての2輪駆動、マシンはインプレッサ。この選択について、佐藤選手は次のように背景を教えてくれた。

「自分がスバルの社員なので、自社の車でダートトライアル参戦となると4WDターボエンジン車がこれまでの必然でした。しかし長くやって来て改造車部門も面白いなと思った中で、お金をかけずに楽しめるという条件で考えたら、ノンターボエンジンのほうが壊れるリスクが少ないだろうという判断です。あとは手持ちの部品を使えるということもあって、コスト重視でインプレッサを選択しました」

初めてのFFで戦った2016年、その最後で佐藤選手はひとつのヒントを得たという。

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「シーズンが終わってからのJAF CUP、その前にある方からいただいたアドバイスがありました。それを実践してみやら、第1ヒートでトップタイムを刻めたのです。それは自分にとって『こんな走り方でいいの?』という感じだったのですが、逆にそれまでの自分ががむしゃら過ぎたというか、FFなのだから空回りさせてはいけないんだということを改めて思い知らされました。
 
だから2017年は、去年よりも落ち着いて走らせようと思っています。4WDならアクセルを踏めば前に進んでいきますが、FFは踏むだけでは進まないのでトラクションをしっかり掛けてやることが大切なんですよね」

FFの乗り方も会得したという佐藤選手、大いに飛躍が期待できる2017年への抱負を語ってくれた。

「2017年の目標は、やはりシード権の獲得です。全8戦の中では、走っていて楽しくADVAN A036と硬質路面のマッチングが良いサーキットパーク切谷内が好きですが、ここには地元の強豪もいるのでしっかり走って上位を狙っていきます。今年のSC1クラスは激戦区になりそうなので、“万年7位”を脱してひとつでも上のポジションになるように頑張ります!!」



次のページでは、シーズン開幕を直前に控えた全日本ダートトライアル選手権ドライバーのインタビュー、後編をお届けします。