2017 TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge (3)

いまや街中ではハイブリッドカーがごく当たり前の存在となり、多くのユーザーに愛用されている。そんな中で人気の一台がトヨタ・アクア、老若男女幅広い層から支持を集めている。このアクアがラリーマシンとなって活躍を見せているTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ、注目のハイブリッド・ラリーマシンをご紹介していこう。


ハイブリッド・ラリーマシンがステージを駆け抜ける!!

トヨタ・アクアは2011年12月に日本国内での販売が開始された、5ナンバーサイズのコンパクトハッチバックボディを持つハイブリッド専用車だ。排気量1,496ccから最高出力54kW(74ps)を発揮するガソリンエンジンと、45kW(61ps)のモーターを組み合わせており、リアシート下に20個のニッケル水素電池をレイアウト。トランスミッションは電気式の無段変速で、クラッチを有さない2ペダルのみを設定する。

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TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジでは2016年からアクア専用のクラスが設けられ、多くのマシンが参戦している。JAF(日本自動車連盟)が定めるラリー車両規定ではAE車両に分類されるが、改造範囲は厳しく制限されている。もちろん安全装備であるロールケージなどは装着されるが、室内には標準装備のエアコンが残されるなど、一般市販車とそれほど変わりの無い光景が視界に入ってくる。

2016年シリーズではTEAM OKUYAMAやCUSCO RACINGといった名門チームがマシンを製作、ヨコハマタイヤを装着して参戦した。また、女性クルーが多数を占めていることも特徴で、華やかな中で女性同士の真剣勝負が繰り広げられて注目を集めた。



最初は「無理でしょう」と思ったんです(笑) – いとうりな 選手

いとうりな選手は、全日本ラリー選手権での表彰台獲得経験も有する成長株の一人だ。そんないとう選手は2016年、アクアを駆ってTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジに参戦、初戦の前には丸和オートランド那須で開催された全日本ダートトライアル選手権にゲストドライバーとして出演し、アクアでのデモンストレーション走行でマシンをお披露目した。いとう選手に、まずはアクアに対する第一印象をお聞きしてみよう。

「アクアというのは、一般道を走るお買い物用の車かな、という認識でした。それを競技車にしたから丸和を走ってくださいと言われて『え~っ!!』って思ったんです(笑)。アクアはマニュアルミッションではない2ペダルですから、そこからして『いやいや、無理でしょう!?』と思ったんです」

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ラリーやレースで幅広い活動を見せているが、2ペダルの車両でダートを走ることには疑問を抱いたという。しかし、実際に走らせてみると印象は180度変わったと続けてくれた。

「実際に走らせてみると、圧倒的にパワフルというわけではないですがスピードは思った以上に乗せることが出来ますし、2ペダルということでアクセルとブレーキ、そしてステアリング操作に集中出来るので走らせやすかったですね」

アクアをラリーマシンとして見たときに、速く走らせるコツはどこにあるのだろうか。いとう選手は次のように教えてくれた。

「減速はペダルでのブレーキのみとして、あまりコーナーリングでスピードを落としすぎないようにしました。ラリーチャレンジのSS(スペシャルステージ)は上りが基本なので、ブレーキはコーナーリングのきっかけで使うことが主体になりますね」

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いとう選手はコ・ドライバーの織田千穂選手とのコンビで、2016年8月に開催された福島ラウンドで見事なクラス優勝を飾った。いとう選手は先に話してくれたブレーキングに加えて、さらにアクアを走らせるときに気をつけたポイントがあるという。

「SSスタートの時にバッテリーの充電が十分されているように、リエゾンでも気をつかうことがポイントですね。こうすることでスタートの加速で、ハイブリッドならではの速さを得られます。あとは繰り返しになりますが、コーナーリングを如何にスムーズにするか。なるべくステアリングを切りすぎない、スムーズなライン取りが求められます」

いとう選手は2016年の全日本ラリー選手権・最終戦「新城ラリー2016」にもアクアを駆って参戦、粘りの走りで完走を果たした。最後に、いとう選手はアクアでのラリー参戦は多くの方にお薦めできると語ってくれた。

「ラリーやダートトライアル、ジムカーナなどの競技車両として、アクアはお薦めですよ!! 特に初めて競技をやる方や、これからやってみたいと思っているような方には、敷居が低くて良いと思います。それに普段乗りも快適ですし、燃費も良いですしね」

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競技車両としても素性が良いですね – 奥山 正 さん

TEAM OKUYAMAとしてTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジや全日本ラリー選手権にアクアで参戦する、株式会社オクヤマ代表取締役の奥山正さん。名門チームを率い、これまでに様々なモータースポーツカテゴリーで多くの栄冠を手中におさめてきた奥山さんの視点に、アクアという車はどのように映っているのだろうか。

「車の作り手という立場から見ても、アクアは競技車両としての素性が良いと思います。2016年のラリーチャレンジ開幕前に丸和オートランド那須で走らせた時にも、期待以上の良いタイムを出してくれましたからね。特に外周路では、思っていた以上に速いという印象を持ちました」

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アクアはハイブリッドカーであるが、この点について車両製作で何か苦労するようなことはあったのだろうか。

「モーターやバッテリーが積まれていますが、車両製作という面で特に気になることはありませんでした。大幅な軽量化をしているわけでもなく、自然に組んでいっただけで良い仕上がりの車になりましたね。製作前には『何かあったら、ひとつずつ改良していこう』と思って取りかかったのですが、実際には何も苦労することは無くて、思い通りに仕上げられました」

豊富なモータースポーツ経験から蓄積されたノウハウは、TEAM OKUYAMAの大きな強みのひとつ。最後に奥山さんには、アクアを製作する上でのポイントとなる部分をお聞きしよう。

「アクアを仕立てる上で特別なコツというのはありませんが、ひとつ挙げるとしたらブレーキでしょうか。このバランスをしっかり最適化することで、乗りやすくて速い車に仕上げることが出来ますね」



この週末には開幕を迎え、2017年も全国で盛り上がりを見せていくTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ。ヨコハマタイヤはモータースポーツスカラシップなどを通じて、参戦するみなさんとシリーズを応援していきます。