The next generation of street sports tire =ADVAN A052= (3)

「ADVAN A052」はウェットグリップ性能や騒音、転がり抵抗に係る規制を定めた国際基準をクリアした上で、ADVAN最強のストリートスポーツタイヤ「ADVAN NEOVA AD08R」を凌ぐグリップ力とハンドリング性能を発揮する新製品だ。ここでひとつの鍵になる“環境性能”について、前回までに引き続きヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル株式会社のプランナーである藤本廣太と、エンジニアである山根賢司と八重樫剛に聞いていこう。


技術と経験で“高いハードル”を越える

「ADVAN A08B」で確認されたタイヤとしての高いポテンシャル、これに優れた環境性能を融合させて生まれた「ADVAN A052」。その結果として、ウェットグリップ性能や騒音、転がり抵抗に係る規制を定めた国際基準「UN/ECE Regulation No.117 02 Series (R117-02)」をクリアしている。この基準をクリアすることは決して易しいことでは無かったと八重樫が語る。

「先にお話ししたように、PC(乗用車用)タイヤとモータースポーツタイヤ、それぞれで培った技術と経験が巧く融合して『ADVAN A052』は生まれました。正直に言うと、その融合が巧く出来なかったら発売はもっと先になっていたかもしれません。なにしろ、これほどの高い次元でストリートスポーツタイヤに環境性能を融合させるというのは、他のタイヤメーカーもまだ商品化していない新しい取り組みなのですから。それくらい、今回クリアした基準はハードルがとても高いのです」

全日本ラリー選手権

山根が、その“ハードルの高さ”について具体的な例を挙げた。

「例えば通過騒音ですが、これはサイズによって幅が太くなると難しくなるのです。基準はサイズに応じた階段状に設定されているのですが、階段の“区切り”となるポジションのサイズが特に厳しくなりますね。245と255では基準が変わってくるので、一般的に245は難しくなるという具合になります」

藤本も「音や転がりといった要素では、背反する部分もあって難しいですね」と語るように、基準を満たすことは一筋縄で済む作業では無かった。しかし横浜ゴムでは長年のモータースポーツ活動などで蓄積した技術、例えば「ADVAN Sport V105」でも使われている「マトリックス・ボディ・プライ」という構造技術などを用いてタイヤとしての基本ポテンシャルを大いに高めている。そこに「BluEarth-1 EF20」で活用した「多目的設計探査」を駆使して、コーナーリングフォースを最大化するプロファイルと構造を開発。さまざまな技術を用いて、ストリートスポーツラジアルタイヤに求められる高いパフォーマンスと、世界が認める優れた環境性能を融合させたのである。



“すごいをさり気なく”その言葉を形に

2016年8月1日に「ADVAN A052」は日本でデビューを果たした。そして、その週末にはツインリンクもてぎ(栃木県)の南コースで開催された全日本ジムカーナ選手権において、2つのクラスでデビュー・ウィンを飾っている。さらにお盆休みをはさんで8月最終週末には全日本ラリー選手権のターマック(舗装路)戦にデビュー、こちらも最高峰のJN6クラスでワン・ツー・フィニッシュ、JN2クラスでは表彰台を独占、コンパクトカーが競い合うJN1クラスも勝利して3つのクラスを制した。これからさらに、サーキットでのレースやタイムアタックなどでも活躍が見込まれる「ADVAN A052」。そのポテンシャルについて、山根が自信を持って語る。

「『ADVAN A052』は、対応領域の広さがひとつの特徴です。競技ユースではジムカーナも想定しているので停止状態からのゼロスタート性能も良いですし、サーキットユースで熱ダレなどが発生しないようなチューンもしています。こうした開発は、国内外で行ったいろいろなテストを通じて行ってきています」

全日本ジムカーナ選手権

「ADVAN A052」の高いポテンシャルを裏付けるようなテスト中のエピソードを、八重樫がひとつ紹介する。

「ヨーロッパの厳しい眼を持ったテスターが『ファンタスティック!!』と評してくれました。ヨコハマタイヤの良さのひとつが対応領域の広さですが、国内のテスターも『悪いところが無い』と言ってくれています。語弊を恐れずに言うと、我々としては決して競技用のタイヤを作ったつもりは無いんです。ですが、性能的に競技で使っても『ファンタスティック』なタイヤを作ったのは事実です」

藤本は「ADVAN A052」ユーザーのいる風景として、ひとつのイメージを披露してくれた。

「休日の朝にお父さんが、お子さんを『ADVAN A052』を装着した車でサッカー場へと送っていきます。そこでお子さんは車から下りて、友達とサッカーに興じる。その間にお父さんは、車でサーキットへ行って『ADVAN A052』でスポーツドライビングを楽しみます。帰り道、お父さんはサッカー場にお子さんを迎えに行って一緒に帰宅。そして家に着いたら『勝ったよ』と言ってお子さんにサーキットで貰ったトロフィーを見せるんです」

このイメージに山根は「自分が開発に携わった『ADVAN NEOVA AD08R』は、まさにそんなイメージで作りました。これをさらにレベルアップしたのが『ADVAN A052』であると言えますね」と共感する。そして、藤本がさらに続ける。

「商品としては、モータースポーツに参加される方では『勝利にこだわる』ユーザーさんに使っていただきたいですね。もちろん、サーキットを走って楽しむ機会が多いという方にも『ADVAN A052』はお薦めです」

最後に八重樫が「ADVAN A052」を開発した一人として、次のようなエピソードを紹介してくれた。

「横浜ゴムの工場には『すごいを、さり気なく』という標語が掲出されています。このフレーズこそ『ADVAN A052』の開発を一言で表していると言えるでしょう。世界が認める高次元の環境性能を高いパフォーマンスのストリートスポーツラジアルタイヤに与えるというのは、そういうことなんです(笑)」



「ADVAN A052」は、デビューしたその週末に開催された全日本ジムカーナ選手権において、ふたつのクラスでデビューウィンを飾り高いパフォーマンスを早々に結果で示した。
次回からは、全日本ジムカーナ選手権を戦うトップドライバーに「ADNAN A052」のフィーリングや特徴をお聞きしていこう。