2016 Japanese Formula3 Championship (1)

2016年からはアジア最高峰のフォーミュラレースとして知られる「SUPER FORMULA」において、ワンメイクタイヤサプライヤーをつとめているヨコハマタイヤ。日本のフォーミュラレース・ピラミッドの頂点に位置するカテゴリーであるが、さらにヨコハマタイヤは全日本F3選手権とJAF地方選手権Super-FJにおいてもワンメイクタイヤサプライヤーとしてレースを支えている。今回はこの中から、全日本F3選手権についてその全容と注目選手をご紹介しよう。


“無限大の可能性”を誰にも公平に与えてくれる全日本F3選手権

F3ことフォーミュラ3は、世界共通の規則で争われているレースである。世界一決定戦に相当する、年末のマカオ・グランプリには、かつて世界中から強豪が集ってきたが、現在はシリーズも少なくなっている。しかし、現存するシリーズのひとつが全日本F3選手権であり、そのスタートは1979年。したがって、間もなく歴史は40年にも達しようとしている。

もちろん、その間に細かいレギュレーションの変更はあったとはいえ、吸気制限のある排気量2,000ccのエンジンを積むフォーミュラとして不変を貫き、これだけの歴史を重ねたレースは、他に日本には存在していない。その最大の理由は、F3が「頂点」たるレースではなく、「通過点」であったからだ。

日本の場合、レーシングカート、そしてSuper-FJやF4などエントリーフォーミュラを経て、たどり着けるのがF3で、その先に待ち構えているのが、国内最高峰のスーパーフォーミュラ(SF)である。ただし、その道のりは上のカテゴリーに進めば、進むほど険しくなっていくのは事実。実際、昨年はひとりもF3からSFへの昇格が許されなかったほどである。

[Photo]

とはいえ、F3とは無限大の可能性を、誰にも公平に与えてくれるカテゴリーでもあるのは間違いない。エンジン選択は自由ながら、先にも紹介したとおり吸気制限を28mm径のエアリストリクターで行っていて、それぞれに特性に違いはあれども、最大出力は240馬力ほどと、どれも大差なし。シャシーもまた選択は自由だが、圧倒的な戦闘力の高さ、信頼性から世界的にダラーラのワンメイク状態になっている。そして、何よりタイヤがシリーズごとワンメイクとなっており、全日本F3選手権はヨコハマタイヤから供給される。

条件はほぼ一緒。その上で問われるのが、ドライバーの能力だ。それは単にドライビングだけでなく、エンジニアやメカニックとのコミュニケーション、そして伴うセッティングなど多岐に渡っている。これらすべての能力に優れ、かつ伸ばすことができたドライバーには、必ずチャンスは訪れるだろう。

近年はレース数も増やされ、大半が1大会2レース開催で、今年は最終大会のスポーツランドSUGOが3レース開催と、全17戦で争われることとなっている。これは練習以上に、実戦がドライバーを鍛える場であると配慮されたから。その舞台となる6サーキットは、いずれもSFでも使用されている。したがって、ステップアップしてからも、経験が活かされよう。さらに、今年からSFもタイヤがヨコハマタイヤのワンメイクになったことは、現在F3を戦っているドライバーにとって、後々福音となる可能性も。タイヤはメーカーごと、少なからず特性の違いがあり、逆に言えば同じメーカーであれば、共通の特性を持っているもの。「最近、F3上がりのドライバーは、タイヤの使い方がうまい」という評価になれば最高である。



2016年シリーズの激戦を戦う選手&チーム

全日本F3選手権は、すでに4大会8戦を終え、ここからシリーズ後半戦に突入していく。生まれたウィナーは4人とあって、まだ絶対的なリーダーが存在していないのは事実。今後、誕生するのか、それとも群雄割拠状態が続くのか、大いに気になるところである。

[Photo]

さて、今年のエントリーはF3-Nクラスの5台を含む16台。ラインアップは過去に負けず劣らず、バラエティに富んでいる。まず昨年のチャンピオンチーム、TEAM TOM’Sから出場するのは、山下健太選手と坪井翔選手。山下選手は3年目で、過去2年はいずれもランキング2位とあって、まさに正念場を迎えることとなった。一方、坪井選手はルーキーで、昨年のFIA-F4チャンピオンだ。エンジンはトヨタ・トムスTAZ-31を使用する。

B-MAX Racing Team with NDDPは、千代勝正選手とヤン・マーデンボロー選手がフル参戦。そして最初の2大会を佐々木大樹選手、次の2大会を高星明誠選手がスポット参戦することとなった。13年以来のF3参戦となった千代選手は、昨年、欧ブランパン耐久シリーズでチャンピオンに輝き、またSUPER GTのGT300における二冠獲得にも貢献した。マーデンボロー選手はGTアカデミーの卒業生で、イギリス出身のドライバー。全日本F3には初参戦ながら、母国で参戦経験を持つ。エンジンはフォルクスワーゲンのA41を使用。なお、B-MAX Racingは山口大陸選手、F3-Nクラスから昇格の三浦愛選手のメンテナンスも担当、このふたりはトヨタ・トムスTAZ31を使用する。

HFDP RACINGは、ルーキーふたりを起用。大津弘樹選手はFIA-F4でランキング3位、阪口晴南選手は16歳で、FIA-F4にも併せて参戦中のドライバーだ。エンジンは無限ホンダMF204Dを使用する。TODA RACINGからは2年目の石川京侍選手、そしてFIA-F4でランキング2位の牧野任祐選手での参戦に。エンジンはTODA TR-F301を使用する。

また、F3協会が設立する、エンジンをトヨタ3S-GEのワンメイクとするF3-Nクラスには5人がエントリー。4年目となり初優勝の期待がかかるDRAGON選手はB-MAX Racing Teamから。FIA-F4やスーパー耐久の経験を持つ片山義章選手はPetit Lemans Racingから参戦のルーキー。2年目のアレックス・ヤン選手は中国出身でHANASHIMA RACINGからの参戦となる。そしてALBIREX RACING TEAMの廣田築選手と岡崎善衛選手は、ともにSuper-FJ出身のルーキーだ。

ここまで3勝を挙げ、ランキングのトップに立つのは山下選手ながら、スポット参戦の佐々木選手と高星選手が2勝を挙げているのに助けられた感は否めず。その山下選手に近づいてきているのがマーデンボロー選手で、第6戦で初優勝。少々安定感を欠きはするが、天性の速さを持つドライバーであるのは間違いない。また、坪井選手はルーキーながら、7戦連続で表彰台へ。初優勝もそう遠くなさそう。F3-Nクラスでは片山選手が5勝を挙げて、シリーズをリード中だ。

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]



次回は今シーズンの全日本F3選手権についての詳細と、タイヤについてご紹介いたします。