2016 Slalom & Rally New Generation (3) =Gymkhana 2=

全日本ジムカーナ選手権で盛り上がりを見せるPN車両部門。2016年はさらに有力選手がニューマシンを投入してクラス移籍を果たし、その戦いはますますレベルの高いシビアなものとなっている。ジムカーナのPN部門をを戦う選手にスポットをあてる後編では、PN1クラスの箕輪雄介選手とPN3クラスの天満清選手をご紹介しよう。


最後まで上位争いに食い込んでいきたい – 箕輪雄介 選手 (PN1 Class)

長くDC2型のホンダ・インテグラを駆って、N車両部門を戦ってきたのが箕輪雄介選手だ。2004年に全日本初参戦を果たし、2007年からはシリーズを追ってチャンピオン争いの一角を占めてきた箕輪選手。2014年に自身初の全日本チャンピオンを獲得、2015年もランキング2位という好成績をおさめている。そんな箕輪選手は2016年、スズキ・スイフトにマシンをスイッチしてPN1クラスへと戦いの舞台を移した。

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「インテグラでN2クラス、そして再編後のN1クラスと長く戦ってきました。しかし車が古くなってきたことと、近年PN部門が盛り上がって台数も増えてきているので、自分としてもN車両部門を続けていくよりはPN車両部門に移行したいという思いが、ここ数年はあったんです」

PN部門移籍の背景を、このように語ってくれた箕輪選手。では、PN1というクラス選択の理由はどこにあるのだろうか。

「PN部門の規定に沿ったタイヤ、ヨコハマタイヤで言えばADVAN NEOVA AD08Rで勝負することを考えたときに、FF(前輪駆動)とADVAN NEOVA AD08Rの相性が良さそうだと思いました。その視点で見ると、クラス的にもPN1とPN3が盛り上がっていてPN1を選びました」

では、N1からPN1へと移って、何か変化はあるのだろうか。

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「そんなに極端な違和感はありませんが、車の違いは大きいですね。アクセルがワイヤーで繋がっていないとか、リニアに動かないところが若干あるとか。電動パワーステアリングの癖も、最初は気になるところですね。車が新しいからこその違いですが、これらは慣れていくしか無いと思っています。こうした変化に伴って、ドライビングでは特にブレーキングの違いがあります。ターンやコーナーに入るとき、どうしても車速を止められないことがあって。サイドターンの進入が少し早すぎて、リアがスライドし過ぎるケースもありますので、これらは早く合わせていかなければなりません」

クラスと車が変わったことで変化もあると、率直に語ってくれた箕輪選手。最後に、クラス移籍初年度となる2016年シーズンの抱負を語ってもらおう。

「PN部門になったことで、タイヤもそれまでのADVAN A050からADVAN NEOVA AD08Rに変わりましたが、車も変わっているのでタイヤについてそんなに違和感はありません。ただ、何もデータが無い状態なので、これから蓄積してフィードバックさせていきたいですね。そうして1ポイントでも多く稼いで、シリーズの最後まで上位争いに食い込んでいきたいですね」



お昼ごはんをいつ食べたらいいのか?(笑) – 天満清 選手 (PN3 Class)

ジムカーナ歴は30年近くになるという、大ベテランの天満清選手。長く4WDターボ車を駆って参戦、2013年と2010年にはSA3クラスでヨコハマタイヤを装着してチャンピオンに輝いている。しかし2016年、天満選手はPN3クラスに移籍し、マシンもターボエンジンを搭載はしているものの、FF(前輪駆動)のプジョー・208 GTiへとスイッチした。

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「1998年にSW20型のトヨタ・MR2で参戦したのが、2輪駆動の最後かな。それ以降はずっと4WDだったから、4WDでのPN部門参戦も考えました。そんな中でいろいろな要素がかみ合ってプジョーに乗ることになったのですが、駆動方式が4WDからFFに変わったことについては普段からお客さんの車に乗ったりもしているので違和感はありません。むしろタイヤがADVAN A050からADVAN NEOVA AD08Rに変わったことのほうが大きくて、ラジアルの特性を掴むことが課題ですね」

プジョー・208 GTiは、全日本ラリー選手権では一足早く2015年にデビュー、優勝も飾っている。そんなマシンとADVAN NEOVA AD08Rの組み合わせについて、どのような第一印象を持たれたのだろうか。

「プジョーの第一印象は、乗っていてパワーもそれなりにあって楽しい、というものですね。気持ちよくパワフルな車だな、という印象です。一方でタイヤは、これまでSA車両部門で使っていたADVAN A050とPN車両部門で使うADVAN NEOVA AD08Rではグリップ性能に違いがあります。そして、いわゆるタイヤの“美味しいところ”も全く違うので、正直に言えばまだ模索中というところです。ただ、車も実戦の前週に来たばかりで走り慣れていませんから、車のセッティングがある程度決まって、ドライバーが慣れて、一定のタイムが出始めたら、空気圧設定とかもいろいろ考えていこうと思っています」

改造範囲の広い車両部門を長年戦ってきた天満選手にとって、改造範囲が非常に限られているPN車両部門というのはどのように映っているのだろうか。

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「そうですね、やはりPN車両は改造範囲が狭いのでドライバーの技量がより試されますよね。改造車では部品でカバー出来る部分も大きいのですが、PN車両ではそうはいきません。運転技量の差が、はっきり出ると思います。もっとも、ワンミスしたら終わりですし、戦いがシビアであるのはSA部門もPN部門も同じですね。クラスを移ったことでの大きな違いといえば、出走順がSA部門より1時間半くらい早くなります。この出走順にリズムを合わせていかなければなりませんが、開幕戦は昼御飯もいつ食べたらいいのか戸惑いました(笑)」

大ベテランにとって、新たなチャレンジのシーズンとなる2016年。天満選手にも最後に、今シーズンの抱負をお聞きしてインタビューを締めくくろう。

「全日本ジムカーナ選手権には、発足初年度から参戦しています。その前のフェスティバル時代も参戦していますが、長いジムカーナ歴で今までに無いくらい変化の大きなシーズンになりますね。もちろんチャンピオンを狙っていきたいですが、いまは正直なところ状況や展開が全く読めません。ですから、まずは出来るところから少しずつ煮詰めていくのが先決。今年はフルパイロンコースが増えますが、パイロンコースのほうがプジョーには有利じゃないかと思っているので、勝算もありますよ!!」



次回は2016年の全日本ダートトライアル選手権で、PN車両を駆る選手をご紹介いたします。