2015 Japanese Championship Champion Interview (4)

2015 Japanese Championship Champion Interview (4)

2015年のラリーとスピード行事で、全日本チャンピオンの称号を手中におさめた選手を紹介する特集の最終回。このページでは、全日本ラリー選手権の最高峰クラスであるJN-6において、スバル・WRX STIを駆ってチャンピオンを獲得した新井敏弘選手と田中直哉選手をご紹介しよう。


新井敏弘 選手 / 田中直哉 選手 – 全日本ラリー選手権 JN6クラス

2014年から本格的に全日本ラリー選手権に復帰した、“世界のトシ・アライ”こと新井敏弘選手。P-WRC(FIAプロダクションカー世界ラリー選手権)で2回のチャンピオンに輝き、さらに2011年にはIRC(インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ)においてヨコハマタイヤを装着するスバル・WRX STIでプロダクションカップを制した、日本を代表するラリードライバーである。

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全日本復帰2年目となる2015年は、新たに田中直哉選手とのコンビで参戦。マシンも開幕戦から最新型となるVAB型のWRX STIを投入して臨んだ。初戦の唐津こそ3位に留まったものの、続く久万高原ではサバイバルな展開を制して初優勝。第3戦の福井も3位表彰台を獲得すると、グラベル(非舗装路)に転じた第4戦・洞爺と第5戦・福島を連勝して波に乗った。

第6戦は地元の群馬、ここでは初日を4番手で折り返し、雨が勢いを増した2日目に見事な逆転劇を演じて3連勝を飾りチャンピオンに王手をかける。そして臨んだ天王山の第7戦・北海道十勝で準優勝を飾り、シリーズ2戦を残して早々にチャンピオンを確定。さらに第8戦・岐阜も制してシーズン5勝、最終戦の愛知も準優勝で、全戦での表彰台獲得に成功した。


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CHAMPION DRIVER

新井敏弘 選手 [JN6クラス ドライバー部門 シリーズチャンピオン]

無事に「出戻りチャンピオン」を決めることが出来ました(笑)。2014年に全日本選手権へと本格的に復帰しましたが、シリーズは3位に終わって「これは、ちょっとマズイぞ」と。特に今年はマシンをVAB型のWRX STIにチェンジしたこともあって、格好悪い戦いは出来ませんからね。

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VAB型は車のキャラクターがそれまでのGRB型とはちょっと違うところもあって、最初は苦労した部分もありました。しかし、参戦を重ねる毎に進化させて戦闘力を高めていけたので、VAB型の速さを見せることが出来たと思っています。さらに自分自身のドライビングも、特に終盤では日本の林道に合わせたものに変えていったところもあって、それに伴ってセッティングの最適化も図っていきました。

一年を振り返ってみると、天候という要素に助けられた部分もあったと思います。RALLY HOKKAIDOまでの7戦は完全なドライコンディションのみという戦いは無かったのですが、雨が降ってタフな展開になるほど、経験値を活かした戦いが出来ますからね。

洞爺では息子(新井大輝選手)とのワン・ツー・フィニッシュもありましたが、まだまだ父親の威厳を保つためにも負けられません。息子は海外ラリーでの経験も積んでまだまだ速くなるでしょうが、経験値やドライビングの“引き出し”の多さがサーキットレース以上に効いてくるのが、ラリーの面白いところ。いつかは息子に抜かれる日も来るでしょうが、いや、来なければ困るのですが(笑)、まだ当分の間は親父の凄さを見せ続けてやりますよ。

田中直哉 選手 [JN6クラス ナビゲーター部門 シリーズチャンピオン]

今年は最高峰のJN6クラス、しかも新井敏弘選手の隣に乗るということでプレッシャーが凄くて、初めてラリーに出場したときと同じくらいのプレッシャーを感じてのシーズンインでした。ただ、テストで初めて隣に乗ったときは「いままでと変わらない感じで、いけそうかな」と思ったのですが、いざ開幕戦になって戦いの本番となるとテンションがまるで違って、「これは大変だぞ」と気持ちが改めて引き締まりましたね。

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しかし、開幕戦はものすごく緊張しましたが、2戦目以降は「一所懸命、目の前の仕事をひとつひとつやっていくだけなんだ」という思いになって。ですから、RALLY HOKKAIDOでチャンピオンが決まったときには、ただただホッとしましたね。JN6でのチャンピオンは、本当に嬉しいです。自分がナビゲーターとしてチャンピオンを狙えるポジションに来られるとは思っていませんでしたから。それが今年、チャンピオンを獲らなければいけないというポジションを与えられて、役目を果たせたことが嬉しいですね。

新井選手と戦ってチャンピオンを獲得したことで、自分自身としては精神的なことが大きく変わりました。これまでもプライベーターとして、上位陣と同じレベルの仕事をしようと思ってやってきましたが、最終的にリスクを減らそうというところに行き着いていました。それが今年は新井選手と戦ってみて、リスクを減らすだけではトップ争いは出来ないということを実感させられました。ではどうするのかというと、リスクがリスクにならないように集中力を瞬間的に高めて必要な時間だけ維持するんです。その一方できっちりリラックスする時間も作って、メリハリを明確にしていくんです。

これまでもやっていたつもりでしたが、やはり出来ていなかったんですね。精神的な部分も含めて全てにおいて精度が高い、そこを会得した一年になりました。2015年の自分自身を自己採点したら、感覚的には95点ですね。5点、何かが足りなかったのは間違いないのですが、それが何なのかはまだ分からないんです。でも、何かもっとやらなければならなかったことがあっただろう、と。一所懸命やった結果のチャンピオンですが、決してこれで満足してはいけないと思っているんです。



UPDATE : 4.Dec.2015