2015 WTCC -FIA World Touring Car Championship- (1)

2005年に発足、翌年からヨコハマタイヤがワンメイクタイヤサプライヤーをつとめるWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。9月11日から13日にかけては、栃木県のツインリンクもてぎで日本ラウンドが開催されるが、もてぎでのWTCC初開催とあって注目度も高く、特に首都圏のモータースポーツファンにとってはサーキットに足を運びやすくなった。WTCCは今年でヨコハマタイヤによるワンメイクタイヤ供給10周年を迎えているが、ここで改めてその魅力とこれまでの展開を振り返ってみよう。


時代ごとに主役が移り変わってきたWTCC!!

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世界最高峰のツーリングカーによるスプリントレースであるWTCC。2005年に発足し、今シーズンで11年目を迎えている。発足から2013年まではFIA SUPER2000規定、および一時期はこれにFIA DIESEL2000規定の車両が加わって競われてきた。

その歴史については、これまでもヨコハマタイヤ・モータースポーツサイトでご紹介している。例えばアーカイブ記事から2013年に掲載したWTCC特集をご覧になれば、発足から2012年までの大まかな流れをご理解いただけるだろう。

アーカイブ記事にもあるように、WTCCの歴史は群雄割拠する面々の中で、ひとつのマニュファクチャラーが一歩抜きんでて黄金期を築くというパターンが繰り返されてきた。黎明期にはBMWが、その後はディーゼルパワーを武器にしたセアト、そして長年の地道な積み重ねが実ったシボレーと、時代は移り変わってきたのである。

そして大きな転機が訪れたのは2014年。この年から新たなTC1車両規定が採用され、タイミングをあわせてシトロエンがマニュファクチャラー参戦を開始した。タイヤもそれまでの17インチから18インチへと進化、空力性能も高められてパフォーマンスが飛躍的に向上したWTCCマシン。レースは超接近戦のスリリングさに加えて、ハイスピードバトルという要素も色濃くなった。そして、ここからシトロエン黄金期の幕が開けたのである。


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シトロエンが強さをこのまま見せ続けるのか!?

2014年の12大会/23戦(1戦は雨天中止)、そのうちの実に17戦で優勝を飾ったのが、この年から参戦を開始したシトロエンであった。新たにTC1規定が導入されたシーズン、開幕から5戦連続で優勝を独占してライバルを圧倒、シリーズチャンピオンは初めてのフル参戦となったアルゼンチンのホセ・マリア・ロペス選手が獲得している。

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その強さは2015年になっても不変だった。ロペス選手は、故郷での開幕戦を制するとモロッコ、ハンガリー、ドイツと4大会続けて第1レースを制する。これをセバスチャン・ローブ選手とイヴァン・ミューラー選手が追い、シトロエン三つ巴の展開でシリーズは推移してきた。

ロペス選手はロシアとスロバキアこそ勝利には届かなかったものの、ロシアの第2レースで12位に沈んだほかは確実に表彰台を獲得してポイントを累積。フランスの第2レースで久々に優勝を飾ると、続くポルトガルも第1レースを制してポイントを322点とする。2位のミューラー選手(267点)、3位のローブ選手(230点)に対して大差をつけ、優位にシリーズ争いを運んで日本に乗り込んでくるという状況だ。



シトロエンに一矢むくいるのは誰だ!?

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シトロエン勢が大きくリードしているシリーズ争いだが、他陣営もヨーロッパラウンドを終えて長いインターバルを最大限に活用して、マシンをアップデートしてくると予想される。中でもやはり注目すべきはホンダ勢の戦いぶりとなるだろう。ハンガリーの第2レースではZengo Motorsportのノルベルト・ミケリス選手がホンダ勢の今季初優勝を飾り、これを追うようにロシアの第2レースではワークスチームのティアゴ・モンテイロ選手が勝利をおさめて、ホンダ勢はここまでで2勝を挙げている。

過去の日本ラウンドを振り返ってみても、昨年の鈴鹿・フルコースでは第2レースをガブリエレ・タルクィーニ選手が、一昨年の鈴鹿・東コースでは第1レースをミケリス選手が制しており、近年の日本ラウンドでは必ず表彰台の真ん中にホンダが立ってきている。WTCCでは往々にして“地元の利”を活かしてマニュファクチャラーやドライバーが勝利をおさめることも多く、初開催となるツインリンクもてぎであるがホンダのホームコースというメリットは最大限に活かされるであろう。

一方で、シボレーRML勢とラーダ勢は、今季これまで未勝利に終わっている。しかし興味深いデータを示すと、シボレーはアジアで強さを見せてきており、WTCC発足からの11シーズンにおいてアジアラウンドだけで17勝を挙げている。そしてもう一つ注目すべきは、ROAL MOTORSPORTから参戦しているトム・コロネル選手の存在だ。日本にもファンの多いコロネル選手は、岡山国際、鈴鹿(東コース&フルコース)と7大会/14戦がこれまで開催されている日本ラウンドにおいて、ドライバー別最多となる3勝を記録している。鈴鹿・東で2勝、岡山国際で1勝をマークしている。また、コロネル選手自身とツインリンクもてぎの関係で言えば、サーキットがオープンした1997年に開催された全日本F3選手権で優勝を飾ったのがコロネル選手だった。また、2003年の全日本GT選手権でも、もてぎでの優勝を飾っている。

そして今シーズンから新型マシン「ヴェスタ」を投入しているラーダであるが、昨年の北京では旧型の「グランタ」で悲願のWTCC初勝利を飾っている。今シーズンは地元ロシアで準優勝、スロバキアで4位と上位に顔を見せる機会もあり、さらなる飛躍も期待されるところ。夏休み中には積極的にテストを行い、いくつかのアップデートを施して手応えを掴んだと伝えられている。


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次回は、2015年のWTCCを戦うマシンと主なドライバーをご紹介いたします。