2015 GRC -Global Rallycross- (1)

世界的に盛り上がるを見せている、モータースポーツカテゴリーのひとつがラリークロス。ラリークロスはいまやFIA(世界自動車連盟)の世界選手権も発足しているが、アメリカではよりエンターテイメント性を高めたGRC(Global Rallycross)が人気を見せている。このGRCは2014年からヨコハマタイヤがワンメイクサプライヤーをつとめ、その走りを足元からサポート。日本からも注目するファンが増えつつあるGRC、その全貌と人気の秘密に迫る。


2011年に発足、盛り上がりを見せるGlobal Rallycross!!

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今、全世界で人気と知名度が急上昇中のモータースポーツといえば、ラリークロス。1967年にイギリスで始まったとされるラリークロスは、ラリーとレースの面白い部分を合体した競技スタイルが特長。

ヨーロッパでは昔から長年にわたって高い人気を誇っていたが、近年はアメリカでもその人気に火がつき、ラリークロスを競技のひとつとして取り込んだエキストリームスポーツの祭典「Xゲームス」の大成功で一気にブレイクした。

そして2011年に初めて全米規模のシリーズとなるGRC(グローバル・ラリー・クロス)がスタート。人気の上昇に伴い年々イベント数が増えていき、2015年は4回のダブルヘッダーを含む全12戦でシリーズが構成される。基本的にはアメリカ国内のイベントだが、バルバドスなど米国外でのレースも年に1、2回は行われる。レースの模様は全米のみならず世界中にテレビで伝えられ、GRCのレースが開催されていない国でも近年人気が高まってきている。


ユニークなレースフォーマットもGRCの大きな特徴!!

競技のスタイルは数台のマシンが同時にスタートし、順位を競うレース方式。プラクティス、予選、ヒートと呼ばれる選抜レース、セミファイナル(準決勝)を経て、ファイナル(決勝)に参戦する選手やそのスタート順が決められる。

参戦台数やレーススケジュールによってレギュレーションは若干異なるが、基本的には勝ち抜き戦で決勝進出の権利を奪いあうスタイルだ。1レースにつき2回行われるヒートはセミファイナルに進むための重要な戦い。

通常4台のマシンが6周のヒートを行い、シリーズポイントも加算されるため選手たちも最初から真剣だ。そのため現場やテレビの前のファンは、ひとつのイベントで何度も激しいバトルを楽しむことができる。そして、最終的には6周のセミファイナルを経て選ばれた10名の選手がファイナルに進出し、10周のレースでウィナーが決まる。

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レースは特別に設けられた全長800~1600mのコースで行われ、スタンディングスタートで舗装路と未舗装路が入り混じった路面を走行。コースの途中には数台のマシンが同時に飛べるような大きなジャンプ台が用意され、コーナーでは接触を恐れぬ超接近戦が展開される。レースでありながらドリフトやジャンプといったラリー的な派手なアクションも同時に楽しめるのが人気の秘密である。

歴史が古いヨーロッパではラリークロス専用のコースが各地にあるが、アメリカではまだ専用施設が充実していないため、特設コースで行われることが多い。しかし、それ故どのような場所でも競技を開催することが可能で、スタジアムの駐車場、サーキットのインフィールド、市街地、さらには軍事基地の内部など様々な場所が戦いの舞台となる。コースはコンクリートブロック、タイヤバリア、キャッチフェンス、盛り土等で形づくられ、ある程度のスペースが確保されていれば、どこでもGRCクオリティのレースを開催することが可能だ。

GRCでは、混戦と激しいバトルを演出するため「ジョーカーラップ」が設定されている。コースは通常、スタート直後にふたつのルートに分かれ、ジョーカーラップ用のルートは距離が短い。選手たちは1レースにつき1度ジョーカーラップを通ることが可能で、どのタイミングでジョーカーラップを使うかは選手と、コースサイドでレース全体を見ているチームスタッフの判断に委ねられる。

スタート順が後方の選手は、スタート直後にジョーカーラップを使えば集団の中位やトップグループに合流することが可能。逆に、レース開始直後は我慢して走り、最後の最後でジョーカーラップを使いトップに躍り出るという作戦も使える。ジョーカーラップによってレースに動きと意外性が生まれ、それが激しいバトルにつながる。GRCのレースフォーマットは、実に良く考えられているのである。



繰り広げられる真剣勝負は、接近戦が見応え抜群!!

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バトル至上主義のGRCでは、競い合う中での多少のコンタクトは問題なしとされている。ただし、あまりにも乱暴なドライビングを行った選手や、フライングスタートを犯したドライバーに対してはペナルティが課せられる。

対象となる選手は、コースマーシャルによって「ペナルティボックス」と呼ばれるコースサイドに用意された50mの特別レーンに誘導され、そこで一時停止した上で再びレースに合流。サーキットレースにおけるドライブスルーペナルティと似た処分といえる。

決勝レースのウイナーは50ポイントを獲得し、2位は45ポイント、3位は40ポイントという具合に5ポイント刻みで10位の選手にまでポイントが与えられ、その他の参加選手には1ポイントを進呈。また、ヒートに関しても3ヒートあるうちの最後の2ヒートに関しては1位に3ポイント、2位に2ポイント、そして3位以下の全出走ドライバーに1ポイントが与えられるシステムとなっている。

ポイントシステムは若干複雑だが、それゆえシリーズ争いはシーズンの最後まで盛り上がり、ドライバーたちは1レースたりとも力を緩める事ができないのだ。


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次回は、GRCを戦うスーパーマシンの詳細と、人気のドライバーたちをご紹介いたします。