SUPER GT 2014 (3)

車種のバラエティに富むGT300クラスは、それぞれに個性があって見どころは豊富。GT500以上に楽しんでいる観客も決して少なくないはずだ。
エンジン排気量やその搭載位置、さらに駆動方式も異なる車両をしっかり性能調整しているため、車種ごとの基本特性によるサーキットやコンディションごとの有利、不利が分かれるのも醍醐味のひとつ。加えてどういう戦術を採るかによって勝敗が左右されることもあって、どこが勝つのか分からないサスペンス的な展開になることは、GT500以上とも言える。
今回はGT300にヨコハマタイヤとともに挑んでいるチームから、第4戦までのランキング上位について紹介しよう。


GOODSMILE RACING & Team UKYO -BMW Z4 GT3-

グッドスマイル 初音ミク Z4

ドライバーふたりが、揃ってチャンピオン獲得経験を持つのは、GT300では2チームのみ。そのひとつが谷口信輝選手と片岡龍也選手を擁する、GOODSMILE RACING &Team UKYOだ。
初音ミクが描かれたBMW Z4 GT3を走らせることでお馴染みのチームで、メンテナンスはRSファインが担当。昨年までエントラントだったStudieとの関係は解消されたが、情報は共有されることとなっている。

引き出しの多さに定評を保つチームとして知られ、展開に応じて機転を利かせたり、セオリーにとらわれない作戦を執ったりするのが何より得意。第2戦・富士では序盤のセーフティカーランに、躊躇なくマシンをピットに入れたが、実はあのあたりでドライバー交代を行う予定だったとも。バトルをあえて避け、単独で走り続けることでアベレージを維持しようとしていたという。
それが可能なのは、尖った部分のない耐久スペシャル、BMW Z4の安定感と好燃費、そして何よりダブル・エースと言うべき、ドライバーふたりの実力によるところも大きい。

今シーズンは岡山、富士と開幕2連勝を達成。ポイントリーダーとしてシリーズを折り返す。2011年以来の王座奪回も決して夢ではない。

DRIVER VOICE

[Photo]

谷口信輝 選手

「僕らの強みは、ドライバーのふたりに差があるようなチームじゃないので、作戦の幅は非常にとりやすい。だから、荒れたレースとか長いレースではいつも成績がいいんです。大半が運ですけど、そうは言っても勝てるということは実力!

今年のBMWは冷却系の改善でボディの下を通る空気の流れが変わり、どうもその影響でウィングを寝かせることができて、ドラッグ(空気抵抗)も減ったので、去年よりはストレートでの負けっぷりも少なくなっています。
開幕2連勝はまわりにプレッシャーを与えられたでしょうが、ここからはハンデも厳しいので、どこかで必ず勝つとは言い難いけど、コツコツ確実に稼いでいくつもりです」




LEON RACING -Mercedes-Benz AMG SLS GT3-

LEON SLS

「ちょいワル」で一世を風靡した男性誌、「LEON」を母体とし、結成から3年目。往年の名ドライバー、黒澤元治氏が監督として指揮を執り、また第1ドライバーとして常に黒澤治樹選手が起用されてきた。さらに今年の第3戦から黒澤翼選手が第3ドライバーから第2ドライバーへと昇格、より黒澤ファミリー色が濃いチームとなった。
なお、昨年まではメンテナンスを外部に託していたが、今年から御殿場に独自のガレージを設け、体制も強化されている。

すでに2チームしかいなくなった、全戦入賞のチームのひとつで、安定感が際立っているのが今年の特徴。そればかりか、第4戦・SUGOでは2位入賞を果たして、まさに右肩上がりの印象も強い。ちなみに、この2位という結果はチーム結成以来の最高位で、チームランキングも3位にまで浮上した。
マットブラックに彩られたメルセデス-ベンツSLS AMG GT3も、近頃はめっきり存在感を増してきただけに、早く表彰台のもうひとつ高いところ、初優勝も目指したいところだ。
もちろん、50kgに達したウエイトハンデがここから苦にならぬはずもなく、適応力や底力の高さもシリーズ後半戦では試されることになる。

DRIVER VOICE

[Photo]

黒澤治樹 選手

「僕自身、過去に勝ったこともありますが、LEON RACINGとしては第4戦の2位が最高位です。荒れたレースにはなりましたけれど、とりあえず自分たちのできることに集中しようと。こういう展開はさんざんル・マンで経験していますから、僕は大丈夫でしたが、翼にはつらいコンディションの中、スリックタイヤでスタートしながら頑張ってくれて、いい経験にもなったと思います。

一緒に表彰台に上がれて良かったし、チーム結成から3年、ようやく確実に結果が残せるようになって、チームを作ってくれたオーナーに少し恩返しをしている最中です。あとはもうひとつ高いところ、表彰台の真ん中に立って、チャンピオンも狙います」




BMW Sports Trophy Team Studie –BMW Z4 GT3-

Studie BMW Z4

これまでグッドスマイルレーシングとのジョイントでGT300を戦ってきたStudieが、今年から独自の路線を歩むことに。しかしながら、RSファインのメンテナンスでBMW Z4 GT3を走らせることには変わりなく、さらにBMWジャパンの強いバックアップを受けることが決定。
その名もBMW Sports Trophy Team Studieとして、新たにスタートを切ることとなった。

BMWとの強い結びつきは、かつてWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)でも活躍を見せたワークスドライバーのヨルグ・ミューラー選手を送り込まれたことで、容易に察せられよう。F1テストドライバーの経験も持ち、というよりル・マン24時間を筆頭とする耐久レース、あるいはツーリングカーのスペシャリストとして日本では知られているドライバーだ。
そして、コンビを組むことになったのはGT500から移行の荒聖治選手。日本人ドライバーとしてふたり目の、ル・マン24時間ウィナーでもあり、またの名は「世界の荒」。

世界を知る強力なコンビは、開幕戦の岡山でいきなり2位入賞を果たす。
その後は、展開に恵まれず目立った結果こそ残せていないが、気がつけばこのランキングにいるあたり、優勝に向けてパワーを蓄積しているような印象すら覚えてしまう。

DRIVER VOICE

[Photo]

荒 聖治 選手

「すごく悩みに悩んでGT300に移ってきたのですが、開幕戦で2位に入れて、この決断は誤りじゃないと実感しました。あの時のヨルグ選手の追い上げは、すごかったですよね。診ていても、なんかね、たのしかったです。「さすがヨルグ様!」みたいな感じでね。

クルマのことは誰よりもヨルグ選手が理解しているし、日本のサーキットのことは僕の方がヨルグ選手よりも理解している。お互いのいいところをうまく合わせていって、早く勝ちたいですね。これだけスムーズに、いいコンビネーションができているので!!」




NDDP RACING -NISSAN GT-R NISMO GT3-

B-MAX NDDP GT-R

ニッサンの若手ドライバー育成プログラム、NDDP(ニッサン・ドライバー・デベロップメント・プログラム)は長谷見昌弘監督が指揮を執り、またGT-R NISMO GT3の開発ドライバーであり、若手の指南役である星野一樹選手も第1ドライバーとして昨年どおり。しかし、その他の体制は大幅に改められている。
まず第2ドライバーは、これまで伸び盛りの日本人ドライバーが起用されてきたが、2013年から設けた「グローバルドライバーエクスチェンジ」をより広く、さらに日本でも展開することになり、スペイン出身のルーカス・オルドネス選手が招き入れられた。

GTアカデミー第1期生で、ゲーマー出身と取り沙汰されることの多いオルドネス選手だが、10代の頃にはカートレースの経験も。
しかし、バーチャルとはいえ世界のサーキットを知ることで、実際のサーキットでも極めて高い適応力を見せた。特に開幕戦の岡山は、実際にレースするのは初めてでありながら、星野と遜色のない速さを見せて関係者を驚かせたほど。近頃はQ2やスタートを託されるようになり、評価がうなぎ上りなのは明らかだ。

このコンビに現時点で何か足りないものがあるとすれば、それはほんの少しの運。第2戦のポールポジション獲得で速さは認められたが、なぜか表彰台が遠い。波乱なく、スムーズな展開になれば、いよいよ本領発揮となることは間違いない実力派なので、今後の戦いぶりから目を離せない。

DRIVER VOICE

[Photo]

星野一樹 選手

「ルーカス選手とシーズン通じてコンビ組むのは今年初めてなんですけれど、去年の鈴鹿1000kmに来てもらって、鈴鹿って日本でいちばん難しいコースだから覚えるのに時間かかるかな、と思ったんです。でも、3周目とか4周目には僕らと変わらないタイムで走ってくれて、本当にグランツーリスモで勉強もしているのだろうけど、コースを覚える力はすごい。

レース以外でもこんな素晴らしい人間はいなくて、日本のレースをすごくリスペクトしているんですね。何でも聞いてきて、ちょっとうるさいぐらい(笑)。これからもずっと日本で走りたいって言っているし、この上ないチームメイトですから、早く一緒に勝ちたいですね」




JLOC -LAMBORGHINI GALLARDO GT3-

マネパ ランボルギーニ GT3

JLOCとは、ジャパン・ランボルギーニ・オーナーズ・クラブの略称。その名が示すとおり、ランボルギーニ車をこよなく愛する有志によって結成された、まだ全日本GT選手権だった頃からの古参チームでもある。
もちろんのこと、結成されて以来、レースで用いられてきたのはすべてランボルギーニ車で、カウンタックからのスタートだった。当初はGT500に出場していたが、2006年よりGT300へ移行。この決断が功を奏し、開幕戦・鈴鹿でムルシェラゴRG-1が初優勝を挙げる。今でこそワンメイクレースが行われ、またFIA GT3が世界中で活躍するランボルギーニ車ながら、当時は世界初の勝利でもあった。

複数のエントリーでも知られ、一時は4台をグリッドに並べたほど。今年は2台のガイヤルドに勢力を集中して挑んでいる。
エースナンバー88番をつける白いマシンは、ともにチャンピオン獲得経験のある織戸学選手と青木孝行選手に、そして86番をつける黒いマシンは細川慎弥選手と山西康司選手に託された。

ポテンシャルの高さはマシン、ドライバーともに誰もが認めるところながら、なかなか歯車が噛み合わぬ状況が続いたものの、それまでの苦労が一気に報われたのが第4戦・SUGO。不安定な天候の中、88番が優勝を飾り、86番も序盤のアクシデントで大きく遅れを取りながら、徐々に挽回して6位入賞。
再びスタートラインに立った、JLOCの大暴れが今後も大いに期待される。

DRIVER VOICE

[Photo]

織戸 学 選手

「チームにとって2006年以来、ドライバーの僕らも2009年以来の勝利を第4戦でおさめることができました。ランボルギーニにこだわってきたチームで、勝てたことはすごく嬉しいし、青木選手と組んで今年で3年目、ずっと勝ちたいと思っていたので、やっとホッとしました。

一回勝つと、自然と波に乗っちゃうものなのです、だからこれからも勝っちゃうと思いますよ、たぶん(笑)。自慢じゃないですが、正直ラッキーな勝利でしたけれど、それもみんなSUGOの天使が僕らに下りてきたから。魔物? そんなもの見かけませんでしたよ!!」