SUPER GT 2014 (2)


ヨコハマタイヤとGT500を戦う、ふたつのチーム

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3メーカー、15台によって争われるGT500は、前回紹介したとおり、今年からレギュレーションが大きく変化し、すべてニューマシンが用いられることとなった。
オフの間に、それぞれ入念にテストを繰り返してきたが、新たなスタートラインからの同時スタートということもあり、まだ仕上がり具合にも差があるようで、こと現状では1戦を終えたに過ぎないため、これから勢力図にも変化が表れそうだ。

そのGT500において、ヨコハマタイヤを装着するのは2チーム。 KONDO RACINGの「D’stationADVAN GT-R」とRACING PROJECT BANDOHの「WedsSport ADVAN RC F」は開幕戦で入賞まであと一歩の11位、12位に留まったものの、しっかり完走を果たして貴重なデータを得ることに成功した。
ここからのチャージに期待がかかると同時に、シーズンはまだ始まったばかり。年間を通じた戦いでいかに好成績を残してくれるか、大いに気になるところだ。

そこで今回は、2チームのキーパーソンとなる人物に、今シーズンの変化、そして抱負などについて語ってもらうこととした。



目標は“いかにワークスになれるか”- Racing Project BANDOH 坂東正敬 監督

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レギュレーション変更によって、今まではダンパーにしても、エアロパーツにしても、多少なりにチームのオリジナリティを出せていたのですが、今年からはそういった部分がレクサス全車共通ということになりました。
自由に変えられるのはサスペンションスプリング、タイヤ、ホイール、あとは車高。その部分において、昨年以上にイコールになったように思います。

またクルマが軽くなって、エンジンも変わったのですが、僕たちの予想ではストレートは遅くなるだろう、と。実際には先に行われた富士スピードウェイでのテストではニッサン勢が300km/hを超えているので、全体的にレベルアップしたように思います。

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クルマのレギュレーションも変わりましたが、僕らのチームはドライバーも変更しました。GT300の頃からヨコハマタイヤで勝ちたいという思いを持ってずっとやってきていて、GT500に上がってからも、それは一緒なのです。3年間で3回表彰台、ポールポジションが1回あるのですが、あと一歩のところで勝てなかったので、今年はかなり大きな決断をしました。
3回チャンピオンを獲っている脇阪寿一選手、僕が監督デビューの時に勝たせてくれた関口雄飛選手を起用しました。関口選手には速さをアピールできる機会を提供し、脇阪選手にはタイヤ開発に貢献してもらいます。実はこれ、彼からの申し出でもあるんですよ。

これだけの環境を与えてくれたヨコハマタイヤにはいくら感謝しても足りないし、またレクサスにも同様ですね。
今までは打倒ワークスを目標に掲げてきましたが、今年はいかにワークスになれるかに変更しました。勝つのももちろんですが、これからはレクサスの中で僕らが何番目にいるかも注目してほしいですね。

DRIVER LINEUP

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脇阪寿一 選手

1972年・奈良県出身。
1991年からカートをはじめ、1995年に全日本F3選手権で4輪レース活動を開始し、翌年の王座を獲得。
以降、全日本GT選手権からSUPER GTと参戦を続け、3回のタイトルを獲得。テレビ出演も多く、お茶の間でも広く知られた存在だ。

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関口雄飛 選手

1987年・東京都出身。
2002年の全日本カート選手権チャンピオンや、アジア・パシフィック・カート選手権での活躍を経て4輪レースにデビュー。2007年にはSUPER GTで当時は300クラスに参戦していたレーシングプロジェクトバンドウでセリカを駆っており、久しぶりの復帰となった。



前後バランスの最適化でタイムが向上 – Kondo Racing 足立 工場長

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我々ニッサン陣営はこれまで同様にGT-Rを走らせるのですが、新しい規定が採用されたことで、名前は一緒ですが全く異なるクルマを走らせることになります。

まず大きく違うのは、新たに作られたエンジンですね。今までは大排気量のV型エンジンだったんですが、今年からは2,000ccのターボエンジンになりました。その次にシャシーがコントロールされていますので、全車共通のモノコックで、レギュレーションで定められた、少ない改造範囲の中でメーカーごとに作られています。

昨年までとのいちばんの違いとしては、車重がありますね。具体的には1100kgから1020kgに軽くなって、その効果がいちばん大きいのと、エンジンが小さくなったということで、重量バランスが比較的取りやすくなりました。特に前後のバランスが取りやすくなったので、それによって高まったコーナリングスピードを中心に、ラップタイムも向上しています。

チームの体制も昨年とほとんど変わりなく、新しくデータエンジニアと御殿場の工場の統括が加わったというだけで、それ以外はエンジニアもまったく動いていないので、そのままです。
ドライバーはミハエル・クルム選手の新たなパートナーとして、佐々木大樹選手になりましたが、ふたりのコンビネーションも今のところ問題なさそうですね。クルム選手に関しては昨年も乗っていますからチームとの関係は悪くないですし、今年からの佐々木選手に関しても、クルム選手にいろいろなことを教わりながら、うまくチームに溶け込んでいますね。

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今シーズンの抱負としては、基本的には表彰台に上がることだと思います。その中でもやっぱり優勝したいですね。過去にも優勝しているので、またそこに一回でもいいから、戻れればいいなと思っています。

タイヤの印象としては、ポテンシャルは確実に上がってきていると思います。テストなどでは気温が低い状況で走る機会が多かったので正確な判断はまだできませんが、ピーク時のグリップも良くなっていますし、今年のクルマにはすごく合っているんじゃないでしょうか。 ヨコハマタイヤは常にいろんなことを考えて開発してくれているので、これからが非常に楽しみですね。

DRIVER LINEUP

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ミハエル・クルム 選手

1970年・ドイツ生まれ。
1988年にレースデビュー、ドイツF3選手権やイタリアF3選手権で活躍を見せる。1994年から日本での活動を開始、翌年の全日本GT選手権では優勝も飾った。
2013年からKONDO Racingの一員として、GT-Rを駆っている。

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佐々木大樹 選手

1991年・埼玉県出身。
1998年に東日本ジュニアカート選手権でデビュー、シリーズ2位。以降、カートで幾多のチャンピオンを獲得、2008年から4輪レース活動も開始した。全日本F3選手権を経て2013年からSUPER GTに参戦、2年目でGT500に抜擢された。